12/31/2010

大晦日

実家に移動。久しぶりに息子に会う。
本年中はお世話になりました。
来年もどうぞよろしくお願いします。
よいお年を。

12/29/2010

解析事例








先日もちょっと書いたけれども,ここずっと,あいた時間にこつこつと解析をやっています。以前の水熱連成をポイントだけついたような解析を,と思って。
潜熱項が大きくて,水分移動による熱輸送はそこまで考えなくても良いのかもしれない。ケースバイケースかもしれないけど。

添付は,熱輸送をオフして,熱移動→水分移動を解いた場合のマスコン内の挙動。
ただし,吸着等温線に温度依存性を考慮したモデル化を適用して,水分移動を化学ポテンシャル基準で評価した。水セメント比が0.45くらい。


なかなか複雑な挙動で,中心部が乾燥して,温度ピークから少したって冷却されてくると,外側の水分が中に入っていく挙動を示す。外側で始めに少しはねれているのは,内部の温度上昇時に水分が外に押し出された結果。でも,ほんの少し。

水分移動モデルは,水蒸気圧勾配で移動する,毛管圧を駆動力とするものなど,いろいろあるのだけれども,(前の黄表紙の水熱連成ではそのようにモデル化した。これは,de Vries以降,多くのモデルで提案されている。)基本的に圧力一定下(空気が入ってくる)の条件で考えるのであれば,化学ポテンシャルの勾配を駆動力とするほうが良いだろうということで,構成式を見直した。
初期の脱型などの問題に対応して,異なる空隙構造間での水分移動を少なくとも筋書き上は適切に評価する必要があるとか,温度勾配の時の移動を評価するとか,いろいろ要因はあるけれども,こちらの方が汎用性が高いのではないかと。


しかし,解析も簡単とはいいがたいけれども,これを実験で実証する方が何倍も難しい。

この解析だと,その様子が見られるのは温度が下がってきた打設後1週間後くらいとなっている。その後は水分移動が生じてしまって,だんだんと差が解消される。コンクリートサンプルからどうやって取り出して,どうやって含水率測定しようか,というのは,きっと皆が一度は考えたことがある実験なんじゃないかとおもうけれども,こればっかりは難しい。


将来的にはやりたい実験ではあるんだけれども。

12/28/2010

学生ウェブ

学生がウェブを作り始めました。ブログ作成までいけるといいんだけれども・・・。
寺本君(リンク
五十嵐君(リンク

寺本君の論文リンクはまだ,うまくいってません。海外からの転送なので・・・。

二人とも研究者志望です。

12/25/2010

近況

・水分移動のFEMを再度作り直し。水和モデルを完全に入れ替えたのにともなって,水分移動もやり直すことに。今後の方向もあるので,水分移動のポテンシャルを化学ポテンシャルに置き換えることにした。水分移動係数については,修了生の実験結果を再度アレンジした。彼のノートを全部見直したが,よく見ると,ボルツマン変換したあとの積分が間違っていた。まだ,外に公表してない(AIJ大会には一回だしたかも?)と思うのだけど,データを全部見直してよかった。

・松本先生の論文を読むのにつづき,以前に収集した水分移動関係の論文,最近,Tさんなどに教えてもらった論文などを根こそぎ読む。土壌関係なども,有名論文は目を通す。小説もそうだけれども,論文も読み直すたびに新しい発見がある。著者の裏の意図がわかるようになる,ということもあるし,その論文の限界が見える場合もあるし,著者が意識していない重要な点を発掘する場合もある。そのときの興味の対象とか,知識の成熟具合が影響するんだろうが,大御所の論文というのは味わい深い。こういうのを書けるようになりたいところ。

・ローマ人の物語を読み直し始めた。日本の政治の混迷とローマ人の政治の深化とか停滞の様子を比較しながら読むと面白い。少し感度が上がっているようだ。

・最近,14C研究にともなって,古いコンクリートを集めている。まあ,あつめてもちゃんと分析したりしないとダメなんだけど,なかなか時間がとれず,部屋にどんどんたまっている。部屋の一角がコンクリートシリンダーの山のようになってしまった。どうにかしないと。引越までの間に考えることにしよう。

12/19/2010

http://www.sponichi.co.jp/sports/flash/KFullFlash20101213029.html

建築見学でいったことがあるところです。
東京ドームのモデルが、雪で屋根崩壊とのこと。

豪雨が豪雪にかわっちゃったら、こういう可能性はありますねえ。

建築に限って、構造最適化って意味をなさないんじゃないかと思う今日この頃

12/12/2010

小論文:乾燥収縮に及ぼす骨材寸法に関する考察

今回はカジュアルな文面ながら,ブログで論文を公表するということを試みてみたい。査読付き無しの論文であれば,タイムリーに情報公開をした方がよいのではないかと思っている。特に最近委員会などでの,研究テーマのオリジナリティなどが曖昧になっている場合があって,不愉快な思いをしたこともあったりで,査読付き無しではあるが,論文のつもりで記載する。
幸いにして,ブログというのはタイムスタンプももたれるし,その時点から,世界中に発信される。英語で記載するほうが佳いのは論を待たないが,まずは国内へ,ということで。
なお,このような試みは,多田眞作博士がすでに,JCI(2009年3月号)に記載している。

