11/25/2018

11月 ひさしぶりですみません。

まだ,見てくださっている人がいるので,また,更新を継続します。しばらくFBで満足してました・・・。

11月は教室主任にも関わらず,あらかじめお願いしていた関係で海外出張をしてまいりました。11月の出張は,プラハ,ローマ,ノックスビルです。

プラハでは現在実施中のエネ庁事業で行う骨材の照射実験が可能かどうかを現地で議論してきました。プラハは,ヨーロッパとも旧ソビエト諸国ともうまく連携している素晴らしいポジションを確立しました。技術的な優位性は今後高くなるのではないかと思います。
チェコでコンクリートといえば,Bazant先生が有名ですが,かのチェコ工科大学には優秀な先生方が多数おります。ただ,Vison makerはまだ少ない感じです。
私のお会いしたチェコの技術者は,みな謙虚で真摯で,そしてよく勉強しています。留学も多方面にわたり,知見交換が頻繁です。ここにVison makerが出始めると,ちょっと日本の優位性はなくなっちゃうな,と感じました。
日本に,時としてものすごく想像力豊かな,先見性のある研究者が出るのはハッピーなことだと思います。これは,民族的なものかもしれません。時として妄想家,引きこもりを有無のかもしれませんが・・・。
話が脱線しましたが,今後は,プラハでも研究を行うことになると思います。

その後,チェコ工科大でベルラーシのNational academy of Science の先生方とも打合せを持ちました。今後,共同的研究ができなか,継続的に知見交換をすることになりました。(ロシア語から英語の通訳がありました・・・。)

ローマでは,いたりあのSOGINという廃炉を行う政府所有の企業を訪問しました。特別点検の実施から,日本でもいくつかが廃炉を予定するようになりましたが,技術的な課題は一定程度住んではいるものの,処分の問題,周辺の民意・社会受容性の問題,雇用の問題など大きな課題があります。原子炉を運転中は,必要となる作業が固定化されるので雇用というのは簡単なわけですが,廃炉は長期にわたるといっても,必要となる作業が変化するので雇用を周囲で維持するということ自体も大きな課題になります。生産性と技術,属人的な課題が複合し,地元での雇用維持というのは,大きなマネジメント力を必要とします。こういったことは私は考えもしてきませんでしたが,非常に大事な視点と思います。社会が縮退するなかで,雇用体系とか,必要とされる作業自体が変化する可能性も,建築分野でも考える必要がありそうです。今後は,AI,ロボティクスを含めた生産性向上と作業変化というのを考えていく必要があります。

ノックスビルへの移動してテネシー大学で,International Committe on Irradiated Concreteの参加しました。
今回で,第四回です。月曜のエグゼクティブコミティーから始まり全4日間,朝8時半から夕方5時まで缶詰のミーティングです。各国,事業者,規制当局などが技術的基盤を獲得する目的(と私は考えている)で,研究活動を共有して議論するものです。国際共同研究の応募提案,大型共同研究フレームワーク構築,各国のニーズの共有などが行われます。

クローズドミーティングなので詳細は書けませんが,各国のデータを取りとめ一生懸命指導的立場を取ろうとする(上から乗っかってこようとする)というのが米国,ひたすら地道に大型予算をとって粛々と研究データどりや新しい仮説を提案しまくり,全体のムーブメントを作るのが日本,原子力大国フランスはどちらかというと処分中心で,英国もそれに追随。他国は廃炉材活用を模索するか,EU研究提案にもっていくための活動を実施,という感じです。
東欧は最近,予算が無いながらも研究意欲が高く,かつソビエト時代の遺産は素晴らしく,核開発者をはじめとしてすごい技術力があるのが驚きです。ロシアを見くびってはいけません。(セメント化学もすごいですけど・・・)

中性子によって結晶構造が壊れるときに熱的影響でアニーリングされる部分があるのでそれを取り出すことが今後の研究で重要だと何度も言って,研究仮説と実験プロトコルを提案したんですが,今年に再度発表して,やっと関係者に理解されました。いやあ,1.5年立ってやっと理解できた,クールだ,というのは私の英語がひどいということなのか・・・。

浜岡プロジェクトで得られた実機のデータが今までの常識を覆すコンクリートの挙動になっていて,実部材データを(戦略的に)得ることがいかに保全上大事か,などのメッセージもやっと伝わったようで,米国規制庁(US-NRC)や電力研究所(EPRI),その他の研究機関から引っ張りだこになって,個別にディスカッションを持ちました。

こういったところで密接に議論するとさまざまなネットワークが生まれます。
EUプロジェクトにアドバイザーで参加要請されたので申請書作成をお手伝いすることになりました。(3年前の提案は結局プロポーザル手前で没になったのでそのリベンジ)
米国規制庁からもさまざまな相談事をされたので,無難な範囲でお手伝いをしようかと考えています。契約結ぶの大変そうですけど,どうすんのかな・・・。

