1/03/2017

謹賀新年

あけましておめでとうございます。

あっという間に年が明けました。本年もどうぞ,よろしくお願いいたします。
年を取るということは,夢を見て不断の努力をするとともに,あきらめることの繰り返しのようです。
友人のブログにも書いてありました。
http://blog.tinect.jp/?p=20565

40を過ぎたら,もう先が見えます。限られた時間の。その中で何をすべきか,しなくてはいけないかは大事な問題です。世の中,時間とその対価はもう少し見直されるべきではないか,という点も多いです。
大事なことは何かを見極めながらも,満足できる前進がかなうよう頑張りたいと思います。



12/28/2016

12月 近況まとめ

今年も、残すところ4日になってしまいました。毎年毎年、自分の想像していないようなことがたくさんおきるので、来年も何が起きるのか楽しみです。

7日 カザフスタンの研究炉で照射実験ができないかの打合せを行いました。かららの研究炉で受託を受けたことがないようで、議論が少し骨が折れました。それと、研究者なのに物事に対する真摯さ、謙虚さがないのでこりゃダメかもな、と思いました。研究者は、過去の自分のやったことについても厳密に評価しなくてはいけません。正しいものは正しい、できたものができた、でもそれとは裏返しに、自分の研究の意義がわかっている人はどこが限界で、どこが穴でどのように次にやらなくてはいけないかをわかっているものです。対人的に傲慢であっても、研究について謙虚さがないというのは、知識がなさすぎるのと同じで研究コラボの相手として最低です。

9日 教授承認のお祝いで研究室OBの寺本先生、五十嵐先生に開催していただきました。すごく小さなもので、今まで共同研究をしたことのある方だけに絞ったものでした。大変楽しい親密な会になりました。

14日 京都で科研Aの研究としてジオポリマーの研究について紹介させていただきました。材料が利用できるかどうか、っていうのは適材適所でどんなものでもどっかに使えるとは思うのですが、通常のセメントコンクリートほどの汎用性があるかというのはやはり領域は小さいように思います。私はそれよりもいったいどんな反応速度と生成物ができていて、それはどの程度に制御可能なのか、という点に興味があったのですが、AAMとGPの違いについて、おおむね理解して、基本的なところはスペインや英国チーム、日本の電中研チームにキャッチアップはできたと思います。が、それ以上の研究が必要なのか、何を目指すのは、もう少し時間をかけて、周囲状況を把握した上で考えないと出てこなさそうです。

16日 つくばで防災科学技術研究所の振動台(震動台?)で行われている東北大・高橋先生の研究を見学させていただきました。実はパラレルにやっている研究として私の試験体もかかわっています。振動台をつかって自分が実験をする日が来ることも、数年前には考えもしなかったです。

19日 規制庁に照射研究の報告を行いました。今年度、過去8年の集大成の報告書をつくらねばならず、正月返上になりそうです。ただ、この成果で今後の展開がかわってきますので、やはり一つの重要ポイントとして認識しています。

21日 今年度最後のNUCON(名古屋大学・コンクリーション研究会)。ユタ州の鉄球殻コンクリーションがアジアの全く別のところで発見され、そして、火星の話につながってきました。私は鉄球殻の人工生成という範囲で貢献しましたが、もうすぐ、論文投稿になりそうです。異なる分野で壮大なテーマに取り組むのは、放射線照射研究もそうですが、大変刺激的な体験です。

23日 補講。B3とB2の授業がありました。モルタル作品、面白かったのですが、ちょっと建築物ではなくてオブジェが多かったかな。私としては立体をつくってほしかったので、次年度はもう少し課題を変えようかと思っています。B3の建築と素材、その経年変化に関するレポートは力作ぞろいでした。みな、愛知県に建築が少ないながらも、実際によいものを見て意欲的な発表が多くてとても楽しい発表会でした。

26日 いろんな研究委員会がありましたが・・・。最後、原子力関係の先生方に現在の研究についてご報告して意見をいただきました。今後展開予定のプロジェクトについても、多角的なご意見をいただきましたので、プロジェクト提案に入れ込んでいきたいと思います。相変わらずの、馬鹿を言ったら斬る、くらいの迫力の先生で痺れました。