乾燥収縮に及ぼす骨材寸法に関する考察
丸山一平


1.はじめに
最近,収縮と骨材の話を少しやっている。ペーストの力学挙動については,いろいろ外には出せていないデータも多いのだけれど,おおよそわかってきたから,そろそろコンクリートでやっていこうということである。引張クリープの湿度依存性もさんざんしっぱいしたけれども,やっと一系列データがとれつつある。いやあ,クリープってなんなのか,ということは改めて議論する必要があるとおもうんだけれども,挙動としてはこんなもんか,と。話がとんだ。

さて,骨材の話に戻ると,今年のAIJではおもしろい論文がいくつかあった。
一つは,北方建築総合研究所の松村さんらの論文で,細骨材率が小さいほど収縮は大きいという結果,である[1]。

2.骨材寸法と収縮影響について
竹本の斉藤さんと出したのは,私自身は複合則理論の成立根拠が不明で,ある条件で適用できるツールと認識していたので,その傾向をちゃんと把握するために,細骨材だけ,粗骨材だけといった系で乾燥収縮を測定した[2]。

たぶん,昔にはこういうことをやった人がいたと思われるのだが,文献は探せなかった。ACIでは強度やヤング率と骨材寸法の図はある。川上英男先生も博士論文でそういった検討をされていた。JCIにもたくさん論文がある[3]。乾燥収縮のデータ,きっと馬場先生はやっている思うんだが,見つからない。知っている人がいれば,是非,メールをください。

で,その結果が下図である。ここに示されるように,同一骨材量でもその収縮への影響は異なっている。

(なお,連名者のT先生は,当初本研究を否定されていたんだが,本研究がAsCOTのひび割れ委員会で実施が決定した論文なので,連名に入ってもらっている。)


図1 骨材寸法,骨材量とコンクリートの乾燥収縮ひずみの関係

そもそもの議論としては,2009年で猪飼さんが発表したように[4],完全に線形な関係が骨材・ペーストにあるのであれば,そしてひび割れがあったとしても,破壊エネルギーが一緒なのであれば,収縮の関係は一緒になる。骨材の寸法依存性はないはずである。


図2 乾燥による骨材周囲のひび割れに関する計算結果:骨材とセメントペーストは完全付着。骨材は完全弾性体として計算


図3 ペーストの収縮量とコンクリートの乾燥収縮の計算結果


3.骨材と遷移帯,体積変形に関する考察
このことから,考えるに,骨材周囲の遷移帯とかブリージングが重要な役割を果てしていると思われる。たぶん,流動性能から決定する水膜=遷移帯が,骨材抵抗のクッションになっている。遷移帯は,骨材寸法に依存せず一定になるがため,結果として,遷移帯/骨材直径比の関係から,見かけの剛性(あるいはペースト収縮に対応する剛性)が決定するというのが現在のところの仮説である。

なお,遷移帯というのは,難しい定義であって,ナノインデンテーションなどで実質的な計測がなされている。Monteiro先生の教科書などには[5],顕微鏡写真で特定できるというようなことも記載されているが,実際はグラデーションをもっていて,正確な定義は難しい。

我々の研究室では,中性子ラジオグラフィによって打設直後からの骨材周囲の挙動を評価した[6]。この際,水分分布からみれば,骨材周囲には遷移帯だけではなくて,0.5mmくらいの厚さで,水セメント比が周囲よりも大きい範囲が存在することがわかった。この領域は,乾燥収縮に対しても緩衝帯として働くに違いない。

図4 中性子ラジオグラフィによって確認した硬質砂岩周囲の水分子の存在比率の比較(材齢1時間と材齢24時間,水セメント比は0.25)

遷移帯は,目視で確認するよりも[7],こうした統計量で評価することが今後は重要かもしれない。加藤先生らが昔行われた,細骨材と遷移帯の量を統計的に処理する手法は,さまざまに応用が可能と考えられる[8]。ながらく,日本では遷移帯の研究というのは,欧米での着目具合に比べてずいぶんと少なかったように思うが,今後は,力学的にも,あるいは水分などの物質移動性を考える上でも,再度整理の必要な分野になると考えられる。

