6/05/2016

国際関係

気づいたら昨年と1日しかスケジュールがずれていませんでした。フィンランドのFortum社とノルウェーのIFEと研究打ち合わせのため,海外出張をしてました。

Fortum社との打ち合わせは,共通の悩みをもっていることもあって,実験データの交換で議論が活発になりました。今後,Fotrum社の実験データの評価に名大がまずは協力していく方向で議論がまとまりました。詳細はここに書けませんが,近い将来に論文化を検討しているので,そのときに議論の内容をしめしたいと思います。
名大で,セメギでも発表した電子線照射試験について,かなり大きな興味を持ってもらいました。

IFEとの打ち合わせは,今年度最後になった規制庁事業でのプロジェクトで,照射後のサンプル試験についてのつめです。今年度のとりまとめをなるべく早く行うようにというのが条件として与えられていましたので緊張感をもって進めました。おおむね想定どおりでスケジュールの約束をしてきたのですが,1点,従来の締め切り期限が守れない点があり,その点が大きな懸念点となりました。
今年度,早い時期にこの照射研究については論文化をすすめていかなくてはいけないと考えています。

3泊5日の弾丸出張でしたが,非常に有意義でした。頭が英語になったので,他の海外の研究者とのメールが進みました。時間が近いところにいたのも議論が加速した理由とは思います。時間というのは大事なファクターです。

9月に英国,Surrey大学のMcDonald先生のところに2週間,研究目的で滞在することになりました。その間,セメント化学の専門家の先生方ともお近づきになれそうです。まさか,リチャードソン博士とC-S-Hについて議論する日がくる,とは予想だにしていませんでした。敷居が高くて痺れます。

11月8-10日にInternational Committee on Irradiated Concreteの国際会議を名大で開催します。政策的にセンシティブなデータも出てくるので会員制・クローズドが基本ですが,オープンセッションも作りますので,原子力関係の方でご興味あるかたは是非,当方までメールいただけたらと思います。また,会員希望の方も是非。米国NRCも来日予定ですので,現在,日本の規制庁に出席を打診中。

チェコ工科大との共同研究のデータが出始めました。7月にStemberk先生が来日してくれるようなので議論が開始されます。補修コンの界面の問題で,結構,最近急に論文数が増えたトピックでもあります。境界条件があいまいなのでデータ整理が難しいです。日本だと上田多門先生のところのデータが英語でよく出ていますし,よい成果が出されていますね。参考にしなくては。

浜岡プロジェクトでのORNLとの共同研究の方向性の議論が停滞していたので,少し気合を入れました。面白データについては早めに論文化して,議論を深めていきたいですね。今年度研究は今月から始動です。

などなど,だいぶん,各国との共同的研究が進みはじめた状況です。

5/13/2016

新年度

新年度といっても,もうGWをすぎてしまいました。間があきすぎですね。
これでは,コンスタントに情報発信どころか季刊誌くらいになってしまっています。


論文関係の近況
論文がいくつか公開になりました。

Journal of Advanced Concrete Technology誌
A Numerical Model for Concrete Strength Change under Neutron and Gamma-ray Irradiation
この論文は,放射線環境下にあるコンクリートが変質する様子を予測するもでるで,CCBMと放射線輸送コードANISNを連成した世界で初めての経年変化予測プログラムです。すなわち,放射線・熱・水・水和連成プログラムで,将来的には応力とも連成させる予定です。
かなりマニアックではありますが,原子炉内や処分施設のコンクリートの変質を予測することができますよ,ということを示しました。多くの方との連名になっています。

Cement and Concrete Research誌
Impact of aggregate properties on the development of shrinkage-induced cracking in concrete under restraint conditions
こちらは,石灰石骨材を入れたコンクリートが拘束されるとなぜ,巨視的なひび割れの本数がすくなくなるのか,とうことを解き明かした論文です。実験ですべておいもとめたかったですが,骨材を変化させるとどうしても,すべてのパラメータ(ヤング率,収縮,遷移帯)が変化してしまうので最後は数値計算に頼りました。RBSMで計算するとこういうことを浮き彫りにできるよ,っていうことがいえる論文でもあります。