27日 共同研究先と水分移動に関する実験結果について議論をしました。水分移動、わかっているようでほとんどわかっていません。コンクリートの多くの構成式は限られたデータセットで議論しているので、まだまだ改良の余地があります。多孔体理論、ボルツマン・マタノ方の限界についての議論はまだまだやるべきではないかと思います。

卒論・修論時期で核心に迫るデータが多数でてきています。JCI年次やセメギに投稿してもらいたいと思っていますが、それと同時に英文ジャーナルへの投稿を修士学生でも普通に行える研究室にアップグレードしていきたいと思います。

頑張ってまいりましょう。みなさま、良いお年をお迎えすることを祈念しております。来年もどうぞ、よろしくお願い申し上げます。


12/24/2016

補足

MITが新しい建築をつくるから,といって研究者を公募した時に,日本の建築の先生方でその公募に残る人ってイメージできますか?
若い人にはそういう人材を目指してもらいたい,と思っているんです。自分もそうなりたいし。

12/20/2016

建築雑誌「建築学におけるグローバル化」

「今後の建築(材料)研究者についての意見」ロングバージョン

1.はじめに
今後、日本の大学の建築学科はどのようになっていくだろうか。日本の大学は、選択と淘汰を選ばず研究者の競争は抑制され茹で蛙状態に近いが、そろそろ選択と淘汰、しかもかなり厳しいものを選ばなくては国際的にも国内産業的にも必要とみなされないのではないか。そのためには長期的な方向性を設定した上で、中・短期的に選択と集中によって成果を評価しつつその結果を踏まえて動的に組織を変更できる柔軟性と意思を継続する強さが必要である。その長期的な目標として、一つは新しい建築のための開かれた研究フォーラムとしての建築学科、またもう一つはそれを水平展開する国内産業に根ざした建築学科が考えられる。今後の建築産業は国内市場の縮小と産業の海外市場への進出を考え、おそらく5%程度の大学が国際研究フォーラム型で研究と海外進出用の人材育成を、残りが国内人材育成のための国内産業型をとることになろう。私の意見はこの5%の国際研究フォーラム型の組織とそこで必要とされる研究者についての見解である。

2.概観
住宅建築はそこにある土地、地域、文化とともに発展してきた。材料はその地域にあるもので構造・環境・意匠を支えるものが利用され、構造はそこで課題となる自然災害、環境は一年を通じた気候の変化に対応することを目標とした。神社仏閣、城郭などは信ずるものへの厳かな気持ちや主の野心を渡来された技術により反映することもあって、新しい技術は先進的建築物でまずは試された。住宅建築は経済性を根拠に土地的な結びつきが強いものの、長期的には先進的建築を中心に国際的な技術動向の影響を受け、取捨選択後に緩やかに住宅建築技術に反映されてきた。すなわち、従前より一部の国際的なフォーラムと一般建築のための技術伝達を別のものとして機能させることは行われてきた。
戦後の、特に高度経済成長期以降の建築研究トレンドを外観するには、建築研究所から公開されている建築研究報告がよいかもしれない(http://www.kenken.go.jp/japanese/contents/publications/report.html、2016年9月25日確認)。ここで示されている研究課題は実に先進的で今日的である。性能設計手法、さまざまな外力に対する構造・材料開発、鉄筋コンクリート造建築物の超軽量・超高層化技術、アルカリシリカ反応を含む耐久性研究、いずれも数十年先を見据えた取り組みで、いずれもが今日の礎となっている。当時の研究者の国際性、先進性、創造性の素晴らしさがよく分かる。残念ながら2000年以降、さまざまな理由があるのだろうが、総合技術開発プロジェクトの数・密度は低下傾向にある。よく言われることだが、研究タイトルだけ確認すると、40年前の建築学会大会のなのか、2016年の大会なのかはほとんどわからない。現在の研究は過去のテーマで飽和し、新機軸があるとは言い難い。
この間の各研究テーマは、多分に国際的な動向を踏まえたビジョンの明確な研究が多い。ビジョンが具体的であり、それが日本に即したものであるほど国際的な名声を博している傾向がある。また、研究が国際的に評価されているものは、研究自体を国際的な場で発表されていたことに留意する必要があろう。当時の状況を察するに、極一部の研究者に情報・研究の集約が行われ、国立研究所(国研)の研究者が国際的な場でのプレゼンス向上に大きく貢献していた。現在の欧米の国研の多くも、国のプロジェクトを国研のチームが先導し、そこに大学の研究者が実質的な研究プレーヤーとして参画する。国研の研究者が国際的な情報収集・交換を行い全体のビジョン策定を行うとともに、プレゼンス向上のための発表を行っており、自由度の大きい国研の研究者の重要性は非常に高い。残念ながら日本の今の建築研究業界における状況とは大きく異なる状況となっている。