4.結語
乾燥収縮の問題はもとより,コンクリートをセメントペーストと骨材の複合材料として考えるのであれば,今後は,その相互依存性を評価することが重要である。すでにあまたの実験データはありつつも,まだ,コンクリート工学上の諸問題が解決されていないのは,メカニズムを評価するための実験が行われてこなかったからである。
こういった諸要素の解明を国内で効率的に行うことで,現象解明・性能評価・設計・材料選定が適切に行われるようになると考えられる。




参考文献
[1] 松村宇(北方建築総合研究所),桂修,吉野利幸:細骨材率の違いがコンクリートの乾燥収縮性状に及ぼす影響,日本建築学会学術講演梗概集,2010北陸,905-906,2010
[2] 齊藤和秀(竹本油脂),小林竜平,丸山一平,寺西浩司:骨材量と骨材寸法がコンクリートの乾燥収縮に与える影響,日本建築学会学術講演梗概集,2010北陸,915-916,2010
[3]http://data.jci-net.or.jp/data_html/13/013-01-1007.html
 http://data.jci-net.or.jp/data_html/22/022-01-2089.html
http://data.jci-net.or.jp/data_html/25/025-01-1054.html
[4]猪飼陽子,寺本篤史,早野博幸,丸山一平:コンクリートの乾燥収縮予測における構成則構築のための基礎的考察,日本建築学会学術講演梗概集(東北),pp. 247-248, 2009.8.26
[5]P. Mehta, Paulo Monteiro:Concrete: Microstructure, Properties, and Materials,McGraw-Hill Professional; 3 edition (September 26, 2005)
http://www.amazon.com/Concrete-Microstructure-Properties-Materials-Mehta/dp/0071462899
[6]丸山一平,兼松学,寺本篤史,早野博幸,飯倉寛,野口貴文:中性子ラジオグラフィによる骨材とセメントペースト間における水分挙動評価,日本建築学会構造系論文集,Vol. 74,No. 645, pp. 1905-1912, 2009.11
[7]たとえば,羽原俊祐,平尾宙,内川浩:多量の鉱物質粉末で細骨材の一部を置換したコンクリートの組織形成と物性発現,コンクリート工学年次論文集,Vol. 17 No, 1,325-330,1995
http://data.jci-net.or.jp/data_pdf/17/017-01-1055.pdf
[8]加藤佳孝,魚本健人:細骨材の量と比表面積が遷移帯形成に及ぼす影響,コンクリート工学年次論文集,Vol. 20,No. 2,775-780,1998
http://data.jci-net.or.jp/data_pdf/20/020-01-2130.pdf

12/09/2010

Hempcrete

http://en.wikipedia.org/wiki/Hempcrete
大麻の入ったセメント系材料。
カーボンネガティブ

構造材にはならないが,温湿度調整材として機能するらしい。
ヨーロッパでそこそこ知名度のある建材らしいが,まったくしらなかった。

12/05/2010

とある試験

とある試験が,3日,4日に行われました。私は面接を担当しましたが,非常にすばらしい方々で,是非とも皆に入ってもらいたいと思いました。
正直申し上げまして,前回担当したときとは全然違っていて,面接自体が楽しかったです。
こんなにすばらしい学生さん方に名大建築を志望していただいていて,非常にうれしかった。

残念ながら,今回の件では,人数は決まっていますが,是非,一般の入試の方でも,名大建築を受験してほしいと思います。心から,来年にお会いできることを楽しみにしています。

いやあ,本当にすばらしいかった。

12/03/2010

しわす

12月になってしまいました。

1日は減災センターの立ち上げで,マスコミ各所に取り上げてもらえたようです。大学という学問追求の場で何をやるか,ということのプレゼンスが個人的には弱いかなあと思ったり。

2日は天気が最悪でした。豪雨の中,チャリンコで帰るのを久しぶりに体験。学生のころを思い出した。家族が相方側の実家に移動してしまったので,半年くらい一人ぐらしになります。健康管理に気をつけないと。

11月25日に,某所で実験の仕込みを行った。ずいぶん前から興味があって,やりたい実験だったので実験データ的に非常に楽しみ。モデリング上,実用的なデータがでるかなあ,と。
過去には,同様なトライアルは竹中さんとか,建築研究所などでも取り組みのある材料データなのではある。ただ,やっぱり,自分で確認したいということがあって,やってみることにした。模倣であっても,やってみることによって技術的知見はたまるでしょう,ということです。

Powersの論文を,たぶん3度目くらいだと思うけど,読み直している。他の論文でReferされているのを見て,そんなデータあったかしらんとおもって,再度見直しているところ。吸着等温線におけるアルカリの影響というのを定量化している,とReferされているんだけど,それっと読んだ記憶がなかった。あるいは自分で抹消してしまったのかも。
読めば読むほど,全部やっているんですよね,おっかないことです。