12/29/2012

帰国後

海外出張から戻って,翌日に家族を東京に運び,その翌日に電力やゼネコンさんと打ち合わせしたり,講演会をしたりしたのちに名古屋に戻ってきました。

戻ってきた翌日は,久しぶりに化石生成メカニズム研究会で,理学系の先生とモデルやデータに基づく考察を行いました。謎なデータを異なる背景の人間で解釈しあって,刺激を受けるというのはなんとも楽しい会です。同位体分別反応というのは,時として大きな疑問,大胆な仮説を呼び覚ますすばらしいツールです。

Natureとその他に1本ずつ,投稿を目指すことになりました。私はよこでがやがや言っているだけですが,初のNature投稿で,結構,うきうきします。


さて,木曜日は,午前中に某国から,見学者が来られました。研究室を見学して研究の話を少しして帰られました。
この文書を読むのは国内の人でしょうから,ここに書くのですが,相当の量,JSCEの論文集などから内容がぱくられていましたね。あまりにストーリーが同じだったので,ご本人に指摘しましたが,強烈です。

そもそも,数値解析系の方々は,実験系の方がシナリオを構築したものを数値的に置き換えるという作業をされていますが,そのシナリオ構築という作業のオリジナリティは,それを想定した実験をした人にそもそも帰属するのではないかと私は考えています。数値的にきれいに表現するというのは,実験系の人であってもやろうとおもえばすぐにできるので。

で,そういった数値解析系の方のオロジナリティ尊重についてこまったもんだな,と思っていましたが,まさか,日本の土木学会論文集,黄表紙,材料などの論文がそのまま輸出され,模倣されて,オリジナルと言われているとは思いませんでした。こりゃ,ACTは,偉い先生から基金つのって,丸ごと良い論文を英文化した方がよいですよ。
こんなにあからさまとは思っていませんでした。
日本語で論文を公開することの方が,リスク,と考えた方が良いですね。


木曜日の夜は,忘年会でした。病み上がりであまり飲めませんでしたが,多くのOBが訪ねてくれたので,それはそれは楽しい会でした。企画した学生さん,ありがとうございました。


金曜日は,共同研究などの打ち合わせが3件。来年も楽しい研究ができたらな,と思います。

今日は土曜日ですが,明日まで,たまっている査読(5本!)と,自分の論文(2本),正月明けに提出しなくちゃいけない学内書類とか報告書関係を書いて,それで終わりにしたいと思います。

なんとか,無事,今年もつつがなく追えることができ,来年の正月を迎えられそうです。
皆様方,良いお正月をお迎えられますように。本年中はどうもありがとうございました。


12/18/2012

オスロー

現在,オスローにいます。昨日は8時間ぶっとおしの会議で,なんとか来年度意向の実験について見通しがでてきました。この実験には,結局あしかけ5年ほどの準備がかかっていて,国のプロジェクトとしてかなりの下積みがなされています。

すでに実験計画単体をIAEAの国際会議で発表したり,予備試験の結果は,米国原子力学会やASMEなどに発表しつつありますが,国際共同研究としての打診をいただいたり,かなり大きな話になってきました。

国際共同研究自体は,結局,関係省庁+外務省の話になってしまうということで,現在のところは,担当者ベースの情報交換会+来るべき共同研究の枠組みのディスカッション,を適宜やっている状態です。今回,政権が変わったということで,米国側もかなり対応がかわるかもしれません。

国内においても,こうした国際的な研究・意見交換体制ができたり,そこの参加者にかなり大物がでてくるようになってくるにつれ,アチラコチラで実験協力者も出てきてくれるようになっています。うまくいけば,また別のプロジェクトをたちあげることができるかもしれないな,という感じです。

また,実験を評価し,実務に落としたり設計に反映させるためには,数値計算やモデルが必要になってきますが,ここにおいても,モンテカルロ計算や決定論的手法の計算各種に精通した専門家にご協力をいただけるようになり,今年度にはそろそろ全体像が見え始めるようになってきました。

こちらの研究は建築業界やコンクリート業界で発表してきませんでしたので,来年あたりから発表したいなと考えています。

ケミカルアンカーについて

ケミカルアンカー、後施工アンカーについて
メールアンケート結果です。(全2件)
・70年台には、大きな事故はなかったという複数回答あり。
・75年頃にゼネコンが地中梁を施工しわすれてケミカルアンカーで定着をとったという事件あり。その時には信頼性が高いという評価だった。そのため、この時代に信頼性が高いということで利用されたものと考えられる。
・ケミカルは、埋め込み深さが長いとケミカルが足りなくなることがあり、充填確認ができないのでは、という意見がかつてあった。(ただし70年代かどうかは不明との話。)
・上向き後施工アンカーは作業性の問題、精度の問題から設計時に組み込むするということは、一般論として技術者としては考えにくい。
・この時代では、埋め込みボルトなどで対応するのが一般的。(原発、その他の建築系プラントもそうなっています。丸山コメント)

・同じ構造形式のトンネルといっても、全部後施工アンカーだとは考えにくい。
・ケミカルの寿命についての議論は、すくなくとも実務者の間で共有されていない。
・当時であっても、後施工アンカーで、ケミカルアンカーで、上向き施工であることを考えると、天井を直吊りするという形式を設計時に考えるというのは、おかしいと思う。
建築で躯体に手を加え出来上がった状態を想定して準備するのは、設備配管の梁・壁のスリーブ抜きとか、重量物が取り付けられることが想定できる場合。このとき,位置が判っている場合にはボルトを埋め込むなどするが、かなりの部分は建築躯体に後から明確に位置を決め、あと施工アンカーを用いて取り付けるケースが多い
・この場合は取り付ける者が支持力を求めて取り付けるが、監理・管理するものも特に疑問を持つことなく認可している。この点が問題である。
・40年前はドライヴィットかホーリンアンカー(機械式アンカー)だったが、途中からケミカルアンカーが出てきて信用絶大で画期的に利用された。

土木系の方のご意見。
・天井物は付属物であるので構造設計対象外である。
・付属物はケミカルアンカーで対応しているものも比較的ある。
・一方で,1985年頃以降は,天井板の吊り構造について安全対策がなされているので,施工中の落下などもあったんじゃないか。危険性は認識されていると思う。
(丸山コメント:建築物の天井も安全性が指摘されているのは1990年以降でしょうか。地震,結露その他で天井板落下事故が生じており,設計上の課題として上がっているのは比較的最近だと思います。)

という意味で,この中で考えられる今後の課題は安全性の認識・基準類に対するバックチェックのあり方では無いかと思います。

建築でも他人ごとではない,というのが感想です。

理系の子

理系の子


理系の子、一緒に研究をされている方のFBに載っていたので読みました。理論的思考や実験的検討の良し悪しをスタープレーヤーにするという、サイエンスフェアという取り組みについて、改めてそのすばらしさを認識しました。スポーツ優秀な子は日本の小学校でもクラスの人気者でしょう。でも、科学については?

サイエンスフェアで勝ち抜くには、優秀な頭脳であるということだけでなく、優秀な人が理解者に出会える、ということが大きな要因である。もう、このよき理解者に出会えるということが子供にとっていかに大事か、子供の良いところを伸ばしてあげる環境というのが、いかにして世の中を明るくしていくかということがよくわかります。そういう観点で、偉大な才能(努力をする才能を含む)を見ると涙してしまう私には本書は、涙だらけでした。

私は、1年生のセミナー講義で出会った時には優秀で目が輝いていたのに、4年生のときには本当に活力の無い学生になっていたということが私にはショッキングすぎて、日々、講義や大学の授業について考えていましたが、改めて考えさせられました。

一方で、学生が活躍する、すなわち外で評価されるには基礎力がなければダメです。どのような形で、基礎力の習得できる成功体験を積み重ねていけるか、ということが日本の教育の大事なポイントだと思います。
読めばわかりますが、くもんのくだりは笑えました。


訳者あとがきに記載されている名古屋市科学館の方は、今、地質系の人と一緒にやっている化石生成メカニズム解明プロジェクトでご一緒させていただいてる方でした。
アナログとしてコンクリートの中性化の研究もやっているのですが、旧名古屋市科学館のコア抜きも許可いただいて、いろいろ好きにやらせていただきました。
ときどき、科学館のイベントも教えてもらって、子供と一緒に行っています。

今度、サイエンスフェアについていろいろ聞いてみたいとおもいます。

12/01/2012

11月30日


昨日は、午前中は授業で、毎年恒例のモルタル作品コンペが行われました。なかなか良い作品がでてきたので、後日アップしたいと思います。(中村先生、サーバーアップ、よろしく。)

午後は、東京出張でした。例のプロジェクトの中間報告会。コンクリート系は後半にかためてもらったので、みなさんの発表を聞くことができました。Y国・K先生のプロジェクトは、実務側の方からの意見ももらって、少し整理されました。一方で、質疑の方で出てきたイメージと具体策は、まだ頭の中でつながりません。また、もっと上の規制側でやるのか、推進側でやるのかの議論も整理つかずかなあ、という感想。

最後が私の報告でしたが、照射促進試験と実機との差、という観点での意見は大変参考になりました。今回、予算の関係でできない実験なんですが、ぜったいにやったろう、と思いました。
そののち、今月のノルウェー出張のための実験ディテールについての打ち合わせがあり、ここではいくつか問題が出てきました。終電(東京10時)の電車で、ダッシュすると桜通線の最終・徳重行きに接続可能なことを実証しました。あまりやりたくないですが。