3.今後について
建築の多様化・国際化が著しくなっている今日において、建築技術が求められている分野は多い。宇宙構造物、洋上・海底構造物、大深度地下空間構造物、エネルギープラント構造物などがそれである。これらはテラフォーミング、資源・エネルギー開発、国土防衛などと密接に関わっており、いずれも将来の世界と日本において重要技術であるが、建築の技術者がイニシアチブを持つ場面は少ない。海外であれば、デザイナーだけでなく技術者自体もさまざまな将来ビジョンを競い合っている状況においていかにも寂しい状況である。また、材料開発においても、CO2低減の観点から、マグネシウムカーボネートハイドレイト、カルシウムサルフォアルミネート、カルサインドクレイなどを用いたセメントが開発され実用化寸前になっており、これらの中国、中東、アジアへの展開が進んでいるなか日本の研究者はほとんど関与していない。
ISOなどの標準化は、いかにも公平な形をとってはいるものの、実質上、デファクトスタンダードを公的に保護する新しい経済戦争の場となっている。このことを理解した対応が日本から取られているとは思われない。本来であれば、大学研究者、政府、材料開発を担う企業が一体となって販路を拡大できるように取り組むべきであるが、そういったビジョン、商材、ビジネスマインドがやや乏しいように見受けられる。材料開発研究は、大学研究者の場合、健全なビジネスマインドを伴って製品化、市場化、標準化、と段階を踏み産業に発展していくが、こうした適切な野心を工学研究の基本的動機として建築の場で学ぶことも日本では少なくなっている。模範的人物・事例が少ないからであろう。日本では研究と市場が乖離する傾向や規制のための実験が増える傾向がある一方、純基礎科学的研究も行われることが少ないため、工学的研究の名のもとに非常に偏った科学的見解が社会に展開される事例も散見されるようになってきた。科学的知見による前進さえも少ないのが現状である。この傾向は建築基準法の体系とも深くかかわっており、新素材開発コストが市場化の手前で大きいのが建材の特徴であり、その次においても、普及価格に持っていく道も険しい。
こうした状況を変化させるためには、規制緩和と責任の明確化、責任によって生ずるフィーの増大といった建築に関わる自由化が不可欠と思われるが、残念ながら日本社会が望まないのか、責任の所在はあいまいのままな体系が好まれる傾向にあるようだ。

