12/25/2015

しわす 2

JACT で先日の論文が今年度の”ACT three outstanding papers of the year”に選ばれました。大変嬉しく思います。


このモデル化,というのが今的かどうかというのは,私自身,自問自答しているところです。すなわち,なんらかの外挿を行う時に,今,もっとも信頼できるのはなんなのか,という点は今も常に頭の中にあります。

分子動力学計算や第一原理計算を使ったとしても,かなしいかな,それはやはり実験データの内挿でしかない。なぜなら,結晶構造しかり,含水率しかり,解析結果は,等しく実験結果との比較をもって検証されるからです。残念ながら,現在のC-S-Hの知見は極めて限定的であり,そして多くの人が(私を含めて)間違っていると考えざるを得ません。
膨大な,分子動力学計算論文が出ていますが,もう,あと1,2年で今までのものがすべて無意味だった,場合によっては,すべて取り下げということもありえるんじゃないかと思います。

熱力学平衡計算に資するNanocemのデータは,すばらしい。しかし,時間軸にこれを展開するためにもっとも重要なのは水分移動とイオンの移動です。水分移動については,結局,研究が不十分なままであり,平衡が(たとえ,セメントの中が過飽和で疑似平衡であったとしても)予測できたとしても,時間軸・空間分布を考慮するために必要な水分移動は,C-S-Hと連成しなくてはいけないため,やはり,あっているとは考えにくい。
フライアッシュセメントと普通セメントの硬化体中の水分移動の違いは,実験係数として取り込むだけであって,それがなぜなのかは,我々はまだ理解できていないのです。

また,Nanocemは化学屋さんの集まりらしく,物性との関係は結局強度程度でしか考えていません。私は,平衡計算を物性につなげるためのデータを欧米よりも先にとる,ということを2006年くらいから考えてやってきました。そういう観点からも,今回の相組成と関係したさまざまな物性データというのは,何度でも利用できるはずです。

また,90年代の数値解析研究は分析技術が本格化されておらず,コンクリート工学の人間が耳学問と周辺学問との整合性から,セメントペーストの中はこうなっているんじゃないか,という類推することしかできませんでした。現象に対する想像を通じて,諸物理現象に分解し,それを再統合するアプローチの数値モデルがすごくはやっていました。友澤先生のモデルもしかり,です。しかし,現在は違います。想像から類推したすべての物理・化学の素過程は,実験によって検証が可能となってしまっています。この検証をせずにモデル化するということは,工学としては依然としてあってもよいのでしょうが,学問領域として,あるいは欧米的哲学を基盤にもつサイエンスとしては認められません。日本においてもこうしたアプローチの数値解析モデルがあっても良いと私は思っていましたし,やれるとしたら,(当分のところ),うちの研究室だけだろうと考えていました。


こういったことを考えて,結局は実験データをもっている人間の行う解析が,もっとも確からしいのだ,ということがセメント・コンクリート研究の現在の限界だと再認識しました。
あっていればよい,というのは結局,実験データをしっているかどうかだ,ということだと言い換えられます。

この事実がこの論文の念頭にありました。もっと,格好良く難しい解析だってできたんですよ。
ですが,あえてその見えを捨てて,自分たちの作ったデータをいかに既存の概念をつかってリンクして,そして,水・熱の連成からコンクリート物性のさまざまな現象を紡ぎ出す,ということを行ったわけです。

一番大事なのは,モデルではなくて実験データです。ですから,この論文を読むときには,検証用の実験データの方を大事にしてもらえたらと思います。データは嘘をつきません。




しわす

次は12月上旬かな,とおもっていたら,びっくり,しわすでした。しかもクリスマス。メリークリスマスです。

11月下旬もそこそこの忙しさでした。

・AIJで収縮ひび割れ指針改訂のWGを行なっておりましたが,次年度から改訂小委員会が立ち上がります。AIJの大会中,材料施工は指針ばっかりつくっているという,かなり辛辣なご意見もあり,その反省もままならぬまま,またもや,小委員会です。必要なものだけ,厳選してアップデートしたいと思います。収縮ひび割れ指針で設計した部材はなく,トラブル対応の説明資料として使われているとも伺いますが,もし,ご不満な点がありましたら,丸山までメールください。今回の改訂で検討したいと思います。

・AIJの会長下にある特別委員会で建築学会のグローバル化について議論しています。建築がグローバルなのは論をまちませんが,そもそも,学は一体なにをやっているんだ,という話をしています。大学はなぁ・・・,ちょっと風を深さないといけないですよね。2050年に6~7000万人になるとすして,現状を勘案したら国内建築市場は,半分くらいになります。当然,その他は海外案件をもってこないといけない。加えて,環境保全とか,エコシステムとかいう外部環境もあるので,スクラップアンドビルドには限界があるかもしれません。そうなると,新築におけるノウハウ獲得は,外国で行うしかないわけで,日本の建築業の今後は,海外案件にどの程度あいのりして,その上で,知見をまわしていけるか,ということが大事なわけです。ですので,そのことを踏まえれば,国内大学でも,国内用半分,海外用半分くらいにクラス分けしないとニーズに対応できません。
ということを2年ほど前からいっているわけですが,動くところは少ないですねえ。どうしたものか・・・・。

・19日はIFEが来て,照射研究の状況報告。いやあ,3月にへこんだ実験ですが,奇跡の復活。こんなにうまくいってよいんだろうか,という・・・。実験データの吟味は沢山できます。乞うご期待。

・AIJの維持管理指針については,12月16日に講習会が行われました。維持管理といっても,原子力建屋の方です。考え方としてはかなり綺麗にまとまったと思いますが,今後の課題として,日本国ならではの,地震後の性能評価と維持管理というのは,大きな山場です。今後は,そちらに注力しながら,検討していこうと思います。

・26日は某大型プロジェクトの載荷試験で千葉まで行きました。非常に興味深いデータをみてしまったので,やりたいことがまた,増えてしまいました。結果が,ちゃんとパブリッシュされると良いと思います。

・11月28日は,まちとすまいの集い,ということで大学で講演会でした。1,2年生も比較的集まってくれたので,盛況でした。はじめての名大・減災館での実施でしたが,その点もよかったです。