その他,5月9日のセメント技術大会では,「Electron irradiation-induced volume density change of natural rock minerals, a-quartz, orthoclase, and muscovite」を発表しました。このために聞きに来てくださった先生もいて,大変うれしかったです。こちらも,なかなかマニアックな論文です。


セメント技術大会には,セメント新聞とコンクリート新聞が置かれていましたね。コンクリート新聞の方では,まだ成果もでていない委員会ですが,当方が委員長をしているC-S-H研究委員会について取り上げていただきました。どうやって盛り上げていくかはまだまだ課題なんですが,少しずつ前進していこうと思います。

セメント新聞の方では,ゼネコンの方からみたセメント技術大会への辛辣なコメントがありましたね。スラグをつかった研究を行っている企業にコメントを求めるあたり,新聞社としてもそういうコメントを狙ったとおもうのですが,ポジショントークだと思った方がよいですね。あまり残念にもカッカする必要もないでしょう。自分の企業が収益源をまもろうとするのは当然の行為であり,利害が対立して辛口意見がでるのもまたしかり,かと。

一方,JCIも含めてコンクリート業界がタコツボかしているのは間違いなく,海外との知見交流もかつてほど大きくない状況を考えると,ガラパゴスかして亀のように数万年生きるミラクルがおきるかもしれないが,島がそのまま干上がることもあるだろうな,と思います。

近年は,文科省方針で大学教員は海外出張が極端に間接的に制約されているので,国の研究機関の人などが外にでていかないと海外の動向はとってこれません。国際会議というよりは,キーパーソンがでてくる会議に行って直接話をしてくるのが大事なわけですが,そういったことができない環境になっています。研究大学院が学部の授業で研究の質も低下する,といういかにもな状況になっているのは非常に残念です。やれやれ。

さて,セメント研究なりセメント開発に目をみれば,海外ではキルンの維持,人材育成も含めて利益とは別にも新しいセメントを開発してまずは動かしてみようという動きがあったり,ジオポリマーについても,まあ,限界はあるとおもうけどでもなにかできるかもしれないから研究しようぜ,やるならマジでやろうぜ,という活動が広範に行われていますが,そういうこと自体が日本では少なくなっているように思います。当座の研究として利益がもくろみやすい新設工事主体になるのは日本も海外も一緒ですが,そういった点でも研究の位置づけってもう少し広くみた方がよいよね,それはこういうことだよ,って示す大学教員ももっと多くならないといけないとは思います。

もう少し過激に書きたいところもあったんだけど,とりあえず,ふんわり,こいつ何かいてるんだろうな,くらいで切り上げようと思います。では。






3/30/2016

ASR

昨日は、日本コンクリート工学会のアルカリ骨材反応を有する構造物の性能評価と維持管理に関する国際ワークショップでした。カナダ・HydroQuebeck社の維持管理の最先端な取り組み、その膨大な解析事例、フランス・EDF社の原子力とダムの維持管理事例について紹介がありました。骨材選定システムを主軸としている時代から変化し、いざというときに反応した後にどのようにつかっていくか、という包括的な研究が世界ですすんでいることを強く印象づけた大変意義深い国際会議だったと思います。
私は、パネルディスカッションの話題提供者として原子力の維持管理の基本的な枠組みと伊方原発の取り組みについてだけご紹介しました。
HydroQuebeckのGocevski博士の印象的な言葉
・材料の膨張じゃなくて、構造物の要求性能を満足しているかどうかが、大事なんだ。ゲルがでてたって使えるものは使えるんだ。
・コンサルタントはすぐにリスクを騒ぎ立てて金稼ぎをする。真のエンジニアが自分で判断しなくてはいけない。だから、電力事業者のエンジニアは自分の構造物を一番理解していないといけない。
・大学とプロジェクトを組む、学生と一緒に研究する、人材育成を行ってこそ新しい技術をつかっていける社会が育ち、社会が豊かになるんだ。経営者は無駄だというが社会の中に、責任を持って判断できるエンジニアが育つことが大事なんだ。そのことを考えたら、人材育成を含む研究投資なんてタダのようなものだ。
久しぶりにすごみのある研究者でした。この人に会えただけでも昨日は幸せな日でした。

