12/31/2011

31日

ひょんなことから,1994年の無機材料の内川先生の「セメントの研究動向」を読んでみた。例年書かれているような書式なのだが,前年の非常に重要な論文を集めて,トピックごとに整理しているのだが,その網羅性,重要性だけでなく,エッセンスの抽出の仕方などが素晴らしい。これを毎年やりつづけるのが研究者であって,こらだけ読み込んでいないという自分を深く反省する。

加えて,その最新と言われている内容が,2000年代以降の再発見の内容とほとんど重複していて,本質的な研究というのは90年d内以降,あまりかわっていないのかも,と思われる。
初期の潜伏期におけるC-S-Hの話とか,骨材の影響の話とか・・・・。

先の骨材特集とよい,やっぱり,ちょっと文献をよんでいなさすぎるかな,と思う。

30日

実家に戻る。体調悪化はますますはげしく,葛根湯を飲んで体調を整えるも,寒くてしょうがない。新幹線はつらかった。

新幹線では,セメント・コンクリートの1981年の骨材特集を読んだ。今読むと驚愕なんだが,ほとんど同じことを議論している。ことなっているのは,砂利と砕石の出荷量の違いくらいなものである。

低品質骨材については,建築研究所でもプロジェクトがあったみたいなので,友沢先生に聞いてみないと・・・。私がしらなかっただけかもしれないが。水中養生と乾燥条件下で強度が大きくことなるケースがでてきたことをこの時点ですでに報告している。

また,鉱物学的考察も国交省の方が書かれていて,鉱物・結晶別にいろんな劣化シナリオが明らかになっている。これも,本来は教科書的に私たちがしならくてはいけないことなんではないだろうか・・・。

低品質といっても,技術的に制御可能だけど経済性が担保できないから,粘土分が入ったり,粒度,分布がよくなかったりという問題と,そもそも資源が枯渇して,という二つの問題を切り分けるアプローチについては,すでに吉兼さんがこの時点で指摘している。

冒頭の総説で岸谷先生が,骨材単味の問題だけでなく,これはコンクリート業界のシステムの問題なんだから,骨材の品質分布調査をはじめ,業態変化も含めて,研究・調査・政策を検討すべきだ,という主張は今もっとできていないことを考えても,その通りだと思う。それ以降,我々はなにをやっていたのだろうと気になってしまう。
骨材単味の研究では解決しない,と言い切っている文章はしびれる。馬場先生の他,骨材種類とコンクリート品質の問題をもう片方でやっておられつつ,全体を俯瞰するこの意見は,すばらしい。

12月28-29日

大学に戻り,特に4年生のサポート。できれば,3人ともJCI年次への投稿にこぎつけたい。いろいろサポートしたいところだが,私の体調不良もあって,思考力低下。ちょっとイライラ感がでてしまったかもしれず,反省。
1名については見通しがたったと思うが,もう一名は実験次第。ただし,ガッツやパラメータ数から考えれば,成功がいくつかあれば,報告はできそう。ラストは解析系なんだが,既往文献をどうしても読み解けず,技術的にどこを考えるべきかでともっており,私自身もいろいろと解析のシナリオを考えねばならず,夜半はたいてい,それについて考えている。

12月26日

コンクリート劣化に関する研究情報交換会。コンクリート系のプロジェクトに関するざっくばらんな会議で,外部の人も招いて,研究の方向性に関する意見を伺う会議。昨年度まりはフランクな意見があってよかったと思う。

12月27日

JCIの耐久性力学の全体委員会。報告書に向かっての議論で,既存の知見についてはおおよそ網羅できた感がある。収縮がRC,PCの構造挙動に及ぼす影響についての知見について,これは知らないだろう,というものがあれば,ぜひご教授ください。報告書に掲載させていただきたいと思っています。

12月24日

車で東京に家族を載せて移動。移動しようとおもったら,子供3人が風邪をひいて病院にいくことに。年末なのか,朝一で電話したのに順番を80番以降になっていて,結局,15時くらいに通院。お医者さんも大変だなあと。
そのあと,家を出たので,夜の東名は結構疲れた。

12月20~22日

12月に入って,卒論が佳境になってくるとともに,経験不足のケースについてはかなりトラブルが続出。CCDカメラを壊してしまったりと,学生自体もびっくりする事態が。JCI年次,卒論を考えると緊急性が高いので,もう一台購入することを検討。取次の会社の方に配慮をいただき,Fedexで即日出荷,27日には届くように配備。
実験系は,こういった修羅場をくぐることで学生が成長するので,それはそれでよいのだけれど,実験が高度化するとこういうのが続くと予算的には厳しいなあ・・・。

12月19日

ラファージュとの共同研究は,寄付金による技術提携という形に変わった。今の欧州の状況を考えれば,それでも望外の供与ではないかと。来年以降,定期的に研究動向について情報提供を継続する予定。

12月16日

BASFの研究所で意見交換会。材料開発の方とも意見交換できたのは,大変刺激的な経験だった。一つの材料も多角的に物性評価すると,いろいろとつながってくることを再確認。

12月15日

佐倉で実験の視察会。超大型の実験系プロジェクトで,その確認。T社の最新データロガーは,メモリカードを挿入するとデータ取得が継続されないバグがあり,名大でも被害にあったのだが・・・・。早めに対処してほしいところ。

12月14日

岡崎市まで出張。その後,名工大の吉田先生,竹本油脂の斉藤さんと大学でゼミ。お互いの学生がプレゼンを行う形態をとる。面白い傾向の出ているデータがいくつかあり,それについての解釈についてディスカッション。

12月9日

JCIのひび割れ進展に関する委員会とJASS5Nの委員会に出席。JASS5Nは,今後,これが適用されるのを望むばかり。
一方で,こういう指針類は60前後の方たちにノウハウのピークがあるわけだが,指針類を作るということよりは若い人に過去の履歴を伝達することが重要なような気がする。
指針脱稿も大事だけど,長期的に委員会を運営できるとよいと思う。
AIJは,旅費が出ない関係で地方の人間を呼べないのであれば,せめて電子会議システムを数百万投資して作るとか,そういうことを配慮した方が良い。
一票の格差問題をほっておいている行政とまったく同じ状態で,公平なシステムとはいいにくい。
私自身,いろいろな会議が重複してしまっているので,あれもこれも出席することができなくなってしまっているけど,各委員会で2,3人の若手コアメンバを想定して,その人たちにはもれなく出席してもらうような配慮が必要かと。
研究者の人口分布自体が,実際の人口分布を反映しており,あきらかにノウハウが欠如しそうな時代がすぐそこにあることは我々の世代も十分に意識していかないといけないかな。

12月8日

私の研究室1号生の博士論文受理を行った。これから厳密な審査を行う予定。
感慨深いものがある。

12月7日

年の瀬になると,卒論,修論,入試,院試関係でいろいろ業務が多くなってくる。国のプロジェクトは震災の関係で契約がおくれ,11月スタートのものもあり,これについては,かなり念入りに可能性を想定して仕込んでおいたものを一気に仕上げる必要がでてくる。大量のコンクリートを仕込んで,養生開始。いくつかのサンプルはJCI年次でお披露目できるかも。

12/08/2011

12月6日

セメントペーストの強度試験を行うと,ばらつきが,特に長期材齢で大きくなります。これは完全にシールできていないとか,練混ぜ時に気泡が入ってしまうとか,いろいろ考えられるので,東工大のS先生にご推薦いただいたミキサーをつかってみたら,驚愕のクリームのようなペーストができて驚きでした。
従来,増粘剤をいれて練ると気泡ができすぎて実験にならなかったのですが,これならうまくいきます。

これは,今後,これでやらんといけないなあ,ということで現在,予算建てを検討中であります。
基礎的なツールというのは,やはり適切なものを使わないとダメですねえ。

12月2日

ことしの授業でも例年と同じく,2年生の授業でモルタル作品コンペティションを行いました。
http://www.degas.nuac.nagoya-u.ac.jp/Lecture/2011_mortar/index.html

No.1,No.6,No.18,No.38
などは非常に優れた作品だと思います。

No.18は何がすごいかというと,モルタル作った後に指の形にほった彫刻になっていて,いったいコンクリートのメリットである可塑性について何を聞いていたんだ,という問題作品です。これはあっけにとられました。個人的には好きです。

11/27/2011

オスロ

オスロに関するメモ

ベネチアに行ったときも思ったが,日本の円高は,我々一般の人間からするとほとんど円高ではないのではないか,と思う。オスロでは,消費税のような税金があってそのためにかさ上げされているのだと思うが,500㏄の水は500円以上する。とてもでないが,円高の恩恵なんてない。
食事も非常に高額である。

税金を高くして,その税金が日本の消費に再度利用されるのであれば,ため込んでいる人の消費を喚起したことと同様のようになるので,経済活性につながるようにも思う。税金で高くなって消費が落ち込むとのバランス次第だと思うけど。
ノルウェーはうまく回っているように思う。


お隣のスウェーデンは物価が日本に近いらしい。電車では,Haldenからの帰りに徴税官が来て査察していた。我々は関係なかったけれども。


市庁舎は,ノーベル平和賞の式典に利用される。時間を見つけて,中に入ってみた。壁画がすごい建物だった。礎石造というのは全部傾く運命なのか,床は微妙にうねってた。窓も垂直からずれている部分があった。
それでも,中の豪華さは一見の価値がある。






ノルウェーにはLofotenと呼ばれる非常に有名なレストランがある。ここでは,オイスターやノルウェイロブスターなどを食すと贅沢な時間になる。ノルウェイロブスターは,イセエビとは比べられないくらい濃厚な味わいである。アメリカロブスターよりもすごいということだった。(私は食べたことが無い。) オスとメスで味が違うらしい。私はオスを食べたが,海が凝縮されたような香りがした。好き嫌いはあるとおもうけれど,私は非常においしく感じた。
殻も含めて,味噌汁にしたらおいしいのに,と思ったけれど,あえなくウェイターが持って行ってしまった。なんだか,成仏してくれないんじゃないかと思って不安になった。


今の時期は,日が短い。9時くらいに明るくなって,2時くらいにはもう夕方(斜陽)である。時差ボケもあって,夕方8時にはくたくたになって寝てしまうが,夏ならこんなことはないだろう。

打ち合わせは何回か,今後も行う予定なので,良い時期にあたるとよいな,と思う。

11月23-25日 Vol. 2

翌日は,KjllerのIFEを訪れた。こちらにはJEEP2という研究用原子炉がある。
ここの原子炉は重水炉で,γ線量が中性子に比較して小さいので,照射実験をした時にコンクリートの温度が高くなり過ぎないという良い点を持っている。日本のJMTRを使う選択肢もあったが,JMTRが停止中で再開時期が明確になっていないことを考えると,結果としてはやむを得ない判断だったのではないか,と思う。

Kjllerには,ホットセル(放射能を有するサンプルの様々な実験を行う実験室)もあり,こちらでは,PIE(Post irradiation experiement)の検討として,我々がやりたいことが確実にできるかどうかの確認のため,打ち合わせを行った。
コンクリートの実験はしたことが無い(実際は,60年代,70年代に実験が行われたあと,世界中で研究はおわってしまっており,文献は出てこない。)とのことだったが,セラミック等の実績があるため,逆にいろいろな提案もしていただいた。

さまざまなテクニシャンが,我々の研究に深い関心を持ってもらい,多くの提案を受けたため,あたらしいスキームも含めて再検討することにした。

原子炉の内部も見学させていただいたが,そこには,回折装置,SANS,NR(中性子ラジオグラフィ)があった。回折装置およびSANSはC-S-Hの構造解析に適していることを考えると,今回の実験で含めて検討した方が良いのでは,という提案はまったくそのとおりだった。C-S-D(重水)で検討した方がよいと思い込んでいたが,そうでなくても多くのデータは得られる。多くの影響が確認できると考えられるので非常にチャレンジングだと思った。

こちらのNR装置は,X線用のフィルムを感光して用いており,アナログ方式だった。デジタル化はされていない。そのため,解像度はかなり高いようだった。一方で,撮影時間は,核燃料のケースで8分程度ということなので,トモグラフィなどはちょっと難しそうだ。しかし,テクニシャンは,かなり熱い方で,コンクリート実験にもぜひ使うべきだ,という意見をもらった。まあ,実際は難しいと思うけれども,ぜひ,提案をいろいろしていただきたい,ということを伝えた。

これらは,ここ半年程度は余裕があるので,こちらでも検討を深めたいと思う。

滞在2日だったが,ビジョンの共有ができたこと,それぞれの責任者が明確になり,連絡を密にとれる体制を構築できたことは大きな成果だった。やはり,メールではなくて会わないとダメだな。

というわけで,今にいたるわけだが,残念ながら飛行機の状況がわるくてヘルシンキに2時間以上足止めが確定してしまった。やれやれ。午前中に家に帰られるとおもったのにな。

11月23-25日

現在,ノルウェー,というか,帰りのフライト中によったヘルシンキ。
来年以降実施予定のコンクリートの中性子照射実験の研究打ち合わせのため,ノルウェーのHaldenおよびKjellerのIFEに行った。初日は,rig(試験体を格納して,原子炉内に設置するコンテナのこと)の設計者や原子炉実験の専門家と,当方の研究計画および想定する結果,および測定中注意しなくてはいけないことなどの情報提供を行って,また,rigの設計図をもとに起こりうる問題について,片っ端から議論した。


想定しうる実験の失敗局面などをリスト化することは,今回の実験実施上,かなり重要な思考実験で,おかげでこちらのスペックがよく相手に伝わった。
詳細を詰めるためには,さらに設計用データを相手に渡す必要がでてきたので,結局,最終決定にはいたらなかったけれども。

その後,Halden原子炉の方に訪問させていただき,研究用原子炉の見学を行った。私は研究用原子炉に訪れたのは,JRR-3以外では初。こちらは商用原子炉のためのあらゆる実験ができるようになっており,多くの実験設備および技術者の数に圧倒された。

ノルウェーは,水力発電で国の電力のほとんどをまかなっているため,商用原子炉は持っていない。しかし,これだけのスタッフを将来の技術オプションとして確保している,ということに文化の厚さを感じさせられた。
近年は,電力が自由化されたため,逆に売電することが多くなって周囲の国の電力需要に従って電力価格が上がってしまったらしい。一般家庭では,暖房用に暖炉を作ることなどが最近流行しているということだった。

電力自由化は,国民という単位でみたときのメリット,デメリットはよく考えた方がよさそうだ。他国と電力融通できない国ではあるけれども,電力価格は上がりそう,ということだけは確率が高そうだ。

11/21/2011

11月14日

11月14日は,太平洋コンサルのY田さまをはじめとして,何人かの方に来ていただき,研究についてのディスカッション。比表面積の定義,意味あいについてかなり厳しいご意見をいただいた。ご指摘のとおりなんだけども,収縮との関係については,さらに課題ができたということで,ありがたい会議でした。

最近始めた照射実験についても,骨材の意見をいろいろ伺った。大変貴重な意見をもらった。
4年生は,ディスカッションに良くついてこれていた?ように思う。大変マニアックなディスカッションだったと思うのだけれども。今はわからなくても,この積み重ねが後でいろいろつながるはずです。

11月12-13日

父が古希を迎えたので,伊豆のホテルで親族でお祝い。
私には妹が二人いるのだが,それぞれに子供が複数いて,偉い騒ぎになった。
私自身は家族が風邪でダウンしてしまったので,(私もちょっとまずかったけども。),息子を連れて5時間かけて伊豆高原にいってきた。ホテルの食事もおいしかったし,風呂も大きかったしで,息子はご機嫌だった。