・12月上旬は共同研究の打合せがてんこもりでした。

・12月上旬は学内の内緒会議に沢山でました。大忙しです。

・9日は関西・和歌山に高経年化火力発電所,最新の火力発電所,そして,太陽光パネル発電所の視察に伺いました。

・21日は朝から規制庁への中間報告でした。かなり中身の濃い報告ができたんじゃないかと思います。


あまり,考える時間がなかったです。そういえば,今読んでいる本は,「中国グローバル化の深層」です。翻訳書ですが,読みやすい。著者の深遠なコメントに結構,ドキっとします。日本にこんな時代はなかったんだろうな,という。
お金のある時に何もしなかったな,というのが今の感想です。


11/14/2015

11月上旬の近況

研究室の実験は,佳境を迎えています。
昨年は少し進捗が遅かったのを反省して,今年は大幅に実験を進めています。ゼミでは毎週,多くのデータが出てきて,やっと以前の雰囲気が戻ってきました。これからは,論文化を強力に推し進めていかないといけません。ここからが正念場です。

1~8日は,ICICに出席してきました。今年から,一般委員会となり,多くの参加者が集いました。10カ国30名となりました。発表は,ここでわかるようにORNLと日本の発表が多く,あとはキーとなる発表としては,フランスの処分関係の方のガンマ線影響に関する理論的考察,フィンランドの照射実験,スペインのZoritaプロジェクトでの詳細数値解析計算と照射環境のキャラクタリゼーション,などでした。

最終日には,今後の可能性を模索すべく米国との共同研究の可能性を模索してきました。かなり,具体的な提案がまとまり,これらを日本にもちかえって,企画化していきたいと考えています。

翌週は,国内共同研究の打合せを行い,特許化案件が2件ほど出てくるほか,今後の実験方向性でかなり面白いものがではじめました。仕込んだものが,花開きつつあります。

13日は,Ellis Gartner博士に来名いただきました。3年位前からは,かなり具体的に収縮メカニズムとC-S-Hのデータをお互いに交換して,メカニズムについて議論してきました。先日,逝去されたJennings博士のglobuleモデルについても議論しましたが,Jennings博士は最後にglobuleモデルを引っ込めた論文を公開しており,その発展が我々に課された課題だ,ということを話しました。Ellis博士が近年の我々のデータと博士自身が取得した結果をもとに提案するあらたな仮説をご紹介いただきました。あまりにエレガントすぎて,ちょっと衝撃でした。化学の背景を確実にもっているということは,本当に素晴らしいと思いました。今後,1,2年のうちに我々はそれを論文の形で知ることができると思います。


13日は,新しい論文が公開になりました。

Numerical Approach towards Aging Management of Concrete Structures: Material Strength Evaluation in a Massive Concrete Structure under One-Sided Heating


この論文は,博士の時から行なってきたセメントの水和反応モデルを大幅に改良し,加えて,さまざまな物性についてモデル化をすすめたものとなっています。私は,数値モデルやメカニズムを念頭にそれを明らかにする実験的検討というのを10年継続してきました。その間に寺本先生,五十嵐先生が巣立ち,その他に,岸君,堀口君,篠野君,杉江さん,西岡さん,別府君,伊藤君,やその他の素晴らしい学生と一緒に研究でき,膨大な実験データを蓄積してきました。この論文の査読結果の最後は,One of the best paper,で締めくくられており,大変に嬉しかったです。この論文は,我々のやってきた数値解析的研究の10年間の集大成です。それが専門家に適切に認めてもらえたことは大変に嬉しいです。個人的なささやかなコメントだとしても・・・。

自分でいうのもなんですが,膨大でそして信頼に足るデータが多数あり,数値モデルのステップステップをすべて検証しているので,ぜひとも,ご一読いただけたらと思います。






10/24/2015

その他の近況

大体,更新できない時というのは,もう,自分を反省する時間もなく延々と日々をなんとかやりくりしている状態です。
最近は,来週に控えた米国出張先でのプレゼン用の研究が全然すすんでいなくて,ひたすら解析コードを書いていました。集中して時間が取れればなんということもない作業もぶつぶつ時間が切れてしまった中でやりくりすると,それはそれで時間がすぎていってしまいます。


四国出張

米国出張後,愛媛県の方に出張いたしました。今年度からあらたに開始した研究にアルカリ骨材反応を生じたコンクリートの将来予測というものがあります。アルカリ骨材反応を生じても,要求性能を満たしている間は,構造として十分使用できますが,それを20年にわたりモニタリングと構造性能評価を行なって,実施してきている素晴らしい建築物が四国にあります。

大変にお忙しい時期ではありましたが,現地を視察させていただき,私の知りたい情報や関連するデータを実際に確認し,構造物としての現在の状況がどんなものかも知ることができました。

もう少し,プラスで実験をするとともに,数値解析によってパラメータスタディを行うと,すごく良い事例として世界が参照されるようになることを確信しました。

予算の出処というのはいろいろ難しいところがありますが,多数,業界のためにやるべきことがあるな,と再認識しました。

米国出張

今年も米国ユタ州にFe-コンクリーションの研究に行ってまいりました。昨年と同様に,地質,リモセン,地球化学,惑星,などなどさまざまな面子での研究です。昨年最終日に大どんでん返しがあり,仮説が全部ひっくり返りましたが,今年はそこからスタートして1年間議論を重ねて現地入りしました。どの層準になにがあるかを確認して,これを見つけたら論文用の証明がおわりという,詰将棋のような状態で,毎日なんらかの発見があり,そして気づきがありました。
なによりも,日頃の行いのよさなのか,雨の日に現地入できず,ドライブがてら実施した調査でも,びっくりするような発見があり,すべての日が無駄なく,最終日において論文の詰めとなるデータが確認でき大変満足な出張となりました。

本当は,なんでも書きたいところなんですが,詳細は論文で明らかにしたいと思います。
私としては,この現象の工学的応用に興味があり,早速,現地の砂をもってきて,再現実験の可能性を検討しよつお考えております。










10/01/2015

10年

名大にきて10年が経ちました。多くの学生さんと一緒に研究ができ,私の中で少し,コンクリートっていうものはこういうものだ,というのがわかるようになりました。
また,セメントやコンクリートにかかわらず,外装材,粘土,マグネシアセメント,分析技術,構造,振動,モニタリング,などなどについて勉強が膨らみ,最近では化石の勉強をするようにもなりました。
まさか,10年後のこの日が,米国で化石を探しているなんてことは想像だにできませんでした。そしてその研究が,このタイミングで火星に水があることがわかるようになり,宇宙建築につながっていくということもひょっとしたら本当の事になるのかもしれない,そういう可能性のある大学にこれたことは本当に嬉しいことだと,あらために認識しています。総合大学にいることの意義,というのは見えないものではありますが,大変に大きいと私は思います。

