10/06/2011

ベネチアでの調査(その3)

結局,我々は市が管理している塔について調査できることになった。ブラーノ島にある。この塔は,写真でみられるように相当に傾いている。豊橋技科大のM先生が測定したら,4度の傾斜であった。えらい傾きようである。
塔の中も上らしてもらったが,この不安定感は相当なものだ。すでに1980年代に下部をコンクリート打ちするなどの対策を施しているらしいが,基礎そのものの不動沈下が原因なのでどれだけ有用かはわからない。カウンターウェイトとして,300年後くらいに同じになればよいか,と思っているのかもしれない。

このコメントは,ジョークではない。日本の価値観では,変なものをみたらすぐに直したくなってしまうし,実際に動いてしまう。震災後の復旧は,やはり素晴らしく,道路もあっというまに開通してしまった。
しかし,イタリアはそうではない。ラクイラの中心部はまだ,人が立ち入れない状況になっているし,復興というのはもっと時間がかかってよい,と考えている。塔屋の傾きも歴史を経過してなったものであるのだから,おそらく,まっすぐに戻してしまったら,それはそれおこられるかもしれない。ピサの斜塔をまっすぐにしたら,多くの人に怒られるだろう。それと同じことだ。
歴史に必然もある,と考えらの考え方を調査を通じて触れることができるのは,非常に素晴らしい体験である。

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