師走です。日が進むのが早いです。

11/29/2012

研修





27-28日は企業見学+講演会を実施しました。電気化学工業さんは,海外展開も積極的なことを知っていましたが,学生にもいろんな角度から企業・社会をしってもらいたいと思い,相手方のご厚意もあって見学を実施しました。
そういえば,CCRでも,EMPAのLothenbach博士との共同研究が,印刷前原稿としてすでに出ていますね。いろんな先生方とコラボをしていることでも有名です。

講演では,超高強度領域の収縮等に関するものを発表させていただきました。非常に多角的なご質問を頂戴し,活発な会になったのは嬉しかったです。

現在実施している共同研究も来年度以降には,公開できるような実績を積み上げていきたいところです。

月一くらいになってしまった。

どういった情報を書けばよいか,悩むなあと。

Facebookには,個人的なこと,プロジェクトで公にはできないことなどを記載しているので,学生さんで興味のある人は,アクセスしてください。

最近考えた教育について。

子供が幼稚園に入って,劇的に進化しています。幼稚園では,教育に力を入れるところ,遊びに力をいれているところ,よくわからないけど,問題興さないようにだけ気をつけているところなどさまざまです。うちは,遊びに力を入れるという評判のところに入れました。


11/01/2012

10月

もう、10月はすぎちゃったんだが・・・。

10日は、ASCOTで講演をさせていただきました。自分は、講演に際して新しい情報、付加価値をつけなくては、と強く思うんですが、自分のもっている付加価値というのはどうもマニアックすぎてこまったな、という状況です。授業であれば、わかっていることをしゃべるのもそれなりにできるのですが、それだって、毎年一緒じゃだめだろうと思うのです。
比較的広い形での意見交換がすくなくなっているのかな、とも思います。
といういいわけですが、結局、ものすごくマニアックな話題提供になりました。でも、終わった後の質疑は大変面白かったです。現場でのトラブル系の話というのをひもとくのは、なかなか楽しい。

12日規制庁事業の総括検討会に出席しました。あいかわらずの主査の辛口にしびれます。いかにきっちりやっていくかというのは、日本のコミュニティの中では非常に大きな慣性力があるなかでの突撃になるので、やはり大変なんだな、と思います。厳しくても魅力があるという人はそういません。
利益あるからついていこう、みたいな人も多いわけですから。
こういうのは、将来のあり方として参考になります。

14~16日はJABEEの受診でした。JABEEというのは教育のシステムの検証制度です。無事、ほぼ問題なしでした。JABEEの精神は良いと思います。大学内で教育に関する議論は増えましたし、名大の特色とはなにか、みたいな議論もされるようになったようです。
ただ、日本人の悪い癖なのか、どうしてもシステムに振り回されます。なんだ、JABEEの評価項目が変わるって・・・。そんなころころかわって、制度変更してこちらの教育が振り回されるなんてばかげています。
名大の教育がしたいんであって、JABEEなんてどうでもよいんです。学生が(すごい長い目でみて)メリットがある教育が大事です。
そういう観点からいえば、建築士法も厳しいです。建築学系は別に一級建築士の予備校じゃないわけです。法律遵守よりは、法律がどうしてそうなったか、法律と現場を考えて、場合によっては法律を変えられるような人材を育てたいわけです。
また、建築士だけじゃなくて、私はいろんな業界に建築を学んだ人が活躍してほしい。もう高度成長期じゃないんです。建築文化のはじまりが建築教育とするならば、いまの教育は時代錯誤というものです。

17、18日は全部で8個委員会があって、ずっと東京でした。これだけ集中してくれると東京いくのもわるくないな、と思います。

20日は名大のホームカミングデーでした。私は、研究科の同窓会委員会委員長だったので、いくつかのイベントに参加しました。

後半は、学内の委員会がおおかったですね。かなり大学にいました。この間、以下のような研究進捗がありました。

・学生がPHITSによる解析をかなり自由にやれるようになりました。Csの吸着から、線量評価までを一気通貫でやれるシステムを卒論として課すことにしました。今は移流問題を解いています。

・「M&S」に投稿したデジタル画像相関法の論文の査読が帰ってきました。結構自身がありましたが、相当量の査読結果で、1,2ヶ月はかかりそう。

・これに関連して、骨材周囲のひび割れが解析できるようになりました。8ヶ月ほどかかってFEMを学生さんがチューンナップしてくれました。大きな前進です。

・「材料」に投稿した論文も査読がかえってきました。(2回目)とても、すばらしい査読でした。

・ホワイトセメントでずっとやってきた実験を論文にとりまとめることを始めました。1年間ずっと黙々とデータをとりつづけ、先日やった記念回ではじめてオープンにしたのですが、ここから、2,3本、海外ジャーナルに投稿しようと思っています。

・学生さんが、低温DSCによるサーモポロメトリにおける問題点を見つけました。言われればあたりまえですが、どの論文にも記載されていません。この点、解決して早めにジャーナル投稿をめざしたいと思います。



9/20/2012

平々凡々

昨日は、昼に学生さんと打ち合わせをしました。
収縮の新しい測定手法についての検討は、なかなか精度をあげることができなくて苦労しています。こんなに大変だったのかと思って、少し愕然としています。読み誤りました。セメント自体の影響もあるやなしやで議論して、結局、もう一回測定することになりました。うまくいってるとおもったんだけどな。多分、そろそろ30回目くらいの測定です。


9/18/2012

記念講演の主旨


日本建築学会での学会賞受賞記念講演では、15分と限られた時間でもあったので、十分に説明ができなかった部分がありました。自分の整理も含めて、下記にとりまとめた次第です。

日本建築学会大会(東海):建築学会賞受賞記念講演(その1)
日本建築学会大会(東海):建築学会賞受賞記念講演(その2)
日本建築学会大会(東海):建築学会賞受賞記念講演(その3)

なお、しゃべりたかったことをまとめたもので、一部は大幅に文章が増えています。



日本建築学会大会(東海):建築学会賞受賞記念講演(その3)

3.今後の研究

より科学的に建築材料を見つめる、ということがさまざまな効用を生むということが説明できたのではないかと思います。

近年の分析化学は、簡単になり、安くなり、そして技術的には非常に高度になっていますが、これらと建築材料の間は、ずいぶんと隔たりがあるように思います。

100年なり、200年なりの経年変化を想定して材料を使いこなすには、それなりの科学的背景が整理されていなければ、難しいでしょう。、30年データの外挿でうまくいくほど単純ではないはずです。


日本建築学会大会(東海):建築学会賞受賞記念講演(その2)

2.科学と工学のはざま (追記あり)

すでに現業が成熟している範囲で大学が開発的研究をするというのは、難しいものがあります。もちろんフィールドを選べば可能になるとは思いますが。建築が、新しい形を望んでいることは常に感じていることではありますが、それにまっすぐに大学が答えるべきか、というのは少し課題が多いように感じています。

セメント系材料の企業における技術開発をみていればわかりますが、給料をもらって、それなりの人間が、派遣の方々も含めて、一つのプロジェクトに関わります。メカニズム不在の場合には、必要なだけパラメータをふって馬力で前に進むわけですが、その精度、再現性、なども考えれば、大学の一研究室に限界があるのは誰でもわかることです。産学連携をどのようにするか、というのはさまざまにあってよいと思いますが、産の馬力というのは本当にすごいものです。


日本建築学会大会(東海):建築学会賞受賞記念講演(その1)

AIJ大会中日に、建築学会賞受賞記念講演を15分、行いました。15分という限られた時間で何をしゃべるか、ということ自体が試されているんじゃないか、と思えました。
15分で説明できてしまう結果というのは、よっぽどすごいものだと思うわけです。残念ながら私の業績というのは、そこまでエレガントに洗練されているものではなく、いくつかの工学的・科学的業績から蓄積されたもので、少し散文的であります。

業績を一から説明するよりは、私がどういうことを考えて、今後どのような研究を考えているかということを示すことで記念講演にしようと思った次第です。いつものように笑いをとることはあんまり考えませんでした。

結果として、何人かの方に感想をいただきましたが、7対3くらいで好意的でした。残りは、やはり業績について説明してほしかった、というものでした。


9/16/2012

日本建築学会大会(東海):開催大学の立場

今回の建築学会は,名古屋大学で開催されました。私は総務部会で広報幹事として,建築雑誌の会告,ホームページ,ポスター,シンボルマークとロゴ,その他配布物等,を中心にそのたの雑務でお手伝いをさせていただきました。
大会は,名大教授陣の献身的なリーダーシップによって,大過なく終えることができました。

10年前までは,これらの事業を,学会運営会社の支援なしで実施していたというのは驚異的なことです。3日で,のべ1万人の人間が参加するような大会を素人だけが,ボランティアでやっていたというのは,私からは想像もできません。


日本建築学会大会(東海):学生の発表

今年は,M1の3人が発表しました。D学生は留学やらなんやら,間の学生はいないので,そんな感じです。私自身は開催場所での対応ということで,ほとんど,発表を聞きにいくことができず,いろんな方々とお話することもできずじまいでした。

さて,うちの学生の発表にも,質疑がいっぱいあったようですが,それらを含めての発表内容に関する,コメントと補足

9/08/2012

9月3日 ゼミ,最近の研究室の動向

研究室では,院試のために4年生の研究が一部中断。

・超高強度コンクリートの水和解析については,リートベルト解析,選択溶解などを実施して,多数のデータが整理されつつある。これらと物性値との比較も実施され,自己収縮,水和収縮,その他の点との整合性を評価すると,いくつかの観点で今後の評価すべき点が見えてきた。
これらを実施することが今後の方向性になるかと思う。