大学の研究者や学生がどのような将来像を見ているのか、あるいは見るべきかは実に重要な課題となっている。学生諸君は現状に疑問を持ち、その因果関係を読み解き、そこにビジネスチャンスを見ることができるだろうか。
現在の建築学における課題の多くは、従来の建築産業内部に留まって解決できる課題ではなくなっている。都市規模の計画・開発では海外では商社が活躍し、建築設計のデジタル化ではGoogle社(正確にはスピンアウトしたFlux社)が人工知能やビッグデータを用い、法的問題も含めた住宅設計を実用化しつつある。材料開発はマテリアルサイエンス分野の研究であり、新しい建築の鍵は、今や常に建築の外にある。そのため、建築分野外との技術者・研究者と知見交換や協業がこれまで以上に必要とされており、そのためには基礎教養、すなわちリベラルアーツが必要不可欠となっている。数学・物理・科学・歴史・文化への深い洞察はどのレベルの建築研究にも必要である。また、研究者間において一定以上の技術上の知見交換には相互にWin-Winの関係を求められる。一段と深い「尖った」知識と実験データが必要不可欠であり、こうした「尖った」成果への執着や評価が建築界隈で重要視する必要がある。
新しい建築ビジョン策定や問題解決の観点から、国際的な人脈・研究ネットワークは重要である。特に先進的情報を分野を超えてタイムリーに確保できるネットワークを有するかどうかで研究成果やその評価は大きく変わる。世界の最先端研究は、選択と淘汰を受け極めて限られたものになりつつあるので、そうした研究拠点といかにネットワークを構築するかが重要である。欧米では大学間で優秀なポスドクやPh.D studentを交換したり、共同で教育・研究したりすることでネットワークを深めることも行われている。交換留学制度、JSPSの各種の留学制度や人材交流制度は、多面的・戦略的に運用すべきものであり、従来、属人的でああったこうしたネットワークも、国内研究者間で共有していくことが望ましい。日本でも、人の活用を真剣に考える必要がある。博士過程というのは、社会にとっても大学にとっても、知識を学生(=研究者)と生産する場であって、学生が授業料を払って学ぶ時代はとうの昔に終わっている。しかし、その認識さえ、博士学生を増やせという文部科学省は変えることができずにいる。

将来生き残る組織は、選択と集中、その裏で切り捨てを行う必要が出てくる。その根幹は、建築学が必要とされる社会、その時に必要となる技術と知識、組織が受けたい社会からの評価、輩出したい人材像、から導き出される将来像とそれを実現するための手段、とくに柔軟な人事と評価システム、である。そのためには、その組織の理念と哲学が必要である。オリジナリティを追求し、各大学がリトル東大ではない何かになることで、日本国の中における建築学の冗長性や柔軟性が獲得できる。差別化を恐れ、平等という名の均一化を保つことでは撤退戦を凌ぐことは残念ながら難しい。教育には連続性が、研究には飛躍が必要だが、我々は教育と研究を変える勇気が試されている。

最後に余計なお世話を。日本の建築若手研究者は、タイムリーに日本の研究を国研の研究者に伝達すること、国際Journal論文として引用可能な形に残しておくこと、そして国際的な委員会の場などで貸し借りを作っていくことがまずは大事である。国の税金で研究をしている以上、知識を日本国に反映することはもとより、国際的な社会でも貢献することが望まれている。それは、国際的な場での議論によりレバレッジを利かせて研究効率をあげることができるからである。既往の研究論文を読まず、40年前と同じテーマを同じ方法で取り組むために税金があるのではないし、素材を変えただけで新しいテーマだと臆面も無く言うことは成熟した国の研究者のやることではないことは知っておいてほしい。つねに前進とはなにかを自問してほしいし、その答えは論文の形であってほしい。そして少し成長したら、国のプロジェクトなどで国際共同研究を行うことや、分野を超えた研究者を率いた研究テーマに率先して提案してほしい。これらのポジションに立つ研究者になること自体が、一朝一夕にできるようなものではないが、まずは、一人の尖った研究者として認められることを目指したらどうだろうか。



11/16/2016

近況 20161116

さて、時間が立ってしまいました。最近の活動について、ざっと・・・。


10月26日にNIMS(Natioinal Institute of Material Science)で講演を行いました。セメント化学の知見がインフラや建築ストックの活用にどのように活かせるかということで、私の経験をもとにマルチスケールな視点の研究が重要であることがいかに大事か、という点で講演させていただきました。合わせて、NIMSの研究設備を拝見させていただき、従来、金属、複合材料、ポリマー、粘土などに利用されてきた研究設備は十分、セメント系材料の微細構造分析に利用できるということを議論しました。
次年度は、Richardson博士やMcDonald博士も来日していただけるという話もありますし、なんらか、東京でシンポジウムなどができたらよいな、と考えています。

10月から、ASRの影響を受けた構造解析に関する研究を受託することになりました。OECDのプロジェクトに規制庁が参加する関係で、私も少ないながら、知見貢献させていただくことになりました。あまり、難しいプログラムを開発することは考えておりませんが、シンプルで効果的なモデルの開発ができたらと思っております。

