4/28/2018

4月

なかなか更新がままなりませぬ。SNSに少し書いているせいもあるのですが。

・この4月から専攻長を拝命しました。別に偉いわけではなくて持ち回りです。海外出張が制限されるのが問題です。10月と11月にそれぞれ1回ずつ海外出張に参りますが、それ以外は残念ながら難しそうです。

・研究室の新メンバーとして、4年生が3名配属になりました。今年はちょっと新しいことに挑戦してもらおうと思っています。その他に、ポスドクが1名、清華大学卒業、Ecole de Pont ParisTech博士という方に来ていただきました。大変優秀です。現在、さらにポスドクならびに博士学生を募集しております。いずれも給与を出すことができます。
ー鉱物学、結晶学、TEM分析ができる方
ー結晶学、分子動力学、第一原理計算のわかる物理、化学を理解している方
ー波動伝搬、均質化理論に興味のある方
ぜひ、ご相談ください。

現在、丸山研では、国のプロジェクトとして
1)放射線によるコンクリートの劣化メカニズムの解明(エネ庁)
2)経年変化したコンクリート構造物の性能評価方法と将来予測法の研究(エネ庁)
3)福島第一原子力発電所施設を対象とした汚染メカニズムの解明(文科省)
4)処女乾燥下にあるセメント系材料の水分移動メカニズムの解明(科研・基盤A)
5)ジオポリマ、バサルト繊維、形状記憶合金を用いた新しい構造部材開発(科研・基盤A分担)
6)オーセンティシティを考慮した歴史的構造物の補修・補強方法の開発(科研・基盤S・分担)
7)炭酸カルシウムコンクリートの形成メカニズムの応用(科研・基盤A・分担)

を実施しております。
その他に現在、国交省へ申請中の案件、国際共同研究(フランス、チェコ、イギリス)があり、企業との共同研究ならびに研究コンサルティング案件は10以上ありまして、ダイナミックに研究が実施されている環境です。建設材料をベースにしておりますが、地質学的研究、物理学的研究、数値解析手法の開発研究などを国際的にも幅広い研究領域の研究者と共同研究しています。他に誰もやっていないテーマも多くありますから、研究室に興味を持った方は、是非、ご連絡ください。

・最近、久しぶりに論文を公開しました。
Impact of gamma-ray irradiation on hardened white Portland cement pastes exposed to atmosphere
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0008884617306506
ガンマ線照射環境で中性化が生じた場合にどんなことが生じるかということを議論した論文です。放射線処分や原子力発電所施設の安全性や性能評価に貢献する論文です。ガンマ線を照射するとガンマ線発熱による熱・乾燥影響が出てくるので、ガンマ線本来の影響と熱・乾燥影響が重畳します。熱・乾燥影響が明らかになっていなかったことも有り、強度があがったり、さがったりと一貫性のあるデータが存在しなかったわけですが、それについて明らかにした論文でもあります。

・4月より、Journal of Advanced Concrete Techonology誌のEditor in Chiefを拝命いたしました。三橋先生、前川先生と続いた編集長の三代目で、大役ですが、より広く読まれる論文誌にしていきたいと思っております。みなさま、ご投稿をお願いします。
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jact/_pubinfo/-char/en


