翌日は,KjllerのIFEを訪れた。こちらにはJEEP2という研究用原子炉がある。
ここの原子炉は重水炉で,γ線量が中性子に比較して小さいので,照射実験をした時にコンクリートの温度が高くなり過ぎないという良い点を持っている。日本のJMTRを使う選択肢もあったが,JMTRが停止中で再開時期が明確になっていないことを考えると,結果としてはやむを得ない判断だったのではないか,と思う。
Kjllerには,ホットセル(放射能を有するサンプルの様々な実験を行う実験室)もあり,こちらでは,PIE(Post irradiation experiement)の検討として,我々がやりたいことが確実にできるかどうかの確認のため,打ち合わせを行った。
コンクリートの実験はしたことが無い(実際は,60年代,70年代に実験が行われたあと,世界中で研究はおわってしまっており,文献は出てこない。)とのことだったが,セラミック等の実績があるため,逆にいろいろな提案もしていただいた。
さまざまなテクニシャンが,我々の研究に深い関心を持ってもらい,多くの提案を受けたため,あたらしいスキームも含めて再検討することにした。
原子炉の内部も見学させていただいたが,そこには,回折装置,SANS,NR(中性子ラジオグラフィ)があった。回折装置およびSANSはC-S-Hの構造解析に適していることを考えると,今回の実験で含めて検討した方が良いのでは,という提案はまったくそのとおりだった。C-S-D(重水)で検討した方がよいと思い込んでいたが,そうでなくても多くのデータは得られる。多くの影響が確認できると考えられるので非常にチャレンジングだと思った。
こちらのNR装置は,X線用のフィルムを感光して用いており,アナログ方式だった。デジタル化はされていない。そのため,解像度はかなり高いようだった。一方で,撮影時間は,核燃料のケースで8分程度ということなので,トモグラフィなどはちょっと難しそうだ。しかし,テクニシャンは,かなり熱い方で,コンクリート実験にもぜひ使うべきだ,という意見をもらった。まあ,実際は難しいと思うけれども,ぜひ,提案をいろいろしていただきたい,ということを伝えた。
これらは,ここ半年程度は余裕があるので,こちらでも検討を深めたいと思う。
滞在2日だったが,ビジョンの共有ができたこと,それぞれの責任者が明確になり,連絡を密にとれる体制を構築できたことは大きな成果だった。やはり,メールではなくて会わないとダメだな。
というわけで,今にいたるわけだが,残念ながら飛行機の状況がわるくてヘルシンキに2時間以上足止めが確定してしまった。やれやれ。午前中に家に帰られるとおもったのにな。
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