また,自然を相手にするようになったその中で,世の材料の成り立ちという大きな枠組みの中からなにを紡いでいくか,その紡ぎ方というのはどういった美しさを持つべきか,というのが段々とわかってきました。
私は,麻布の時も東大の時も,いつも友人と比較して頭の回転の遅い方だったと認識していますが,10年も同じ所でかじりついていると,やっとそれなりに見えてくるものがあります。愚鈍な方が良いことがあるというのはこういうことかな,と。
そういったことが10年という単位ではじめてわかってきました。


そしてもう一つ,生き方としてよくよく私にわかったことは,必要とされる人と一緒にいた,というものです。
名大への所属はそもそもは公募ではありましたが,多くの先生方に良くしていただきました。一緒に研究をしていただいた企業の方,大学の先生方も,また,多くの学生も,ある意味で私の研究室を選んでいただいたわけですが,そうした中で私ができることがなにか,その中で一緒になにをか残していこうと考えることが望外の喜びにつながってきました。
今日の米国出張も,コンクリートや地質の研究を一緒にやっていこうよ,と誘っていただけた吉田先生方があったのでこうしてできているわけですし,原子力関係の研究も関村先生に認識いただけたことは本当に嬉しいできごとでした。
現在も名大の中で,ゆっくりとではありますが,ネットワークが広がりつつあります。その中で,少しですが,私が人を頼るということもできるようになってきました。


時としては,人の気持ちに土足で入るような失敗もして後悔も多い人生ですが,広げた学問と人とのつながりを閉じることなく,つぎの10年に繋げたいと思う次第です。

お知り合いになれた皆様に心より御礼申し上げます。

9/30/2015

カタール出張

シルバーウィークに,1泊2日でカタールに行ってきました。秋田県ほどの国に人口200万人,ドーハには20万人がすんでいます。全人口の1割がカタール人で,その他は出稼ぎ労働者だとカタール人は言っていました。
カタールは産油国で,その利権をカタール人が握っていると聞きました。詳しい状況はよくわかりませんが,カタールを見ている限り,特権階級のように見えます。
厳密な宗教観を有しており,一切,お酒が飲めませんでした。ぜったいに裏口があるはず,とおもっていた私は奇しくもお酒断ちでした。

今回の調査の目的は,カタールが近年研究に資金を助成しているカタール財団の研究費がどのようなものか,というものでした。また,併せて,シビル分野でのコラボができないか,ということでプレゼンをカタール大学でさせてもらいました。

結論からいいますと,カタール財団による研究費は少しハードルが高そうです。極めて政治的な部分があるし,表の顔だけでないこともわかりました。逆にそういった資金をもらってしまったら,それはそれでしんどいだろうな,という部分もありました。野心の大きい人は,是非,日本からもチャレンジしてもらいたいと思いますが,私個人としてはメインでパートナーになるのはしんどいとおもいました。
一方,9月末で,朝方31℃,昼間40℃を超える土地での建設ということについては興味があります。耐久性も今後の大きな課題だと認識しています。現在,2022年のワールドカップにむけて都市が急成長のドーハでは,人口も車も増えており,大変な状態になっています。その後来るだろう経済停滞期も含めて,どのような成長を進めていくところか,都市設計をどうするのか,それぞれの建築がどんな人生をたどるのかということは,今後の中東建築を考える上では重要なロールモデルになると考えられます。

幸いにも,地下鉄工事を担当されているFujitaの方に現場の状況も伺うことができましたが,やはり土地土地の困難なことが多くありそうでした。

私個人としては,お酒がまったくないという時点で,生活面での興味がなくなっちゃいましたが,ホットエンバイロメントという観点で大変興味があります。いやあ,コンクリートってどうなっちゃうんでしょうねえ。

カタール大学では,カタール人の先生に大変熱い話を伺いました。たしかに資源がなくなったあとにこの国はどうなっちゃうのか,というのは重要な危機意識ではないかと思います。お金がなくちゃだめだけど,お金だけでもダメだ,という大変な問題に直面されていました。
今の日本政府もそんなかんじなところがありますけどね。

危機意識をもつ現場と権力が繋がることができない,というのは不幸な状態なんだな,と改めて思いました。






炭酸カーボネーション論文

博物館の吉田先生を筆頭とした研究グループでの成果が,やっと公開になりました。スタートして,あしかけ5年でしょうか。感慨深いものがあります。

http://www.nature.com/articles/srep14123

Nature本体では難しかったのですが,Nature系列のScientific Reportsからの公開になりました。

ここでは,ツノガイのコンクリーションを扱っています。なぜ,特定元素が濃集するのか,なぜ球状体を拡散則に反して形成できるのか,なぜ,こんなにもエッジが綺麗なのか,などについて説明が可能な合理的な仮説を提案しました。

また,その提案から必然的に,これらのコンクリーションは思ったよりも早くできてしまう,ということが明らかになりました。

今後は,これらの工学応用についても検討を進めていきます。

日経新聞の記事

その他の記事

その他,ツノガイ,名古屋大学で検索するといろいろ記事に取り上げてもらったことがわかります。



8/29/2015

中川調査 その2 写真

いろいろやってまいりました。



貝化石の様子

ひたすら,転石を叩いて砕いて,化石とコンクリーションを確認。


8/26/2015

8月24-26日 北海道 中川

北海道,中川にコンクリーションのフィールド調査で来ました。今回は,コンクリーションの相手はアンモナイトです。北海道では数カ所,アンモナイトがコンクリーションとして出てくる場所があるそうで,その中でも今回の場所は,アンモナイトの殻がアラゴナイトの状態で保存されているといわれているところです。

今回,ビギナーズラックで私もひとつ見つける事が出来ましたが,確かに添付のように貝殻の内側のように虹色が確認できます。これが,アラゴナイトかどうかは分析しないとわかりませんが,このように珪化されていないものというのは,非常に珍しいようです。