翌日,ぐらんぱる公園ということろに皆でいったけども,子供は大はしゃぎだった。

はじめて,ウォーターボールというものに挑戦した。

11月11日

放射線影響に関する研究の交流会。
放射線の実験は非常に高額なため,あらかじめ専門家からも実験の意義,やり方,データの目的などを再確認して,本当に妥当かどうかを検討するのが目的。コンクリートは私だけで,その他は従来からの専門家の先生方。

コンクリートの実験については,そもそもコンクリート論もかぶせてプレゼンしたところ,研究の作業仮説については合意を得ていただけたよう。ただ,細かい所については,さらなる検討が必要。
ひたすら勉強です。いかにコンクリート工学とつなげるか,というところだけは徹底的にディスカッションしないといけないかな。

11月9日

この日は,昼に茨城のT海中学にお邪魔しました。長期的なコンクリートがどのように変質するかとうことに興味があって,いろいろコアをとっていたりするのだが,低強度コンクリートの問題もこの枠組みに入れたいとおもって,その初サンプル。
この中学は耐震補強をするはずだったのだが,その予算が下りる前の3月に被災してしまい,大破の状態になってしまったというもの。構造部分からもコア抜きをさせていただけるということだったので,いろんな方に助力をいただいて実現しました。非常に貴重なサンプルが得られたので,内部でどうなっているかを,筋道だってひもといていきたいと思っています。

夕方は,MRIで打ち合わせ。課題山積みを再確認。

11/07/2011

11月7日

いろんな研究者のみなさまに,質問をしまくっていましたが,やっと解決しました。
AFmの単相をとりだそうとやっていたのですが,通常行う,AFtをサリチル酸で溶かす手法だとAFmが謎の物質に変化してしまうことがあって,所定の目的の実験ができませんでした。X線チャートは間違い無くAFmなんだけど,TGとか他の物性は,まったく別物という。アルミナゲルとか存在しているんでは,とおもってFTIRとったり,チャートのハロウを見たりしてもまったく無し。まさしくわけがわかりません。

五十嵐が文献を読みあさって,やっと一つの論文を信じてやったら,本当にAFmだけの単相を合成できるようになりました。最初は炭酸化したりして大変でしたが,結果オーライです。
これで,やっと研究が進みます。

しかし,10年前と比べても論文の集約効率というのは劇的に高くなっています。それだけ文献を読まないといけない,ということですが,果たして我々は,それだけ過去の知見を生かして今の研究をやっているのか,ということに責任もって答えられるようにしないといけないですね。

一部は国のお金で研究をやらせていただいているのであるし,過去の知見も同様でありますから。

特に大型の研究については,過去の研究をどれだけ調査しているのか,というチェックがあっても良さそうです。(まあ,建設系の分野に限っては,ということなのかもしれませんが。)

11/06/2011

11月5日

この日は,建築学教室主催の第13回 まちとすまいの集い,というものを開催した。
http://www.nuac.nagoya-u.ac.jp/topics/machi/machi.html
90名くらいの外部の参加があり,最後の質疑討論での司会を仰せつかっていたので,かなり緊張していたが,会場が適度にワームアップされていて,質問が途切れることはなくてほっとした。
出来合いの質問じゃあ,あじけないもんね。

というわけで,今年も無事,まちとすまいの集い,が終わりました。

11月4日

この日は,AIJ東海支部の論文締切でした。東海支部の論文は4枚ものなので,起承転結とデータなりそれなりの蓄積が無いと投稿できません。毎年,4年生は,これに投稿できれば良いペース,ということとらえているのですが,今年度は解析ベースで最初の勉強時間をとったこともあり,皆,投稿ができました。
中性化については,あれこれ調べていたり,一部共同研究をしていたりしておりましたが,水和モデルもおおよそ納得できる状態になってきたので,耐久性面へのテコ入れをしようということで,4年生に主担当となってもらって,解析コードの開発をすすめました。

中性化のコーディング上の問題は,一つは,気相の拡散係数が大きいこと,細孔溶液への溶解スピート,気相での析出反応も早いことなどがわかっていることから,解析の時間ステップをかなり細かく評価しないといけない,ということです。
過去の研究では,析出反応プロセスを速度論的に評価すると,気相の拡散や溶解平衡などを無視して(表現には語弊があるかもしれませんが・・・)進むことができるので,ある範囲で解を収束させることができますが,逆にこの速度を与えることが経験則になってしまうため,他者の再現性が難しいのではないか,という点で考えさせられました。
一方,最近では,熱力学平衡モデルによって,毎回相平衡を解こうとしますと,2つの点で問題になります。一つは,気相も含めて平衡を取りますと,すべて炭酸カルシウム析出にむかってしまうため,どれだけ解析ステップを小さくとってよいのかわからなくなってしまうというものです。このことは,逆にいうと,解析ステップの時間間隔で,中性化スピードが変化してしまうという問題を引き起こします。
実際は,中性化現象を律速している速度則がどこかにあるはずなのですが,現状ではそれが理解されていません。広島大学の石田先生・河合先生はこの問題を解くために,気相の溶解速度の検討を行っています。
中性化モデルを真摯にとこうとすると,解析上はこの問題は非常に大事なのだ,ということがコーディングをして理解できました。
石田先生の溶解速度のデータがあるので,その他を平衡モデルで用いた場合の最少ステップをどのようにすればよいか,ということの足掛かりができるわけです。

そんな分けで,4年生の解析コードでは,溶解速度を速度的に評価し,残りを平衡問題としてとらえる形の解析手法として検討を進めることにしています。
JCIまでには,水和モデルと連成した若材齢の脱型問題まで進められればと考えています。

11月2日

この日は,初めて,東大のI田先生に名古屋に来ていただき,最新の研究成果などを踏まえてディスカッションさせていただきました。前日入りしていただき,夜の部ももったわけですが,数年ぶりに痛飲といいますが,えらいありさまになりました。帰りは,乗り過ごした上にタクシーで帰るという,まったくもってダメダメでした。
翌日のディスカッションはダメダメとは程遠く,DuCOMなどがどんな方向性を目指しているかなどの垣間見れる貴重な時間でした。我々としても,五十嵐のやっているセメントの反応,相組成,比表面積評価などの一連の流れについて紹介させていただくとともに,コンクリートの放射線影響に関する研究についてもご意見をいただきました。

また,1年後くらいを目途にやりましょうということで,新しいディスカッションテーブルが設定できたことが大変うれしかったです。

10/30/2011

原子力発電について

原子力発電に関するスタンス

1.エネルギー需給の観点から
エネルギーの安全を考えるのであれば,エネルギー源は多様化しておいた方が良いと考える。自然エネルギーによる自給率上昇は悲願である一方,多くの課題があるのが実情である。その観点から,原子力発電もエネルギー源の一つとして確保しておくことが望ましいと考える。
たとえば,太陽光発電は,日射時間をとらえた効率が日本の環境ではあまり上がらないということ,電源系回路の耐久性が高くなく,発電パネル以外にも多くの技術開発があるため,採算ラインが低くならないという課題がある。
風力発電については,日本の電源としての風力についてはNEDOが国家プロジェクトとして風況データを網羅したが,欧米のように良い環境があまりないのが実情である。今後は,陸上ではなく,海上に進出する必要があるが,日本の臨海は,すぐに50m以上の水深となってしまうため,ヨーロッパの着底式ではなくて,浮体式で対応する必要がある。しかし,浮体方式に実用化研究は現在までに1例しかないので,今後,日本が率先して技術開発する必要がある。
加えて,日本の特殊事情として漁業権の問題があり,海洋を自由にいじることができない。この問題は,日本古来の文化とも融合していて根深く,私もよくわからないが,すくなくとも海域の開発を阻んでいる問題であることは確かである。
(阻むことが良いのか悪いのかも私には判断できない。)
といったわけで代表的な自然エネルギーについては今後も開発・政治的な問題解決をしなくてはならない問題があるため,一定量の原発の稼働はやむを得ないのではないかと思う。

2.今までの原子力行政について
多くの人間が冷温停止に10年以上の年月がかかるということは理解していなかったのではないかと思う。電気のスイッチのように,スイッチオフにできない,スイッチ切ったら核反応はすぐに停止するといったようなイメージを国民に与えたのは間違いだったと思う。原子力の最大の問題はそこではなかろうか。
たとえば,浜岡原発を某首相が独善的に稼働停止にせよと命令したが,福島を見てそうしたというのであれば,情緒的な判断としか考えられない。
福島の問題は,原子炉および燃料棒貯蔵に関する冷却のための電源喪失が問題だったのであって,地震に対しては原発はすでに稼働を停止していた。
すなわち稼働中であっても,稼働停止中の冷却中であったとしても,電源喪失のダメージはほとんど同じであるので,緊急停止をする必然性が見つからない。
核燃料の冷却ということが理解されていないから,こういったことが進行したのではないか,とも思われる。


3.原子力と建築
福島原発に関わるデータの分析はすんでいないが,制御棒の引き上げを実施し,復水器の稼働をさせることができる程度の建築物の損傷であったと考えられる。
加えて,震度のより高い女川原発においても大きな問題が生じていないことを考えると,原発における建築構造物の責務は果たしたのではないかと考えている。

http://www.tepco.co.jp/nu/fukushima-np/f1/images/f12np-gaiyou_1.pdf
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E7%AC%AC%E4%B8%80%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80%E4%BA%8B%E6%95%85#cite_ref-HOAN20110606_10-0
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%A6%8F%E5%B3%B6%E7%AC%AC%E4%B8%80%E5%8E%9F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E7%99%BA%E9%9B%BB%E6%89%80%E4%BA%8B%E6%95%85%E3%81%AE%E7%B5%8C%E7%B7%AF#3.E6.9C.8811.E6.97.A5

もちろん,様々な機器系事故後においても余震を含めた耐震性確保が望まれているのも事実であるし,冷温停止中においても安全性を確保するのが建築構造物の使命である。
はなはだ断片的ではあるが,先人の残しが建築構造物の設計上の技術というのは大きく考えて誤ったものではないと考えられるので,これらを学ぶとともに,今後要求される性能に合致した材料・構造上の問題については,私の貢献が可能なのであれば,行いたいと考えている。

10/23/2011

査読

最近,また,査読が多くなってきた。常時2,3本は抱えている。子供の育児もあってなかなか論文を書く時間が無い。年末までには,あと2,3本は書きたいとおもっているんだけど。

FUEL とか Experimental Thermal Fluid Scienceとか,なんでこんなところに無機材料が登場すんだよ,っていうようなことを査読依頼が来て知りました。いやあ,みんな広く論文出してるんですね。反省です。王道も大事だけど,広く論文を出すことも大事だなあ,と。

昔友人のP.L. がそう教えてくれてたんだよな・・・。あまり考えてなかったけど。
パブリッシュの方向性についても,もう少し考えて見たいところです。

大学間ゼミ

今週は,新潟大学のS伯先生と年1回やっているゼミを実施した。今回は遠路はるばるきていただくことに。実験のボリュームと研究の高度さに,感服。また,S伯先生みずからの耐久性の考え方に関するプレゼンも大変刺激になりました。やっぱり,まねしたくなる研究というのは,良い研究だよね。

比表面積関係は,奇しくも同じ形の研究になっていて,試験方法の差異がそのまま結果に出てた。合成C-S-HとAFm,材料・製造由来の変質が当方の目下の課題。
でも,既往文献との対応を見るとそれほど悪くはない感じ。正しい値,ということの検証は,もう少し必要かもしれません。

来年からは,化学だけでなくて構造も取り入れた研究にシフトを検討。やはり,構造までもっていってぐるっと一周させないととずっと考えて来たので。超高強度コンクリートの柱の実験がいろいろ課題を残してくれたので,それをちょっとづつ解きほぐそうと考え中。

英語授業

大学では,英語授業をすべきという議論は良くある。
ビジネスでも,研究でも必要なのは間違い無いし。
一方で,日本は非欧米でおそらく唯一,高度な母国語の教科書をもっている国なので,それ故のメリットは大きいと思う。で実際のところ,そもそも日本語ができてないんじゃないか,という議論になっちゃうんだよね。大学では。
日本語できない奴はぜったい英語できないし。

という意味では,日本語でまず議論できる人材になってからでも,十分英語対応が可能なので,そうした方がよいかなと私は思う。いらないとはいってないですよ。でも,英単語知ってて,ヒアリングができても,ディスカッションできなければ英語の必要ないですからね。

逆に,英語がわかっているのに議論がかみあわなかったら,結局ダメですよね。

うちの研究室では,まず,研究・実験の報告,問題点の洗い出し,今後の課題等をなるべく短い時間で常に整理して発言してもらうことを学生に課しています。論点の整理が一番重要で,かつ,共有すべきものと思うからです。
ディスカッションはその次です。自分が何がわかっていて何がわかっていないのかを,公平に端的に話すというのはそれなりの訓練が必要です。

Cover letter

いまさら感がありまくりだけど,CoverLetterのあるジャーナルに投稿してみた。軽い気持ちで投稿しようともって,クリックしていったら,CoverLetter必須とかいうので,1日くらい考えた。査読はAbst命なので,英語のドラマを流しながらテンションあげて,ドラマティックに書いてみました。


この論文が社会的にあるいは歴史的に,こういう価値があるからあなたの雑誌にふさわしいっていうアピールをAbstにうまく盛り込めないことがある。そういうとき,アピールに便利だ。これは,このデータの初めての論文だ!って明示的にはAbstに書きにくい場合があるし。

論文は,それを読む人の知識に従って重要度がことなる。研究はニッチになりつつあるし。便利な制度だということを改めて認識。

10/22/2011

英語授業

オムニバスの建築と土木を紹介するという授業で,短期留学中の留学生に授業を3時間行った。

建築業界の現状,コンクリートとは何か,RC建築の基本の基本,というレクチャーのあと,豊田講堂をみて,実験室で超高強度コンクリートの打設をみて,最後に載荷試験をするという講義でした。
意匠で来てたドイツ人の学生が,超高強度コンクリートに興味があって,博士にいきたいという相談があったけども,たとえば,ドイツのKassel大学の開発スタンスと日本の超高強度コンクリートの開発・研究スタンスは異なるから,将来どういった形で職業を持ちたいかで決めた方が良いかなあと答えた。

これは,やっぱり,Architectureにこだわっているから,どこでベースとなる技術っていうのは初動に大きく影響するかな,と。でも,個人的には日本の技術を学んでくれれば基礎力としてはグローバルに通用すると確信しているんですけどもね。

10/15/2011

飽くなき成長への希求についての話題

商売人もそうだし,研究でも上の方の人みていると,全然満足しない。ハングリーさが違う。ユニクロだってさ,世界制覇っていうか,国際的なブランドにしようとか,全然とまらないし。研究分野でも私の知っているPIとかも,もう,この人なんでとまらないんだろ,ってくらい全然現状に満足しない。もう,みんなすごいって認めてるし,しばらくそんな成果でないよ,ってなんとなく思ってても全然止まらない。

なんで,こんな話をしてるかっていうと,大半の日本人って満足を知れっておそわってると思うんだよね。たぶん,そういうの道徳の教科書にあると思う。でも,経済成長を望む限り,満足しちゃいけないんだとおもう。Ecoでもなさそうなはなしだけど。で,愛知の企業みているとトヨタ以外は,本当に,トヨタのためにあるだけで,それ以外しない。(実際はそんなことないんだけど・・・)車産業は転換期にあるとか,全然そんなの気にしてない。


たとえば,車の油圧系統って,規模の大きさは違っても風力発電に使える技術って山ほどあるんだけど,トヨタと取引している準大手にそういう話をもちかけたとしても,全然とりあわない。全くびびる。大型のもの,つくりましょうよっていっても全然やる気ない。この話,たぶん,アジアにもっていったら絶対やる。日本の企業は,きっと現状で社員も養えているし,当分は大丈夫って思ってる。だから何もしない。