4/28/2018

4月

なかなか更新がままなりませぬ。SNSに少し書いているせいもあるのですが。

・この4月から専攻長を拝命しました。別に偉いわけではなくて持ち回りです。海外出張が制限されるのが問題です。10月と11月にそれぞれ1回ずつ海外出張に参りますが、それ以外は残念ながら難しそうです。

・研究室の新メンバーとして、4年生が3名配属になりました。今年はちょっと新しいことに挑戦してもらおうと思っています。その他に、ポスドクが1名、清華大学卒業、Ecole de Pont ParisTech博士という方に来ていただきました。大変優秀です。現在、さらにポスドクならびに博士学生を募集しております。いずれも給与を出すことができます。
ー鉱物学、結晶学、TEM分析ができる方
ー結晶学、分子動力学、第一原理計算のわかる物理、化学を理解している方
ー波動伝搬、均質化理論に興味のある方
ぜひ、ご相談ください。

現在、丸山研では、国のプロジェクトとして
1)放射線によるコンクリートの劣化メカニズムの解明(エネ庁)
2)経年変化したコンクリート構造物の性能評価方法と将来予測法の研究(エネ庁)
3)福島第一原子力発電所施設を対象とした汚染メカニズムの解明(文科省)
4)処女乾燥下にあるセメント系材料の水分移動メカニズムの解明(科研・基盤A)
5)ジオポリマ、バサルト繊維、形状記憶合金を用いた新しい構造部材開発(科研・基盤A分担)
6)オーセンティシティを考慮した歴史的構造物の補修・補強方法の開発(科研・基盤S・分担)
7)炭酸カルシウムコンクリートの形成メカニズムの応用(科研・基盤A・分担)

を実施しております。
その他に現在、国交省へ申請中の案件、国際共同研究(フランス、チェコ、イギリス)があり、企業との共同研究ならびに研究コンサルティング案件は10以上ありまして、ダイナミックに研究が実施されている環境です。建設材料をベースにしておりますが、地質学的研究、物理学的研究、数値解析手法の開発研究などを国際的にも幅広い研究領域の研究者と共同研究しています。他に誰もやっていないテーマも多くありますから、研究室に興味を持った方は、是非、ご連絡ください。

・最近、久しぶりに論文を公開しました。
Impact of gamma-ray irradiation on hardened white Portland cement pastes exposed to atmosphere
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0008884617306506
ガンマ線照射環境で中性化が生じた場合にどんなことが生じるかということを議論した論文です。放射線処分や原子力発電所施設の安全性や性能評価に貢献する論文です。ガンマ線を照射するとガンマ線発熱による熱・乾燥影響が出てくるので、ガンマ線本来の影響と熱・乾燥影響が重畳します。熱・乾燥影響が明らかになっていなかったことも有り、強度があがったり、さがったりと一貫性のあるデータが存在しなかったわけですが、それについて明らかにした論文でもあります。

・4月より、Journal of Advanced Concrete Techonology誌のEditor in Chiefを拝命いたしました。三橋先生、前川先生と続いた編集長の三代目で、大役ですが、より広く読まれる論文誌にしていきたいと思っております。みなさま、ご投稿をお願いします。
https://www.jstage.jst.go.jp/browse/jact/_pubinfo/-char/en


1/14/2018

2年前

2年前の投稿を紹介します。

JCI年次論文が明日〆切です。研究室の論文投稿を原則英語,をかかげてしまったところ,大変なことになってしまいました。自分が言い出しっぺなのでしょうが無いですが,久しぶりに全論文に猛烈に赤を入れまくっています。
投稿は,おそらく4,5編になるんじゃないかとおもいます。また,日本語に留まってしまったものも出てくると思います。
別に英語じゃ無くて良いし,日本人に読んでもらいたいならば,という議論もあるんですが,名大まできたなら,英語で論文を書いたことがある,くらいの経験は積ませた方が良いだろうと思った次第です。日本語のレポートはたくさん書きますしね。
英語化して良かった点がいくつかあります。
・日本の国際的な情報発信を考えたときには足りていない情報が多くてもったいないことがわかる。論文に英語名が無い奴などは大変に損してるし,そういうことじゃいけないということが学生自体が認識する。
・英語で論文を書くと文章が具体的にならざるをえず,何を理解していて何が理解していないのか,自分でも認識できる。日本語は主語がなかったり,ぼかして書くことができますが,英文ではそれらを明確にします。なんとなく理解しているのと,ソリッドに記載するのでは全く別です。うちの研究室はこういうことのトレーニングの一貫として,数値プログラムの勉強をさせるのですが,英語化はそれと同じかそれ以上の効果があります。
日本語で良いというのはまさしくその通りだし,各学会がGoogleとアライアンスを組んで,英語と日本語のつい訳論文を提出すれば,それぞれの分野の過去の論文はすべて英語化できるでしょう。(これはこれで,日本の土建の研究分野が喫緊にとりくまなくてはいけないことだと思います。)
でも,コミュニケーションとして技術を適切に伝えるという意味では,英語で書かせるというのも良いもんだ,ということがよくわかりました。
建築学科は英語化に反対する人も多いですけど,まあ,やってみてもよいんじゃないかと思います