沢を1時間くらい登って露頭を調査しましたが,結果として多くのアンモナイトファンが沢山来ているので地質学的な仮説にみあうサンプルを取得するのは難しいかな,という結論になりました。周囲には珪化木もあるので,珪化するプロセスもあるはずですが,炭酸塩コンクリーションの方が先に生じて,結果としてこのように保存されているんだな,とは思うのですがそれ以上は難しいかも,という結論になりました。




8/15/2015

2015年8月上旬のメモ

・名工大/NIPPO/飯島建築事務所との共同研究は,若材齢のスラブの挙動に関するものです。一部は,東海支部で今年発表されているように,通常の施工プロセスでどんなことが起きているのか,品質はどうやって確保するのかというような極めて普遍的な問題を扱っています。今回,酷暑日の7月28日に打込み(名古屋では最高38℃)を行なって,その時の部材内部の湿度分布や強度分布,長さ変化について測定するということを酒井田くんがやっています。試行錯誤な研究で,予備実験無しの検討は結構しびれるものがありますが,大分,挙動は採れ始めているという報告があるので,楽しみにしています。

・関連して,昨年度の基準法整備事業のS16に加えてもらったのは,非常に知見が広がりました。データは,まだ取得中のものもあると伺っていますが,示されたデータと解析による強度予測は大分良い一致を示しています。これらは,論文化すると海外においても,構造体コンクリート強度という日本特有の概念を知ってもらう上で良いんじゃないかと考えています。

・湿度測定は,Azenha博士がACTに良い記事を書かれていたのですが,SHT75はやはり,ドリフトして問題が大きい。特に若材齢は。センサが死んでしまいデータが取れないことも多く,かなり試行錯誤してもうまく行きません。Azenhaさんに聞いても,やはりその点はむにょむにょ,っていう状況。若材齢コンの湿度測定という観点では難しいというのが当研究室の見解です。

・8月5日は名古屋でのJASS5の講習会でした。特殊コンの方で発表させてもらいました。JASS5は,解説や関連の告示を読んでおかないと理解できない部分が多いです。特に構造体コンクリート強度についての取り組みは,基準法での解釈とそれを踏まえた上でのJASS5としての取り組みが示されていて,しかも裏には阪神大震災があったからこうした方がというようなざっくばらんな話まであって,全体像を理解しているのは数人しかいないようです。
ルールを守るための最低限のはなしと,過去の来歴を含めた整理(桝田先生が素晴らしい解説を各所に書かれていますが)は少し区分して書いた方がよいのかもしれません。一冊の良さもあるんですけど。
割りきって記載っていうのが今後,各節で必要とされるんじゃないでしょうか。

・7日は,大学のオープンキャンパスでした。私は今回担当ではないので,客観的に見られました。建築教室は,大分疲弊していて,もはや頑張ているものの客を見ていない状況にあります。せっかく,期待してきた学生にたいして悪評を持って帰らせるようなら,やらずに秘密のベースに隠した方がよいのではと。これは,もはや,誰の責任というわけでもなく構造疲労のようなもので,戦略として工学部と掛け合ったほうが良いです。
人数をすごく絞って,頑張れる研究室だけでやる,というのも良いと思います。ファンをつくるというのがどういうことか,先を見せるというのがどういうこととかけ離れたことをやってしまっています。

外に出て見てみて,初めて理解しました。これは辛いです。

・10日,午前に博士学生の公聴会を行いました。スラグセメントと膨張材の話です。研究科長(地球惑星系)がふらりとこられていろいろ質問をしていただき,思ったよりも盛り上がりました。広大の寺本先生にも,質問してもらいました。回答はいろいろ思うところがありますが,質問は非常に適切なものだったと思います。ディテールだけじゃない,全体像を理解する,関連分野については全て答えられるというのが博士として大事なことだと思います。

・10日午後は,チェコ工科大のPetr Stemberk 先生と今後のコラボレーションについて打合せをしました。今回は,来名していただき,研究室の実験設備などを見ていただきました。洋上プラント関係,原子力関係,その他いろんなことでコラボができそうということで,博士を共通に教育していく方法などについても議論しました。良い所をつかってコラボ,というのがスピードの上でも大事です。国内で,あるいは自分の研究室内でゼロから,というのは国内ではどこかがやらないといけないですが,道ができればあとは枝葉になるのでそれに統合化していく,というのが大事なところです。大きくなったら,分家として独立してもらって競争する,そうやって多層化,多重化しつつ層を厚くしていくことが大事じゃないかと思います。

・11日は,夕方にパリ東大学とラファージュとテレカンファレンス。大分,フランス系英語にもなれてきましたが,高分子と物質の相互作用とか難しい話になるとなにがなんだかわかりません。まず,単語がちゃんと聞き取れてない。アセチレンなのかエチレンなのか・・・。
でも,まあ,無事新しい学生も見つかって,10月からパリ東大学と二者で学生を教育して博士を取らせたいと思います。研究の着眼点,ポイントも大分議論できつつあるので,実験の抑え方なども含めて計画が練れてきいます。

・12日,終日論文書き。+事務書類一式。返信していないメールが沢山ありました。すみません。思い腰をあげてやっと,文章を書き始めました。論文は少し距離をあけると本当に手が進みません。一日1,2時間と自分で言っていても,忙しさや疲れにかまけて距離をあけちゃうと本当にもどってこれない。つらい1日でしたが,なんとかモードが戻ってきました。年末までに3本ほどは書き上げたいと思います。




8/13/2015

2015年7月のメモ

大変混迷を深めております。なにより時間が厳しい。いろいろ種をまいたのは良いものの,収穫時にアップアップ,いや,収穫前の手入れの作業量を見誤ったというのが正しいところか・・・。

ついに,金より人という状態になってきました。研究室として成熟したということでしょう。
三国志のゲームでいけば,よくわかりますが,まずは開墾して収率を上げることが必要です。ものすごい武将が一人いれば,それをつかって隣国に攻め入ることができますが,隣国の境界条件によっては戦線が拡大するため,兵力が急激に必要になります。だから,戦線拡大しないような形でまずは,国を広げて武将,兵力の増加,コメの生産量を上げる戦略が常道です。イメージとしては,劉備で初めて5カ国くらいのイメージでしょうか。
ここから,領土をさらに拡大すると,もっと別の戦略が必要です。他国の武将をどうつかうか,能力の低い武将をどうするか,私のものの捉え方が変なのかもしれませんが,研究室運営は大変,光栄のシミュレーションゲームに似ています。