9月1日 田舎の印象風景


家族で関市内の長良川沿いにいき,石拾いと水遊びをした。私は岐阜の景色が好きだ。
学生時代に先輩のT村さんに,岐阜の良さについて教えてもらい,半信半疑ながら,今の嫁さんと一緒に,ぐるっとまわる旅行に出かけた。関観光ホテルで鵜飼をみたり,郡上八幡の徹夜踊りに参加したり,白鳥の湯にいったり,といったような。


8月31日


東京出張。照射実験について,放射線照射損傷,水化学,セメント化学の専門家に現在準備中の実験計画が妥当かどうかについて検討してもらう。PIEについて,特にセメントペーストおよび骨材についてどのように評価すべきか,という点のディスカッションが有意義だった。

8/12/2012

考えたこと つづき

最近、手持ちの本が無いので、電車の中では空想ばかりです。


・信用創造、が経済の原点ということであるのであれば、単純なベーシックインカムは、あまり経済には貢献しないように思える。

8/09/2012

近況

基本的には,JCI後は,大学院入試,および建築学会大会準備,あとは教室内の業務,(一級建築士試験関係)などなどに追われています。


最近考えたこと

修正:
2つ前のリンクを読んで,考えたこと。


7/31/2012

いろんな人に

このブログ、いろんな人に見ていただいていることは、時々声をかけてくださるので知っておりましたが、昨日は、本当に椅子から転げ落ちそうになりました。

いやあ、手のひらに変な汗かきました。

7/18/2012

談合の経済学,とか

あまりに会議が多いので現実逃避。

最近,あまり一般書をよめていなくて,電車でも論文ばかり読んでいました。が,唯一,かばんに入っていたのは,「談合の経済学」という本でした。
談合という言葉は,今でこそ,悪のイメージがついてしまいましたが,実際の業界にいる人は談合をよしとする人もあしとする人もいます。

私がこの本を最初に手に取ったのは,大学4年の時でそのときはつまらなくて,そのまま本棚域でしたが,ふと本棚を整理したらでてきたのでかばんの中にいれていたのでした。
2000年ちょっと前の時というのはバブル後から,ITバブルにいたる最中で,構造不況といいつつもそんなに厳しい感じはしませんでしたが,建築産業がどうなるかということを考えたいとおもって日経新聞や日経系の雑誌を読んだりしていました。
当時の論調は,建築業界は過当競争がすすんでおり,ダンピングが多く発生している。いずれ会社は淘汰されて,ゼネコンの数は少なくなり,適正社会に移行するはずである,というものでした。

この論調はいまでもダイヤモンドなどの記事にも時々記載されるものです。

しかし,この本をよんでみるとわかりますが,ダンピングや原価割れ受注というのは明治時代からあり,責任を果たすつもりがない業者がいて,安値で受注して,できなくてとんずら,っていうのがよくあることがわかります。
最近の政府系の研究開発案件で,どことはいいませんが,ゼネコンが安値で受注してくそみたいなレポートを出すのが散見されますが,それとまったく同じ構図ですね。


これには,発注者側が仕様をつくれない,仕様に対する対価が見積もれない,評価制度が無い,発注者側も受注者側も責任を取る制度が無い,ということが原因と思われますが,その構図をいまもってひきずっているわけです。


また,結果からみると,確かに随意契約できないことによって,残念ながら実力の無い企業に発注せざるを得ないというような,いったい何が目的の法律だかなんだかがわからない状態になってしまっているのが実態のようです。
目的を失った法律の問題,というのはこれまた,おもしろいトピックですが,いずれコメントをあらためてしたいと思います。


明治の初頭,政府の方が業界を牽引していたときは,仕様も対価も見つもれたわけですが,技術者がマネジャーになれない国になってから,こういった制度の破綻が生じているわけです。政府がわるいというよりは,こういった問題点をふたをして,まったくシンポの無い国民全体の問題だと思いますが,この調子でいくと建築業界の適正社会なんていうものはこなそうです。


じゃあ,どんなシナリオがありうるか,というと多分,人口の推移とともになるだけで,ゾンビみたいな企業が引き続き存在するんじゃないかと。でいずれ,中国資本なりインド資本なりの会社が乗り込んできて技術吸収,売却・解体,ってかんじじゃないでしょうか。




先日,世界一周をしたときに,日本の重工と取引のあるドイツ系スイス人の人がとなりにすわって,話をしました。スイスのメーカーの価格決定においての原則はAs high as possible,だといっていました。いかにして高くても買ってもらえる製品をつくれるか,というのが技術開発と営業・マーケティングの問題である,と。
日本の重工系は,材料高騰を価格に転嫁できない。理由はよくわからないそうですが,かれら(日本人)は常にAs low as possibleの議論をしていて,何が目的になっているのかがまったくわからない,おまえわかるか,と質問されました。
追いつき追い越せ,の時,国全体を豊かにするときには薄利多売が国是であり,重要だったかもしれませんが,たしかに,今,ものを売るためにはAs high as possibleが大事なように思います。
そういったものの考え方でないとブランド力,末永い信頼と技術力というのは醸成できないのかもしれません。

建築業界もそういった切り口を目指すのがよいのかもしれませんね。

7/09/2012

7月4日~6日 JCI

実は,担当教員である私がチューリッヒにいる間,学生さんは広島で開催のJCI(コンクリート工学会)で発表をしてくるとともに,宮島およびお好み焼きを堪能していたらしいです。

今年はおかげさまで,M1の二人がそれぞれ,発表賞を受賞しました。多くが研究者の駆け出しの人であることを考えると,これはこれで結構素晴らしいことなんですよ。
なによりも,がんばった学生の成果が,認められたということは素晴らしい。是非,このまま来年も続けてもらえたら,と思います。

7月4日~5日

オスロの次は,チューリッヒです。博士課程の五十嵐君が,私のデルフトのときの同僚だったPietro Luraのところに行ったので,分析や測定関係で相談したいことがあったので,スイスのEMPAを訪問しました。

Pietroが最近ETHのProf.になったこととかはしっていたのですが,EMPAでの正しいポジションは良く理解していなかったのだけど,コンクリートセクション全体のマネジャーになっていて,それはそれはすごい昇進具合で度肝を抜かれました。いや,すまん,なめてたよ俺,ってかんじです。


6月29日~7月3日

シカゴの次は,オスロです。来年度から開始予定の照射実験に関する打ち合わせのため,HaldenおよびKjeller で打ち合わせをしてきました。
移動日があけた7月1日は,出張中唯一の休暇だったので観光をとおもっていたら,大雨で結局打ち合わせのための資料を見直し。
ところが,いろいろ漏れている部分があることがわかって,結局8時間こもって打ち合わせ。逆にいろいろ整理ができて,本当に良かった。やはり関係者が束縛が無く長時間打ち合わせができる時間,というのは本当に大事だ。こういう時間がなければ,大きなプロジェクトはあまりうまくすすまないのでは,と思う。



6月26~28日

東京出張のまま,そのまま,シカゴへ海外出張に行きました。今回はICAPP'12というアメリカ原子力学会での論文発表と研究打ち合わせがあったので,シカゴ行きを決めました。論文は,ガンマ線照射条件下によるセメントペーストの挙動ということで,かなりニッチな内容で,そもそもICAPP自体,コンクリートのセッションが一つしかなく,その中でも,残りは全部耐震設計という具合で,材料側の人はほとんどいませんでした。処分関係の人などが数名いて,リアクションをもらえました。

6月25日

6月25日は,東京でシリカフューム研究会で講演をしました。ここ5,6年ほど集中的にやってきた,自己収縮,線膨張係数,温取履歴下での挙動などについて,総論的に検討した結果で,今まで自分でも全部をとりまとめてきたわけではないので,総合的に見るのに良い機会でした。5月に寺本君が発表した自己収縮の超緻密計測については,今後,もう少しひねって論文化する必要がありますが,自己収縮についてメカニズムにもとづき,あそこまで細かく計測した事例はないので,チャンピオンデータとして重宝されるのではと思います。
マニアックな発表でしたが,好意的なコメントをいただけたのはうれしいことでした。

6/21/2012

査読


今月は,国内大会のための論文4本,JSCE論文1本,JDR論文1本を査読しました。今月は平均よりも少し多いです。日本語だけなら楽なんだけども。


これで手持ちのものは終了です。


来週からの海外出張前に大物の書類作成が突如ふってきて,あたふたしています。午前中は図書館で資料探しになりそう。出張前に学生の進捗状況も総括しておかなくては。

実験はやればやるほどうまくいくいって,仮説が立証されていくときと,やればやるほど混乱して,サンプルが悪いのか,実験の精度の問題なのか,攻め方が悪いのか,もうわけがわからない時があります。後者の時間を学生と共有するほど,学生は育っていくような気がします。仮説を再構築するために論文を学生が楽しく読みこめるようになれば,一人前ではないかと。

6/03/2012

最近はやりの・・・。

橘玲氏,というわけでもないけれども,全体の資産から考えると,国立大学法人に所属する私というのは,ポートフォリオが日本に偏り過ぎている。最近の給与削減の件でも,やっぱりそういうことだなあ,と思う。