海外の風力発電は小型発電から成長しているので,最初は農業機械系の会社だったところとか結構ある。そういう移行の方法もあるのかもしれないけど,日本は残念ながらそうではない。
今,やった方がよいことの最大のオプションをやるための枠組みが,ナショナルプロジェクトとして上がったとしてもついてこない部分がある。これは,原子力のナショナルプロジェクトの場合と違う側面ではないかと。

はなしがずれたな。日本の現状は,「足るを知」りすぎてるんだとおもう。たぶん,小学校の道徳的にはよいことなんだけど,それが停滞を生んでいる側面はあると思う。
アングロサクソン系のどん欲さは,我々にはない。
島国で,競争とは無縁であった我々も,グローバリズムの中でもがくには,いやがおうでも戦う土壌に引きずりこまれている現状に気づかず,昔の道徳の教科書を金科玉条に拝している。

似た話でTPPがある。
TPPなんて,やらないに超したことはない。そもそも,欧米の人間がやった方が良い,なんて日本のためにいうわけがない。ということはやらない方が良いにきまってる。みな,自分のことしかかんがえてないから。
お人好しの日本くらいだよ。本当にアジアのために,こうした方がよいんだよ,なんて教えているのは。

個人的には,そういう日本人を誇りに思うけどね。

というわけで,この話には結論がない。個人個人が考えてどうすればよいかを考えることに意味がある。僕はどっちかっていうと建築材料の話よりは,こっちの方が大事だと思う。どうやっていこうかな,と。

10/13/2011

不動産データ

http://business.nikkeibp.co.jp/article/opinion/20111007/223066/?rt=nocnt

http://www.a-lab.co.jp/
これ,結構,都市計画系で研究している人いるよね。
私も研究やろうと,下調べまでやった。市場では1件あたりのデータが1万円くらいで売られていて,大学へ販売するときにはアカデミックプライスがついてた。そのときには,東大と早稲田の研究室に販売した実績があるとか。

GoogleアースとGoogle Mapで生産研の一研究室が消えちゃったけど,ああいうのと同じインパクトがありそう。何にしても,このデータはすごい。

10/11/2011

イタリア後

イタリア帰国後は,国内共同研究の打ち合わせとJCI膨張委員会のシンポジウムが行われた。国内共同研究については,研究室でとった実験データの報告したが,まったく理解ができない挙動があり,その理由を添加した物質に求めたが結局,わからずじまいで今後,当該現象を突き詰めていく方向で検討することになった。
しかし,この方法でいくと,先にとった実験パラメータってあまり適切ではなかったんだよな,と思いながらディスカッションしていたのだが,どうしたものか。
良いデータだけど,切り捨てるかなあ。本当に良いデータなんだけどな。

JCI膨張シンポは,台風の影響もあって参加人数は予定よりすくなかった(と思う。)膨張材の近年の動きを網羅した良い報告書と思うので,是非,研究をする学生にしても,利用を考えている人についても読んでいただきたいと思う。
膨張材は20℃の理想環境の話と実現場の乖離が時として大きくなる材料であるので,このあたりは今後,ちゃんとやらないといけない。
そもそも,なぜ,膨張圧が生じるかについては理解している人もいるとは思うけど,理解できていないので,原理的に理解するような実験をしてみたいところだ。
マンパワー的にはいつになるか,わからないけれども・・・。

10/06/2011

イタリアの食事

イタリアの食事はやっぱりおいしい。そして炭水化物を取りすぎる。パスタが好物なので,どうしてもパスタよりになってしまう。
パスタは,ポリチーニ茸をつかったものが好きだ。クリーム系でもオリーブオイルを用いたものでも良い。あの香と歯ごたえはたまらない。頭の中にその記憶がこびりついてしまうので,イタリアからのお土産はいつも乾燥ポリチーニ茸だ。これは軽いし,おいしいし,誰にあげても喜ばれる。乾燥シイタケと一緒のようにして使えばなんにでも使える。

ベネチアでの調査(その3)

結局,我々は市が管理している塔について調査できることになった。ブラーノ島にある。この塔は,写真でみられるように相当に傾いている。豊橋技科大のM先生が測定したら,4度の傾斜であった。えらい傾きようである。
塔の中も上らしてもらったが,この不安定感は相当なものだ。すでに1980年代に下部をコンクリート打ちするなどの対策を施しているらしいが,基礎そのものの不動沈下が原因なのでどれだけ有用かはわからない。カウンターウェイトとして,300年後くらいに同じになればよいか,と思っているのかもしれない。

このコメントは,ジョークではない。日本の価値観では,変なものをみたらすぐに直したくなってしまうし,実際に動いてしまう。震災後の復旧は,やはり素晴らしく,道路もあっというまに開通してしまった。
しかし,イタリアはそうではない。ラクイラの中心部はまだ,人が立ち入れない状況になっているし,復興というのはもっと時間がかかってよい,と考えている。塔屋の傾きも歴史を経過してなったものであるのだから,おそらく,まっすぐに戻してしまったら,それはそれおこられるかもしれない。ピサの斜塔をまっすぐにしたら,多くの人に怒られるだろう。それと同じことだ。
歴史に必然もある,と考えらの考え方を調査を通じて触れることができるのは,非常に素晴らしい体験である。

ベネチアでの調査(その2)

ベネチアでは,リアルト橋の調査ができるという話もあったが,大学間の争いの中でそのプロジェクトは消えて行った。まあ,しかし,あんなに有名な橋を日本人がそもそも調査してよいのか,というのは現地に行って理解した。あれはイタリア人の手で調査をすべきものだ。

我々は,メストレとベネチア本島をつなぐ,1920年代にできたとされるレンガ造の橋(数kmある。)に関する調査許可を得られた。こちらは約100年のレンガの劣化をみたわけだが,多くは,波による力学的作用であり,化学的浸食のようなものは見られなかった。面白いのは,おそらくレンガの焼成温度の違いに起因するものと思われる浸食の違いがレンガによって見られたという点である。あるいは浸食が開始された点に支配される初期値問題かもしれないが,形状として非常に多様な浸食が見られる。
まあ,しかし,これは材料学的興味であって,それが橋梁の維持管理とか生涯予測に影響を及ぼすとは思えないので,些末な話ではある。

その他,一棟,ベネチア本島内にある塔を調査許可が得られるはずだったが,とある理由でダメになった。
渡航前,ベネチア内に関する教会に関する調査許可はバチカン系である宗教局の管轄であり,そこからの許可は得られていなかった。一方,イタリア内での調査許可については文化財保存局から,全権の許可を頂いていた。
今回のベネチア訪問時には,パドヴァ大学のモデナ教授に宗教局に同行していただき,宗教局の許可を得ることに成功した。しかし,次に文化財保存局にいったら,許可をもらい,書類まであるのにその教会の鍵は貸さないといわれてしまった。それで今回の調査では,当初想定していた塔についての調査ができなくなってしまった。

いろいろ聞くと,宗教局と文化財保存局には確執があるらしてく,どうも難しい問題にぶち当たってしまったらしい。人の問題なので,ごり押ししてもしょうがない。しかし,日本から7名のパーティで,教授を含めて調査しているので,本件については,人件費もろもろ考えれば1000万くらいがパー^である。
正直いって,これは相当に舐められているな,とも思うけれども,いかんともしがたい。日本人の研究者待遇より,うちわの権力争いの方が大事なのはどこの政府も一緒なんだろう,と思う。

ベネチアでの調査(その1)

今年は,ラクイラの調査はできなかったので,ベネチアの調査から参加した。ラクイラでは震災によるレンガ造・歴史的構造物の被災度調査,補修・補強方針の策定がメインテーマであったが,ベネチアは,どちらかというと材料的な問題,すなわち,長期的な構造物の劣化を対象とした問題を取り扱うフィールドとして設定された。

ベネチアに行ったことのある人で,構造物に目が行く人であればわかると思うが,ベネチアは古くから松杭の上にできた人工地盤の上に構造物が出来上がっている。塔屋あるいは住宅の多くは,かならず少しばかり不動沈下を起こしており傾いている。塔屋の多くも傾いていて,少し気分が悪くなる。加えて,移動が船で移動なものだから,頭の中の平衡感覚は結構狂わされる。

近年では,大潮の関係で,ベネチアのサンマルコ広場が水没している映像がテレビでも流れる。さもそも強烈な塩害環境下なのでどういった対策があるのかと興味深々であったが,実はどうということはなかった。鋼材はメッキされており,あとはレンガ・漆喰・モルタル等々の無機材料を利用しているだけであった。
町中,すみずみを見てみると,塩類風化が生じているのはみかけたが致命的な状態にはいたっていない。
その他,湿気の問題からか,藻が生えているような環境もあったが,あれだけ時間を経た建物となると,もはや,風合いであって,特に問題にはならなさそうだ。

年に数回水没している部分があるが,そこにいっても,彼らは,ただ単にモップで拭いて粛々と生活を継続するだけであった。店舗であっても,床上浸水上等の状態であり,こればっかりは驚いた。日本なら,あっというまに浸水防止装置をつくるとか,1Fを別の用途にしてしまうとか,やりそうだが,かれらはなされるがままになっている。

ベネチアの住宅は日本の住宅局に相当する文化財保存局がその建設・維持管理に関する全権を握っているとのことだった。これは調査中,同行してくれたパドヴァ大学のポスドクで,たばこを吸う姿がセクシーな女性が教えてくれた。
窓ガラスが割れてそれを直すのにも,許可が必要で時間がかかるということで,家の中の回想もおいそれとはやれないらしい。

ひどく物価の高いところなのだが,あまり生活しやすい環境ではなさそうだ。(日本的な価値観からは。)

9/11/2011

AIJ大会とか

現在,海外出張中です。少し時間ができたので。

1.院試
院子が無事終わりました。学生さんもみなうまくいったようで一安心です。これから卒論に向けて気合を入れていこうと思います。前期に,いくつかあたりをつける実験をやりましたが,いずれもちょっとうまくいっていません。やり方がわるいのか,それとも取り組む課題がよくないのかの判別が難しく,なかなか大きな問題でこのあたりは指導者の力量が問われていると思うのですが,判断に苦しんでます。合わせて別の方向性も同時に踏んでいき,どっちに転んでも良いようにするのがベストでしょう。

2.セメント若手の会
今年,初めてセメント若手の会に参加させていただきました。非常に興味深いお話をさせていただき,勉強になりました。セメント化学をやられている皆さんと話ができるのは非常に刺激になります。博士学生のI君も参加しましたが,ともに刺激を受けたようです。合宿形式というのは,やはり良いですね。途中N先生が変えられてしまったのは,大変残念でした。

3.AIJ大会
AIJの大会もセメント若手の会の前にありました。私は今年ははじめて構造のセッションで発表させていただきました。超高強度のところのせん断について,骨材のかみ合いの話で質問をうけて,ちょっと満足のいく回答ができなかったのは反省点です。そもそも骨材のかみ合いを考えていなかったというのもあるのですが。膨張委員会のシンポでは,もう少しこのあたりを説明したいと思います。

その他,窯業系サイディング等のセッションにも参加しました。ALCなどの研究分野と比較するとあまりメーカーの研究的なデータの蓄積が少ない感じを受けました。成分を明らかにできないのかもしれないですが,ある程度化学的な分析を網羅的にやったほうがよさそうだな,と思いました。無機系の研究者の人は関わっていないのでしょうか。

AIJ大会を学生の発表の場にするのは体験として良いと思いますが,いくらなんでも論文になっていないものを学生に発表させるのはいかがなものかと思うものがいくつかありました。既往の研究についても調査していないし,実験は失敗しているし,いくらなんでもひどすぎるかと。学生がかわいそうに思いました。それでも,責任は発表者にあるわけですが。
あのデータを引用して指針類が書かれるようになったら,建築学会の信用も揺らぎかねないと思います。
姉歯以降の問題として,建築業界に自浄能力が問われているわけですから,そのあたりはきちんとしていきたいところです。

4.海外出張
現在,海外出張中です。先日までリヨンにいました。ラファージュの中央研究所で研究発表を丸1日やってきて,かなり刺激的な一日でした。研究ディレクターの方3名もいらっしゃり,かなり値踏みされた観があります。
収縮・線膨張関係の研究については,課題は多いけども面白いアプローチだね,というような感じでした。高分子や界面化学の方などにも聞いていただき,かなり込み入ったディスカッションをさせてもらいました。今後の課題としていくつかが明確になりましたが,本気でやるにはちょっと予算がたりないな・・・,という感じです。
最近やっている(といっても外には発表してなかったのですが・・・)部材内部の性能予測については,かなり評価をしてもらえたようです。私自身は,モデリングで実務に反映させることについては,現場を与えてもらっていなかったので少し遊びのようになってしまっていた観がありましたが,ここ数年,原子力発電所などの特殊施設についての場を与えられ,モデリングについて真剣に考え始めたところだったので,非常にうれしかったです。

その他,いくつか研究室でここ半年くらいで出てきたデータなどについてもディスカッションしました。ヨーロッパで取り組んでいる人がいないテーマなので,非常に興味を持ってもらいました。JCIではそのうちいくつかは発表できたら良いなと考えています。直接黄表紙に投稿してしまうこともあるかもしれませんが。

どの分野にも,ドンぴしゃの厳しい質問をくれる人がいる環境というのは素晴らしいと思いました。こういった武者修行を他でもやった方がよいなと感じました。
最近の国際会議では,じっくりトーンを合わせてディスカッションできるテーマが少なくなっていた(最近だとICCCはもちろん素晴らしかったですが)ので,戦略を考えたいところです。
直接本人のところにいくのが一番よさそうですね。

それと,やはり共通概念・言語として熱力学についてさらに深く勉強する必要があると感じました。40までには,熱力学,界面化学の教科書をもっと読み込むことを心に決めました。さらっとよむのではなく,血肉になるようにノートを取りながら,という時間をなんとしても取ろうと思います。

5.現在
で,現在はベニスにいます。昨年ラクイラにいったのですが,今年は上の件があったのでラクイラにはいけずベニスで調査団に合流します。今日はちょうどスポットの空きだったので,あらかじめ予定していましたが,カステロベッキオにいって補修事例を調査してきました。ま,調査といっても,建物の在り方を見てきたということなんですが。
やっぱり,スカルパは良いですねえ。職人って感じがします。日本だと谷口吉生になるんですかねえ。写真は次に掲載します。

8/17/2011

お盆

夏の間は,比較的時間を好きにつかえる。授業がないからだ。今やるべきことは,過去のデータの再整理,プログラムの再チェック,自分の知識が十分で無い部分の教科書の再読,海外論文投稿のための過去の文献サーベイ,といったところ。

文献については,S.T.さんの文献を幸いにも譲っていただいたので,すこしづつ,移動の時間を使って読んでいる。水分の分野は,本当に他分野と広くつながっており,重要な論文が各分野に散らばっている。これを丁寧に読み取っていく作業は,結局のところ,いかに時間を費やしたかにかかっている。しかも,いくらよんでも,その隅々の重要性をこぼれず理解していく,というのが難しい。

セメント・コンクリートの分野であっても,読み直すと,ああ,この人は実験でここをすごくくろうして,それでここにこういうことを書いているんだな,というのがわかったりするが,これは,もう,本当にしょうがない。
久しぶりに読んでいると,こんなことがこんな片隅に書いてあった,というのは,結局自分に知見が蓄えられてないと発見できない。文献の読み込みは,本当に難しく,一度読みばよいということではない。