1/14/2018

2年前

2年前の投稿を紹介します。

JCI年次論文が明日〆切です。研究室の論文投稿を原則英語,をかかげてしまったところ,大変なことになってしまいました。自分が言い出しっぺなのでしょうが無いですが,久しぶりに全論文に猛烈に赤を入れまくっています。
投稿は,おそらく4,5編になるんじゃないかとおもいます。また,日本語に留まってしまったものも出てくると思います。
別に英語じゃ無くて良いし,日本人に読んでもらいたいならば,という議論もあるんですが,名大まできたなら,英語で論文を書いたことがある,くらいの経験は積ませた方が良いだろうと思った次第です。日本語のレポートはたくさん書きますしね。
英語化して良かった点がいくつかあります。
・日本の国際的な情報発信を考えたときには足りていない情報が多くてもったいないことがわかる。論文に英語名が無い奴などは大変に損してるし,そういうことじゃいけないということが学生自体が認識する。
・英語で論文を書くと文章が具体的にならざるをえず,何を理解していて何が理解していないのか,自分でも認識できる。日本語は主語がなかったり,ぼかして書くことができますが,英文ではそれらを明確にします。なんとなく理解しているのと,ソリッドに記載するのでは全く別です。うちの研究室はこういうことのトレーニングの一貫として,数値プログラムの勉強をさせるのですが,英語化はそれと同じかそれ以上の効果があります。
日本語で良いというのはまさしくその通りだし,各学会がGoogleとアライアンスを組んで,英語と日本語のつい訳論文を提出すれば,それぞれの分野の過去の論文はすべて英語化できるでしょう。(これはこれで,日本の土建の研究分野が喫緊にとりくまなくてはいけないことだと思います。)
でも,コミュニケーションとして技術を適切に伝えるという意味では,英語で書かせるというのも良いもんだ,ということがよくわかりました。
建築学科は英語化に反対する人も多いですけど,まあ,やってみてもよいんじゃないかと思います


2年前から、同じ気持ちだったわけです。
今年も研究室から投稿される論文は英語を基本としています。そういうのって、やらされないとできない人もいるので。私は、その必要性を理解してもらうのと、無理やりにでも体験してもらうこと自体が、若い世代に大事だと思っています。

で、セメント協会のC-S-H研究委員会やら、昨今の自分のまわりの研究を見渡すと、
1)工学研究(設計的研究)なら、ゴールにいかに早く到達するかが大事。ゴールを設定したなら、最短を目指さなければ大学に大型共同研究を持ってくる意味がなくなる。その観点で、国際的に知見交換ができて、いざとなったら大事なキーパーソンを教えてくれるネットワークは本当に大事。
2)科学的研究(維持管理的研究)なら、国際的に通用する科学技術的基盤をしらなければ、意味がない、少なくとも国費をつかった研究で重複が過去と重複があったら大きな失態。そういう観点でもつねに自分に興味がある内容についてアップデートしてくれる研究連携チームの存在は大事。ただし、研究の追試、二番煎じ、再現性確認は超大事。こんな時代で、一番がもてはやされる時代だからこそ、日本はちゃんと再現性を含めてちゃんと咀嚼して、自分たちの考える第一歩を示していく骨太の科学技術社会をつくって見せていくべき。
科学は、本当に言いっぱなしなところがある。
日本は工学・科学両輪で前にすすめるあり方というのを、土木・建築業界で指し示す、そういったことをSIPでも考えたら良いと思います。

2018年

すいません。フェースブックに関心事を書いていたら、こちらがおろそかになってしまいました。本年もよろしくお願いします。

JCI年次論文が佳境ですね。今年は、博士学生がジャーナル投稿を目指しているのであまり、本数は多くありません。最大で4本かな。いろいろ、議論を生むようなデータはあるんで、今後に繋がる検討になりました。やっぱり、論文を書かないと学生も頭が整理されないし、実験として気づいた新しい発見と実験の当初の目的がずれた場合の整理が大事になることもあって、学生が論文を書いているときはワクワクします。

一方、セメント協会の委員会で取りまとめてきたC-S-H研究会の報告書の見通しが断ってきました。3月に報告会も実施するので興味のある方は是非出席ください。
セメント協会にもありますので、ぜひ、御覧ください。なかなか、大部な報告会です。
この教科書は、すごく良いです。本当に若手のみなさんを中心に我々の知見、留意しなくてはいけないこと、日本で全然チェックされていなかったことなどが、ふんだんに、網羅的に入ってます。もう、各種の査読で、変なことが書いてあったら、こちらをみて勉強してくださいって、かけるくらい。
耐久性研究とか、維持保全関係の研究は、設計フェーズから科学にもとづく将来予測フェーズになるんで、その観点で科学的事実から目をそむけちゃいけないし、宗教的・悪魔観的因習にとらわれてもいけないのです。
日本にセメント化学の研究室が、なくなりつつある今、ぜひ、若い人たちには目を通して欲しいです。