11月7日~11日は、名古屋大学で、International Committee on Irradiated Concreteを開催いたしました。今回は、8カ国、33名の参加がありました。9日には浜岡原子力発電所で行われているコンクリートプロジェクトに関連して視察を行い、地方紙にもその件が取材されたりと、アクティブな活動を行いました。また、次年度の開催はチェコに決まりました。同じテーマを3日間みっちりと議論するというスタイルは、かなり、効果的です。研究者間が打ち解けて、かなり率直な議論ができますし、誰がどういうことを考えているか、もよくわかります。また、今回は、米国、スペイン、日本の規制庁にも参加してもらったので、今行っている研究がどのように規制に反映されうるか、今何がわかっていなくて、今後なにを研究しなくてはいけないか、など今後の方針なども議論されました。

この間、裏では二国間、多国間の共同研究打合せも裏で行われ、日本としても複数の国と共同研究の可能性について打合せしました。
また、EU,米国などで実施される大型プロジェクトの情報なども入ってきました。全部で6つくらい伺ったと思いますが、そのなかの幾つかについては、コンサルタントの形で参加することになりそうです。研究の実施者というよりは、有識者として研究をガイドすることでも国際貢献できるのは光栄なことです。

さて、一方で、2本の論文が公開になりました。


Multi-scale Review for Possible Mechanisms of Natural Frequency Change
of Reinforced Concrete Structures under an Ordinary Drying Condition
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jact/14/11/14_691/_article

この論文は、構造物の固有周期が変化する要因として考えられる原因を原子スケールからメータースケールの問題までマルチスケールでレビューし、なにかを議論したものです。また、それぞれのスケールでどのような研究が今後必要なのかについても明らかにしました。そもそも、原子スケールの研究と実際の構造物のスケールをどのようにリンクすべきかはずっと頭の中にあったのですが、それをやっと文章の形でまとめることができました。個人的には結構気に入っている論文です。



Change in Relative Density of Natural Rock Minerals Due to Electron Irradiation
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jact/14/11/14_706/_article

こちらの論文は、電子線照射によって岩石鉱物のメタミクト化(アモルファス化、結晶が壊れる現象)について議論したものです。長石類も体積膨張する点、粘土鉱物であっても堆積膨張する点があきらかになったこと、電子線照射によって得られた状況と中性子照射によって得られた体積は大きくことなること、照射の最中のThermal Annealingの影響が非常に重要であることなどを議論した最初の論文といえます。名大の武藤先生と昨年からコラボさせていただいた研究が早速花開きました。
放射線影響下におけるコンクリートについても重要な知見を与えています。


10/22/2016

近況 20161022

職位がかわったからといって、突然何かが変わるものでもありませんし、仕事がかわるものでもありません。とはいいつつも、周りの状況は刻一刻とかわっており、研究状況も含めて猛烈な変化があってちょっと動揺しています。

研究上での進捗を中心として、近況は以下のような感じです。

1.Small Angle X-ray Scatteringを用いて、セメント硬化体中の乾燥時のC-S-Hの凝集構造の変化について議論しました。同様な論文は、Chiangらのものがあるのですが、かれらは、WAXS領域を測定していませんし、どういうわけか彼らが指摘するピークはどうやっても出てきません。そのため、別の観点からの議論を行って、Discフラクタルモデルを用いることで、C-S-Hの凝集構造の変化とその中に存在する層状構造が乾燥時に動的に変化するデータを示すことに成功しました。

Microstructural changes in white Portland cement paste under the first drying process evaluated by WAXS, SAXS, and USAXS
http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0008884616301144

共同研究を実施していただいた、共著者の旭化成の松井さん、坂本さんには足掛け6年の長きに渡り、測定、議論をさせていただき感謝申し上げます。本当に長かった。

2.英国で実施した、1H-NMRのCPMGシーケンスについてやっと名大で測定が可能になりました。これでさまざまなデータについて議論ができます。英国で議論した際、ハイデルベルグが出しているホワイトセメントのFeの量が議論になりました。日本の太平洋セメント社(今は、海外産に変化してしまった。)のホワイトセメントは、Feの含有量が小さく、NMR測定にベストな製品と考えられます。研究用途に使うのは想定外かもしれませんが、非常に貴重な研究リソースを失ったのは大変残念です。