恐ろしいのはあれですね。三国志の広汎,もはや,やるだけのルーチンになっていくのですが,自分の人生がそうならないことを祈ります。


3日,JCIのジオポリマーの委員会の委員にしていただきました。話を聞いていましたが,AACとジオポリマー,広く捉えてやりましょう,というのは面白いと思います。本当のジオポリマーでやるとなると,ひび割れも熱も大変ですしね,便利なところをつかっていこうっていうので良いんじゃないでしょうか。

7日,最近頻繁になったフランスとの電話会議。今年の10月から博士学生が来ます。大分,優秀なようです。攻めどころをどうするか,というのを広く議論できるのは大変面白いですね。SR関係です。

8日,東大・I田先生ともスカイプ会議。かなり便利で濃密に議論できました。研究議論,Skypeゲースで進めるとかなり進みますね。映像が無くても良い感じです。

10日 規制庁のASR研究会に参加しました。山田さんが出張して世界的動向を集めてきてくれた結果を伺うこことができ,問題点整理と攻めどころの確認に大変参考になりました。欧米と問題を共有した場合には,こういった出張して情報整理して,課題と攻めどころを整理するというのは大変重要です。こうすることで国内のアクティビティを国際的なものにすることができます。
一方,国内オンリーのアクティビティはそれはそれでよいのですが,位置付け不明瞭で,過去の経緯を整理しないと,完全に予算消化のゲームみたいになってしまうので注意したいですね。
法律のためのデータもよいのですが,なぜそうなるのか,だからこうすれば良いというような少し掘り下げた議論がもう少し一般的になると私は良いんじゃないかと思います。JASS5の質問でもそうなんですが,法律上の解釈とか位置付け,現場水中の位置付けなんて,国がそう解釈しているという問題ですからね。

この日,月曜日に実施するJCI50周年の国際会議に出席予定のLe Pape博士がトラブルで来日できなくなってしまいました。

夜は,Azenha先生と埼玉の浅本先生と一緒にとんかつ屋に行きました。銀座のかつぎん,です。学生のころから利用しているお店です。


13日 JCI50周年のMulti-scale modellingの国際会議を東京・都市センターで開催しました。Wittmann先生,Azenha先生,Koenders先生Bisnoi博士に来ていただき,Le Pape博士にはテレカンファレンス形式で参加いただきました。国内からは,前川先生,中村光先生,山田一夫博士,石田先生,私,という状況で日本の特徴あるマルチスケールモデリングに関わる問題意識のj共有と,その出口のためのディスカッションでもりあがりました。もう少し踏み込んでまとまるかと踏んでいましたが,みな,思い思いで議論したので大分,楽しい議論になりました。(発散したけど。)
これ,近々にJACTで特集号を組もうとおもっていますが,できるかなあ・・・。

14日,午前の打合せをすっぽかしてしまいました。完全に忘れていた。午後から,原子力の高経年に関わる打合せを行なって名古屋に戻りました。本当はJCIの大会にでたかったのですが,大学業務が溜まりすぎで無理でした。Yさんの無双が名古屋まで鳴り響いてきて,私もJCIをかき回すよう頑張りたかったです。

22日 AIJのJASS5の東京講習会に出席してきました。朝から真面目に聞きました。いくつか議論を忘れたのがあったなあ,とイマサラナガラ思い出しました。特に材料については,福島以後のセシウムの問題などはどこかに記載すべきだったと思いました。

24日 共同研究先のDENKAさんと打合せ,ついで,セメント協会で10月から開始するC-S-H研究会の方向性や中身の確認,目標と目的の共有を事務局側と行いました。本件については,斎藤豪先生に大変お世話になっています。うまくいくと良いんですが,どのくらい勉強できるかなあ,というのは少し心配な点です。日本の遅れている状況を認識してそれを発奮剤にしてもらえると良いのですが。個人的には,C-S-Hについてここが問題意識なんだよ,という点を皆で共有できると良いと思っています。

30-31日 研究室のゼミで,岐阜でバーベキュー,鵜飼,陶芸,して帰ってきました。長浜のまちがこんなに雰囲気のある街だということを知りませんでした。そういう意味で良かった。あとは安いウイスキーですが,信州,というのが美味しかった。飲みやすい。サラっとしているので人によってはこんなの,と思うかもしれませんが,夏の暑い昼間に,河原で飲むと美味しい,そんなウイスキーです。

2015年6月のメモ

6月は,頭にフィンランドとノルウェーに行ってきました。ノルウェーでは,やっている実験でトラブルがあったので,その確認。実際にいったら,なんとかなりそうなので少しホッとしました。フィンランドの方では,実際の電力会社が照射研究をやっていて,そのニーズや懸念事項を中心に議論をしてきました。モチベーションが異なっているので,問題の捉え方,整理の方向性が違っていて,大変有意義でした。
ああ,ここもデータとっておかなくてはいけなかったのか,というようなこともありましたが,なんとかそれらは計算で出せるようにしたいな,と思います。

5日は,前田財団で会合があって,教え子が私も受賞したことがある,山田一宇賞を受賞しました。まことにありがたいお話です。しかし,小言を言わせてもらえれば,何をやったかというプレゼンについて準備不足が認められました,なんどもいっていることですが,プレゼンは相手のレベルを考え,自分の研究とやってきたことがどのようなものかを,エンターテイメントとして聞いてもらえるようわかりやすく,かつ,印象深く実施する必要があります。私自身も英語のプレゼンはまだまだいたらないのですが,そういった点について,あらためて考えてもらえたらな,と思います。うちの学生さんたち全員に考えてもらいたいものです。

16日は,名大・土木の中村研と飲み会を行いました。今年は,学生ではなくて,教員が発表してなにを考えて研究をしているのか,ということを伝える会にしようというと思いました。やはり,全体像を含めたわかりやすいプレゼンというのは大事だなあと思うし,学生も刺激になったのではと思います。土木の学生さんのホスピタリティは素晴らしかったです。

24日午前中は,名工大・市之瀬研と実施しているプロジェクトの打合せ。早期脱型系のものですが,やろうとおもうといろいろ問題と計測すべき点があって,どこからひもとけばよいかが難しい。ただ,一方で,学生さんが昨年度成果について論文を書きながら議論できているので,そういう意味では一つのテーマではそれなりに一本の道ができつつあります。構造体強度の研究なんですが,やはり有筋でやるべきですね。結構値が異なりそうです。桝田先生はやっていたと思うんですが,ちょっと探せていないです。