自分の可能性というのを再確認したいとも思ったので,東京出張中に異業種に進んだ友人達と積極的に時間をとって話をした。別に明確な意志というものは無いので,その場その場でのディスカッションも成り行き次第だったわけだが,ちょっと話題としては面白いトピックだな,というのがあって,ここに書こうかと思ったのだが,文章を書いたところで,なんか,後半部分が消えてげんなり,というのが今の状況。


6/02/2012

5/30

5/30は,建築学会賞の受賞式でした。さすがに,年齢が低かったため,周囲にはまったく友人とも有べき人がおらず,浮いていました。下手すりゃ,ボーイ扱いです。

会場では,奇遇にも前には川口先生(構造),左に伊藤先生(歴史)がいらしゃって,伊藤先生には顔を認識してもらえたので,少し緊張が取れました。
恩師の友沢先生は,名誉会員になられたということで,ご列席されておられました。


5/29~5/31

5/29~31はセメント技術大会がありましたので,29日の授業後,東京に移動しました。
セメント技術大会では,その他のプロジェクト関係の打ち合わせもあって,セッションを多く聞くことができませんでしたが,いくつかの点で興味深い発表がありました。

一方で,検討の精度,背景,目的などがミスマッチなもの,過去のサーベイが十分ではないもの,イントロ自体が盗作のものなど,困ったものを散見しました。


PLiM関係

ソルトレークで行われた国際会議では,日本の関係者の皆様には,大変お世話になりました。

非金属系のセッションでの発表でしたが,存外,聴講者が多くて驚きました。全体的な興味は少ないのでは,といったコメントも聞いていたのですが。

アメリカでは,最近はアルカリ骨材反応に関して,大きな注目を集めているようです。フランスでは,DEFが注目されておりますが。最近でも,原子力発電所施設のコンクリートにおいて,問題が生じた事例が招待講演などで紹介されていました。


5/14/2012

再現性 吸着等温線試験

時々,論文の査読上でも,あるいは新しく試験機を購入するときの相談でも出てくるのですが,当研究室で利用しているHydrosorbという水蒸気吸着試験装置の再現性試験の結果です。同一ロットのセメントペーストサンプルを5回測定したもので,担当はM1の西岡さん。
すでに,岸君,五十嵐君の時代から測定手法の改良が重ねられておりますが,比表面積は,1σで±2m^2/g程度の精度は出ます。

これは,吸着・脱着,どちらのBET比表面積でも同様。この再現性を出すための手法についての基本情報は論文にすべて記載してあります。興味のある方は読んでいただけたらと思います。


サイエンス

ちょっと前になりますが,5月2日には8時間にわたるゼミを行いました。内容は化石の生成に関するもので,特に,なぜカルシウムが濃集するのか,というものです。14Cによる中性化に関する分析で,共同研究を開始した,理学系の先生方と一緒に,化石の生成プロセスを議論するという経験は,なかなかに得難いものです。

分析化学,熱力学,多孔体中などの理論を駆使して仮説を議論するわけですが,完全な理解なしには駆使することができません。いくつかの仮説について,コンクリートの知見をもとに提案を行ったりしましたが,全体像を表現するには至りませんでした。

戻ってきて,五十嵐君にPhreeqCでの解析を相談して,単純系で検討してみると,別角度の現象がでてくるなど,ネタはつきない状況で,しばらくは思考実験として楽しめます。

いずれ,みなさんと現象を解明して,共著でどこかに論文投稿したいというモチベーションで望んでいます。でも,その前にフィールドで,化石探しをしてみたいです。サンプルをみましたが,再現性といい,なんらかの法則があるのは,一目瞭然です。

出張

現在,IAEAの国際会議でソルトレークに来ています。福島後,IAEAの国際会議で包括的にさまざまな立場の方が発表される予定となっており,当方としても自分の研究はもとより,現状,どういうことをとりまとめて,原子力の今後の在り方に反映させるのか,といった点にも興味があり,さまざまに情報収集してこようと考えています。

いかんせん,マスコミの報道は,科学的にフェアでないものが多いですので,一次情報に触れて考えるという意味で,論文発表ほどダイレクトで楽なプロセスはありません。国際会議に出ることの意義は,1)最新のものである,2)重要な発表をしている人と直接,講演後に話をできる,3)自分の講演に対しての批評をダイレクトに聞ける,ということでこんなに便利な場はありません。

最近は特に2)が重要で,いろんな論文・情報が交錯しておりますが,キーノードはだれか,信頼できるデータをもって,もっとも科学的にすすんでいるのはだれか,ということを理解して,ネットワークを構築することができるというのは,日本の国内研究がややもすると蛸壺になりがちな現状では非常に大事です。

原子力研究においては,実験が高価なこともあって,既往研究の掘り起しが大変に大事なのですが,分野横断型の研究になっていることがあって,論文集だけではデータを掘り起こすことができません。コンクリート分野でいえば,ORNLのNaus博士なわけですが,当方から打ち合わせを打診しようとする前から,直接当方にミーティングの打診があるなど,さすがは情報掘り起しに余念が無い,と改めて感心しました。

彼らのデータコンパイル能力は半端ないですから,極東にいる人間としては,大変にありがたい話です。また,議論がオープンであることも素晴らしいです。どうも日本の工学の人間は,ノウハウを隠したがる傾向にあって(私も,発表前のデータはやはり公表に躊躇するのですが)難しいのですが,欧米だとそうでもないみたいです。

3)も,論文投稿前に要人の前で講演するのは良いと思います。アピールすることにもなるし,必要なデータとか論理上の欠陥を指摘もらえるなら,こんなに良い機会はありません。また,本当に先に進めるのであれば,欧米の方と一緒にデータどりを考えるなど,広く考えて前進できればよいのではないか,と最近では思います。特にサイエンス系の人の力なしでは解決できないことも多々ありますので。



さて,レセプションでは,さすがに無機材料はマイノリティだったのですが,こちらの規制庁の人などと話ができて良かったです。研究課題はやはり同じような問題意識のようで,地震については国際的にもう一度整理しようという機運があるようでした。


4/18/2012

最近の研究

画像相関法をつかって,梁の載荷に関する予備実験をしてみました。
長崎大学の松田先生がやられた研究の追試,というかトレースです。
おもったより,全体の挙動が画像解析からわかります。
図は,最大主ひずみのコンター図です。赤いところがひび割れ。
4点載荷で,グリッドについて,左上の左から2個目の上に載荷点があります。
右下,右から1つめ下に支点があります。
なかなか,面白いツールです。
載荷は,M1の杉江さんチーム,解析は研究室に最近配属されたB4の北口くんによります。








4/15/2012

3/9 ~4/14

年度末は,いつもは論文量産の時期ですが,今年はそうもいってられなくなりました。AIJ大会,JCI大会,セメギにも投稿できず,マネジメント失敗という感はぬぐえず。

2012年度は,入試委員,教務幹事,研究科同窓会支援委員会委員長,その他・・・,と結構な役職についていて,年度末から忙しさが増えてきています。こういう二次的な業務は,大学という動脈・静脈を理解するには,必須の業務ですので,(日本の)大学人としてはやはり,おろそかにはできません。というわけで,来年度も,出席できる委員会は相当に限られます。
(今のうちに伏線をはっておく。)

さて,そんな募集要項やら,シラバスとりまとめなどをやりつつ,年度末に何をしていたかというと,来年度のプロジェクトに向けて,新しい試験機の性能の話をしたり,見積もりをとったり,再委託先の方と話をしておおよその進行をみたりということをしておりました。

12日,午前中に半休をとって,家族写真を撮りに行きました。双子が1歳になったのでその記念に。本山にある有名なスタジオで,半年待ちということでしたが,その人気にふさわしく,なかなかびっくりするような写真が撮れました。掲載したいところですが,親ばか丸出しで恥ずかしいので,やめておきます。

13日は,試験機に関する打ち合わせ。まだ,市販されていないようですが,来年度,この装置が入ってくると,構造ー材料の間の研究は,結構すすむんじゃないかと思っています。

14日 シラバス打ち合わせ。午後,イタリア調査に関する打ち合わせで名古屋市大に。

17-18日 恒例の勅使川原研との合同ゼミ旅行でした。今年は,豊島,直島でした。
豊島美術館のライズが低いのにびっくりしました。いや,これ,チャレンジしすぎだなあと。変形を継続測定しているらしいので,10年超えたあたりのデータは是非みてみたいところです。
LeeUfan美術館のマスコンは,教科書的だなあと,芸術ではなくてマスコンひび割れに感動している自分はどうかしていると思いました。

みよ,この綺麗なひび割れを。雨上がりにばっちりみえていました。
直島は3度目,地中美術館は2回目でしたが,地中美術館はなんか見せ方が当初とちがって,仕掛けを楽しめないものになってしまっていてがっかりでした。

19日は,某T社のY田さんH川さんに来ていただいて,当方で最近取得できたセメント硬化体の物性に関するデータについて意見交換。たぶん,世界で初めて,しっかりとれたデータと思うのですが,裏付けを進めるには一段とお金がかかりそう,という結論に。
分析はしょうがないですね。ただ,長期的なクリープの進展とか,ある条件での体積変化に関わる重要なデータなので,早い内にどこかに論文化しておきたいところです。

22日は昼は学内で多くの打ち合わせ。夜は名大土木の中村先生と勅使川原先生,寺本君とで飲み会。彼の今後を祝福。

26日は卒業式。謝恩会の後の二次会,その後は体調があまり良くなくて帰宅。残念。おいしいイカでした。


4月2日は,AKK社のM井さんと体積変化関係のデータの意見交換。浸漬熱,および二次元NMRの可能性についての意見交換。同時に測定していたFTIRデータでも,ちょっと面白いことがわかる。(後日,五十嵐の合成C-S-Hデータで,さらに発展的なことに。)