最近の事例。水蒸気吸着や長さ変化等温線の研究で有名なRoperがPCAで骨材の収縮研究をしていたのは,最近の骨材の研究をやっていた人としては常識だろう。彼の論文を読んでいくと,骨材の収縮研究は,南アフリカで骨材収縮に起因する過大な変形や破壊があったからだと書いている。垂井橋の様な事例は日本の特殊事例ではなくて,アメリカもまたその道をとおってきているのだが,それを我々が受け継ぎわすれただけのようだ・・・。
やれやれ。こういうの,最初読んだときなんて興味もなくてスルーだった。垂井の話の時に,この話を持ち出せたら格好よかっただろうに。


お盆は,子供とふれあう時間が少しだけ多くとれる。8月上旬には,2歳半の長男と名古屋市科学館に行った。今,恐竜展をやっているのだ。中国から化石類をもちこんでいるが,25mくらいの首長竜の模型(骨模型だと思う。)があって,なかなか壮観だ。子供は,怪獣がいるといって怖がっていたが,ホネホネロック(古い!)がいるよ,といったら入っていった。すごいねぇ,すごいねぇを連発してた。家に帰ったら,首が長くて変な怪獣がいるんだよ,としきりに妻に力説していた。なんでたおれないんだろうねえ,という考察はすばらしいと思った。たしかに,あの首の長さで倒れないのは不思議だ。

その他に,科学館にはいろいろ自然科学現象を利用した,手に触れられるギミックがたくさん展示してある。これも非常に楽しんだ。消防車のシミュレーションもあって,息子は運転を試みた。最後の最後で,火事場を前に右折してしまって,ゲームオーバー。なんだか呆然としていたが,悔しい気持ちはあったみたいだ。また,挑戦しよう。


Facebook上で高校の友人連の動きがよくわかる。その中の一人が,ゴルフ好きがゴルフと釣り好きに変わっていて,毎食,食事の写真をアップしている。どれもうまそうだ。どうも,自分で捌いて料理しているらしい。昔,友澤・野口研で戸田寮にいって海釣りしたことが懐かしく思い出された。あの戸田寮は,どうも,年を重ねるとますますすばらしい思い出に変わってくる。私もああいう経験を学生としなくちゃいけないな。
話がずれた。で,刺激をうけて,久しぶりに烏賊の塩辛をつくってみた。子供は捌くのを横でみていた。肝を塩につけるのだが,塩の量が多すぎて少し塩辛くなりすぎた。サワークリームとあえると結構いける。次,作るときは減塩レシピで頑張ってみよう。

8/05/2011

耐久性力学ワークショップ

8月1日には,耐久性力学ワークショップが行われた。収縮が構造性能(およびその他の性能)にどういった影響を及ぼすかということについてを主眼において話題提供を募った。

建築側では,剛性低下とか副次的に現れる強制変位の問題などが指摘された。付着の問題も表面的には出てくるんだが,実際にはせん断補強筋も入ってくるのでどうなるかはわからない。
しかし,超高強度コンクリートのかぶりの剥落には,かなり自己収縮が影響していると考えられる。根拠は,鉄筋周囲のひび割れと,自己収縮+荷重+クリープ変形によって生じる過剰な鉄筋のひずみである。異形鉄筋だからこそ出てくる問題なのかも。

建築の柱や壁などでは,収縮があったとしても耐力はほとんど変化しない。土木の鉄筋比の条件だと,耐力(あるいはせん断ひび割れ発生耐力)は小さくなるようだ。しかし部材としては,Vc+Vsで耐力全体を議論した方がよいようにも思うので気にはなっている。が,土木の鉄筋比~建築の鉄筋比の間に収縮が影響を及ぼす範囲が存在するようなので,そのあたりをちゃんとやるのは今後の課題だろう。
はりでせん断補強筋込みで,補強筋量をパラメータにした実験を行うべきだな。

あるいは中立軸位置でせん断ひび割れの方向が変化するのだから,圧縮鉄筋比と引張鉄筋比のバランスをパラメータにした実験も土木の場合大事だろうな。建築の場合は対称なので,逆に言うと影響が出にくく主応力の問題だけに帰着される,ということだろう。スケールエフェクトは,土木ほど,利用されている部材に無いし。

8/04/2011

SSH

昨日は,スーパーサイエンスハイスクールの学生さんが,名大にきて建築とか防災について学んでいきました。
私は,構造設計と材料性能,という形で力の流れと材料性能の話をしました。極簡単に。
午後は,水セメント比の異なるモルタルの流動性と強度試験をやって,コンクリートは材料を設計しながらつかうものだ,ということを感覚的に勉強してもらいました。
本当は,レポートを書いてもらいたかったんだけど,時間オーバーでした。読み間違い・・・。

最後に180MPa級の超高強度コンクリートの圧縮試験で爆裂する様子をみてもらいました。学生の一人は携帯で動画撮影していて,なかなか良い映像がとれていた。

結構,みな,いろいろ駆使してるな,と感心した。

8/03/2011

中3理科の教科書

理学・地質学系の人と同位体分析を用いた中性化プロセスの研究をはじめて3年たつ。その間,いろんなところで発表させていただいたが,教科書を執筆する人と,名大・理学側の人のやりとりのおかげで,コンクリートの中性化現象が酸アルカリの項目のトピックで採用されることになった(らしい。)

少しでも興味持ってくれるとよいなあ。
建築とかインフラとかの耐久性,維持管理くらいまで気にしてくれる子が増えると大いにうれしい。

7/26/2011

FBとか

どういう理由だかは,忘れてしまったがFacebookなるものを使い始めたところ,ブログに書こうという意志はあまりなくなってしまった。

意志,というかまとまったコンテンツが無い,ということなのかもしれない。
友人が大学で情報系の教員をしているが,彼のウェブページは,かなりの頻度でアップされている上に,有益な情報が多い。
私は果たして有益な情報を埋めていないのではないか,と自問自答する毎日だ。

忙しい忙しい,というのは,もっと忙しい人がいるので言うのをやめた。時間マネジメントが出来ていないだけなので。
ただ,残念ながらお誘いいただいた会合にでれないとか,日程が合わないことが多くなってはきているので,そのあたりはご容赦いただきたい。JCIのすべての日程で参加したかったが,結局,司会の中日だけの日帰り参加だった。質問したい論文が何個もあったけれども,結局,参加できずだった。
懇親会でも,会いましょうといっていただける人が数人いらっしゃったが,残念ながら出席できず,でした。どうもすみません。

FacebookというのはMixiの親戚みたいなものだが,書き込みが楽になっているのでスマートフォンを利用している人とは相性がいいらしい。情報の即時性は非常に高く,時として有益な情報共有の場になるのを実感した。
書き込みに応答があるのも,それなりに好まれる理由だろう。
よくよく考えると,ブログといっしょで,異なるジャンルのコネクションの人に対して情報発信するというのは,結構頭が痛い。結局日常のことになってしまうことなったりするので,業界の人と情報共有するというのから遠ざかる傾向になる。
その点,Google+はこういった情報発信に方向性を持たせることができるそうなので,もし,利用可能になったら研究室全体でGoogle+に移行することになりそうだ。閉じた社会での即時情報発信は,非常に有益と思う。学生には刺激が多くてよいんじゃないか。

4月から,日経新聞を研究室で取り始めた。学生はどれくらいがケアしているかはわからないが,日々,建築業界のニュースが掲載されているので,それらを一通りみていると,1,2ヶ月でトレンドがわかるようになる。そのトレンドに副次して,政治,経済も急所がわかってくるので,それを体験してもらおうと思ったのだが,まずは意識改革が必要そうだ。
2週間に一度くらい,頭の整理を含めて,世相をコンパクトに整理したメールニュースを研究室に流す。どれだけ適切かはわからないが,これくらいは理解してほしいというポイントを紹介している。親切すぎるな,とも思う。

8月第一週はスーパーサイエンスハイスクールの学生が名大に来る。高校生を教えるなんていうのは,大学の時の塾講師とか家庭教師以来だけども,建築とか材料のおもしろさをどれだけ伝えられるかにチャレンジしたい。研究ネタで笑わせられたら,自分の中で合格にしたいと考えている。

7/09/2011

ICCC雑感

・次回ICCCは北京となった。4回目の挑戦で,やっと獲得した。共産党の幹部が来て挨拶をした。世界の半分を生産しているのだから,という声もあったが,ICCCを中国でやることの不安は,誰しもにもある。たとえば,みんな学生が発表したら?とか。ISCCと一緒になってしまったら?とか。そんなことだ。

・グラッサー博士は80を超えても,まだ,中心で牛耳っている。ICCCの常設委員会の設立が打診された。別に悪いとは思わないけれども,これも次回ICCC対策としての布石かもしれないし,今回のスペインの管理が非常にまずかったことも要因かもしれない。今回,発表がスペイン語,というのが平気でなされていた。私はCONSECのメキシコ大会でおなじようなことに遭遇したので比較的免疫があったが,ICCCでそれは,失礼だという意見が多数を占めていた。皆,中国語で発表したらどうなるんだろう,とは皆思ったろう。

・アバディーン大学関係者が業界を牛耳りつつあり,それがCCRの編集方針などにも反映されつつある。敵対するデータが掲載されにくいことがあったという意見も聞いたり。(とは言っても,片方の意見ばかりに与するのは良くないので,あくまでも意見だ。)CCRは完全にセメント化学・サイエンスよりになっており,コンクリートの方は切り捨てる可能性もありそうだ。(アルカリ骨材反応があるので,そうでもないかな?)

・熱力学平衡計算に関するおおよそのデータが網羅されたこともあり,材料開発への道筋がおおむねとれたといえる。今回の発表は,それが色濃く出された。おそらく今回,一番インパクトがあったのは,デンマークのD. Herfort博士らの出した,セメントに石灰石と焼成粘土を組み合わせた場合の強度比較データであろう。アルミネート系の水和でカーボネートができるが,カーボネートはかなり空隙を閉鎖する効率が高い。これを焼成したメタカオリンを用いて強度設計するという論文が出された。実は,これと同じ事を太平洋セメントの平尾博士,山田博士らの出していて,高炉セメント+石灰石とかエコセメント+石灰石などアルミが多い系でのカーボネート系の強度と相組成の関係を出している。ACTに星野氏が筆頭でリートベルト解析の論文を書いているが,これにはヘミカーボネート,モノカーボネートがちゃんと含まれており,布石が打たれている。ところが,業界的にはこの業績は,D.Herfort博士のものになりそうだ。これをバックアップするのが熱力学平衡計算であり,これを用いたような後追い論文がいくつか出されていた。

・今後,熱力学平衡計算は,材料をやる人間としては避けてはならないツールだろう。なにしろデータベースもそろっているので,系の組成を知る上でも簡単きわまりない。(といっても,検証が十分とは思えないが。)建築材料でも同様と思われる。

・一方,太平洋セメントの細川氏は熱力学平衡計算に物質移動計算を連成し,すでに時間・空間的な問題についても検討を行っている。この点は,大きくヨーロッパに先んじている点であり,日本としては誇らしい点だと思う。

・今後,研究としては,速度論の問題を取り扱う必要があるだろう。前回のモントリオール大会では,山田博士らと共著で,エーライト・ビーライトの反応速度が高い相互依存性があることを実験的に示し,水和反応モデルに組み込んだ事例を示したが,今年のICCCでは,エーライトとビーライトとの反応速度相互依存性は,当たり前の状態になっていた。あのとき,ちゃんと動いてジャーナルにしておかなかったのが悔やまれる。今後,液相を含めたアルミネートの依存性なども評価されると考えられる。一方で,山田博士の招待論文発表でも示されたように,同じ化学組成でも粉砕温度によって流動性が大きく異なる,すなわち,アルミネートの反応速度などが異なっている,という事例にも見られるように,速度論には大きな壁がある。
ちなみに,私の研究室では,1990年代の水和データ,たとえば,断熱温度上昇曲線のデータなどを参考に,2005年前後のセメントの水和反応から追随できるかを検討した結果,反応速度はまったく異なっているということが明らかになっている。原料に多様な副産物を利用された結果,微量成分が反応速度にも大きく影響している状況証拠と我々は考えている。しかし,なぜJCIマスコン指針2008で問題が顕在化しなかったかは,謎が残るところである。技術資料データも相当に古いのだろうか。

・今回の発表では,ジオポリマーも非常に大きな領域になっているが,いずれも横並びで今後,どのように展開されるのかが楽しみな領域である。東工大のS先生にも教えてもらったが,摩擦,水流などに弱いということらしいので,用途はかなり限定されるのではないかと考えられる。

・全体的に言えることはヨーロッパの主要チーム以外のデータというのは,後追いが多いのと,実験に信頼性が伴っているか疑問符がつく点がある。国の事情で必要な研究なのかもしれないが,今後も増えるこういったデータを学問上,どのように扱っていくかということは重要だ。セメントのキャラクタライゼーションがさらに高度化され,すくなくともセメントの特性だけが厳密に抽出されているのであれば,それは後から,大きな財産になるような気がするが,物性や反応に必要な特性がなにか,というのも含めて途上であるので,実際のところ難しい。大がかりな予算を組んで実験する場合には,一袋くらい,将来のためにどこかで冷凍すると良いかもしれない。

・今後,日本にも標準セメントなど基準となるセメントが必要だ。JISも変わり続けていくなかで,研究のベースとすべきセメントを軸に物事を考えていかないと,後戻りができなくなる。将来にわたってコンクリート産業を支えるという意味で,セメント協会には,是非,その点を期待したい。

6/20/2011

石灰石


石灰石の膨張挙動,あと少しでうまくいきそうなんだけど,
全部は綺麗に評価できないんだよなあ。

多孔材料全般に目を通すと,いろんなアイディアがうかんできますねえ。

安!


偉い安いなあ・・・。
こんなもんかなあ・・・・。

6/16/2011

石膏ボードを土地に撒いてる

地盤改良でやっているところがあったり、そういう論文を投稿している人もいる。
自分で手を動かしていないので、なんともいえないですが、硫酸劣化の事例も日本でも報告されるようになってきたわけだし、もう少し、調査して善し悪し判断した方がよいのではないかな。

感動した:Excelで別ウィンドウ

なんで、できないんだ~~~~といつも苦悶しておりましたが、
http://bizmakoto.jp/bizid/articles/1106/09/news029.html
こういうのがあるそうです。

FaceBookで教えてもらった。

いやあ、すばらしい。

6/09/2011

自己治癒コンクリートシンポ

今日は,JCIの委員会 自己治癒コンクリートに関するシンポジウムが生産研で行われた。家族が風邪で倒れていて,少し遅刻してしまった。
今日の論文発表では,いくつも面白い研究が発表されていた。人工軽量骨材に薬を入れる物の評価は,非常に丁寧で良いデータが出ていたと思う。薬自体には,いろいろ課題はあるとはおもうが。

五十嵐先生のチームの発表で,割裂引張強度の50%までの応力を再度,載荷すると割裂強度が低下するというデータは,ちょっと衝撃だった。そういうこともあるかな,とは思うのだけど,国枝先生のチームの破壊エネルギー試験の際に現れる,曲げ引張強度では,あまりそういうことは見られない。五十嵐先生に聞くと直接引張強度でもそういった事例があって,テクニオンでやっていた,とおっしゃっていた。

非常に興味深い現象だ。

剛性が低下するのはわかるんだが,強度も落ちてしまうのだろうか?