さて、すでに次年度に向けての動きが活発化してきています。名大の建築の中にも新しい風が吹きます。4月からの建築教室には期待です。

研究室的には、日本の学生には国際的な刺激を、また、海外に向けては日本でのアクティビティの高さをアピールする場になるように研究室運営を抜本的に見直しています。
現在、博士学生は7名(うち、留学生4名(中国、チェコ、フランス、タイ))、次年度はこれに海外からポスドク(いずれもフランスの大学出)を2名雇用する予定です。その他にも、名大で研究する社会人が数名検討されています。
卒論、修論の学生は、これらの国際的なアクティビティに大いに影響を受けてもらいたいし、国際感覚をもって卒業してほしいです。

実際の研究では我々が貢献できるところを増やし、建築学がいかに幅広い学問なのかを認識してもらいたいと思っています。
一つは、福島第一の廃炉のためのコンクリート汚染の研究、もう一つは、放射線で変質するコンクリートの研究について、あらたなプロジェクトが開始されました。2017年広範からスタートなので、2018年から本格化します。
後者は、米国のORNL、ノルウェーのIFE、チェコのREZとコラボをします。日本国内でも、いろいろな大学、国の研究機関とコラボの議論を開始しました。

建築のわくを超えた論文が出ると面白いですね。




10/29/2017

海外出張総括:リヨン/ルーベン

IAEAの国際会議「Fourth International Conference on Nuclear Power Plant Life Management 」に出席しました。5年に1度の会議で、前回のソルトレーク・シティに続いて2回目です。その名のとおり、原子力分野のマネジメントの会合でして、どちらかというと一般的なマネジメント、それをうまく回すための知見交換の国際会議です。人間の一生よりも長く運転しよう(米国では、80年を目指している。)というところでは、場合によっては原子力発電所を作ったゼネコンもメーカーもいないわけです。すなわち、知見は運転側がちゃんと管理しなくてはいけなくて、メーカーがいる間はノウハウだといってものをクローズし、なくなったらそのまま消えるなんていうのを許すのかどうか、というのもマネジメントで議論するテーマです。そもそも設計した人もいなくなり、初期に運転を立ち上げた人もいなくなった上で、ノウハウ・知見もまるごと飲み込んで世代を超えていくのは、人材育成も含めた壮大なマネジメントであり、挑戦です。最近の韓国の原発の部品偽装の件、神戸製鋼、日産の件などを見るとこれは、人間の善悪をも乗り越えるチャレンジであると言わざるを得ません。そこで必要とされる技術はなにか、工学とサイエンス、それらをどのように融合して価値判断に結びつけるのか、ということを深く考えさせられる会議でした。

建築というのは、特に日本では一世代限りのものとして設計されることが多いのですが、本当にそんなんでよいのか、ということもこのご時世考えるべきです。サステナブルというならが、作られるものの概念ごと変えなくてはいけないわけです。それと同時にその概念に資する技術もまた、現在の建築の枠を超える必要があります。

KU Leuvenは1400年台に作られた大学で、EUの中でも古い方の大学です。メルカトールとか、有名な研究者を何人も輩出しており、EUの重点12大学の一つであり、Timesや他の大学ランキングでも東大よりも上のことが多い大学です。
そこの先生(Ozlem Cizer先生、Assitante Prof.)から、国際会議の招待講演の依頼を頂いたのですが、都合で出られなかったのでお詫びを兼ねて伺いました。私よりも若い女性の先生でしたが、ジオポリマーやSCMを用いたコンクリートの研究を積極的にやられていて、RILEMの委員会や国際会議等にも多数参加されています。研究について、いくつか議論させてもらいましたが、主要論文を一通り目を通していて、特徴的な研究チームの実験や研究スタイルも頭に入っており、話がすごくはずみました。組積造のライムモルタルとか、炭酸化にも詳しかったです。ここにもまた、構造・材料・化学・科学を結びつけようとしているチャレンジングな研究者がいます。日本の若手の材料の先生は、彼女の研究もチェックしておくと良いと思います。Research Gateにも参加されてますし。