4月3日,天秤の精度が少し甘いんじゃないかという学生の指摘で,マイクロ天秤の見積もりを取る。メトラ-社の技術について学ぶ。質量計はもっとも基本の測定なので,なるべく良いものを使いたいですね。今後のことを考えれば,早めに投資しておくべき機材です。

4月5日,そろそろこのあたりから,今年度のプロジェクトの詳細を詰める段階で各所との調整に入る。プロジェクトの全体方針の確認,関連の研究者へのコメント依頼,見積もり,成果の確認,などなど。東京出張で,朝から晩まで3件,打ち合わせ。

4月6日,この日も東京出張で,朝から晩まで。夜はJCIで今本委員会の幹事会。飲み会はつらくてできなかったのと,そのままかえって大学で事務処理しなくてはいけなかったので,会議後,なくなく大学へ。

4月9日 この日から,研究室の本格的な立ち上げ。今年度,第一回ゼミ。安全講習,研究室内規,研究の考え方,学生生活の指導,M以上は今年度にやるべきタスクの整理,学習すべき事項,各自の研究紹介など。
夕方,AIJの第二次提言とりまとめの足場堅めのため,JNESに挨拶へ。

4月10日 息子が入園。午後は学生実験の打ち合わせ。

4月13日 第二回ゼミ。より具体的なここ2,3ヶ月における研究スケジュールの確認,新しく取得されたデータに関する意見交換。

以前のコメントの続き

http://concrete-nagoya.blogspot.jp/2012/03/blog-post_6200.html
これのつづき。

このエントリーの続きで,結局,規制・推進の枠組みから抜け出せないのは,第3者による評価ができないから,ということ結論づけられる。
推進こそ規制が必要で,規制が推進の存在を前提としているのであるから,原子力の関係者自体にこの膠着状態をひもとくことはできない。
アメリカのように科学アカデミーが存在して,それを承認プロセスは一つの解法と考えられる。
しかし,日本の権威を有する団体が,今から始めて自己批判をも行いながら厳正に中立な立場を獲得できるかはよくわからない。そういう公正な立場を獲得することの重要性と,それを支援する民意も必要であるし,純粋に科学的である人に対して,適切にポジションが与えられるかも見通しがたたない。ないとは思わないけど,それが評価軸になっているようには思えない。


日本の複雑な問題の源は,問題を適切に処理できない人に権力と仕事とお金がいっているという点にある。全部が全部そうだとは思わないが,そういう人がいて問題を作り出していると思う。
問題をさらに複雑にしているのは,処理できない人が世間体を気にして,解決したように見せかけることに全力を費やして,数年たって,結局何も前進していないという状態がつくられるという点だろう。お金をまわした人,権力醸成に貢献した人,についても世間体が同様にあって,それに関わった人間は成果の失敗を全部隠蔽する動機が生ずる。

また,これが可能となっているのは,責任者が不在だからだ。たぶん,失敗を恐れるあまり,お金を出す側もそうでない側も責任ということについてあまり考えずに進めてそうなっているんではないだろうと思われる。


こういうの,大学からかわっていかなきゃ,ダメだと思う。
一つは,経済的な独立というのが重要かも。大学の研究資金が政府依存になる限り,こうした体制はあまり変わりようが無い。
政府の税金制御に介入しすぎる点は,効率的な部分もあるのだろうけども,科学の個の独立を阻害し,長期的には健全なアカデミーの醸成には貢献しないかもしれない。


(以下,思いつくまま,駄文)

あんまり関係ないかもしれませんが,研究のディスカッションをしているのに,まるで人格を否定されたようになって,根にもったり,いきなり個人攻撃になるのはやめてほしいです。偉い人にもそういう人がいて,困惑します。

研究の成果を出すためには,むしろ厳しい意見の方が前進があるかもしれないじゃないですか。研究のコメントって,あればあるだけ自分の得だとおもうのですが。

また,研究の信頼性と個人の信頼関係は別のはずと思います。


それと,研究やプロジェクトには失敗はあたりまえなので,失敗を成果にカウントしないというのも研究評価としてはやめてほしいところです。失敗の理由が稚拙(過去の文献を読んでいない,論理的な展開をしていない,個人の思い込みですすめて周りの意見を聞いていない)なら,プロジェクトリーダーとしては失敗で,そういうのが繰り返されるのなら,やめさせた方がよいでしょうけど,ちゃんとやっていても失敗することは失敗するので。

特に,最近のプロジェクトは期間がものすごく短かったり,予算の使い方が不自由だったりするので,プロジェクトの発注側にも失敗要因をつくっているものはあります。研究開発って,業務発注のように進められる部分とそうでない部分がありますし。
失敗の評価を適切にして,それがあきらかに発注側の要求によるものであるなら,それはそれで報告書に記載して,いずれはもっとプロジェクト発注とか成果を出すためにはどうすればよいかという根源的な課題として,取り入れてもらって改善されればよいと思います。

4/13/2012

近況

ご報告です。

11日の建築学会,理事会付けで建築学会賞(論文)を受賞する栄誉を賜りました。
若輩ではありますが,このような賞を受賞できたことを大変うれしく思います。また,受賞に際して,推薦いただきました恩師・友澤史紀先生に心より御礼申し上げます。

名古屋大学に移動してから,5年を目処に何か一つの区切りをと思ってがむしゃらにやって参りました。移籍時には,さまざまなシナリオを想定した研究室運営を考えておりましたが,科研の若手(A)を獲得できてから,もっともうまくいくシナリオに載ることができました。
このシナリオを練る際には,研究室運営についてさまざまにご教授いただいた広島大学・佐藤良一先生の教訓と研究に対する思い入れが大変に生かされました。御礼申し上げます。

研究室立ち上げ時の研究室に配属され,その後,博士号をつい最近獲得した寺本篤史くんの貢献は,大変に大きく,感謝いたします。
研究室の立ち上げで,最初は埃をかぶっていた実験室を片っ端から片付けて,割れまくっていた床にPタイルを貼って養生室をつくった思い出は今も思い出されます。彼が卒論時に50回実験して,やっと一つのデータが出たときは大変うれしかった。
この最初に一緒に開発した,線膨張係数・全ひずみ同時測定装置は,今も時折,建築学会の構造系論文集に登場しますが,数多くの論文と新しい発見を生み出した装置の一つです。この装置は今も現役で,世に無いデータを生み出し続けています。

岸直也くんは非常にユニークな学生でした。しかし,収縮に関する研究では1000個以上のサンプルを取り扱って,収縮理論の提案に大きな貢献をしてくれました。彼のガッツは,研究室全体に新しい活力を生んだのでした。それと並行して,あのとき,方々から借金をして購入した吸着等温線測定装置もまた,新しい発見を生み出し続けています。この投資は,本当に大きく実りました。研究に対する投資のタイミングと自分の直感力への自信はその後の研究方針に大きく影響を与えました。

五十嵐豪くんは,水和反応に関する私の思いを一心に受け入れてくれました。彼の行ったおそらく2000パラメータ近くのサンプルによって,セメントの水和反応に関する現象については,ほとんど直感的には理解したと思っています。それと同時に限界もわかりました。いくつかの点はある種の装置を開発せずにはひもとけず,それには膨大なお金がかかることも。
五十嵐くんの教育には,私がこういう教育を受けたかったという研究者のための教育すべてが反映されています。ある種,夢の押し売りなので,気になるところも多いのですが,今後,彼がどういった成果を生み出していくかについて,私は大変期待しています。

その他にも堀口直也くんをはじめ,多くの優秀な学生と一緒に研究できたことは望外の喜びでした。

名古屋に移籍後,関連業界の方々にはさまざまに支援をいただき,研究の機会を与えていただきました。共同研究,寄付金,さまざまな情報,個別に行うディスカッション,非常に多くのサポートをいただいたことを心より御礼申し上げます。このご恩にどうにかして,今後,報いていきたいと思っております。

また,周りの先生方,特に年配の先生方には,多くのアドバイスを研究,大学生活全般に渡ってご指導をいただきました。現研究室の勅使川原先生には,構造に関わる多くのご教示をいただくとともに,学内において私が研究をしやすい環境を作っていただきました。改めて御礼申し上げます。


今,こうして書いていますと,あの立ち上げ時とは多くの点で変わってきていることに愕然とします。ゲージ1枚,サミット管1個に対して,学生に怒鳴っていた状況とは異なっていて,別のプレッシャーの下でさまざまなプロジェクトを運営させていただいています。

研究環境としてはすばらしく整ってきたのですが,ふと思うと,あのときの立ち上げの苦労と楽しさを学生と体験することが教育なのでは,とも思います。今一度,初心に返って,学生とともに研究に苦悩していきたいと思います。

(だからといって研究費が必要無いとか邪魔だというわけではありません!)