2年前から、同じ気持ちだったわけです。
今年も研究室から投稿される論文は英語を基本としています。そういうのって、やらされないとできない人もいるので。私は、その必要性を理解してもらうのと、無理やりにでも体験してもらうこと自体が、若い世代に大事だと思っています。

で、セメント協会のC-S-H研究委員会やら、昨今の自分のまわりの研究を見渡すと、
1)工学研究(設計的研究)なら、ゴールにいかに早く到達するかが大事。ゴールを設定したなら、最短を目指さなければ大学に大型共同研究を持ってくる意味がなくなる。その観点で、国際的に知見交換ができて、いざとなったら大事なキーパーソンを教えてくれるネットワークは本当に大事。
2)科学的研究(維持管理的研究)なら、国際的に通用する科学技術的基盤をしらなければ、意味がない、少なくとも国費をつかった研究で重複が過去と重複があったら大きな失態。そういう観点でもつねに自分に興味がある内容についてアップデートしてくれる研究連携チームの存在は大事。ただし、研究の追試、二番煎じ、再現性確認は超大事。こんな時代で、一番がもてはやされる時代だからこそ、日本はちゃんと再現性を含めてちゃんと咀嚼して、自分たちの考える第一歩を示していく骨太の科学技術社会をつくって見せていくべき。
科学は、本当に言いっぱなしなところがある。
日本は工学・科学両輪で前にすすめるあり方というのを、土木・建築業界で指し示す、そういったことをSIPでも考えたら良いと思います。

2018年

すいません。フェースブックに関心事を書いていたら、こちらがおろそかになってしまいました。本年もよろしくお願いします。

JCI年次論文が佳境ですね。今年は、博士学生がジャーナル投稿を目指しているのであまり、本数は多くありません。最大で4本かな。いろいろ、議論を生むようなデータはあるんで、今後に繋がる検討になりました。やっぱり、論文を書かないと学生も頭が整理されないし、実験として気づいた新しい発見と実験の当初の目的がずれた場合の整理が大事になることもあって、学生が論文を書いているときはワクワクします。

一方、セメント協会の委員会で取りまとめてきたC-S-H研究会の報告書の見通しが断ってきました。3月に報告会も実施するので興味のある方は是非出席ください。
セメント協会にもありますので、ぜひ、御覧ください。なかなか、大部な報告会です。
この教科書は、すごく良いです。本当に若手のみなさんを中心に我々の知見、留意しなくてはいけないこと、日本で全然チェックされていなかったことなどが、ふんだんに、網羅的に入ってます。もう、各種の査読で、変なことが書いてあったら、こちらをみて勉強してくださいって、かけるくらい。
耐久性研究とか、維持保全関係の研究は、設計フェーズから科学にもとづく将来予測フェーズになるんで、その観点で科学的事実から目をそむけちゃいけないし、宗教的・悪魔観的因習にとらわれてもいけないのです。
日本にセメント化学の研究室が、なくなりつつある今、ぜひ、若い人たちには目を通して欲しいです。

さて、すでに次年度に向けての動きが活発化してきています。名大の建築の中にも新しい風が吹きます。4月からの建築教室には期待です。

研究室的には、日本の学生には国際的な刺激を、また、海外に向けては日本でのアクティビティの高さをアピールする場になるように研究室運営を抜本的に見直しています。
現在、博士学生は7名(うち、留学生4名(中国、チェコ、フランス、タイ))、次年度はこれに海外からポスドク(いずれもフランスの大学出)を2名雇用する予定です。その他にも、名大で研究する社会人が数名検討されています。
卒論、修論の学生は、これらの国際的なアクティビティに大いに影響を受けてもらいたいし、国際感覚をもって卒業してほしいです。

実際の研究では我々が貢献できるところを増やし、建築学がいかに幅広い学問なのかを認識してもらいたいと思っています。
一つは、福島第一の廃炉のためのコンクリート汚染の研究、もう一つは、放射線で変質するコンクリートの研究について、あらたなプロジェクトが開始されました。2017年広範からスタートなので、2018年から本格化します。
後者は、米国のORNL、ノルウェーのIFE、チェコのREZとコラボをします。日本国内でも、いろいろな大学、国の研究機関とコラボの議論を開始しました。

建築のわくを超えた論文が出ると面白いですね。