10/17/2017

JACT

放射線を照射した時のコンクリートの劣化のメカニズム解明と維持管理における健全性評価法を提案した、原子力規制庁の国家プロジェクトの全体像を記した論文が、Journal of Advanced Concrete Technology誌に掲載されました。[Development of Soundness Assessment Procedure for Concrete Members Affected by Neutron and Gamma-Ray Irradiation]

7/15/2017

6月




すでに7月なのに、6月分をアップデート。備忘録

福島第一のコンクリートの汚染について、どういったことができるか、ということを議論しています。現状は、デブリ取り出しのための作業における被曝量低減のための検討を主軸として検討していますが、最終的に構造物をどのような状態にしていくか、そのための現状把握と将来予測は不可欠です。かといって、人的にも金銭的にもさまざまな制約があるなかで、研究開発的な時間スケールも把握しながら、なにをやらなくてはいけないかを考えることは重要なことです。私としても、自分の知見は限定ながら、なにができるかについて少しだけコメントさせていただきました。

19日の週には、Leeds大学のRichardson博士に来名いただき、講演をしていただきました。今年に入って3名の海外の研究者を招待したことになります。Richardson先生は、Taylorの第3版を記載している最中であり、C-S-H(I)の結晶構造モデルの提案者としても著名です。TEM分析を主軸として、微細構造をずっと検討されてきた先生であり、過去の問題で今にも影響のあるさまざまな点についてレクチャーいただきました。合成C-S-Hの多くはまちがっていて、TEMで観察しないと平均Ca/Si比はわからない、過飽和状態で生成するC-S-Hの構造はまだわからない、結晶成長もわからない、などなど。
わかっていること、わかっていないことを正確に理解することは大事ですが、いくつかの私の誤解もあり、直接お話させていたいて理解したことが多かったです。
Richardson先生には、NIMSにおいても講演をいただき、セメント化学についての重要知見を多くの方にご紹介いただきました。

NIMSでは、SIP土木の件に関連して、セメント解析研究会というのが立ち上がり、副査にご指名いただきました。NIMSにもコンクリート工学やセメント化学をサポートする分析技術やそれにもとづく材料開発などができれば良いというように私は捉えていますが、(主旨や目的にはさまざまな思惑があるようで、難しくてよくわかりません。)、NIMSの分析装置はすごいんですが、結局、課題・問題をこのスケールの問題に翻訳できる人間が少ない(セメント化学をつなぐことができる人が少ない)のと、オペレータ自体や関係者のモチベーションの問題もあって、なかなか難しいところが多いだろうな、と思われます。
うまくいくとよいのですが。

30日には、岩手大学にご招待いただき、出張してまいりました。知見交換会を行うととともに、翌日には陸前高田をご案内いただき、復興について勉強させていただきました。

そんな6月です。

5/21/2017

5月だった (途中報告)

GW中は,東京と名古屋を行ったり来たり。家のことも,外のことも無難に過ごしました。家のそばに,安い大型銭湯があってサウナが気持ちよくなったのは,明らかにオヤジ化しているんじゃないかと思いました。

GW後半から,オタワで行われている,OECD/NEA ASCETのASRを生じたRC壁のベンチマーク解析に出席しました。日本からは3チーム,その他は,米国,カナダ,フランス,フィンランド,が参加されていました。私は規制庁に対して,審査の観点から必要なノウハウの構築とその重要性評価の観点から参加して,レポートを作製しました。実験はトロント大学で実施されました。トロント大学といえば,Collins先生がかつて在籍し,RCとして著名な大学でした。しかしながら,今回のベンチマーク解析の実験は,残念ながらひどいかったです。まず,せん断壁の載荷が行われたのですが,私でもわかる載荷の間違いが複数あって,ベンチマーク解析は惨憺たる結果になりそうでした。
これからのとりまとめが大変になりそうです。それでも,フランスチームの考え,米国のチームの考えば,明瞭に出てきていて,別の観点で大変参考になりました。自分がビハインドしている部分では,大変勉強になりました。