つらつらと思い浮かべますと,さまざまなご縁はすべてむすびついています。そもそも恩師・野口先生にVRTMの課題をいただけなければ,試験機の開発において考えるべきことを習得できなかったわけですし,また,水和モデルの課題をいただけなければ,こうした方向性でスタートを切ることができませんでした。両者の課題からデルフト工科大学でブリューゲル先生にお会いできて,ヨーロッパ的な研究哲学に触れることができました。すべてがつながって,こうした機会を得ることができたわけで,みなさまには心より御礼申し上げます。

引き続き,建築業界,建設業界,あるいは日本の現状と未来をよりよくするために,私のできる貢献をしていきたいと思いますので,どうぞ,よろしくお願い申し上げます。

3/08/2012

博士

私の指導学生で、一人やっと博士の学生が出ました。昨日教授会で判定されました。
長いようで短かった。
彼は、研究室の立ち上げ時から現在にかけて非常に多くの活躍をしてくれました。

3月8日

本日は午前中に新4年生(まだ3年生)に対して、私の過去の論文についてのモデル系の論文について、3時間かけて解説を行った。これは、うちの研究室で抱えているプロジェクトの根底にある流れと思想を理解してもらうためだ。
一方で、こういったモデルなり問題への取り組みというのは、手を動かさないと頭に入ってこないというのは当然のことなので、やはり3月末くらいから簡単な練習に入っていくのが良いと思っている。
例年、立ち上げの善し悪しによって、学生のノリも変化するので、苦慮している点である。今度の4年生は、どんな形で成長する・してくれるだろうか・・・。

午後は、企業の形と打ち合わせ。非常に面白いデータが出ているのだけども、これをどこまでつめて、どう落とすかというのを議論したかったけれども、遠慮されたのだろうけどうまくまとまらなかった。
が、その後、少し学生と話をして、方針を考えた。

3月は例年、少し時間ができる時期で、ここで1,2本は論文を書いておかないといけないなとは思うのだけれども、重い国際会議論文の原稿があってうまくはかどっていない。骨格をつくって、早く英文チェックにまわさないといけないのだけれども。

来週前半には骨格を作ろう。


吸着等温線関係、収縮低減剤・線膨張関係、骨材関係x2、くらいは論文がかけるだけのデータはそろっているので、考察を深めていきたい。

それ以外に、収縮関係で非常に面白いデータが3事例ほどある。これもうまく暖めて論文化しなくては。


3/06/2012

学生の留学

特に多くの博士を出しているわけではありませんが・・・.

私自身,学生の時にデルフト工科大学にいって,研究とはこういうものか,と驚きを体験したので,学生には,留学を勧めている.

修士課程-博士課程のプロセスでは,修士課程に多くの論文を書き,なるべく学振にうかるような体制を研究室でつくること,同時に博士課程で博士論文提出のクライテリアをなるべく早く満足するようにすること,というのを支援している.
その上で,十分な進捗で,かつ研究的にも成熟している場合で,海外でGive and Takeで信頼関係を構築することが期待できる学生には,留学を勧めている.
今回は,T君のイリノイ大学につづき,I君がEMPAに行く.

正直,私もうらやましい・・・.

うちの研究室では,私が受けたかった教育を学生に与えられるよう努力している.興味のある学生さんは,是非,来てください.


規制とか省庁とか.

実は一回変えて消したエントリーがある.どうやってまとめればよいかわからなくなったので,結局消した.

省庁とか規制の問題に共通する問題として,リ・エントリー

原子力保安院が規制庁になるに際して,推進派と規制派の間で人事交流をしないようにするというよう話があった.今の世論に従えば,そうすれば良いことができるような”雰囲気”があるんだとは思うが,本当にそうだろうか.
これは,もはや構造の問題である.
すなわち,規制庁というのは,推進派がいなければ,あるいは原子力分野がなくなれば廃止である.その観点で,本質的に規制庁というのは,推進派に依存せざるを得ない.人事交流をたったところでこの本質的な枠組みから脱却しないかぎり,規制庁に世論が期待するようなことはできないだろう,とも思う.(これは保安院なら良いとか,保安院の人ならできるとか,そういう趣旨ではない.)

もう一つ,本来,推進派こそ規制を欲している.いま,人々に信頼されて原子力を稼働するために何をしたらよいのか,というクライテリアを欲しているのは,原子力推進派の人たちだろう.本来規制というのは,そういったものだ.対立するということではなく,その関係から,世の人々に納得する形を生み出し,フェアーにものごとをすすめるためのものだ.


同じように,各省庁の問題もある.各省庁はその産業があるから成り立つ.それ故,その産業を振興するための手立てについてはどうしても検討したいというインセンティブがある.全体をスリム化したいという時には,この構造では問題解決ができない.
国民がどういった形態を欲していて,そのためにはどういった合意がなされるかということが国会議員だったのだろうけど,その世論代表たりえていないので,いつまでたっても民意という形でものごとがすすまない.

ううむ.ここまで書いてやっぱり,落としどころが難しいなあと.この話をおしすすめるとかなり角が立つ話になってしまって,よくないかもしれない.
ということで,こういう構造になっていて,それを脱却するためにどうしましょうか,という話をした方がよいよ,というところでこのエントリーは終わる.

新しいデザイン

新しいデザインにしてみたら,どうやって更新すればよいのかわからなくなってしまった.自分の名前クリックしたりしていたら,ここにたどり着けた.前の方が便利だったかな.

3/04/2012

近況 その2

マーク・ピーターセンの「日本人の英語」、という本が岩波書店から出ていて、この本には「続」も出ている。日本人の感覚と英米人の感覚の違いにもとづいて、たとえば、冠詞の違いや名詞の使い方でいかに背景の意味が変化するかということを事例に基づいて説明してくれている本である。

日本の英語教育における英作文がいかに英語圏の文化を無視して進んだしろものか,ということがよくわかる。

高校のときか、東大の教養の時に紹介されて、一度読んだきり本棚の隅にあったわけだけれども、ふと手をとって読み直してみるとこれは本当に良書である。

どうも、私は成熟度にちぐはぐなところがあって、麻布とか東大教養のときの友人の言葉をふと思い出して、かれらはこういう感覚で当時ものをいっていたのか、と驚くことが最近でも良くある。そして,当時の自分を思い出し,比較し,自分の未成熟ぶりに恥ずかしがったりする。

この本もそうで、当時、A君がこの本は素晴らしいと熱弁をふるっていたわけだけども、結局、巡り巡って、私がこの年でこの環境になるまで、この本の良さは認識できていなかったことを思うと、A君というのはどんだけすごいんだろう、と思う。
本というのは、タイミング、というのは全くその通りで、本に見合うだけの知見なり考えなりの成熟度が無いとただの知識の断片として残るだけで、頭の片隅で終わってしまうものも多い。

まずはインデックスもないとこういった結びつきができないので、そういった入り口的に評価することも大事だし、もう一方で、本当の血肉とするにはタイミングに依存していて、そのときがくるまで、自分を鍛えておくしかないかなあと思う。

別に最後にもりあがって,なんなんだ,っていう結論は無いんだけど,本との付き合いは,やはり一生取り組んでいかなくてはいけないなあと。
あと,良書っていうのはあるところにはあるわけで,自分のタイミングで良書にどれだけ出会えるのか,っていうのは努力なのか運なのか・・・。

近況 その1

結局、2月は2件だけだった。こまめにかけなくなっちゃったな。


修論発表会後は、いくつかのプロジェクトの報告書へ向けての活動。一部は今書いている現在でも継続しているものもある。いずれもかなりのボリュームのタスクだったけれども、学生さんたちにサポートしてもらった。多謝。
近年、責任のあるプロジェクトを引き受けさせていただけるようになってきたのだが、その規模が大きくなるほど、末端までのコントロール力が問われているようになる。目標までのプロセス・ステップを切り分け、各プレーヤーにゴールを設定して、進捗状況に合わせてゴールを変更して、落としていくというのは、プロジェクトが大きくなるほど片腕となってくれる人材の数が必要になる。逆に言うと、大学では片腕となってくれる人の数以上にはプロジェクト数を増やすことができない。

ということを考えると人材の育成と確保というのは、大学でプロジェクトを遂行する上でも重要な課題である。


さて、数あるプロジェクトの中でも出口の高度さという観点でいえば、某プロジェクトのハードルは結構高い。要は、(簡単にいいすぎると不適切かもしれないが)、建築物に求められる機能についてどれだけのパフォーマンスをもっているか、を吐き出せっていうことと考えられる。
現状の建築分野における設計では、想定外力に対してある程度の余裕度をもって作ることで安全と考えようとしているわけだが、設計における条件と建物の性能、という点に少し乖離があるようだ。もちろん、住宅性能表示における耐震等級みたいなものはあるんだけれど。

(すでに気づかれて研究をされている先達がいることは十分承知の上で・・)
一般建築物については人命保護を第一目的としていたために、それ以上のパフォーマンスについて踏み込むような検討はやや希薄だった。あるいはやってはいるんだけど、その先の具体像をつくって共有して、社会的にフィードバックすることをやってこなかった、ということかもしれない。
損傷評価も、破壊モードの同定も、完全ではないわけで。その先のことをどうこう、というのは、たとえばRCのことを知れば知るほどやや無謀のようにも思えるので、強い要求がなければ、自然と避けてしまうのは無理も無いように思う。

一方で、今回の震災で、新耐震の建物が壊れず、むしろ、その後の継続的な建築内の経済活動についての評価が世論として求めらるようになっていることを考えると、建築構造-構法-材料分野は、天井落下とか雑壁のキレツとか、そういったものにも目を向けて機能維持に対するパフォーマンスを評価する枠組みを検討していかねばなるまい。
今現在、個別に取り組みを行っているわけではあるが、建築物としての階層構造の中で、これらの機能保持からどのように設計を体系づけるかという問題は、今後の一つの大きなテーマだと思う。そこまで要求される建物がどれだけ増えるか、というのは別として。