24日午後は,化石・コンクリーションの勉強会。大分,ユタ州のFe-コンクリーションについても議論・仮説が出てくるようになりました。それでも,ゼロスタートではわからないことだらけですが,今年のフィールド調査の目的が明確になったことは素晴らしいと思います。

26日 AIJの収縮ひび割れ指針改訂WGの打合せ。今回はスラブも議論しよう,ということになってデータを見せていただいています。要求品質を機械的なものに絞ると結構楽なのですが,本当にそれでよいのか,という点が学会としての課題整理点になっています。

30日,土木の山本先生とRBSMをつかった解析について議論しました。チャレンジしたい課題ができたので,面白い展開が期待できそうです。



7/02/2015

近況

きづいたら2ヶ月放置でした。ぎりぎりのラインで生活しています。残念ながら、具体的なアウトプットがなくて、時々いらいらします。

5月はなにがありましたかねぇ・・・。
セメギがありました。セメギでは、1件、収縮低減剤の研究についてプレゼンしました。従来型の収縮低減剤には二つの低減要素があり、いままでそれがぐちゃぐちゃに議論されていたのが、収縮メカニズムをはじめ、議論が収斂しない原因だったことを説明しました。見られていた人はあまりいなかったかもしれませんが、あのプレゼンには、セメントを改善する非常にクリティカルな内容が示されていました。今後、数年はそれに関する研究を粛々と進める予定です。

5月11日、セメギの前日には、土木学会の3種委員会の場で、好きにしゃべらせてもらいました。芝浦工大は初めて伺いましたが、大変きれいな大学でした。C-S-Hの研究は、特に日本は科学的背景の無い黒魔術みたいな研究が一部にあるので、どうしたものかと思います。研究の多様性を担保することは大事ですが、科学的でなく、イメージ先行の研究がはびこって、特に日本のようなたこつぼかした中で、エライ先生がそういうことをすると、10年以上、変な宗教が残ることになるので、私は嫌です。そういうことが内容に英語で論文を投稿して、ちゃんとした査読をうけて議論をするということが大事だと思います。

このちゃんとした査読、というのもくせ者で日本では揚げ足をとることが査読みたいになっていて、それも困ります。議論のポイントで何が矛盾しているか、何が過去の論文と対立していて、議論の正当性はどこか、が明解になれば論文はそれで良いと思います。

日本は、議論がケンカになってしまうところも困ったところで、研究の否定が人格の否定と取られるのは本当の困ります。といっても、これは、質問者(私自身)の資質の問題もあるのかもしれないので、それはそれで反省点は多いです。

5月15日は、原子力発電所施設の視察に行ってきました。世界では、廃炉された原子炉施設から、材料の劣化を評価して、今後の経年対策や維持管理、設計に反映させる研究がもりあがっております。日本もそのような研究が粛々と始められようとしています。コンクリートについても、非常に大事な研究であり、一般構造物に展開できる基盤研究として、是非展開できれば、と思っています。

5月18日の週は、共同研究先との打合せが4つあり、それぞれ今年度の目標を明らかにしました。論文化するもの、材料開発のターゲットを設定したもの、さまざまです。昨年、もうパンクするといっていたのに、どうしても断れず大型のプロジェクトを引き受けたのもあって、本当にぎりぎりラインで進めています。

5月25日、学内の廃棄物講習会に出席してきました。学内のトラブル、安全講習で非常に勉強になりました。安全に関する講習は時々出て行かないと気持ちがたるむので、研究室運営上は非常に重要なイベントと位置づけています。年1回はなにかしらに出席したいです。

5月30日 大阪で、チェコ工科大の先生と研究の打合せをしました。原子力の放射線影響の委員会で一緒になった先生ですが、横浜国大を出られていてさまざまな議論ができるので非常に楽しい相手です。今後とも、いろいろできたらよいと思っています。

5月31日~3日 オスロー、フィンランドに行ってきました。照射していたコンクリートサンプルがトラブルを起こし、大事件になりましたが、サンプルはなんとかなりそう、ということになっています。フィンランドでは,同じような実験をしている研究チームと打ち合わせしました。なかなか興味深いデータ交換でした。





4/29/2015

近況

研究近況。

1)今年度は,国プロの責任的な奴が2?,下につくのが3です。その他に,メーカーさんとの研究が5,ゼネコンさんとの研究が3,科研の基盤Bが2,海外基盤研究が1,萌芽が1,という状況。ちょっと多いです。今年度,ケリをつけないといけないのが2,あります。

2)収縮低減剤のメカニズムについては,セメギで速報的なものを出しましたが,従来のメカニズム以外で,今後,なにを研究しなくてはいけないかが明確になりました。とりあえず,ここまでの成果については,国内と国外の友人と議論して,CCRに投稿しました。今後,この研究については,フランス側のチームと一緒に研究することになりそうです。

3)収縮の小さい石灰石を用いた時に,拘束下のコンクリートでなにゆえ,可視的なひび割れの発生が抑制されるかについて,実験と解析の両面から,示すことができました。こちらについても,Native Checkを受けていて,出来上がり次第投稿しようと考えています。今後は,やっぱり,遷移帯の研究ですね。施工と材料性能の関係,今一度,整理していきたいと思います。

4)1H-NMRについては,現在,ペースト,トバモライト,モンモリロナイト,Vycorグラス,などをさまざまに調湿して測定を実施しています。T2緩和時間の挙動を比較していますが,おおよそ,シグナルに帰属やその状態がなにかが理解できるようになりました。なぜか,セメント分野では,緩和時間のダイレクトデータが示されている文献が少なくて,その上,CONTINの結果も横軸がログスケールだったりしているので,わからないことが多いです。McDonald博士らのチームの研究でも,いくつか,微妙,というかこのデータになっているはずだけど,こんな結論だせるのかな,と思います。
一例をいえば,Portlanditeは極性が大きすぎるので,きれいな減衰カーブになりません。そのため,十分水和した普通や早強のペーストで,乾燥を大きくしていくと,減衰カーブに極性の影響のカーブが重畳して,適切な処理ができない場合があります。こういったことがあまり記載されていないのは,フェアじゃないんじゃないかと思います。Portlanditeの研究は,案外,世の中のセメント化学の研究者がフォーカスしていないのですが,最近,非常にいろんな物性に聞いてくることがわかりました。Portlandite大事だよ,ってメールしたら論文が帰ってきて,Portlanditeのさまざまな結晶成長について,すでにモデリングとメカニズムの解明が終わっている,ということを教えてもらいました。いやあ,さすがです。フランス。目の付け所も本当に素晴らしい。私が勉強不足,というのもあると思うんですが。