6/05/2011

実験室など

実験室は,引越後,材料分が少し小さくなったので,かなりのものを廃棄処分することになった。すでに昔の建屋から出るときにも周囲の方々に連絡して,利用可能なものは引き取っていただいたのだが,戻ってきて,さらに,というのは困惑した。ミキサーも,案外面積を食うので,3台あったものから,1台は屋外保管になってしまった。
その他,流動性関係の実験機器などもいくつか,廃棄処分になった。もったいない・・・。

その他,移動によって動かなくなったものもあったりで,かなりメンテナンスが必要だ。今月末までには,なんとか,コンクリート練りができるような状況にもっていきたいところだ。


一方,この5年ほど,データをとりまくってきたので,そろそろ解析関係を本腰を入れようと考えている。設計にまで反映させないと,その重要性を理解してもらえないからだ。
4年生には,90年代以降の,比較的有名な論文を渡して,論文に記載されているモデルを実際にプログラム化して評価するような課題を与えている。論文を読んでコードまで落とすと,何が記載されていて,何が記載されていないか,その論文は本当に正しいかが,よくわかるからである。

中性化関係では,某有名論文が明らかに解が出てこない手法を示していて,私は広大の時にそれを知ったのだけれども,4年生はちゃんとそれを指摘しできた。その他,力学関係については,プレストレスに関するクリープ解析上の問題も,どうにか気づいたようだ。なんとなく,上の学生が最新のデータを,下の学生が解析の厚みを増してくれている現状の研究室は,少しづつではあるが,レベルが上がっているような気がしてうれしい限りである。

全員が全力疾走できる環境づくりを今年もがんばっていきたいと,あらためて思った。

5/31/2011

5月30日

昨日は,午前中に実験室の掃除をした。研磨機の治具と車輪を取り替えてほしいという希望があったので,見積もりをとった。その他,ダイヤモンドソーの車輪,ホース類も交換。モルタルミキサーがかなり汚れていて,恒温室にいれられない,という判断になった。掃除をするかなあ。

昼は,栄で愛知県の建築士会,愛知県,名古屋市,その他設計者から,現場のニーズによる研究テーマ懇談会が行われ(大学としては,名古屋工大,豊橋技科大も出席),耐震補強や増築に関わる意見交換が行われた。コードライター,設計者,施主では設計の考え方が全然違うし,既存不適格構造物を資産としてどう考えるのか,という問題はかなり切実ながら意見調整が行われていないので,問題だと認識。

夜は,セラミックボードの開発関係者で打ち上げ。来期の研究テーマも少し打診。新素材開発をやろうか,という話が出る。粘土・焼結プロセスは非常に面白い。

5/24/2011

引越

研究室の引越を行った。
建築の建物は,理学部のノーベル賞チームとの混在の7F建て建物に生まれ変わった。1Fには工学部の図書も入っており,利便性は高い。個人的には,こんな良い立地に実験室を入れることは間違いだと思うが,それでも実験室は入った。
学生さんらには,無理をお願いしていろいろ手伝ってもらった。

実験棟は,まだまだ,整理が残っているが,居室はやっと段ボールを解放した。部屋は小さくなり,自由度がなくなったけど,学生のスペースが少し増えたように思う。

5/19/2011

セメント技術大会

現在,東京にいる。
M2,D1,D3と私自身が発表の予定。

セメント技術大会は,やはり,セメント分野研究については圧倒的に刺激になるし,面白い。
佐伯先生のチームの論文は,似たようなことをやっている部分もあるので,非常に刺激になる。良い意味で負けてらんないな,とも思う。
その他にも,そんな解析技術があるんだ,とか,そういった刺激がときどきあって,楽しい。

一方,当方の学生の発表についてであるが,研究を純分に吟味していない者がいた。
いかに素晴らしい発表をするかというハードルを自分に課せず,真摯に発表練習を重ねられない学生には,残念ながら発表を許可させることはできない。
今年は残念ながら,そういった事情で発表を辞退させた学生がいた。彼の今後の発憤を期待したい。

若手派遣プログラム

D1の学生のNRCへの留学が決まった。文部科学省の若手派遣プログラムに採用された。

うちの研究室では,博士期間中,博士論文のクオリティ向上とは若干コンフリクトを生じさせる場合もあるかとは思うが,私もそういった経験をもっているので,なるべく海外留学を推奨している。
博士過程という自由な期間になるべく多くの経験をしてほしいし,また,同世代の研究者の友人ができることなどは,非常にはげみ・刺激になるし,今後は必須のことだろうとも思うからだ。

また,修士やB4の学生にも刺激を与えてくれるとも思う。

5/17/2011

プレスリリース

昨日,セラミックボードの開発で,プレスリリースを行いました。
本日の掲載誌は4誌ということでした。
三州の押出成型機で有名な中小企業,地元の信用金庫,その寄附講座との研究でかなり,大がかりのものでした。
1年半くらいの急ピッチでしたが,そこそこ楽しかったです。
いくつかの住宅メーカーから打診をもらっています。

5/10/2011

お!

なおった。
ずっと,編集部分がエラーになっていて,更新できなかった。

4/26/2011

~4月26日

4月19日は学生実験の初動。測定することの原理について話す。あとは安全教育。
20日は減災センターでの打ち合わせ。広報・報道関係,夜はゼミ新入生歓迎会。なかなかアクティブな学生が多くてうれしい限り。
21日 外壁材の最終報告と報道への最終調整。最後に問題がでて難航。社会の縮図のような会議だった。
22日 実験室の引越など。重量棚を山ほど購入した。いやあ,全然ものがおさまりきらん。どうしたものか。
23-24日は,家の整理と過去のデータ整理。学生が出してくれたデータを検証したり,シミュレーションと比較したりして,再評価。論文に出来そうな点もあったので,少し論文形式のメモを残す。
25日 この日も重量棚が届く。研究室総出で整理。大分分けたけど,この後,さらに第2弾がくるんだよなあ。昼,東大の時の友人と会う。意見交換。夜に土木の方達と懇親会。29日から2日まで,震災調査に同行させてもらえることになった。

4/19/2011

新年度始動

新年度が始まりました。昨年は残念なことでしたが,今年は4年生が3人きて,研究室も活気づいてきました。非常にやるきがあるのは,すばらしい。

私も,普段よりも時間があったのもありますが,まずは,論文などを読み込めるための建築材料,コンクリート工学上の話題提供やレポート課題などを順次出して,学生の基礎力アップを図っています。
今年は,少し解析的検討も,ということで,まずはFEMで温度解析ができるようにと,Fortran90とFEMの理論について,毎週,適度な課題を与えています。有限要素式を自分で作れて,Fortranで内挿関数と積分の原理がわかれば,FEMは簡単に作れます。

少し自慢になりますが,既に,3人とも,FEMによってコンクリートの温度履歴をPGPLOTで出力できるまでになりました。
次の課題は水分移動か中性化のモデル化にしようかな,と思っています。3週間でこれっていうのは,結構良いペースではないかと。

その次は,応力解析ですねえ。
院試の勉強がはじめる6月くらいまでに,コンクリートの現象で面白い点をパラメトリックスタディできれば,なかなかの進捗ではないか,と思います。
不静定構造物の施工手順を考えた応力解析とか,膨張応力の解析,PC部材の解析なんかもおもしろそうです。
もう1ヶ月で,ひび割れは難しいと思うけど,クリープ解析くらいまでは,もっていきたいところです。

実験やりたいのですが,研究室の引越があって,調整が大変な感じです。

4/14/2011

4月4日~4月14日

基本的に,震災関係の話で埋まってしまって,あまりアクティブには動けていない。結構,深層心理に訴えかけてくる物がある。一つは子供の問題で,二重に情報収集をしており,それで気分がめいっていた分もあると分析する。
あとは,家族に会ってない,というのも大きいかもしれない。

授業も開始されたので,気合いを入れないといけないな。
3月末は,さまざまなことが延期されたのだが,そのつけが4月にどばっと来ているかな。淡々と処理していくしかできないのだが。

黄表紙の5月号,6月号には,セメント硬化体の比表面積の論文,吸着等温モデルの論文がそれぞれ掲載される。吸着等温モデルは,本当はC-S-Hのはじめから熱力学平衡計算からもってくる,ということをやろうとしたが,多相吸着になった分からの履歴依存性を考慮できなかったので,結局,工学モデルにした。工学モデルは工学モデルとして,t-Curveの形を示したので,空隙構造分析など,実は幅広い応用が可能な論文になっていると思う。それを別角度から検証することが今後必要なんだが,よく考えると,水についてのみ検証方法が水しかない,という点が問題。
あの吸着等温線データは是非確認してください。すごおく,きれいにとれているから。

結局,セメント硬化体の水の履歴については,別の角度からの検証が必要になる。NMRもSAXSも手法としてはあるけれども,何か,といいきるには少しデータがたりない。

一方で,最近,水分移動の工学モデル(いろんな人が使いやすいように考えた),温度履歴時のセメント硬化体の体積変化,窯業系サイディングの体積変化,などについて論文を執筆・投稿した。いずれも,構想を練っていたものなのだが,水分移動は,少しものたりない。全部化学ポテンシャルで整理できるかとおもったのだが,空隙の温度依存性が結構大きくて,整理できなかった。まあ,逆いうとこの部分が,別の論文になるとは思うのだが。

骨材とのインタラクションに関するFS実験は,うまくいっているのといってないものがある。コンクリートの透水性,あれはちょっと難しいですね。時間軸,空間軸,両方において制限がある問題で,これを評価する枠組みは,本腰いれて研究しないといけないかな,と思われる。

最近は,研究分野を拡張するために,錆び,電気化学,腐食,風力発電,送電・系統の本などを読みあさっている。岩盤の鉱物についても読んでいるけれど,電車内の往復では入る程度の情報ではなかった。ちょっと襟を正してよみなおさないと。
その他,粘土鉱物の研究は,水の挙動として相当に参考になるんだが,ハンドブックを端から読んでいる。諸学者には,こういうハンドブックなどから,有名論文をピックアップして読んでいくのが手っ取り早い。

その他,英語論文のための原稿も少しづつ準備している。年1,2本は英語論文を出せるようなペースづくりをつくっていきたい,というのが今年度のまずは,目標。
次は,新しい研究分野の開拓,ですね。

4/04/2011

追記

子供の問題,懸念は払拭されました。
すみません。ご心配かけまして。

3月20日~4月3日

そろそろ新学期が始まるので,授業準備などをはじめないと・・・。
3月20ー21日 富士宮市に震災調査に。報告は4月6日の建築学会での報告会(リンク先,PDF)で。

3月24日 新卒論生3名を含むゼミの1回目。上の学年から,どういうことをやっているか,についての紹介と,丸山研運営上の注意点,心構えなど。今年は,院試が8月最終週で,その前にAIJ大会があり,やや変則的。スケジューリングなどの注意点も。
午後は,新しくできた減災センターの打ち合わせ。

3月25日 卒業式。勅使川原研はゼミやってた。うちも,継続学生については,適宜実験・研究予定に関する打ち合わせ。

3月26日 減災センターのシンポ。3.11以降なので,やるべきかという議論もあったが,結局,東海地区の防災という意味で,やる意義あり,ということから大幅なスケジュール,登壇者の変更となったが,開催された。かなり,盛会であったと思います。NHK,OBの方が報道の限界について,わかりやすく解説してもらったのが印象的でした。

3月28日 外装材の開発も大詰め。今後の報道発表などについての打ち合わせ。広告代理店も含め,パンフレットの状況確認など。

3月31日 JCI耐久性力学の幹事会。状況確認など。その後,JCIの膨張委員会WG2。目次の確認,今後の方向性の最終確認。

この間,子供にあうが,どうも体調が芳しくない。1ヶ月検診で状況が明らかになると思うが,ある程度覚悟がいるかなあ。

4月1日 COEの会議。予算の関係もあって,若手が雑用で疲弊しきっている。コーディネータ役に徹する人もいないので,このままだとまずい,ということから仕切り直しの会議。でもなあ,議長が・・・・・・。工学系というのは,良くも悪くも前に進めるので,私は好きです。あと,結論の無い会議は嫌いです。出席の意味が無い。理学系の人は,こういうの気にならないのか,と思う。

4月2日 代謝を調べてみたら,びっくりするくらい落ちていたので,筋トレを始めることに。区のスポーツセンターで,トレーナーの人に相談して基礎的な奴から。昔つかっていた体のパーツやランニングに必要な筋力は結構残っているんだけど,水泳で使っていた筋力はほとんど無くなっていた。ポンドとキロの違いがあって,昔のウェイトとの関係がしっくりこないんだけど,いや,本当に悲しいくらい無くなってた。こういうの確認することも大事ですね。腰回りの筋肉が落ちていたので,補強しようと思う。

4月3日 筋肉痛が,予定していないところに来ていて,まさか,2日後!?と思ったが,4日時点でも来てないので負荷が足りなかったかも。もう一度,負荷を調整しないといけないな。
運動をしない,ということは鬱病になる準備をしているのと一緒ということを医者の友人がいってたけれども,確かに,総じて動きが軽くなるなあ。ジョギングとはまた,別の効用がありそう。

4/02/2011

震災

文書中,不適切な表現があるかもしれませんが,私の考えたこと,ということで記載しました。閲覧した皆さんにとって心地よい文章にはなっていないかと思いますが,一個人的意見として扱ってもらえれば幸いです。

震災から3週間くらい過ぎた。地震による被害,津波による被害,原子力発電所の被災による二次被害など,おわったもの,継続したものがある。原子力発電所の状態については,さまざまな情報がいまだ整理されていない状態にあるし,地震・津波の被害状況についての詳細調査は,今後,各学会等が現地入りすることで明らかになっていくのではないか,と思う。

そんな中で私が考えたこと。

1)復興について
震災後の復興は,生活をまったく元に戻すことではない,ということはなんとなく思惑を共有している部分があるように思う。少し言いにくいけど,たとえば自分の身の回りで考えれば,大学の数だって,人口分布にもはやそわなくなっているわけで,全部を元に戻すということは,今後の時代を考えればミスマッチだろう。合併などの話が提案されてもおかしくない。損切りを伴って復興を行うのであれば,調整に要する時間も要することから,一次案については,早い段階で示す必要があるが,政府・関係機関にそれを準備している/していた,という話は聞かない。
しかし,東北が生まれ変わるためには,過去のしがらみ・利権にとらわれない立場で,将来を見通したグランドプランが必要だと思う。

日本の政治は,あるいは日本は,捨てることによって生きるということを,戦後の成長期の期間やってこなかった。バブル後の対策でも,心理的な要素が強く,損切りをすることができなくて,債権処理がごてごてにまわり,見えない形で日本の税金や国債の形で割り振られた。

温情主義と復興支援は切り離す必要があると思うけれども,そういった意志決定をしてきたことのない日本でそれをすすめることが果たしてできるのか,というところで若手の生きる意志のようなものが問われているのかな,と思う。

ビジョン,グランドプランが必要,ということは私もしょっちゅういっているが,これだけ大きなものを一人で描くというのは,情報整理の観点からも難しいと思う。しかし,この局面で日本が苦手としているこのことを改めて問われているのであるから,情報集約方法,意志決定も含めてやってみる必要がある。たとえば,各大学などがコンサルタント方式で技術提案のように,今後の復興計画を提案してもよい。
今の日本の大学で,それだけの即効的なプログラム作成能力があるかは,期待薄ではあるけれども,一つの官僚集団だけでなく,いくつかの独立の集団から提案させて,良い物を評価すればよいかな,と思う。

2)建築物について
勉強として,富士宮の震災調査に同席させてもらったが,これはもう,建築耐震技術の成果であるとしか言いようがない状況がそこにあった。震度6強であって,あの程度の被害状況であるのであれば,もはや,地震の問題は,建物の設計・施工技術の問題にはならなくなりつつある。一部,ちょっとしたトラブルが見られるのは,やはり新しい造成地とか,地盤が緩い部分であって,その部分は,集中的に被害が見られる。これは,まわりの地盤から考えれば,地盤・土地の観点から,建物を建てるべきに注意すべきところとそうでないところがある,という判断になるのではないか,と思う。
たてられないところ,というのは無いけれども,その場所に適した構法なり,やり方が出てくるわけだ。