帰国翌日は,RC壁の載荷を自分の研究室で実施しました。こちらは,1年間,壁を室内で乾燥させて,それから載荷したものです。養生を90日程度実施したバージンの壁と挙動の比較をするもので,先日のJACTのReviewPaper,に対応したものです。大変興味深い結果がでました。このことで,ナノ・原子スケールのC-S-Hの挙動が,RC構造を考える上でも大事だということが示されたといえます。


翌週は,Prof. Peter McDonald(Surrey大学)が名大に来られました。ご存知のようにPeterは,1H-NMR Relaxometryをセメント系材料の応用し,非破壊でナノスケールの水の挙動を評価する手法をNanocemプロジェクトで確立し,近年さまざまな影響力を持つ論文を執筆しまくっている先生です。Ellis Gartner博士との紹介で,昨年から共同研究を実施しており,今年は,東北大の五十嵐先生もPeterのところに滞在しております。今回,時間を見つけて,初来日していただき,さまざまな講演をしていただきました。名大では,NMRの基本から2日間にわたった講習会をしていただくとともに,東京でのセメント研究者とのワークショップ,セメント協会での講演などを行っていただきました。
1H-NMR Relaxometryでの成果で,もっとも大事な点は,層間水とゲル水(我々はゲル水と考えていませんが),キャピラリー水に対してT2緩和が交換していない(このデータは2005,6年に公開),ということです。水和を継続しているときも,乾燥した時も,卓越したT2緩和に分解できるため,これらは空間的に多くの部分で独立だ,ということ。すなわち,コロイドモデルでは,これらの水は接触面積が増えてくるために,T2緩和は分離できず平均的な値を示すはずなのに,つねに同様の卓越するT2緩和時間が示される。
このことは,結局のところ,C-S-HはFeldman &Seredaのいう,ミルフィーユ状の,シート状構造を構成していることの証明になっています。すでに2008年ごろからヨーロッパでは議論されており,(ちょうど,JenningsのColloid model IIが出版された年),ヨーロッパではコロイド理論の否決になった年でもあります。
こういうことが,日本にはまったく紹介されておらず,いまもってよくわからない解釈が国内学会でも跳梁跋扈しているのは,自由度が高いのか,お気楽なのか,謙虚さがないのかわかりませんが,私個人としては大変恥ずかしい状態だと思っています。


セメント協会のC-S-H研究委員会では,このあたりまで論文から深読みできる若手研究者が1名でも増えれば良いと私は考えています。今,日本に必要なのは底上げではなくて,トッププレーヤーの育成です。トップが低いと業界全体が沈没します。足をひっぱるんじゃなくて,優秀な若手を見つけたら,業界全体で投資するようにしていかなくてはいけない。そのためにはセメント系材料では科学的視点や他分野との意見交換が国内では大幅に欠落しているので,若手をなるべく別分野や国外に出す,あるいは助教やポスドクを他分野から連れてくるような努力が必要と思います。
名大では,現在,その仕組みづくりを検討しています。

5/20/2017

もう,5月だった。(4月の話)

4月がすぎて,すでに5月でした。これでは,全然情報公開になってない・・・。

3月後半ですが,最終週は次年度からの研究開始を踏まえた打合せが多くて,ほとんど研究について考える時間(正確には,データを評価したり考察したりする時間)がありませんでした。予定表を見てみると,卒業式の日以外には,2件以上の打合せが全て入っています。

4月4日には,E. Gartner博士が名大に来られて講演を行いました。CO2低減を前提とした次世代のセメント系材料のあり方など,EUの動向等を詳しく話題提供いただきました。


Ellisとは,論文も共同で書いており,この間に査読修正を行っていました。無事,論文が公開されました。
この論文は,C-S-Hがなぜ,C1.7SH4.0の組成をもつのか,そこで水和がとまるのか,そして非回復の変質とはなにか,を示したものです。今までのデータをすべて同一のモデルで解釈できる点が画期的です。