3/23/2016

近況

諸行無常。

牡蠣殻は牡蠣殻で落としていかないといけないし、前進のためには破壊もなくてはいけないわけですが、そうはいっても、うまくいっているものが壊れるとか、チームだなくなるっていうのはさみしいものです。いやあ、うまくいっていると思っていても、足元から壊れているものなんでしょうけど、こんだけ頑張ったんだから、もう少し続けばよいのに、と思うことがままあります。

25日は卒業式です。研究室の体制もまた一段と変化し、新たな1年が4月からスタートです。

変化するとわかっていても、ちょっとずつ継続に向かって努力することに意味があるんかな、とは思って頑張っていこうと思います。



さて、最近は報告書で時間が謀殺されながらも、爪に火をともすように時間をかき集めて、論文の破片をつくって、つなげて、投稿してきました。

現在、審査中の論文は、
・骨材によるひび割れ性状変化:CCR:major revision 4回目
・SAXSによるセメント中の微細構造変化:CCR:査読中
・RC構造物の固有周期変化について:JACT:査読中
・放射線照射によるコンクリートの物性変化に関する数値解析:JACT:査読中
・収縮低減剤の作用メカニズム:JACT:査読中

といった感じです。収縮低減剤関係では、さらに2編書きたいと考えていて、SAXSで1編、骨材の放射線影響1編、規制庁プロジェクトサマリ1編を2016年度中に投稿できたらよいな、と考えています。

学生からは、メソスケール解析(RBSM)、チタンナノ粒子による微細構造変化、収縮低減剤の濃度依存性、ペーストの収縮の早期脱型、水分移動、などについて投稿してもらえたらと思っています。


4月からの研究動向としては、パリ東大学の学生が半年滞在して実験をしまくります。収縮低減剤関係。その他に、英国、ベルギー、米国での大学や研究機関との国際共同研究の準備が進んでいます。COST ACTIONへの参加も検討していきたいと思います。

さらに浜岡プロジェクトが大々的にスタートしますし、11月には国際会議を名大で開催の予定です。ASRに関する数値解析についてもスタートします。

ちょっとプロジェクトを引き受けすぎかな、と思ってもいますが、ありがたいことですのでできる限り貢献していきたいと重みいます。




3/02/2016

蛎殻

今、いくつかの本を同時に読んでいますが、リラックスものとして、何度目かになるのですが「坂の上の雲」を読んでいます。司馬遼太郎の歴史本は、そのとき自分が何をしているかによって、ちょっとした言葉にひっかかるものがあって好きです。

船は航海すると船底に蛎殻がつく。人間も同じで知識が増えると同じように蛎殻のようなものがつき、あたまでっかちになって本質と別のところで判断するようになる、という記載があります。

日本人は、特にその傾向が強い民族で自分で秩序を破壊することがほとんどありません。なのでルールを作るときには、繊細な配慮が必要です。とりあえず今は、で作ったルールが至るところ似残っているのですが、どういうわけかそれを壊したり改正したりはせず、抜け穴をつくるとか、解釈で載りきろうとする民族です。
といっても、ぎりぎりになるといきなり爆発して戦争したり、暴動を起こしたり、大変なことをしでかすのも特徴ですから、この気持ちの切り替えをうまく把握しないと良いルールは作れません。

さて、某指針が作られつつあります。気になる部分が1点ありまして、本当にこの項目をつくってよいのか、と常々思っていますが、やはり賛成する気にはなれません。
ひっくり返すことができない民族であるからこそ、その運用を適切に行うことが年長者やリーダーのやることではないかと思います。
書くのでは無く、まずは運用としたらよいんじゃないかと思うんですけどね。