結局、天井にしても壁にしても、あるいは別の内外装材にしても、人の安全という観点からは一緒の尺度で考えるべきものであるから、部材で区切るというよりは建物として考えるということは、本来あるべきことだ。
考え方自体は建築研究所の性能総プロのときに議論は相当にされているし、今も多くの研究者に理想的な漠然とした像は共有されているけれども、あまたある部材をどのように落としていくかというとなると、棚上げされた状態にあると言える。

建築材料の人は、一度、設計に立ち戻って自分の立ち位置と細分化された建築の諸分野の人とどう連携して何を出力するか、という見直しを行った方がよいと思う。

2/12/2012

発表会など

卒論,修論,博論の発表会が一回りしました。学生諸君はご苦労さまでした。

卒論:みなよく頑張ったと思います。教員側の質問は,人によってクオリティが異なっている点は私自身の反省も含めて,今後検討していきたい課題です。卒論発表時における良い質問,というものは,学会時のそれとは大きく違うようにも思います。
学生は,あるスタディとして卒論を行っていると思いますが,頑張って専門的に深くいくと,一般論になるほど答えにつまるという傾向があるように思います。エンジニア,という立場から考えれば,研究の背景・位置づけを理解しておけよ,ということになるのでしょうが,業界全体を見渡すことのできない学生にとって,導入部の質問について,臨機応変に答えるというのは結構な力量がいるでしょう。卒論の研究に関する質問としては,やはり半分くらいは相手の懐に入って行う質問が適切なんではないか,とも思います。
一般論的な質問というのは,答えることができて当然という雰囲気が出ている分,答えられない卒論生にはこたえる質問なんじゃないか,と思います。
褒めればよいわけでも無し,このあたりの間合いの見極めが重要という感じです。先生の技量を見るという形で学生からの楽しみとするくらいのゆとりがあってもよいかもしれません。


修論:それぞれのそれぞれなりの個性が結果として出た発表会だったように思います。普段から,どのように深く考えるかということを課題として課してきましたが,その実力が良くも悪くもそのまま出たように思います。修論の完成度をどの立場からみるか,というのは非常に難しいです。修論くらいになりますと,研究量,実験量,考察量が膨大であるから,というのと,そうはいっても学問的深化というのは,そうは簡単にいくわけもなく,ましてやコンクリートのように100年使われていて,まだ理解されていないことの方が多いというような材料を相手にしている場合に,これだけ深化させました,なんてことはなかなか言えないから,というのが理由です。
膨大なデータで,かなり良い線を行ったとしても,これはこういう新しいデータをとってここまで肉薄しました,ということにとどまっているわけですが,その地道で重要な研究上の前進をどのように表現するか,というのはなかなか難しい課題です。プレゼンでも悩んでいましたが,そのプロセスこそが大事かな,と私は思います。
華々しく,これができました,という論文は,本当にすごく突き抜けているか,大した研究でないかのどちらかです。個人的には後者の方が多いと思います。
工学とは,皆がイメージするよりは,ずっと地道なものです。


博論:私の博士第一号(になるはずの)学生の発表が終わりました。彼もまた,彼の業績に反して,発表に苦労していましたが,それでよいのじゃないか,と思います。やったことを全部いうのは間違いだし,何がわかったか,ということを伝えるプレゼン上の技術は,研究成果のすべてでではダメです。博士論文自身の骨格以外は,参考論文とか付録にしてしまえばよいわけで,その「捨てる技術」こそが工学です。


学問だけでなく工学は,「捨てる技術」が大事です。なにかを取捨選択するそのプロセスにおいて,考え抜き一つを選ぶという行為は,自分の脳みそと胆力と責任の問題なわけです。何百億円のプロジェクトを背負っても,自分の経験と知識(人脈含む)で責任をとれる,ということが重要です。こういう可能性もある,とかいって逃げてはいられない場合がいつか来ます。
あるいは,日々の生活がいつでも,そういった取捨選択の積み重ねです。
学生諸君の一日の重みについては,もっと真剣に考えてもらいたい時があります。

2/03/2012

2月

週に1回くらいは更新しないと,とも思っているのですが・・・。やはり,1~3月はなかなかいろいろあります。

1年生の授業で基礎セミナーというものがあります。最大10名程度の学生に対して,「大学的な何か」を教えるのが目的です。私の講義は,学生主体型の文献調査を行なって,発表をさせ,独自の意見をつけて,最後は2枚程度の論文に取りまとめるというものです。最初は建築材料に限ってやっていたのですが,題材も限定されるし,学生の興味いろいろなので,建築・建設業全般をテーマとすることをここ1,2年行なっています。
毎週発表があって,学生同士,あるいは私のコメント(結構厳しい+宿題が増える)があるのですが,だいたい半分くらいは脱落します。(選択必修なので取れなくても良い授業なのです。)

残った学生については,それなりにテーマについて詳しくなるし,ちょっとした卒論レベルくらいになることもあります。批判はあるかもしれないけれど,少数の伸びる学生が伸びる場所が提供できれば良いと考えているので,当座はこの調子です。

今年の一人に建設関係の企業が海外にいって赤字がでるのは何か,というテーマを選択した学生がいました。なかなか深いテーマだし,本来的にはフィールド調査の必要があるテーマなのですが,国内の文献調査でどこまでやれるかやるのもよいかな,と思って支援することにしました。契約のはなし,マネジメントの話,利益を出す構造の話,ゼネコンの下請け構造の話,などが毎週出されてきたので,多分,他の学生は相当に知見は広がったんじゃないかな,と思います。

私も往復の電車で読む本をそういったテーマにしたものをいくつかピックアップしました。特に契約に関する「日本人の法意識(川島武宣)」,「ビジネスパーソンのための契約の教科書,福井健策)」というのは面白かったです。前者は,ハイライトだけ読んで全部は読んでいませんが。日本の民族的問題というのは,確かにあるなあと思って反省しました。

契約については,一つには契約を作成するプロセスでリスク評価,問題制御,プロジェクトの設計,フェールセーフ的にうまくすすめるという姿勢が,条項として適切に入っている点が重要と思いました。日本は契約をあうんでおこなってしまいますが,この時にプロジェクトについての詳細を詰めていない,ということ自体が大きな問題なのでしょう。
福井健策氏の本には,いくつかの契約例がのっていてわかりやすいのですが,米国の契約が分厚いのは,逆にプロジェクト前に詳細にリスク評価を行い,契約書に盛り込んでいる姿勢として評価できるように思われます。

原発の設計思想の陳腐化なども議論されはじめておりますが,安全を確保するときの設計思想,プロジェクトをいかに適切に進めていくかというときの多重性を考慮し,かつディテールまでも詰めた具体的な設計ということが重要なわけで,こういったことが習慣化されていない日本の業態というのは,反省すべきではないかと思います。

実は,科研とかもある意味そういった観点の書類が評価されているんだろうなあ,とは最近思っていたところなのですが。


一方で,契約書を自分に有利にすることだけで,ビジネスが成功するかというとそうでもないと思います。
日本の非常にきめ細やかな設計・施工のプロセスは,ある場所ではカルト的信頼があります。一般的な表現では,ブランド力があります。当然,アジアを始めとして日本のゼネコン等に期待するのは,こういったきめ細やかな建設物であり,高度な技術力でできる素晴らしい建設物・建築物であるわけです。
採算性がわるいからといって,なるべく当地のビジネスに合わせるという事自体は,建設業の電化製品化ではないかと思います。すなわち,利益の採算をアジア的な人件費問題にすり替えて,薄利多売モデルで行こうとすると,これはもう,中国や韓国にはかなわないでしょう。
パナソニックやソニーと同じ構図です。ここはやはり,アップルと同じように,日本の建設業もブランド化して,高くても良いものを作り,しかも採算が取れるように差別化を図る努力をすべきです。

IT化・機械化がすすみ,実質的に建設業のホワイトカラー的なビジネス部門は少なくなっておりますが,その中で,きめ細やかな建設ができるプロセスで不可欠な部門を抽出するか,抽出できるような枠組みを作成し,残りはアウトソーシングしたとしてもブランド力をそこで確保できるような構造転換が望まれます。
ノウハウが蓄積する部門は絶対アウトソーシングしてはいけません。内部化をはかるべきです。

一括生産と呼ばれる中でも,部門を見期分けて,細分化して,再構築する作業が必要ではないかと思われます。
部品は台湾・日本・韓国で占めるiPhoneであっても,ブランドはアップルにあるわけですから,建設業のブランド力とはなにか,ということを考える機会をもっと増やすべきではないかと思います。

ODAの枠組みの中で,ぜひともそういった知見は蓄えて欲しいと思う次第です。

まあ,現業の人間ではないのでまとはずれかもしれませんが,建設業が家電製品と同じ道を行こうとするような気配があったので,あえて苦言を呈してみた次第。一意見です。

1/24/2012

気づいたら

驚くべきことに,もう,1月が下旬になっています。
ここ最近は,大学では主として卒論生,修論生へのアドバイス,家ではいくつかの長期的な家庭のビジョン策定と双子の育児の一部,ということで,思索時間はほとんど電車の中しかとれていないので,どうも,論文を書こうと思っても伸びやかさがなくてやめてしまい,図版だけをつくっておく,というような状態が続いています。