液状化とか,地震・洪水などについてはハザードマップが閲覧できる場合も多いし,過去の土地利用図をみて,過去に自分の購入しようとしている土地がどんな土地であったかもわかるわけで,家を建てるときにその程度の調査はすべきだ,ということなんだと思う。
原子力についての知識について,国民中が知る事になったわけだけれども,今後,浦安の事情なども含めて,マスメディアで何回か紹介するようなポジションを建築学会などが示せればよいのではないか,と思う。

最近,木造利用普及の観点から,伊勢湾台風以後の,建築学会の木造禁止(防火、耐風水害が想定される場所での木造住宅の建設を慎むべきという提案 以下参照http://www.aij.or.jp/jpn/databox/2010/20100726-1.htm)が,別の意図から避難を受けたりしていたが,今回の津波映像などでもRC構造物が圧倒的に安全であることは示されたように思う。本当にコストの問題は残るけれども,私もRCの住宅に住みたい。

今後は,既存不適格をどのように,やはり構造上,行政上,防災上考えていくか,というのが問題として残る。これは,防災の人がいってきた通りのことだ。東海地方は,東北地方のように震災をあまり受けていないので,既存不適格構造物が相対的に多い。この点,議論すべきところだろう。

3)電力について
50Hzと60Hzについては,変換器を増設するか,統一するかしないと危機管理の問題として正しくない。今回,あらためて問題が浮き彫りになったわけで。
原子力発電所は,地震国にはつくらせないという国際世論があるということが報道されていたが,おそらく,科学立国を標榜する国は,そうならないだろう。
逆に言うと,それで原子力政策が止まる・止められてしまう国というのは,科学の力が信用されていない,ということでしょう。研究者,あるいは研究を伝達する人に問題があるということなる。
日本がどういう方向性を進んでいくのかは,国民がどの程度の電力をつかって,どういった生活を享受したいか,ということで判断すべきだろう。
原子力発電所が無くても,生活に問題は無い,というような見出しで文章を書かれている大学教員もいるが,今から,30年前の生活に戻るのが国民の意思なのであれば,それはしょうがないかな,と思う。
私としては,エネルギーを消費してでも,新しいものを開発・研究していく活力ある生活の方が好きなんだが。

4)感情論と復興のこわさ
復興にしても,原子力政策にしても,浪花節の感情論で決定する(今の政治には多分にそういう要素が多い。)のは,本当に恐ろしいのだ,ということを国民にも理解してもらう必要がある。
科学政策への投資削減,防災への投資削減を積極的に現政権が推し進めた点が直接的に今回の震災を拡大させたというわけではないが,長期的にこうしたものごとにどうやって対応するかということを考えていなかったということは,一部露呈したのだと考えられる。
政治の側にいる人は感情論でなくて,復興ビジョンと併せて考えてほしい点が多々ある。たとえば,今回の震災で,日本の工場に部品を発注する・依存することがリスクだと認識されたので,多くの切り替えが発生するだろう。この影響による失業量も長期的に相当量発生するだろうし,中小工場は,離れた点で2工場経営するとか,工場に地震対策がどの程度されているか,ということが発注の契約書に謳われるようになるだろう。
これは,それだけでも相当のリスク負担で,今後,日本が考えていくべきことの一つ。
長期的に中小工場の仕事がアジアに振り分けられる可能性があるわけだが,ニッチな技術をどれだけ保つかというだけでなく,それを営業する上でも地震対策によるコスト上昇が日本企業に求められることになる。この冗長性のためのコスト負担は,地震を前提とした日本国の上で考える場合,どういう整理をするか,当然損切りしないと整理しきれないので,そこについては,是非とも明示的に議論をする必要があるかと。

5)報道
今回,日本の報道は,不安をあおっておもしろがっていただけのようだった。神妙な顔をしても,悲惨な映像を出すことが使命とでも思っているかのように繰り返し報道するだけだった。
放射能の拡散問題については,定量的データ,判断に必要なデータや参照すべきものの情報を出した民放は無かった。
報道はエンターテイメント化して久しいが,まさか,この非常事態において放送局が全力を注いでこの程度のデータも取ってこれないとは思わなかった。
この非常事態で報道が何のためにあるのかを考える人は,報道側に誰もいなかったのではないか。
結局,被災した人のローカルな情報を伝達することもかなわず,放射能の拡散を懸念する人に判断するデータも示さなかった。国は電波を管理しているので,非常事態における報道についても,国が検討する必要があるように思う。

3月の頭に子供が生まれて,妻子はまだ,川崎にいるので放射能の拡散問題などについては,結構情報を収集した。たぶん政府の情報発表は,その段階で憶測を生まないようにした最低限のものが発表されていて,政府としては正しかったんだろうと思う。
ただ,ある程度,データを読み解くことのできる人にとって,(そしてそういう人は政府批判に走りがち),情報は十分ではなかった。
チェルノブイリのレポートも公開されている文献は読んだし,医学的な統計データの整理が難しいこともよくわかったし,風や降雨の影響について理解もできた。
また,どういうわけか,アメリカなり,フランスやオーストリアなどが,懸念材料が出たときにタイムリーにレポートを公開していて,信頼性についてどうすべきかの議論はありつつも,可能性を検討する上では,非常に理解には役にたった。
しかし,日本のこういったレポートというのは,あまりウェブには公開されていなかった。
降雨の関係で,多摩水系にも放射能が集約する可能性があるといって,子供用に水を購入した方が良いということを報道前にアドバイスできたのは良かった。こんな小さなことでも,乳児をもった親については,非常に大事な事のように思う。
でも,翌日,すぐに水に値が千葉の方で変化したことが報道されていたので,この点,国は注意するように配慮していたと思う。むしろ,こういう配慮をしていた点を報道は全面に出した方が良いし,さまざまな可能性を国民自身が考えるように促すとよいのではないか,と思う。
この辺,非常に難しいが,仮説や前提と結果というもののセットで情報を国民に出せるよう,教育や報道についても配慮する必要があるのではないかと思う。

3/15/2011

原発

状況は変わりつつある。

大前研一氏の解説によれば,スリーマイルの上,チェルノブイリの下程度の被害だそうだが,先ほどの4号機の話で,状況がさらに悪化しつつある。
http://www.youtube.com/watch?v=U8VHmiM8-AQ&feature=player_embedded

日本の原子力分野は相当厳しい目にさらされると考えるしか無いようだ。

3/14/2011

地震

被災された方に心よりお見舞い申し上げます。
人の力強さ Youtube

地震関連
建築の評価:
http://www.theatlanticwire.com/global/2011/03/did-engineering-save-lives-japanese-earthquake/35780/
http://www.nytimes.com/2011/03/12/world/asia/12codes.html?_r=1&hp

被害とクラウド,IT技術
グーグルの名簿管理,Piccasa
スカイプ,無償支援
復旧について

日本人
冷静さ,我慢
日経BP
・でも,こういうこともあるにはある
・各国からのエール その1

放射能関係(福島)
はっきりいって,非常に低い濃度に抑えられていて,ほとんど問題ないとおもわれる。
放射線の講習とか,高校くらいで習っておいた方がよいのでは,と思う。
そもそも,被爆と被曝(被ばく)の違いが混乱を招いている。枝野さんは非常に,理性的なコメントをしているが,こういうことも国民に対して,もっとも見られているので,わかりやすくコメントした方がよいのではないか。
参考 その1その2

3/05/2011

生活保護

生活保護について,「そういう競争力のない産業に対する助成金や補助金で国民を養ってきたコストより、失業保険をちまちまと払っちゃって待機労働力にして職業訓練させながらバッファにさせておくコストのほうが断然安上がりという現実」というコメントを見た。実データをみたわけではないのだが,十分あり得る話だと思った次第。

日本をどうやって回すかという観点では,大事な数字だと思う。詳細調べてみるかなあ。

生活保護の受給者200万人超えとかいうニュースに関する雑感

国交省データ

最近,二つほど国交省から面白いデータが出ている。
(というか,国はいつも素晴らしい統計を出しているので,学生はみな,ちゃんと目を通すべきだ!)

「国土の長期展望」中間とりまとめ

既存建築物ストック量の把握のための統計手法の公表について

というわけでリンクを貼っておく。

カンニング

インターネット上でもここかしこでカンニングの問題が議論されている。個人的なコメントであって,大学人としてのコメントではないので,その点はご了承いただきたい。

・カンニングは警察が動くような「事件」なのか。
偽計業務妨害ということで,仕事が増えるのが事件なのであれば,学内での問題は,すべてこれに相当してしまう。私はカンニングの問題が明らかになった時に,いくらなんでもこれで警察は動かないだろうと考えていた。理由は上記のとおり。それ以外にも,大学は自治を尊しする気風があって,基本的に他の権力が介入することを嫌っていると思っていた。東大ではそういう雰囲気だったんだけども。
カンニングの罰則というのは,おそらく入試要項などに書いてあって,その罰則は,入学できない,ってことだと思う。警察に突き出しますよ,なんて書いてないし,その他の法律でもそんなことは書いていないと思う。
その観点から,学生は,入学できないという罰則だけを受ければよいのではないか,と思った次第。

カンニング自体は悪いし,Yahoo知恵袋に投稿というのも,大学を侮辱するような行為だったと思う。でも,マスコミ報道などから,つるし上げをくっている状態を考えると,学生が少しかわいそうな気がする。彼のお母さんまでインタビューをされているらしいし。大学側もこんな風にしないでも,正体を明らかにできるのなら(警察経由じゃないとできないのかもしれないが),不正行為で失格にすればよいだけだったんだと思うんだけども。
これが,別のカンニングだったら,京大はこんなことにしていないと思うし。

卒論でも,普段の期末試験でも,全部これに関連する問題が出てしまうんだけど,それって今後どうなるんだろう。

いろんな立場から意見集約する必要があると思うので,決して文部科学省の現場をしらない立場の人がルールをつくるのだけはやめていただきたいと思う。
大学は大学側で今回の件は,関連しない大学も今後どうするか,今回の件をどう考えるか,というのはディスカッションした方がよい。

以下,関連する文章で,面白い考察が含まれているもの

http://d.hatena.ne.jp/gatonews/20110304/1299168573

http://www.news.janjan.jp/living/0706/0705316449/1.php

http://slashdot.jp/yro/11/03/04/0852258.shtml

今回,警察の介入以外に,NTT Docomo,Yahooが簡単にデータを開示したことも個人情報保護法の趣旨,あるいは電気通信事業法の観点からもディスカッションされている。個人的に,国家に対して個人情報が取得されていること自体は問題ではないかと思うが,最近の冤罪事件などを思い浮かべ,権力ににらまれただけで簡単に人生がおじゃんになってしまう状況(逮捕,抑留,マスコミ報道,企業からの首切り通知のコンボ(刑が確定していないのに))というちょっと冷静でない状況を合わせると怖いところがあるな,と思う次第。

日本は,刑事罰を受けている以上に社会的罰が非常に大きくなっている気がする。だから,懲役が少ないのかもしれないのだけれども。こういうことを考えるうえで,裁判員制度というのはやっぱり,あった方がよいのかもしれないなあ。

3月5日まで 近況

月曜日は,月末で処理しなくてはいけない経理処理が山ほどあったために,大学。

火曜日以降は,東京出張。
3月1日JCIの委員会で初めての会合に出席。いろいろ面白いデータが示されていて,好きなことだけいって帰ってきてしまった。
3月2日76委員会でのパネルディスカッションに出席。思っていることを言って,あまりディスカッションできずに終了。
3月4日大学は休暇を取った。無事双子が生まれました。母子ともに健康です。

2/24/2011

21~25日

今日もそうですが,建築研究所にいます。

21日,22日は,柱の載荷試験のセッティング。勅使川原研の学生さんの多くにも協力をいただく形になっていて,非常にスムースになるかと思われましたが,やはり現場でいろいろトラブルが。

完全な読み違いでした。申し訳なく・・・・。


が,23日は結局うまく載荷できました。170MPa級で温度履歴を与えた,非常に自己収縮の大きい超高強度コンクリート(170MPaオーバー)のせん断試験は,無事終了です。
25日,膨張材と収縮低減剤を入れたケースとの比較で差があれば,考察のしがいがあるし,なければ,まあ,世の中的に丸く収まります。

どうなるか,期待です。

16日~20日

2010年がおわったなあ,と思ったら,気づいたら2月も終わりそうで驚きです。
その間に書いた文章量も相当な量だと思いますが,振り返ると怒涛の2か月でした。
来月上旬には,子供も生まる予定になっていて,家族的にも節目を迎えつつあります。実家の義母にも子供の面倒をお願いしており,ほぼ,家族全員がフルに稼働している状態です。緊張が途切れた時が危ないので,ソフトランディングを目指したいところ。

17日
博士で副査をやっていた論文の公聴会があった。CFTに関する衝撃的なデータが実験で取得されました。どのタイミングで,どこに出すかというのが難しいところです。最近,CFT関係で相談にのってもらった皆様にはご想像の通りのデータになったことを申し上げます。
一方で,ゼネコンの方に話を伺うと,鋼管のみに軸力をかけた形の載荷試験をしても,最終耐力はあまり変化はない,とのことなので,なぜにそうなるのかは疑問です。これは,今後,追跡調査の予定です。

18日
諸会議があったのですが,28日までの締めの予算がたくさんあって最終調整をしなくてはいけなかったので,報告書作成で時間がつぶれてしまった。
また,建築研究所で試験機にセッティングした試験体に取り付ける治具が,スタブのPC鋼棒との干渉で問題になることがあきらかに。その場で,図面を引きなおして,対策方法を2,3つくりだし,すぐに治具の作成し直しを学生さんに依頼。この日は,本当に大学にいることを選択してよかった。
18日にセッティングを提案してくれた,建築研究所の方にも感謝。この土日が,本当に有効に機能した。

19日
東海支部でしてたが,こちらも報告書作成。途中で,森野先生の退職講演があったことを思い出して,着の身着のままで出席。大御所の先生方がたくさんいらっしゃって,普段着で大恥かきました。でも,いかないよりはよかったかなと。先生のお人柄がでている素晴らしい会でした。

20日
ほとんど寝ずに過ごして,昼に大学に移動して,事務処理と秘書への伝言をつくったあとに,大学から建築研究所へ。

2/16/2011

ICCC

ICCCの査読が帰ってきた。かなり高評価だったので,安心した。
ICCCの査読は厳しいですからねえ。

昨日は,建築研究所の方に実験準備と相談事で訪問した。名古屋を朝6時に出ても,10時台ではバスがないのでがっかりでした。
訪問の内容はかなりはかどったので,良かったのですが。

日・月は,ゼミ旅行で日間賀島にいった。
ゼミ旅行だったのに,いろいろトラブルがあって・・・。
学生には良い勉強になったんじゃなかろうか。
幹事っていう経験は大事ですね。もっと,学生にやらせてあげないとと思いました。
こういうことから学ぶことも多いですよね。

2/13/2011

査読

英語論文1件,AIJ1件,JCI4件の査読が終わった。少し雑だったけど,ポイントはついたかなと思っている。

自分の研究でも,修士論文での発表会でも,思うことだが,やはり率直に厳しい意見を言うこと,言われるということは大事だ。なんどもここにも書いているけれども。
言われたことに対してちゃんと考えて,持論の前提条件,理論展開とその範囲,今後の課題,不明瞭な点を明らかにして,次に進もうということが大事だと思う。しかも,それを人に伝えて,わかり合える部分とそうでない部分,というのをクリアにしていくというのは,信頼を獲得する上でも重要ではないかと思う。

なんだか,遠慮されちゃって厳しいことをいわれない,という状態になったら,本当に悲しいことだと思う。

特に学生がそうで,所属研究室の先生に遠慮して,誰もなにもいわないけど,もはや腫れ物にさわるような痛々しい研究になっていて,本当にこんなんで研究教育なんだろうか,っていうようなものもある。得てして,所属する研究コミュニティ事態が小さく,批判能力が中で造られず,なんとなく難しい言葉ときれいなグラフィックでそれっぽい,という状態で閉じているところっていうのは,案外いろいろあるんじゃないだろうか。建築材料もコンクリートについては,外に開かれている。他の部分はどうだろうか?