4月・5月で新しく仕事が増えました。一つは,SIPの土木関係で,セメント解析研究会というものが立ち上がり,その副主査になりました。もう一つ,福島第一の問題に関連して,コンクリートに関わる研究として,NDF(原子力損害賠償・廃炉等支援機構)における検討委員会の主査を務める事になりました。いずれも,かなり大事な仕事ですので,出来る限りのことをしていこうと思います。
4月の最終週には,ConCrack5の国際会議が東大でありました。学生のJangくんが若材齢の時間依存性を考慮したRCのひび割れ構成則を提案して,マスコンひび割れの予測方法を提案しました。画期的とは言いませんが,今まで明示的に考慮されなかった時間依存性の問題をちゃんと取り扱ってみたという点には価値があると思います。会からは,論文化の推薦をいただきました。Jangくんが対応できるようなら,ぜひ,論文化したいと思います。




4/08/2017

3月後半について

3月の20日の週は,H大学のN先生のところに研究の打合せをしにいったり,K大学の環境工学系のI先生のところにお話を伺いにいったりいたしました。K大学の建築の状況は由々しきものがあり,他人事ではないな,と思います。なんども外でも発言をしていますが,建築学科が専門職教育を標榜するんだったら,専門学校で十分ということを示すことになってしまうので,学問領域の拡大とか,学問の深化とか,そういったものをつねに自己評価していかないといけないと思われます。なにもわかりやすいジャーナルだけが評価ではないのですから,自分で自分の価値を定義・提議していくことをしていなければ,わかりやすいところに駆逐されてしまうのではないでしょうか。
あと10年もたったら,人口分布から考えても,東海圏に必要な大学は半分以下にならざるを得ないわけことを考えたら,ちゃんとやっていったほうが良いと思うんですけども。

3月最終週は,卒業式がありました。頑張った学生が出て行くのは毎度のことながら,寂寥感があります。とはいっても,それが社会ではあるので,そうした環境で自分と学生がどう高めあっていけるかを再出発しようと心をあらたにいたしました。

さて,新しい論文が一本公開されました。

Ellis Gartner, Ippei Maruyama, Jeffrey Chen:
A new model for the C-S-H phase formed during the hydration of Portland cements
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0008884616303921

従来のC-S-Hの構造は,Richardsonの論文に見られるように,11%RHとか,D-dryなどの乾燥条件で構造形式をとりまとめてきており,それをもとに,湿潤時の評価をおこなってきました。これは,PowersらのEvaporable,Non-evaporable water の研究以降の考え方であり,Porous Materialの考え方を踏襲しています。しかし,実際には処女乾燥化で非回復の変質がおきることもわかっており,湿潤状態のC-S-Hがどういったもので,非回復の変質が何に基づくものかを議論した論文は(ほとんど)ありませんでした。

加えて,Powersの論文やYoungらの論文にあるように,水和が停止するときのC-S-Hの構造は,C1.7SH4.0となっており,このH4.0にはゲル水が含まれるということになっていました。が,しかし,なぜ,水和物の残余空間であるゲル空間がC-S-H量とともに増えるのか,その割合がなにゆえ一定なのかは未解明のままです。

これを解決するモデルを提案したものが,上の論文です。
ある意味では,Powers,Jenningsらの考え方を全部再整理したものになっています。
また,この論文は,Jennings博士とChanvillard博士へのDedicationとなっております。
もし,論文が手に入りにくいようでしたら,メールいただければご送付いたします。

3/05/2017

フィロソフィー

Monteiro先生をお尋ねして,C-S-H研究について議論しようと思ったいたのですが,放射線影響研究で存外もりあがってしまい,昨日はあらためて,Prof. Wenkのゼミでプレゼンする機会をいただき,特に石英のメタミクト化について議論しました。
ほんとうは,カルサイトコンクリーションについても議論しようと思ったのですが,そちらは時間切れ,というか,ちょっとやり過ぎかなとおもって控えました。
結晶構造学の権威と簡単にお会いできるのは,素晴らしいですね。ちょうど,クォーツァイトの研究をやられているということでした。

こちらの博士の学生ともいろいろ話をしました。5年目ということです。こちらでは,主となる専攻とサブの専攻2つのクラスをとることが必須で,博士論文はそれほど大事ではないそうです。かれは,放射光をつかった分析で優れた成果を出していましたが,5年目でこれだけ広い知見をもっているのか,と大変衝撃を受けました。
私は,同じくらいの知識を得るのに10年くらいはかかったので。もちろん,世界最先端という環境もあるのですが,幅広いバックグラウンドを持っているということが重要なのだと思います。

