11/16/2016

近況 20161116

さて、時間が立ってしまいました。最近の活動について、ざっと・・・。


10月26日にNIMS(Natioinal Institute of Material Science)で講演を行いました。セメント化学の知見がインフラや建築ストックの活用にどのように活かせるかということで、私の経験をもとにマルチスケールな視点の研究が重要であることがいかに大事か、という点で講演させていただきました。合わせて、NIMSの研究設備を拝見させていただき、従来、金属、複合材料、ポリマー、粘土などに利用されてきた研究設備は十分、セメント系材料の微細構造分析に利用できるということを議論しました。
次年度は、Richardson博士やMcDonald博士も来日していただけるという話もありますし、なんらか、東京でシンポジウムなどができたらよいな、と考えています。

10月から、ASRの影響を受けた構造解析に関する研究を受託することになりました。OECDのプロジェクトに規制庁が参加する関係で、私も少ないながら、知見貢献させていただくことになりました。あまり、難しいプログラムを開発することは考えておりませんが、シンプルで効果的なモデルの開発ができたらと思っております。

11月7日~11日は、名古屋大学で、International Committee on Irradiated Concreteを開催いたしました。今回は、8カ国、33名の参加がありました。9日には浜岡原子力発電所で行われているコンクリートプロジェクトに関連して視察を行い、地方紙にもその件が取材されたりと、アクティブな活動を行いました。また、次年度の開催はチェコに決まりました。同じテーマを3日間みっちりと議論するというスタイルは、かなり、効果的です。研究者間が打ち解けて、かなり率直な議論ができますし、誰がどういうことを考えているか、もよくわかります。また、今回は、米国、スペイン、日本の規制庁にも参加してもらったので、今行っている研究がどのように規制に反映されうるか、今何がわかっていなくて、今後なにを研究しなくてはいけないか、など今後の方針なども議論されました。

この間、裏では二国間、多国間の共同研究打合せも裏で行われ、日本としても複数の国と共同研究の可能性について打合せしました。
また、EU,米国などで実施される大型プロジェクトの情報なども入ってきました。全部で6つくらい伺ったと思いますが、そのなかの幾つかについては、コンサルタントの形で参加することになりそうです。研究の実施者というよりは、有識者として研究をガイドすることでも国際貢献できるのは光栄なことです。

さて、一方で、2本の論文が公開になりました。


Multi-scale Review for Possible Mechanisms of Natural Frequency Change
of Reinforced Concrete Structures under an Ordinary Drying Condition
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jact/14/11/14_691/_article

この論文は、構造物の固有周期が変化する要因として考えられる原因を原子スケールからメータースケールの問題までマルチスケールでレビューし、なにかを議論したものです。また、それぞれのスケールでどのような研究が今後必要なのかについても明らかにしました。そもそも、原子スケールの研究と実際の構造物のスケールをどのようにリンクすべきかはずっと頭の中にあったのですが、それをやっと文章の形でまとめることができました。個人的には結構気に入っている論文です。



Change in Relative Density of Natural Rock Minerals Due to Electron Irradiation
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jact/14/11/14_706/_article

こちらの論文は、電子線照射によって岩石鉱物のメタミクト化(アモルファス化、結晶が壊れる現象)について議論したものです。長石類も体積膨張する点、粘土鉱物であっても堆積膨張する点があきらかになったこと、電子線照射によって得られた状況と中性子照射によって得られた体積は大きくことなること、照射の最中のThermal Annealingの影響が非常に重要であることなどを議論した最初の論文といえます。名大の武藤先生と昨年からコラボさせていただいた研究が早速花開きました。
放射線影響下におけるコンクリートについても重要な知見を与えています。