2/25/2016

廃炉材研究

そういえば・・・。


https://www.chuden.co.jp/corporate/publicity/pub_release/press/3259170_21432.html

浜岡サイトの廃炉プロセスが一段階すすみました。
同時に廃炉材を用いた研究にかかわる環境変化も整備され,はれて,浜岡原発1,2号を用いた廃炉材研究がスタートします。エネ庁側でも本件に今年度予算がついています。

経年変化した材料性能評価に基づく保全と高経年対策の高度化をもくろみます。最大の目標は,コンクリート側研究では耐震性能評価に材料物性評価をどのように関連づけるか,です。

とはいえ,楠先生に率いてもらった国プロ・システム安全研究で議論になったデータをまずは蓄積しよう,ということになっております。

こちらも最低4年の大型プロジェクトになる見込みで,海外との共同研究についてちゃくちゃくと(ゆっくりではありますが)進めています。また,米国,スペインでの廃炉研究での知見交換も期待できますので,広がりある検討になればと思います。

こういった基礎研究ができることが日本の強味といえるんじゃないか,と思います。

個人的には指針類への落とし込み,日本全体での知見共有,海外への国際貢献,について関係者とさらに議論していきたいと思っています。

2/18/2016

修論発表会終了

修論発表会が終わりました。学生行事はおおむね終わりです。
発表のうまい下手はありましたが、最後の最後に非常に貴重なデータや仮説が絞り出されて、プレゼンで示されました。努力の賜物だと思います。痺れました。
橋本君のおかげで、1H-NMR relaxometryの最先端研究にキャッチアップでき、研究室に新たな基盤ができました。そして、世に論文として出されているデータの問題点、データ解析の限界、今後の課題が明らかになりました。また、研究テーマがモンモリロナイト、MCM-41、Vycorグラスなどにも拡張され、それが問題解決に大きく役立ちました。いずれも繊細な測定でそれを実施可能にしたのは、橋本君の貢献が大きいです。(裏では、たくさん失敗したし、何度、厳しく実験手法の確認を指導したことか・・・)
酒井田君のおかげで、湿度測定の信頼性についてやっと確認できました。伊藤君の時代からのコンクリート中の湿度計測で、すでにセンサだけでも200万くらい無駄にしてきました。なんどもなんどもやって、やっと現状の湿度センサの限界と(研究上の)の湿度測定についての手法が確立しました。再現性確認に4年、共同研究先も含めての研究としては足掛け7年くらいかかりました。残念ですが過去に発表されていて信頼できる湿度測定結果は少ないです。スペインチーム(Azenhaら)、フランスチーム(Poyetら)も間違っているとおもいます。信頼できるのは、(私の知る限り)昔の椎名先生の湿度計測結果、および、橋田さんの若材齢の計測結果です。湿度センサはコンクリート中で継続利用すると、どういうわけか必ずドリフトします。市販されている高いものからやすいものまで10種類以上確認しましたが、いずれもダメです。結露の問題だと思いますが、生き残るものもあるので、取り出した後、校正機で確認して問題ないもののデータだけ論文に採用するという手法はありかもしれません。ただ、そんなリスクはふつうはおかせないですね。
Person博士が自己乾燥研究で、年に何回NISTで校正しているか、と聞いていたのを思い出しました。それだけドリフトするということですね。
それと、ASRの湿度依存性についての研究が、ぎりぎりで軌道にのりました。この成果は、もう数年かかりますが、この礎もきっと花開くでしょう。
本当は、ここからもうひと踏ん張り、論文を書いて成果としてとりまとめてもらいたいのですが、もったいないことにここで終わりそうです。ぜひ、後輩の学生には、この背中を見てつづいてもらいたいです。
両君のおかげで今年度も丸山研は着実に一歩進むことができました。

2/12/2016

近況 20160212

さて、近況です。

1.今日はセメギの締め切りでした。5人、全員英語で提出できました。だんだんと根付くとよいと思います。やはり、普段からの文献の読み込み、書く量、そして頭の中の論理性が重要です。英語的なスタイルで思考できるというのは、それなりに論文を書くときに大事です。M1にもB4にも英語が上手な学生がいて驚くとともに、心強く思います。

2.SAXS論文をCCRに投稿しました。とりあえず、査読まで回ったので、あとは天に任せます。骨材ひび割れ関係論文は2回目の返答をしました。今回でうまく査読が通ればよいと願うばかりです。JACTに照射によって劣化したコンクリートの強度予測の論文を投稿しました。

3.本日は、修論も締め切り日でした。みな、最後まで頑張りました。ただ、フィードバックはもっと早くほしいです。もっと伸びれたのに、と思うことが多いです。情報をいかに早く、適切に回すか、というのは常に考えてもらいたい点です。年をとったというのもあるのですが、研究も教育も自分の寿命を削ってやっているというのが身に染みてわかります。振り分ける時間に空白ができると、本当に焦るようになってきました。これも40を過ぎたからかもしれません。

4.JCI中部支部の講演会で、軍艦島と国立競技場の現場調査の研究について拝聴しました。生意気な意見であることは承知していますが・・・。マスで研究をやってそれに乗ることができるのは関東の先生だけだとおもいますが、なるほど、こうやってゆっくりと全体を少しずつ動かすのか、あるいは、その流れに身を投じるものか、という点で勉強になりました。私はとがった研究スタイルしかやってこなかったので、まったく逆視点ということで大変勉強になりました。

5.日本のよくない点は研究の多くが補助金であること、そのために教員等の人件費がまったく無視されている点にあると思います。大学に研究費が来ることは良いことです。しかし、そこに人件費が乗っていません。ちゃんとマネジメントができる先生であれば、そこに研究員や秘書、その他のマネジメントフィーを適切に載せると思いますが、そうでないところで足元を見られることも多いです。政府自らが、大学教員をそのように扱っているので、民間から見ても同様と考えられる方も多いように思います。
大学に来る研究の一部は、1)人件費を見ていないので安いから来ている、2)成果よりもその取り組みを含めて大学のブランドを適宜使いたい、というものがあります。こういった研究は民業圧迫、研究経費見積もり算定根拠の破壊、若手の学生のただ働きの上になりたっている、というような点で大変危険だと思います。
建築には、デザインの徒弟制度があり、デザインの魅力ゆえに、ということも別途議論されていますが、適切な経済活動に取り組むことを大学が率先してやらないと、本当に悲しい将来がまっているように思います。最近、特に学内で行われている研究に危機感を持っています。

6.最近、さまざまなところで将来構想の委員会に入っていることを紹介したと思いますが、建築としての学問の進化というのはなんだろうかということをずっと考えています。大学教育をプロフェッショナル教育にするということは、ただの専門学校化と何が違うかも気になります。もう、いっそのこと、一度、建築の枠を外した方がもっとものごとがよく見えるんじゃないだろうか、と。あまりに法律やルールに縛られすぎているんじゃないでしょうか。