学生は学生で楽に,波乱なしで卒業したいとおもっているんだろうが,学生の時にそういった,「ちゃんとした」コミュニケーションを学ばないと,本当にあとで孤立しちゃうんじゃないか,といらぬ親心みたいなものが出てしまう。

見込みのある学生については,後で,それとなく呼び出してこういう考え方もあるんだよ,とかいってアドバイスするけど,下手をすると,研究室の先生を批判するような形になってしまうこともあるので,このあたりは難しい。

大学の先生も50を過ぎると柔軟性があるように振る舞っていても,そうではないし,若造には言われたくないっていうのもあるだろうしなあ。(私だって,そうなってしまうような気もする。少なくとも50まではやれたという自信もあるだろうし。)

そもそも,表面は温和でも,めちゃくちゃ虚栄心が強いとか,負けず嫌いというのがあるもんだから,指摘しにくいしな。酒を飲むと,ものすごく,そういったことを恨んでいることがよくわかったし・・・。
プロセス上,教授同士でそういったことをちゃんとやるのがFDかなあ。日本のクローズドなコミュニティを考えると,難しいところがある。

でも,今の社会ってこういうのの積み重ねで閉塞感あるんだろうな。嫌われ役を誰かがやって,動かさないといけない。
やっぱ,やるしかないかな。

(ちなみに,研究者にとって虚栄心とか,負けず嫌いというのは,大事な素質だとは思う。人にほめられたいという要求は誰にでもあるし。欲求が強いとそれだけ,努力もできるわけだし。)

2/12/2011

Chameleon Folder

http://gigazine.net/news/20110211_chameleon_folder/

私の環境だと強烈に作業性が上がります。
ランチャーなんだけど,変なところでも使えるランチャーです。

ううむ。おしいなあ。あとは,普通のエクスプローラーにマウスジェスチャが使えれば,ほぼ完璧だなあ。

2/11/2011

2月10日 修論発表会

午前中は,旭化成建材の松井さんとうち合わせ。わざわざ,きていただき,博士論文の内容についてお話を伺う。空隙の大きさとKelvin式の適用範囲などについて,今後,検討すべき内容などを雑談の形で意見交換。
吸着研究の最新動向についても,いろいろ教えていただいた。

こちらの最新の吸着関係のデータや,ヤング率の含水率依存性などの話の流れで,これらの多孔体のヤング率の含水率依存性とはなんぞや,という話が結局,収縮にしても,その他の性状にしても,大事だという点は意見が一致したものの,Jennginsらの最近の土質関係からもってきた理論は,ちょっと変な感じもするし,どうしたもんだろ,といった感じの話を。

他にも水和関係の話を伺った。


午後,修論の発表会。学生が2名発表した。二人とも,なかなか,良かった。
ボリュームが多すぎて,結論を重視した発表になったので,プロセスにつっこみが多かったのは,まあ,想定された事案だったのではないでしょうか。
最後の追い込み,よく頑張ったと思います。

終わった後は焼き肉でした。

しかし,セメギの締め切りとかぶったのはつらかった。

2月9日 

午前中は,学内の学生生活委員会。委員長役として,内規の提案などを行い,ディスカッション。境界条件として,そとからいろいろ与えられるのだが,そのたびに研究科内では,内規の変更を委員会→専攻長会議→教授会と承認する必要がある。一方で,その内規が必要とされる事案は,ふってきて7日くらいで人を推薦しろ,とかそういった問題だったりして,どうも,補正予算にしろ,なにかの予算にしろ,ちょっとしたお金で人がそのたびにごたごたと動く。

有用な予算であることがわかっているのであれば,どういった観点から,どういう人に,どの程度に配分するかをディスカッションして,若手研究者,学生の成長を促すというビジョンが必要で,そのお金の使うタイミングはこちらで判断させてほしい。枠の申請であるのなら,悪平等であっても,当座,やむを得ない。

正直に言えば,こういった事案は消化試合になりがちなこともあり,直す必要がある。お金を使わなくては損だ,というのは,会計検査の悪い面だ。
今は必要無いからといって来年度も必要無いわけではないので,会計検査の人は,ビジョンや方向性につっこみを入れて,自分たちが政策を判断しているんだ,というくらいの形に趣旨をあらためてほしいなあ,と思ったり。
悪い使い方を摘発するのは,大事なんだけども,そのために良いところを伸ばすこともできないのでは,悪い面に足を引っ張られすぎである。今は,悪い面に多少は目をつむっても,良い面を伸ばして,人材育成に気合いをいれる場面ではないのか。

どうも,日本全体が退却戦みたいな状況になっているのだが,退却戦において何を成功とするのか,そのときにどの程度の犠牲はあきらめて,どこを本筋を残すのかという判断が必要と思う。理想論は損失がなく,すべてが丸く収まるということなのはわかるが,いくらなんでも,実社会でそんなの無理だ。


午後は,JCIの膨張委員会の幹事会に出席。今後の方向書などの骨子が定まる。WG2の課題は案外多い。

2月7日 海老名, AIJ委員会

本日は,朝から,東京に出張。とある研究プロジェクトの意見屋として,実験の実施状況を見学に。なにしろ10年以上を想定したビッグプロジェクトなので,なかなか,はじめの仕込みの段階での失敗は許されない。
といいつつも,予備実験があまりできていないので,いろんな確度からコメントを収集して,懸念事項をつぶしていく必要がある。長期の実験というのは,人的にも引き継ぎが難しい部分もあるので,制度設計も今後,提案したいと考えている。

その後,AIJの混和材委員会,膨張WGに出席。AIJの指針類で,構造的側面から収縮の影響についての記載のあるところのディスカッション。JCI耐久性力学,JCI膨張材委員会とも相互連携すべき観点が多々ある。

以前,記事類をとりまとめたけれども,もう一度掘り起こして整理する必要がある。

2月4日,檀氏公聴会,乾燥収縮,乾燥開始材齢

2月4日 午前中は,JCI膨張委員会WG2の予定だったが,学内業務でいけなくなってしまった。この時期,大学は概算要求をはじめとして,各種対応が多い。
昼時に慌てて,新幹線に飛び乗って,檀さんの博士論文公聴会へ。
高炉・若材齢・脱型・養生・耐久性というキーワードを網羅した,目もくらむように多い実験データが示されていた。
定量的に示す,ということは,実用にも学術にも重要である。

乾燥収縮試験の乾燥開始材齢は,到達する最終収縮ひずみに影響しないという実験データが示された。この点,別の論文でも最近だされている。
これは,既存の乾燥収縮の式,たとえば,AIJの収縮予測式では,乾燥開始材齢が早くなると収縮が大きくなるという形になっている。だいたい,材齢1日の物に対して,材齢7日では15%くらい収縮が小さい,ということになっている。

しかしながら,乾燥収縮のメカニズムから考えると,そういったこともあり得るのではないか,と思われる。その点,ディスカッションとして,こういう実験事実とこういうメカニズムに立脚して考えると,かならずしも乾燥収縮の最終到達ひずみは,乾燥開始材齢に影響を受けないと言うことになるのではないか,という原稿をセメギに投稿した。

過去,乾燥開始材齢というキーワードの論文はそんなに無いのだけれども,ばらつきと,傾向についてもう一度確認できると面白いと思う。

その他にも水和を含めて,面白いデータはたくさん出ていて,もっと細かくやったらいろいろひもとけそうだなあ,というものが示されていた。

1/31/2011

Chrome関係

http://www.lifehacker.jp/2011/01/101227gmail_webapps.html

Gmail関係のものです。

http://antarespc.com/web-browser/google-chrome-extensions.html

こちらが、ChromeのExtension。便利なもの多し、です。

NoteSlate

これまた、便利そうなデジモノ。
http://www.monogocoro.jp/2011/01/19/noteslate.html

研究プロセスでは手書きメモがすごく大事なんだが、それがこれで一発解決!?
大変気になる商品。

LUMIX DMC-TZ20

http://dc.watch.impress.co.jp/docs/news/20110125_422497.html

GPS, 手振れ、光学ズーム倍率、撮影素子 いずれもばっちりではないか。これ。

コンパクトなので、F値が少し大きめだけど、手振れがうまく機能するならありだなあ。
夜の室内写真がアップロードされるようになったら、購入を検討しよう。

1/30/2011

分離圧理論の問題点,今後の課題

先週の一連の講習会の最中に,分離圧理論の今後の課題などをご指摘いただいた。表面張力理論との差別化の問題もあるので,少し考えて見た。

1)
吸着水の吸着厚さ変化によるポテンシャル変化を駆動力としている点ではまった同じ形をしている。

2)
表面張力理論は,固体の体積変化を変形のターゲットとしており,分離圧理論は固体間の空間に変形のターゲットをおいている。表面張力理論では,固体の体積変化の反力に固相のバネを想定している。
表面張力理論においては,セメント硬化体などを対象とする限りにおいて,固相・吸着層の区分が難しく,かつ,固相のバネとは何かという問題が生じる。
分離圧理論は,閉鎖空間内の吸着挙動を想定しており,閉鎖空間に吸着したときに生じる分離圧に対して反力を受ける力の観点が不明瞭である。C-S-H間に働く力だけでなく,閉じた系であるとすると,これまた,固相の剛性も想定せざるをえない。
しかしながら,式の形として考えるのであれば,吸着層の変化によるエネルギー変化を駆動力とし,対応するコンプライアンスをセメント硬化体に求めるので,形として一緒になる。

3)
研究上の実質的な部分においては,表面張力理論では,実験結果のしわよせは,固体の剛性,(表面力変化に対するコンプライアンス)の評価にいく。私の提案した分離圧理論は,しわ寄せが分離圧曲線そのものにいく。つまり,定義からさかのぼって分離圧自体を求めているので,どのようなメカニズムでも吸収してしまう,ちょっとトリッキーな形になっている。
どちらも,コンプライアンスの評価ができていないので,現状での課題は残る。工学的有用性という意味では,私の提案した分離圧評価が,水セメント比や鉱物組成に依存していないので,やや有用ということになるのではないか,と個人的に考えている。

なお,この観点を整理しようと考えて,ヤング率・ポアソン比の空隙や含水率依存性についても評価を行っているが,今もって綺麗に整理はできていない。(相組成から予測できるようにはなったが,セメント間の力という観点での評価がまだできていない。)来月号の黄表紙とJCIの年次に五十嵐君が投稿したので,興味の或方は,パブリッシュされたら見てほしいと思う。


長岡の下村先生からご指摘いただいたが,これでは,正当性を示すことはできないので,別確度からも検証する必要がある。私自身苦心しているところではあるのだが,一つは,セメントの鉱物組成や水セメント比によらず,そのポテンシャル曲線が一つで示されるというのは,間接的に普遍性を示しているのではないか,と考えている。
もう一つは,最近提案しはじめた,線膨張係数との関係である。これも推察がうまく通ったので,ある程度のサポートになるが,それでも,一発証明というわけにはいっていない。

なお,Nonat先生のグループがC-S-H間の力を,AFMで直接測定しているが,そのときのC-S-H間の最大の応力は,30MPa程度であるので,私の分離圧で想定している圧力とは1,2ケタ異なっている。減衰の領域という観点では,同じくらいのオーダーになっているのではあるが。

最後の懸念事項としては,乾燥プロセス中もC-S-Hは変化し続けている。青野さんらのACT論文では50℃の乾燥でもC-S-Hの会合反応が促進することが示されている。なので,比表面積そのものもダイナミックなものである。だから,ヒステリシスも生じるわけである。ACTに投稿した論文の最後に書かいたように,この一連の変化は,C-S-Hとしては再現性の高いものになっている。

結局,私が提案している分離圧・水和圧理論は,C-S-Hの会合反応による物性変化・収縮駆動力変化・体積変化も包含したものを分離圧という形にとっており,それはC-S-H量の再現性の高い反応プロセスにサポートされて,全体的な挙動に汎用性がついている形になっている。

ステンレス鉄筋とか,乾燥収縮規制とか。

ステンレス鉄筋の線膨張係数が大きいことは,周知の事実である。
鉄筋がさびなければ問題無い,ということで問題無いという立場もあるかもしれないが,それでも,温度変化のたびに,鉄筋周囲にひび割れは入りそうだし,鉄筋コンクリートとして,付着・定着に十分な機能が長期的に確保されるかについての懸念は未だ残っている。JASS5Nでは,そういったコメントが出された。仕様としてどう考えるかは,今後の課題である。
これも一種の相性問題の一例ではないだろうか。


先日,広島の講習会で,建築の乾燥収縮規制は下品だというご指摘を頂戴したけれども,我々はどんな人にも良い建築物を作ってもらうための仕様書という立場上,品質の確保ができない以上,仕様書にあるかぎりにおいて規制はやむを得ないという立場を取る。
耐久性に関する仕様設計というのは,どうしても,個別の品質を良い物にしなくては,無条件で良いと断じることはできないからだ。
各材料・構造の性能をうまく使いこなせる人には,性能設計の道を閉ざす物ではないし,それによって安価で合理的に良い物を作ることは建築業界では,励しているし,法律でも解放している。私は別に下品ではないと思う。

むしろ,様々なレベルの技術者・設計者がいる中で,地震国でありながら,これだけの建築物の性能を担保している国・建築業界のシステムというのはないし,世界に誇れる物であると私は考える。加えて,日本の一般の方々が望む建築物の要求というのは,非常に高いのだ。

オープンな社会で底辺を支えることの苦しさ,無条件で批判を受けることの苦しさを知っている人からの批判であるのなら,反省点として生かしたいとも思うが,立場自体が違っていて議論にはならないと思ったので,私はあえてその場では,反論しなかった。

私は幸いにも両者の立場に属したことがあるので,それぞれの良さ・悪さというのは,それなりに理解できているのではないか,と思う。立場が違えば,意見が違うのもまた,当然のことである。必要なのは,収縮問題があって,それぞれの業界でどう対応していくか,技術と経済性をどう折り合いをとるか,ということであり,その手法は,共通の部分もあるだろうし,そうでない部分も多い。

社会や研究の向上のための痛烈な批判というのは,私としては,心から欲しているものであり,76委員会でのご意見は,貴重なものだったと思う。




建築物の施主・設計者・施工者・法律を定める国,における責任分担が明確でなく,姉歯事件以降,建築確認という事項が,実質の許諾であるとの立場から,国の責任範囲が拡大してしまい,設計者の責任が低下することで建築物にかける建築業界のプライドみたいなものが揺り動かされてしまっていることは,こうした品質の問題と相補的な部分がある。
設計者が考えることを止めてしまうと,また,責任を取らなくなってしまうと,最低限の品質を確保するための法律・仕様書等の位置づけは相対的に上昇して,規制の社会的インパクトは大きくなるからだ。


社会において,仕様書をどう位置づけるか,というのは,建築学会各支部などで講習会や意見交換会をやって,我々の世代で再整理しても良いと思う。若手委員会ででも,提案しようかな。
個人的には,基準法をどうしていくのか,というビジョンの方がもっと大事だと考えている。これは,法学者・経済学者も含めて,インパクトについて再評価することから始めるべきと思う。壮大なプロジェクトだ。