博士のあり方についてもいろいろ考えさせられます。日本の博士のプロセス自体は欧州のそれと似ています。しかし,理系で手段の有用性を学問として捉えているのは日本だけではないかと。Ph.Dと博士号のフィロソフィーの違い。リベラルアーツの重要性を理系が真剣に取り組まなければ日本の大学はダメになるな,と,また思いました。「今ある技術で何ができるか」,を考える人ばっかりなのは日本だけです。外に出れば,理系も文系も関係なく,学問を納めた人間は社会が何が必要か,から考えて会社を経営したり,研究していたりすると思います。

結局,技術をどうつかうか,社会にどう貢献するのか,なにが求められているのか,次の世代に何を残すのか。

今の日本は最先端の技術さえ,取り込むことができない上,つかいこなすフィロソフィーを伝える人も少なくなってしまったように思います。
建築学が,建築の新しい価値をどれだけ探しているのか,どれくらい本気でやっているのかが改めて問われていると思います。

3/01/2017

3月に入ってしまいました。

みなさま,気づいたら正月以降,1回も更新なく3月に突入してしまいました。今,LAにおります。明日は,SFに移動で,UC BerkeleyにProf. Monteiroを訪ねます。

近況
1)放射線研究
8年間に渡ったコンクリートの照射研究が終了しました。おおよそ何が起きているかは明らかになりましたが,研究の常ですが,やればやるほどわからないことがわかります。今回,科学的根拠を明快にして新しい健全性評価フローを提案しますが,これが本当に適切化どうかは,さらなる研究が必要です。加速試験はつねに実際の現象との比較が必要であり,加速試験の限界は何かと併せて議論しなければいけません。
中性化の加速試験と実際があわないのと同じです。そもそも,中性化メカニズムちがうんですから・・・。

というわけで,新しい研究ができるよう現在,米国とも協議中。うまく日本国内でも予算が付けばよいですが,最悪,我々のサンプルを米国に渡して,研究を継続してもらおうと思っています。

なお,報告書については概要をすべて英語にして論文として出版する予定です。そちらについてもうまくすすみましたら,みなさまにご報告申し上げます。

2)原子力維持管理特集号
みなさまのご協力で,大変素晴らしい,維持管理の特集号が発刊されました。フリーです。みなさま,ぜひ,一読ください。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jact/14/Special_Issue/14_S1/_article

3)研究室
次年度は,D1が一気に3名増えます。昨年秋入学した学生と併せて4名です。今後はプロジェクトと紐付けて博士学生を増やすことを検討していきたいと思います。今,1件の案件で,文科省案件でもこの提案が可能かどうかを検討してもらうようにしています。博士にはサラリーを出し,国際公募で優秀な学生を集めることを,遅まきながらやっていきたいと思います。
学部4年は残念なことに1名でした。一緒に成長していきたいと思います。

4)その他
各種の報告書を記載しているところです。次年度も国プロ関係が多く,ちょっと気になりますが,できる範囲で粛々と,そして前進を目指したいです。









1/03/2017

謹賀新年

あけましておめでとうございます。

あっという間に年が明けました。本年もどうぞ,よろしくお願いいたします。
年を取るということは,夢を見て不断の努力をするとともに,あきらめることの繰り返しのようです。
友人のブログにも書いてありました。
http://blog.tinect.jp/?p=20565

40を過ぎたら,もう先が見えます。限られた時間の。その中で何をすべきか,しなくてはいけないかは大事な問題です。世の中,時間とその対価はもう少し見直されるべきではないか,という点も多いです。
大事なことは何かを見極めながらも,満足できる前進がかなうよう頑張りたいと思います。