1月上旬でのイベントとしては,一つはJCIの投稿がありました。今年,3人の4年生全員のJCI投稿を目指していましたが,残念ながら一人の学生は投稿できませんでした。収縮の構造挙動への影響をFEMで解析するというものでしたが,付着モデルの集束計算でつまづいてしまい,間に合わなかったという次第です。これは,全体のスケジュール計画における工数,日程の読み間違いで,出だしの好調さを考えると私のスケジュール管理の甘さが露呈した,ということになると思います。
今から考えると,各工程において目標点はいくつかあり,そのときに不安要素は無いわけではなかったわけです。というわけで,プロジェクト運用上の問題として今後,もっと自分の感覚を信じて強く指導するという形に反映させたいと反省しました。

4年生のJCI投稿では,骨材関係の論文と中性化関係の論文を出しました。耐久性関係の研究はずっと外には出していませんでしたが,そろそろ,名大では耐久性的観点にも応用が利くんだぜ,というところをアピールして置いた方がよいかな,と思って投稿した次第です。JCIの論文自体は,論文だけを抽出するとオリジナリティという点をどのように評価するかは査読者の方次第ではないかと思いますが,一連の論文をつなげますと,大変深い結果が出てきます。この点は,さらなる追試を今年10月くらいまでに終わらして,年内に黄表紙か英文ジャーナルに投稿したいと考えています。
骨材関係は,ずっとその影響について吹聴してきた仮説があるのですが,あらたな手法を採用することで,個人的には非常にインパクトの大きい論文に仕上がったと思います。なぜ,このデータが今までなかったのか,(いや,本当はあるのかもしれない。既往研究不足かもしれない。でも,JCIなどの報告書にはほとんどリファーは無い。)というようなデータです。
個人的には,収縮メカニズム論文以降のヒットですので,採用された暁には,是非JCIでもんだくださいませ。

今年は,勅使川原・丸山研で10件でした。(T:6,M:4)4年生のJCI投稿率は8割で,これはなかなかの研究室ではないかと自負します。M2にの投稿の有無で差が出てしまいましたが,この調子を継続したいと思います。



次のイベントは,センター試験です。毎年,必要以上にというか,ある意味では学生の人生がかかっているのであるからそれ相応に,緊張するイベントで,今年も試験監督をしました。あらかじめレクチャーを受けましたが,今から考えるとこれまた課題は多かったように思います。名大の先生は比較的まじめで,事前講習にも参加されるとともに,当日にも質疑があり,それによって多くの人が救われる事態があったように思います。
試験問題は隠匿すべきとは思いますが,試験方法くらい公開にすれば,ああいった問題はなかったように思います。なにゆえ反省事態をセンター試験の事務局だけですべきなのか,抱え込んでなんなのか,という問題があるように思います。
公共のイベントであることを考えれば,受験生のことを考えて,なるべくわかる部分は公開し,必要ならみなで反省して,それで次に進めばよいのでは,と思います。
過剰に抱え込んで,極度に緊張感が高まる故,ミスが多発することだって多いのではないかと。
なんにしても,心理的圧迫感は半端無く,この担当をしたくない,と主張する人が出てきても文句は言えないのではないかと思います。もう少しなんとか良い方向にもっていく手立てを国は考えた方が良いと思います。


話は前後しますが,12日は豊田講堂が文化財に登録されたということで,槇文彦氏の講演会がありました。私の大学の先輩ではありますが,もはや伝説の域にありましたし,私自身お会いしたこともないので,失礼ながら「まきふみひこ」と呼び捨てでした。なんというか,聖徳太子,と呼び捨てにするのと同じです。しかし,お会いしたからには,槇先生とお呼びすべきだとつくづく思いました。
私は,学生の頃にはデザインで食べていけたらと思うところもあって,いろんな設計者の講演会にも出席したことがあったし,それなりに文章も読んでおりました。磯崎新氏の文章も頑張って読みましたが,今から考えると半分も理解できていなかったと思います。槇先生の文章も同様ですが,ああしてご本人に時間と場所,その経緯についてざっと通して話していただくと,非常に合点がいく点が多く,今一度文章を読みたいという気になりました。
で,いろいろ講演会に出席しましたが,槇先生は私の意見では段違いに頭の回転が速いです。
その後,学生からの質疑の応答を見ましても,今もって現役で,脳みその回転音が聞こえてくるくらいの回転速度の速さでした。安藤先生とはまた別の意味での巨人でした。
おまけにジェントルマンでありまして,ああ,私なんぞは,隣のT川原先生とともに大学教員になってはいけなかったのではないか,と反省した次第です。私は,まったくもって庶民です。


最近もさまざまなプロジェクトの関係で分析装置を導入しています。今期も,いくつか導入しましたが,そのうちの白眉は湿度制御型TMAです。迅速に長さ変化等温線を測定できる装置で,長さ変化測定精度も含めて,非常に満足のいく装置でした。これについては,セメギで発表できれば,とも思っていますが,論文としての落としどころをどうしたものか,と悩んでいたりします。今まで1年くらいかけて長さ変化等温線を測定していましたから,これで収縮や水分に関する研究はさらに進めることができるのでは,と思います。おそらく長期で測定する意味も別の観点から再評価できると思われます。

ねりまぜきについては,複数の人から問い合わせをいただきました。もはや,広告料をとってもよいのでは,と思って利しますが,そういうことをやると大抵,後ろ指を指されて研究者生命が終わってしまいますので,けなげに研究者としてのコメントを継続したいと思います。

1/08/2012

謹賀新年

1週間遅れですが,明けましておめでとうございます。
昨年度の総括もままならぬまま,時間がすぎます。

年明けは,横浜の方に家族でくるまで初めて移動しました。新幹線のありがたみがよくわかります。自動車は年をまたいで,高速道の料金が細々変わっていたので,ああ,今年も,NEXCOをはじめ,皆さん大変なんだなあ,としみじみ思いました。

電力も,自由化とか,送電・発電分離とかおっしゃっていますが,日本だけは予定調和の中にいて,経済合理性が良く動いているということは理解する努力をした方が良いと思います。官製談合は良くないと思いますが,世の中はいろいろ痛み分けでうまくいっているということは良くあるわけです。

先日,ノルウェーの話を出しましたが,ノルウェーはそもそも水力発電と需給のバランスが良く,国内必要電力を水力でほとんどまかなえて,電気料金も安い過ごしやすい国でした。しかし,電力を自由化し,他国からの参入を許すと,国内の安い電力は海外で高く売れるので,国内電力は海外にまわされ,国内電力価格が高騰,おまけに水力だけではまかなえず,他の高いコストの電力を購入せざるを得ませんでした。
エネルギー問題は,国防および国家経済の根幹をなすインフラの問題でして,なんでも自由化が良いというのは,利益を得られる側からの発言であることは理解しないといけません。
国際的な経済戦争の場において,日本のためを思って発言する諸外国がいるわけがありません。

正月早々,電力網を韓国とつなげるとか,送電を分離するとかいう話題が日経で出てきましたが,国民のメリットというよりは,自分がその産業で利権・利益を獲得したいという人間からの発言に経済産業省が動かされるような形が見え隠れします。

昨年の夏,一斉に韓国で停電があったように,しょっちゅう低減する国の送電網とつなげて日本の需要として何のメリットがあるんでしょうか。韓国の原子力で発電した電力を買う,というようなドイツとフランスのような格好をめざしているのでしょうか。しかし,韓国で原子力災害があったら,偏西風でダイレクトに被害にあるのは日本であるし,そのことを考えても,リスクの分散が適切にできているとも思われません。
どういうビジョンとどういう国民のメリットがあるのか,というインフラである電力政策については,政府および霞ヶ関の方々には適切な説明をいただきたいと思います。

送電と発電の分離についても同様です。電力需要は工業,その他の産業の高度化にともなって,送電網を維持し,更新していく必要があります。今,東京の大手町近辺で大型ビルの開発が行われますが,電力網にそのビルを組み込むと数億程度の工事が必要になりますが,これらは,東電が負担しています。送電・発電の分離を行うということは,送電の中で利益を出し,そのための負担は民間が背負うということになります。
ビル一つ建てるための単価は,極端に高くなりますし,これは個別マンションでも同様です。どういう隠れたメリットがあって,どのような便益を東電が与えてきたか,ということは,送電・発電分離の議論によって明らかになってくるでしょう。

世代の問題もあるのかもしれませんが,過去の熟慮されてできあがったものとか,過去の経緯で最適化されたものというのは,日本人のあうんの呼吸で成立されてしまっているがために,あらためて掘り起こすとああそうだったのか,ということが少なくありません。
また,最近の人は自分を含めて表層的であり,どうも考え方の裏をあまり理解しないで議論している風があります。一つは謙虚でないこと,一つは目に見える情報で判断をせざるを得ないという環境があると思います。ものごとが高度化しているので,体験的に体得した感性で判断ができないというフィールド,実線不足もあるかもしれません。

難しいのは,60以上の層の方と話しているとこれらの認識は,当然のことと捉えているために,我々が意識して掘り下げて情報収集することが難しい,という点です。相手は当然と考えており,こちらは,何がそういった背景なのか,場所も宝もわからない状態で知識として体系化するのは非常に困難です。

大きな流れとしては,戦後という断絶,その後のバブル期以後の実線不足は,今後,我々の世代における一つの大きな課題となるように思います。徒労を良しとは思いませんが,実践的体験というのを30台前半までにいかに積み上げられるか,というのはノウハウ社会,超高度化社会におけるキーポイントと思います。

逆に,実践を経験していない方々が前後のバランスとか,ポピュリズムの結果として権力を握りますと,非常に社会的にインパクトの大きい害となるので,その制御も今後の課題ではないかと思う次第です。