1/28/2011

76委員会

(本内容は、まだ、記載を変更・追記するかもしれません。)

水曜日は、76委員会の講演。体積変化と骨材の相性というタイトルで、講演をさせていただいた。石灰石骨材を高炉セメントコンクリートに用いると強度が(多かれ少なかれ)標準試験体の強度よりも小さくなる、(正確にいうと、たいていのコンクリートは強度が小さくなる。その影響が比較的大きいかも、という主旨であった。)という事実について、ケースバイケースであるので声高にアナウンスしてはいけない、というご指摘をいただいた。その通りで、私もその現象をアジるつもりはない。そもそも、建築分野を含め多くの方には、石灰石に代表されるある種の骨材は、温度履歴とともに強度の伸びが悪くなるという現象は一般的であり、今更観もある話題である。相性問題の一例として、線膨張係数が大きくなりやすい高炉セメントと線膨張係数が小さいといわれて久しい石灰石骨材をその典型例として例示したのだったが、引用が不十分で、適切な代表例として伝わらなかったのは反省点である。

建築では、温度履歴を経ると強度の伸びが悪くなるということはよく知られている事象であり、特に石灰石骨材を利用した場合には、そういった事例が顕著になるということは、かなり昔から知られている。二次部材メーカーの方も、ご存じのことではないか、と思う。
高強度コンクリートの場合には、こういった問題が生じやすいことを、NewRCプロジェクト前後において、構造体コンクリート強度の観点から、さまざまなデータが示されて、建築では定量的な議論も行われた。
(でも、石灰石骨材は案外もろいので、石灰石骨材を高強度に用いるのは、特殊ケースだと認識している。)

建築では、構造体コンクリートの管理という概念が浸透しているので、そのケースバイケースにおいて、ちゃんと実構造物の強度・品質を確保するように、強度を割り増して調合設計をしている。
こういったものは、JASS5において、S値、という形で整理されているものだ。
これは先人の方々がつくった、建築側のよいシステムの一つであり、構造体の性能を確保するという観点において、非常に合理的な方法であると思う。

コンクリートという非常にうまくできた複合材料は、バランスがよすぎるので、なにかひとつの性能を突出させようとすると、たいていは弊害がでる。しかし、それは運用と全体設計でうまく調整して、構造体の中でよい性能を伸ばしてやるべきものだ。よい方向ばかりを喧伝して、負の方向に気を払わない、というのは研究者や技術者のやることではない。よいところを伸ばすためには、悪い部分をカバーしてやる配慮が必要だからだ。マイナスが小さくて、その影響の程度が無視しうるということであるのであれば、それを払しょくするデータを示す必要があるだろう。

しかしながら、そういったデータは、そもそも取得されていないとは思うのだが、多くは公表されていない。よい部分は出しやすく、悪い部分は出しにくいから、というのも別の一因かもしれない。しかし、研究者という立場では、それをするわけにもいかない。

研究者は、悪いところをほじくり返してばかりいるという指摘もある。頭の痛い話である。本人にとっては良心でやっている部分もあるし、一方ではそうでもないと研究が無いからやっているのだというような揶揄もあったりする。その重要性は萌芽期には認識されないし、評価が行われるのはずっと後の場合も多いので、これもまた、研究者の口を封じることが難しい点である。しかし、ある種のバランスを保ったコンクリートというのは、本当に素晴らしいので、そのバランスから崩れたものに対して、よい点・悪い点を整理して、悪い点を補いながら使うというのが、よい構造物への一歩であると私は考える。


私は、石灰石骨材を高炉セメントに用いる場合には、注意が必要かもしれない、という指摘を行った。体積変化という観点からは、複合材料としてバランスが悪くなっているからだ。
ご指摘いただいたとおり、石灰石骨材にも、高炉セメントB種についても、ばらつきは多く、一概に言えない部分も多い。石灰石骨材だけがわるいか、といえば、もちろん、ペーストとのギャップの観点からいえば、線膨張係数の小さい骨材一般の話であるので、硬質砂岩のある種も例外ではない。そして、ある範囲の差であれば、影響はほとんどなく、驚くほどのわるさなどは確認されない。その差がどの程度なのかということは、残念ながらわかっていない。繰り返すが、建築では高温履歴を受けたコンクリート強度はたいていの場合に低下する(強度の増進が停滞する)ので配慮が必要という態度で一貫している。
であるから、石灰石骨材だけが、ということについては撤回させていただいて、体積変化の観点からミスマッチがある場合において、という形に言い換えたい。

研究者であるので、どのように材料を用いるべきかは、今後、責任をもって示していくつもりである。
(講演では、そのつもりで、2例ほど対策を提案させていただいたのではあったが)

今読んでいるローマ人の物語にも繰り返して出てくるカエサルの言葉、「人は自分が見たいように見る」というものがあるが、そうならないように自分を律しつつ、研究に取り組みたいと思う。

多くの表裏のないデータ・意見が集約され、よいものをつくるためにどうしたらよいかが、おのずとわかるようになることを望む。そのためにも、今後とも、さまざまな意見交換・情報交換をさせていただきたい。

講演・報告など

学生の多くは、最初、大学や大学院に一生を食べていけるだけの何かを求めている。その何かが、授業で教えてもらえるものの総体であると勘違いしている者も多い。5年先で自分がどうやっているかなど想像もできない現在において、一生を食べていけるノウハウなど迷信でしかない。一級建築士資格も同様である。そういった現実を学生個人個人が見つめることがまず、教育を受ける側の第一歩ではないか。
(子供一人育てあげていない私がいうのも恐縮だが、)親の教育と同様で、私が学生にしてあげられるのは、社会に出た時に自分の能力を信頼できるだけの、基礎能力の涵養を、研究・実験という実践的な場を通じた支援することだけだ。
情報を集め、自分の想像力・創造力で補完し、真理を見極め、仮説を立ててそれを実証する。しかもそれが、実験を通じて、最終的には論文という形で示せる研究という形は、こういった涵養に適切な材料であると思う。

1/22/2011

建築学会構造系論文集

1月号には,2編の論文が掲載された。

一つは,アルミネート相,フェライト相の水和反応をリートベルト解析で見てみた,というもの。結晶として確認できるものから,石膏の量をトレースするとかなりの精度で解析ができていることが確認された。
高温で養生しつづけた場合には,アルミネート相,フェライト相の水和の停滞が顕著になること,特に石灰石を入れた場合にもそれがみられること,が確認され。これらの点については,大門・坂井先生グループをはじめ,すでにいくつかの既往の報告がある。
また,Matschei博士らがCCRで報告しているように,CO2/Al2O3の比とSO3/Al2O3の比のバランスによって生成される相組成が決定される点について,本検討結果は符合した。
また,速度論的な観点からみても,どのような相が析出するかで,その速度はかわっており,特に石灰石の有無によるアルミネート相・フェライト相の速度の違いはそれなりに大きい。
これらを,材齢1日以後のデータに合わせるべく,修正したJander式をもって,フィットしたというのが論文の特徴。
石灰を入れた系でのデータを詳細に示した一例としての価値はあるのではないかと思う。

二つ目は,長さ変化試験を異なる温度でやってみたというもの。
下図にあるように,温度を上げると脱着線は大幅に下がる。同一相対湿度での含水率は低下する。この傾向は,最近だと,フランスの原子力関連グループが高温域での脱着線データをCCRで報告しているけれども,それと符合する結果になっている。一方,長さ変化の方は面白く,20度→40度でのデータは無視するとして,40℃飽水状態から乾燥させていくと,あるところから,乾燥収縮は小さくなる傾向がある。大体それは,RH60%以下である。



温度を上げると見かけ上,表面が疎水化するので,その影響が出たものと解釈できるが,この見かけ上の疎水かを何に起因すべきかは,今後の検討課題である。
飽水状態にしていても,温度を上昇させると含水率が低下するという点は,査読でもご質問いただいた点だが,詳細な検討を今後していく必要があるだろう。

20度の比表面積を与えて水和圧曲線を導出したものが下の図である。ここに示されるように高温での減衰曲線は大きく異なっている。





この後,新しい装置が導入して,あらためて異なる温度の脱着線をとったところ,比表面積(あるいは水分の吸着サイト数)そのものが温度で大きくことなるので,比表面積も40度のものを与えて評価する必要があるようにも思う。そうすると実は同じになるのではないか,という気がしているが,この試験体はすでに半年がすぎてしまったので,今,比表面積をとることに意味があるかどうかはよくわからない。比を同定して補正するということならしてもよいかもしれない。


今まで,多くの方に査読をいただいて,そのたびに貴重な考察をさせていただいた。一部は論文内に反映させたが,記載されなかったものも多い。おって,ここの場で,そういったディスカッションの内容もご紹介できれば,と考えている。

1/21/2011

近況

本日は、愛知県の建築士会での講習会で、講師をしてきました。よく考えると、設計者の方と話をする機会というのはあまりなかったので、質疑応答の点で、いろいろ勉強になりました。講演の内容は、環境問題と建築材料・施工、という切り口で、社会的な動向、設計の方向性の中での材料や施工上の問題などを切り取って説明してみました。設計者より、ということで、かなり頭の体操になりました。まだ、もうちょっと内容はブラッシュアップが可能と思うので、もう少し練っておこうと思います。


昨日は、某研究関係で、太平洋コンサルタントにお邪魔しました。誰もやらないようなベーシックな実験なので、結果がどうなるかが非常に楽しみです。外に出るのは、いろいろ紆余曲折があることが想定されるので、2,3年後ではないかと思われます。


骨材・ペーストの相互関係に関する研究計画が徐々に形にまとまりつつあります。また、プレ実験的にいろいろやっているものについても、予想通りの結果が出ているので、これも今年の8月くらいには、どこかに速報的な論文が投稿できるかな、と思っています。
耐久性との対応についてもやっていこうと考えていますが、こればっかりは、数年オーダーの研究になりそうです。装置もいくつか買いたいので、ちょっと予算の段取りを考えないといけません。


寺本がイリノイ大学から帰ってきました。大分、こちらとは違った体験をしたということで、早いうちに留学を経験させることができてよかったと思います。あとは、博士論文に向かってもうピッチですすめてもらわないといけません。


ここ1年ほど、岩石関係の本をかき集めて、時間の合間によんでいます。いろいろ読みましたが、これは、サイトにいって理解するもので、卓上でやる問題じゃなさそうです。名古屋大学博物館の先生に、時々レクチャーをしてもらっているのですが、半年くらい、いろんな山にいって、採取してものをみる、というようなことをやる必要を感じています。どこかで時間をとりたいと考えています。

1/14/2011

JCIなど

近況

1.CCRへの投稿が初めて受理された。内容は,スラグを入れたセメント硬化体の線膨張係数の増大と自己収縮の関係によるもの。海外にはださん,と数年前まで思っていましたが,やっぱりそれは間違いだと反省し,積極的に英文化することを決意してからのやっとの1本。自分で取り仕切った研究の第一弾ということで,これからも,積極的に投稿にチャレンジしたいとことろ。

2.
結局,当研究室からは4本の,勅使川原・丸山研としては9本の論文が投稿された。ほぼ全員が投稿したことになる。
そのうちの1本は,留学中の学生が出したもので,彼の研究テーマの中では少し異色な感じがするかも。他の3本は,相変わらず体積変化とか収縮問題である:
1)ヤング率の乾燥の影響
2)収縮低減剤の効果
3)骨材の収縮メカニズム
のもので,いずれもマニアック具合としては,そこそこのクオリティではないかと,変な形で自負している。今回も,学生達は間際になりつつも,非常に粘り強く,クオリティアップの努力をした。非常に良い経験になったのではないか,と思う。

一方で,今回,私は自分の論文を投稿できなかった。スケジューリングのミス。やはり,研究者である以上,自分が発表しなくては,と思っていたのだが・・・。大きな反省点であり,来年は必ずだそうと思う。
企画していた内容は,セメント・コンクリート論文集にも耐えると思うし,場合によっては黄表紙でも問題なさそうなので,どこかには投稿する。


まあ,査読で問題があることもあるわけなので,もし,通れば,皆様にも見ていただけるのではないかと思う次第。

1/09/2011

Filer

さまざまなFilerをためして,いろいろここで紹介したかもしれないんだけれども,結局行くつくところとして,http://hide.maruo.co.jp/software/hmfilerclassic.html
ここに行き着いた。
64bitのWindows7で安定して動作するアプリって,やっぱり今は限られている。
ちょっとした便利ツールをWindowsXPの時には結構,掘り当てて利用させてもらってたり,自分で作ったりしてたんだけど,64bitになってからは,時間の積み重ねが少なくてあまりない。きっともっとユーザーが増えれば増えるんだろう。

自分でつくるのもAPIを新しいの覚えたりするのがしんどくなっていて,今はやってないしなあ。

追記:なにがすごいって,マウスジェスチャ つかえるんです。コレは便利ですよ。

1/05/2011

学振

学振DC,PDの発表があったようだ。
当研究室(勅使川原・丸山研)では,申請した2名が無事通ったようだ。
いやあ,よかった。本当に良かった。

当研究室では,博士進学を希望している学生には,そのつもりで卒論,修論の指導を行っています。ある種,技巧的な部分がある点については異論もあるかもしれませんが,本人にとっては経済的に独立できることの方が,その後の研究に邁進できるという点で良い方向に向かうと我々は考えています。

1/04/2011

波乱なし


実験値ベースで解析をしてみた。(細孔構造から予測するものではなくて,という意味。)
水分伝導率はボルツマン変換を用いた実験から,化学ポテンシャル基準に直したもの。これはDw(温度一定)の値として与えた。この大きさは,含水率依存性を持つ。
温度勾配下における水分移動(DT)は,松本衛先生のALCで実測した実験データ,および,長尾氏らの黄表紙論文で長期材齢の温度勾配と含水率勾配を取得したものからDw/DTを算出したものを検討した。両者がおおよその合致を見たのでその値を用いた。(実験値は定常状態であると仮定した。)

その結果が上図である。

まあ,この計算が一番妥当な感じがする。波乱なし,という感じ。

今後はこれをベースに少し考察を重ねてみたい。

1/03/2011

迷走?


温度勾配時の水分移動で,水蒸気勾配で移動すると考えるのか,吸着厚さによって定まる化学ポテンシャルによって移動するかで全然異なる挙動が出てくる。
水蒸気のフラックスと,たとえば,毛管圧のフラックスが逆方向になる場合というのは,温度変化がある場合には多々生じる。
壁の中の結露とか凍結を扱う建築環境・材料分野では,冬期に着目すると,温度勾配と含水率勾配が反対方向の場合,乾燥(含水率が小さい方向)に水分が移動することがよく見かけられているという。

これらは,凝縮水の毛管圧勾配で整理されていて,こういうポテンシャルを評価するためにポテンシャルをTとhにすることが行われている。

土壌のようにもっとポーラスな材料の場合は,水蒸気勾配の影響というのは比較的に大きいらしい。Philip&De Vriesの論文では,液島を水蒸気が駆け抜けるので,水蒸気移動に対して,液状水がバイパスする効果を与えるということを言っている。

一方,セメント硬化体では,この水蒸気移動はあまり多くないのではないかとおもって,そうしたモデル化をすると,先日の水分移動は,全然異なる挙動を示す。
全体的にいえるのは,内部の水和反応による自己乾燥によって,水分が内部に引き込まれる。その結果,表層はものすごく乾燥することになる。面白いのは,中心部は温度が最高温度に達して以降,継続的に水分を引き寄せて,結果として,もっとも保水量が多い状態になった。

まあ,ちょっと感覚的には現実的ではない結果になっていると思う。

もう少し,モデル化について吟味してみたい。