3.M2の張くんの研究で、やっとマスコンのひび割れ予測が有限要素法でできるようになりました。破壊エネルギーの時間依存性と塑性変形の考え方、また、温度履歴に依存する物性を適切に評価すると、予測できるという結果になりました。現実をどれだけモデリングするか、というのは常に課題になるのですが、面倒くさがり屋の私共としては、これはどうも考えなくてはいけない、というギリギリのところの現象がいくつかあきらかになったので、論文化できると考えています。Concrack5で概要を発表します。

4.時間と体調マネジメントは常に重要な課題です。もう、無理な会合は無理と言って休まないとこわいことになってしまいます。関係者のみなまさ、ご迷惑をおかけしますが、どうか、ご了承のほどお願い申し上げます。

5.私は音が苦手でした。とくに読書や研究の作業をしているときの音楽は邪魔でしかありません。ただ、最近、電車を含めた公共機関の輸送での騒音がかなり自分の心理面のストレスになっていることを発見しました。(その傾向は飛行機の耳栓で感じてはいたのですが・・・。)その為、移動時に音楽を聞くようになりました。40年生きてきて新しい展開で自分でも驚いています。

6.移動時に論文を読むことが多かったのですが、これですと自分の知識が絞られるばっかりで、なんだか人間ちっちゃくなってしまいそうなので、小説や新書を読むように変えました。論文は大学の作業の合間に読むようになりました。最近読んだのは、村上春樹の「女のいない男たち」でした。久しぶりの短編集です。ねじまき鳥クロニクルあたりから、男女間の絶望的な境遇について記載される傾向が増えてきていましたが、これはその濃縮版です。基本的にスタンスが諦観からスタートしているので、テンションによっては読めないものもあったのですが、最近読了しました。
人間関係には不可逆なものが多く、ターニングポイントは日常に沢山転がっています。自分のどうしようもない怒りとか、欲望とか、野心とか、そういったものを客観視しなくてはいけないと思ってもできない状況を村上春樹の言葉で置き換えて説明してもらったようです。ただ、もちろん解決にはならない。40もすぎると、いろんな哀しいことも起きるようになりますが、そういうのはどうやって体に馴染むのを待てるようになるんでしょうかね。

10/15/2016

ご報告

遅くなりましたが、この度、同じ所属する大学で教授となりました。引続き、トゲトゲした研究ができるよう、頑張ってまいります。

今後の豊富としては大学も生き残りをかけた撤退戦の序盤戦がそろそろおわりそうな感じですが、今後の中盤戦に向けた議論と方針作成、全体の戦略について思うところがありますので、みなさまと議論していきながら、未来に向けて耀環境をもつ大学に少しづつ努力したいと考えております。

研究面においては、建築材料学、セメント科学といった閉じた社会ではなく、他の分野とのコラボレーションができるような基礎環境の醸成とコラボレーションによる実績を積み重ねたいと考えております。近々の研究分野としては、岩石の放射線によるメタミクト化、コンクリーションメカニズムの解明と応用、無機材料におけるマルチスケールシミュレーション、触媒、などがテーマになっておりますから、その点で一つ一つを大事に成果を出し続けていきたいと思います。また、国際的な研究ネットワークもでき始めていますので、そういった中でのより先端的な研究とそれを通じた学生教育に邁進したいと考えています。

社会連携・貢献においては、私の研究者としての立ち位置も概ね見えてきたところでもあり、また、今後は人が少なくなることから、他の人とかぶるようなことはあまりしないでおこうかと考えています。それぞれが、自分の良さ、強み、そして適合性を勘案して楽しく邁進できる方向性を模索したいところです。前時代的に、皆が順番になにか上の人間に指名されて労働が課されるというような形のルールについては、今後は学内も含めて問題点をあきらかにし、重要性とのバランスで実施の意義、重要性、必要性の観点から見直しを勧め、みなが適切に前に進められる条件を見定めながら、前向きな活動をしていきたいと思います。

今後とも、どうぞ、よろしくお願いいたします。