個人的には大変大きな心残りができそうです。

2/25/2016

廃炉材研究

そういえば・・・。


https://www.chuden.co.jp/corporate/publicity/pub_release/press/3259170_21432.html

浜岡サイトの廃炉プロセスが一段階すすみました。
同時に廃炉材を用いた研究にかかわる環境変化も整備され,はれて,浜岡原発1,2号を用いた廃炉材研究がスタートします。エネ庁側でも本件に今年度予算がついています。

経年変化した材料性能評価に基づく保全と高経年対策の高度化をもくろみます。最大の目標は,コンクリート側研究では耐震性能評価に材料物性評価をどのように関連づけるか,です。

とはいえ,楠先生に率いてもらった国プロ・システム安全研究で議論になったデータをまずは蓄積しよう,ということになっております。

こちらも最低4年の大型プロジェクトになる見込みで,海外との共同研究についてちゃくちゃくと(ゆっくりではありますが)進めています。また,米国,スペインでの廃炉研究での知見交換も期待できますので,広がりある検討になればと思います。

こういった基礎研究ができることが日本の強味といえるんじゃないか,と思います。

個人的には指針類への落とし込み,日本全体での知見共有,海外への国際貢献,について関係者とさらに議論していきたいと思っています。

2/18/2016

修論発表会終了

修論発表会が終わりました。学生行事はおおむね終わりです。
発表のうまい下手はありましたが、最後の最後に非常に貴重なデータや仮説が絞り出されて、プレゼンで示されました。努力の賜物だと思います。痺れました。
橋本君のおかげで、1H-NMR relaxometryの最先端研究にキャッチアップでき、研究室に新たな基盤ができました。そして、世に論文として出されているデータの問題点、データ解析の限界、今後の課題が明らかになりました。また、研究テーマがモンモリロナイト、MCM-41、Vycorグラスなどにも拡張され、それが問題解決に大きく役立ちました。いずれも繊細な測定でそれを実施可能にしたのは、橋本君の貢献が大きいです。(裏では、たくさん失敗したし、何度、厳しく実験手法の確認を指導したことか・・・)
酒井田君のおかげで、湿度測定の信頼性についてやっと確認できました。伊藤君の時代からのコンクリート中の湿度計測で、すでにセンサだけでも200万くらい無駄にしてきました。なんどもなんどもやって、やっと現状の湿度センサの限界と(研究上の)の湿度測定についての手法が確立しました。再現性確認に4年、共同研究先も含めての研究としては足掛け7年くらいかかりました。残念ですが過去に発表されていて信頼できる湿度測定結果は少ないです。スペインチーム(Azenhaら)、フランスチーム(Poyetら)も間違っているとおもいます。信頼できるのは、(私の知る限り)昔の椎名先生の湿度計測結果、および、橋田さんの若材齢の計測結果です。湿度センサはコンクリート中で継続利用すると、どういうわけか必ずドリフトします。市販されている高いものからやすいものまで10種類以上確認しましたが、いずれもダメです。結露の問題だと思いますが、生き残るものもあるので、取り出した後、校正機で確認して問題ないもののデータだけ論文に採用するという手法はありかもしれません。ただ、そんなリスクはふつうはおかせないですね。
Person博士が自己乾燥研究で、年に何回NISTで校正しているか、と聞いていたのを思い出しました。それだけドリフトするということですね。
それと、ASRの湿度依存性についての研究が、ぎりぎりで軌道にのりました。この成果は、もう数年かかりますが、この礎もきっと花開くでしょう。
本当は、ここからもうひと踏ん張り、論文を書いて成果としてとりまとめてもらいたいのですが、もったいないことにここで終わりそうです。ぜひ、後輩の学生には、この背中を見てつづいてもらいたいです。
両君のおかげで今年度も丸山研は着実に一歩進むことができました。