5)SAXSは,大分,整理できてきましたが,広角側のピークが何に帰属しているかというのがわからない部分があります。よくよく見てみると,USAX,SAXS,WSAXSをちゃんと連結してワイドレンジで帰属を評価している論文は,Allenらも含めてありません。超小角でPortlanditeの最小結晶寸法との比較を議論しているところまではよいのですが・・・。なんか,Artifactの結果があるような気がします。この点をちゃんと書ききらないと論文投稿には辿り着かないのですが,5月中にはこの辺りをきっちり書いていけたら,と思います。結構小さいサイズのなにかが存在するんですよね。

6)今年度は少し構造部材性能まで踏み込んだ研究について,力を入れていこうと考えています。科研のテーマも,乾燥と構造体影響ですし,ASR関係の進展評価と部材性能の関係も興味深いです。規制庁事業で関わっていることもあり,このあたりを整理していこうと考えています。
解析については,少しFEMから離れて,RBSMを頑張っていこうと思います。









4/19/2015

客観性について

研究室にも留学生が増えてきました。名大自体の留学生が増えているので,ある意味当然の流れだと思います。AIIBの問題や領土問題を始めとして,日々ニュースに出てきますが,日本のメディアの偏向報道はひどいので,CNNやBBCやその他のニュース(それだって偏ってて,トーンはいつも同じなんだけど)を少しだけかじって,スタンスの補正をしています。留学生は,日本で勉強してみたいと思ってくれている大事な人ですから,偏向報道に基づいて変なトラブルがおきてはいけないと強く思います。
日本の報道ばかりを当然と思っていると,知らずに相手の気分を害したり,世界的な常識から外れることも増えてきます。地下鉄の中吊りに,隣国の悪口を平気で書く国はまともな国と言えるでしょうか。
たとえば,日本語のわかる米国の友人を東京で案内して,電車にのったらものすごく恥ずかしく思います。
個人的に思うことと,世間的に思うことはもう少し,わけてかんがえられないのか,とも思います。

視点を多重化するために,あるいは,日本の立場,相手の立場を理解するためにも理解になりそうなのが,以下の本です。

日本史の誕生―千三百年前の外圧が日本を作った (ちくま文庫) 文庫
岡田 英弘

橘玲の中国私論 ダイヤモンド社
橘 玲

前者は,以前にも紹介したことがあると思いますが,日本史を学ぶにしても,アジア史全体で理解しなくてはいけない,ということが大変によく分かる本です。日本史が日本という領土の中だけで閉じてよいわけがなく,そもそもどういった事情で日本が誕生したのかもまで,掘り下げて記載されている良書です。非常の科学的にかかれていて納得できるものです。

後者は,最近出版されたものですが,中国に行ってきた多くの研究者が,あのゴーストタウンの量は半端ではなく,あれで良いわけがないという感想を聞かせてくれます。また,投資関係の知り合いは,中国のバブルは崩壊間近という議論とそうではないかもしれない,という議論で二分しています。どんなものか想像もできなかったし,それがどういった状況にあるのか,といことについて事実とともにわかる本がないかと思っていた時に出てきた本でした。(こういうように世界の状況が日本語で手に入る国,というのは本当に素晴らしい。)
結果として,ゴーストタウンのもとにまで戻って,中国の状況を非常に具体的に記載してくれているのがこの本です。歴史書とならべてなんなんだ,とも思われるかもしれませんが,この本のわかりやすさは,群を抜いています。当然,端折ることの怖さを横に置くべきとは思いますが,ずいぶんと私は目が開かされました。

4/17/2015

英語

最近,とみに英語を使う場面が増えてきているのだけれども,ブロークンでなんとかなっているものの,コミュニケーションがあんまりだとも自分で理解しているので,てこ入れすることにしました。

三省堂に行ってみてわかりましたが,諸外国の教育プログラム用の教科書も,かなり,充実していて,日本語に翻訳されているものも増えていました。オランダに行ったときにトレーニング用に推薦されたOxwordの教科書をはじめとして,結構,当時は先進的だなというものもたくさん並んでいました。

昔,駿台の英文700選というのがあって,1週間くらいで盲腸の入院中に暗記したことがありましたが,結局,暗記だけだと暗記にとらわれてあまり使えなかった覚えがあります。私の学習履歴は極めてシンプルで,今思い出すと貧相なことしかしていなかったですし,本当に勉強というものがどういうものかがわかったのは,高校3年生の1月以降で,それまではなにをやるべきなのかの本筋がわかっていませんでした。

で,英語の話にもどすと,中学3年生レベルの1行英作文でも,瞬間に出てくれば十分会話は成り立つんですよね。難しい熟語とか変な言い回しはほとんど必要無くて。あとは,単語数の問題ですから。
そういうわけで,日本の中学3年生,あちらの小学レベルの単文を瞬間的に英訳することをやりたいな,と思って本屋にいったら,そういうものが米国の教科書としても,日本の学習書としてもたくさんあるのでびっくりしました。結局,そういうことが重要だと言うことになっているんでしょう。
というわけで,面白そうなのを数冊買って,朝か夜寝る前に数ページ,音読して英作文をするっていうまるで高校生のような生活を初めて見ました。ジョギングと英語,健康的です。

Theイングリッシュ300 っていうのは良さそうです。


一方,英語論文の執筆については,相変わらず,冠詞がネイティブチェックではひっかかっているし,決めの言い回しは難しいし,ということで良質な英文をゆっくり読みたいな,と思って本屋の棚をみてあるいたんですが,決め手に欠きました。よく考えたら東大の時の教養の教科書が,なんか良さそうだったな,ということを思い出しました。結構,印象深かったので家にも残していたのですが,やっぱり,格調高い英語がならんでいましたので,これをもう一度,ゆっくり読もう,ということにしました。