12/28/2016

12月 近況まとめ

今年も、残すところ4日になってしまいました。毎年毎年、自分の想像していないようなことがたくさんおきるので、来年も何が起きるのか楽しみです。

7日 カザフスタンの研究炉で照射実験ができないかの打合せを行いました。かららの研究炉で受託を受けたことがないようで、議論が少し骨が折れました。それと、研究者なのに物事に対する真摯さ、謙虚さがないのでこりゃダメかもな、と思いました。研究者は、過去の自分のやったことについても厳密に評価しなくてはいけません。正しいものは正しい、できたものができた、でもそれとは裏返しに、自分の研究の意義がわかっている人はどこが限界で、どこが穴でどのように次にやらなくてはいけないかをわかっているものです。対人的に傲慢であっても、研究について謙虚さがないというのは、知識がなさすぎるのと同じで研究コラボの相手として最低です。

9日 教授承認のお祝いで研究室OBの寺本先生、五十嵐先生に開催していただきました。すごく小さなもので、今まで共同研究をしたことのある方だけに絞ったものでした。大変楽しい親密な会になりました。

14日 京都で科研Aの研究としてジオポリマーの研究について紹介させていただきました。材料が利用できるかどうか、っていうのは適材適所でどんなものでもどっかに使えるとは思うのですが、通常のセメントコンクリートほどの汎用性があるかというのはやはり領域は小さいように思います。私はそれよりもいったいどんな反応速度と生成物ができていて、それはどの程度に制御可能なのか、という点に興味があったのですが、AAMとGPの違いについて、おおむね理解して、基本的なところはスペインや英国チーム、日本の電中研チームにキャッチアップはできたと思います。が、それ以上の研究が必要なのか、何を目指すのは、もう少し時間をかけて、周囲状況を把握した上で考えないと出てこなさそうです。

16日 つくばで防災科学技術研究所の振動台(震動台?)で行われている東北大・高橋先生の研究を見学させていただきました。実はパラレルにやっている研究として私の試験体もかかわっています。振動台をつかって自分が実験をする日が来ることも、数年前には考えもしなかったです。

19日 規制庁に照射研究の報告を行いました。今年度、過去8年の集大成の報告書をつくらねばならず、正月返上になりそうです。ただ、この成果で今後の展開がかわってきますので、やはり一つの重要ポイントとして認識しています。

21日 今年度最後のNUCON(名古屋大学・コンクリーション研究会)。ユタ州の鉄球殻コンクリーションがアジアの全く別のところで発見され、そして、火星の話につながってきました。私は鉄球殻の人工生成という範囲で貢献しましたが、もうすぐ、論文投稿になりそうです。異なる分野で壮大なテーマに取り組むのは、放射線照射研究もそうですが、大変刺激的な体験です。

23日 補講。B3とB2の授業がありました。モルタル作品、面白かったのですが、ちょっと建築物ではなくてオブジェが多かったかな。私としては立体をつくってほしかったので、次年度はもう少し課題を変えようかと思っています。B3の建築と素材、その経年変化に関するレポートは力作ぞろいでした。みな、愛知県に建築が少ないながらも、実際によいものを見て意欲的な発表が多くてとても楽しい発表会でした。

26日 いろんな研究委員会がありましたが・・・。最後、原子力関係の先生方に現在の研究についてご報告して意見をいただきました。今後展開予定のプロジェクトについても、多角的なご意見をいただきましたので、プロジェクト提案に入れ込んでいきたいと思います。相変わらずの、馬鹿を言ったら斬る、くらいの迫力の先生で痺れました。

27日 共同研究先と水分移動に関する実験結果について議論をしました。水分移動、わかっているようでほとんどわかっていません。コンクリートの多くの構成式は限られたデータセットで議論しているので、まだまだ改良の余地があります。多孔体理論、ボルツマン・マタノ方の限界についての議論はまだまだやるべきではないかと思います。

卒論・修論時期で核心に迫るデータが多数でてきています。JCI年次やセメギに投稿してもらいたいと思っていますが、それと同時に英文ジャーナルへの投稿を修士学生でも普通に行える研究室にアップグレードしていきたいと思います。

頑張ってまいりましょう。みなさま、良いお年をお迎えすることを祈念しております。来年もどうぞ、よろしくお願い申し上げます。