良質な教科書を作る,というのは教える側に立つと重要なことがよくわかります。学習する側も自分の癖とか習慣を理解した上で,自分向けの形に作り込む必要があるわけなので,万人向け,っていうのは無いのかもしれません。
でも,模範となるなにかを示す,というそういった教科書は,最近少し減っちゃいましたね。誰にでもわかる,とか,わかりやすい,とか。
確かに,私の記憶にも線形代数のカーネルの意義だとか,全微分と偏微分の違いだとか,理解した後に,もっと簡単に説明してくれたらよかったのに,というものがたくさんあったように思います。でも,そればっかりでよいか,というのもちょっと違うかなとも思ってきました。

簡単なことをあえて難しく言う必要はありませんが,正しいことをより厳密に伝えたかったんだろう,ということも今ではわかります。私は,そんなにきちっとした正確ではないですし,数式も使えればよい,とくらいに考えて取り組んでいることが多いので,厳密な話は正直いって苦手なんですが,でも,それはそれで,模範という意味ではやっぱり大事なんだろう,と思います。

こういうのって,本当にしばらく考えたりしなかったんですよ。頭がすごく小さい領域にいたような気がします。


3/03/2015

年度末

12月からつづいていた怒涛の3ヶ月がなんとか着陸しそうです.
大学の一大イベントである入試関係も(おそらくは・・・)無事にすみそうですし,卒論,修論も無事終わり,国プロや受託研究,共同研究の報告書もおおよそ終わりました.(まだ,2件おわっていないものがあります.)

大型予算のものはすべて終わって,少し気が楽になりました.今年は,博士の学生もいなかったので,髪の毛全部抜けるかとおもうかのようのな事態が2回くらいありましたが,卒論生も修論生も協力してくれて,なんとか乗り切れました.

3月は例年,その年度の研究について頭を整理し,次年度の研究体系をイメージするとともに,論文を記載する時期となっているはずなのですが,次年度の研究の種まきや骨格づくり,仕込みに忙しくて,あまり,ゆっくりできていません.

3月に入って,いきなり出張が続くなど,ちょっと慌ただしい時間が続いています.ちょっと落ち着かないといけないな,と思います.

1/31/2015

研究近況

・セメントのC-S-Hについては,現在,1つCCRに投稿中で審査待ちです。C-S-Hの層状構造の特徴的な点を議論しており,査読が通ったらこちらで内容を紹介したいと思います。
現在は,この仮説にのっとりながら,セメントペーストの収縮メカニズムについて,さらに深く議論しています。JACTの2010年に発表した論文は,結果として,処女乾燥下においてコロイド的変質が生じるプロセスの非回復成分の収縮は,統計的吸着厚さで評価できる,というように解釈できますが,現在は,回復・リバーシブルの収縮ひずみについての検討を進めています。

Feldman博士らと,今は,Beaudoin博士らのチーム,あるいはSetzer先生らのチームが,長さ変化等温線について,さまざまに報告しています。しかし,いまだかつて,セメントペーストの長さ変化等温線で,湿度の往復で完全にリバーシブルなデータを取得した人はいません。

これがまた,セメントペーストの収縮メカニズムを議論できない理由と我々は考えていますが,ここ2年くらいの研究で,やっと,リバーシブルな長さ変化等温線を取ることができるようになりました。
ここ1,2年でこのデータをベースに,適切な長さ変化メカニズムについて議論していきたいと思っています。

・一方,多孔体の研究もすすめており,最近は,サンプル提供いただいてVycorグラスの長さ変化等温線を測定しています。20℃ではほとんどリバーシブルなデータを取得できる条件を明らかにしましたが,40℃ではリバーシブルになりません。高湿度域の挙動は,かなり不安定な挙動であり,これに依存して長さ変化等温線の残差が生じてしまいます。(その他の挙動は再現性がある。)
この点について,今,実験条件とメカニズムの両面で詰めています。

・収縮低減剤の作用メカニズムも相当に細かいところまで見えてきました。セメギでは,その一部を発表しようかと考えています。

1月末

昨日は,卒論発表会がありまして,無事,研究室の学生3名も発表を終えました。1年の研究成果のはずですが,人それぞれのドラマがあって,発表時にもドラマがあって,濃縮された10分でした。

教員側としては,学生の晴れの場ということで,かなり大きめのホールでの発表の場を用意しております。それを楽しめるくらい,研究生活を充実させてくれ,という意味を込めて。今年も,数名はそれにふさわしい研究発表だったように思いました。

卒論というのは,研究として世界の第一線のものになるのは難しく,さまざまなレベルがあってしかるべきと思いますが,それでも,やっぱり,本人も含めて成長したなあという成果発表になるべく教員と学生は努力すべきと思います。大学の時の頭の体操具合の重要性は,ふりかえってからじゃないとわからないのですが,なんとかして先回りでそれを教員側は学生に伝えられたらと思っています。ひょっとすると本人も悔しいのかもしれませんが,それなの?という発表を見てしまうと,微妙な気持ちになってしまいます。

普段から甘く,優しく,なあなあだと,普段はお互い気持ち良いのかもしれませんが,いざという時に結局,学生本人が損をするという結果になります。スポーツでもそうですよね。普段,努力してない人が本番で成果を出せるわけもなく,勝てないスポーツは楽しくない。勉強も,研究も,仕事も一緒です。仕事になると自己責任という言葉で,自分に厳しく出来ない人は,どんどん取り残されます。
晴れの場,ということはそういうことを反面的に教えることもあるのです。

1/25/2015

インフルエンザ

年明け早々,インフルエンザになってしまい,大事な時間を失いました。後半は,いろいろよく考える時間ができました。東大の池内 恵准教授の著作などをよみ,イスラーム国について学びました。
研究については,以前,ぎりぎりの状況が続いています。

今週末から,卒論,修論の発表会になります。


1/01/2015

謹賀新年

年があけました。謹賀新年。本年も,どうぞよろしくお願いします。
今年は以下のことを頑張りたいと思います。

1.研究室の学生さんが,全員の研究を理解した上で,さまざまな知的体験を楽しめるような雰囲気を構築する。
2.英語で論文を書くことを研究室の標準にする。
3.コンクリートの放射線影響に関する研究についてReview論文を作成する。
4.コンクリートの乾燥・熱影響について,ナノスケールから構造応答まで評価可能な数値解析モデルに関する論文を執筆する。
5.週に4日以上,ジョギングと筋トレを実施する。お腹いっぱい食べないようにする。
6.子供と一緒に自然に触れられる体験を毎月1回実施する。