12/31/2014

今年を振り返って

大晦日になってしまいました。部屋の大掃除もしていないのに・・・。
家族はすでに実家にいるのですが,さすがに年越しに顔をみせないわけにはいかず,今は新幹線で移動中です。
この時間を利用して今年を振り返ってみたいと思います。

今年の丸山研の状況について
・日本人の博士がいなくなり,研究の厚みは少し薄くなりました。分かっていたことなので,なるべく私が学生にレクをするということで,積極的にゼミを運営したつもりでしたが,10月以降は出張が多くなってしまい,やや手薄の感が出ました。学生の成長具合を見ますと,結局のところ学生それぞれのポテンシャルにしたがって成長しています。実験系で力を発揮する学生,数値解析で力を発揮する学生,両方やれる学生,人それぞれですが,少なくと研究室に所属した時を考えれば,だんだんと楽しめるようになっているのではないかと思います。今年のはじめに決めた方針で,なるべく自分が学生に具体的なやり方を示す,という指導は達成度70%くらいだと感じています。ただ,なんでも教えるのがよいのか,というのはずっと疑問でもあったので,そのバランスを試行錯誤した結果と捉えています。


12/30/2014

としのせ

11月上旬から一気に年の瀬になってしまいました。いろいろ考えていることをまとめようと思っておりましたが,今年の東京出張の数は多く,あっという間にこの時期になってしまったというのが実状です。

キーワードだけでも上げておこうと思います。備忘録。

1.大学授業の英語化について
・大前研一氏の本以降,いくつかの大学の戦略と国の政策に関わるまとめのような本を読みました。小国の場合,大学教育後の人材の活躍の場が,必ずしも国内市場だけで十分ではないことから,活躍できる市場を見据えた形の大学という観点では,英語で勉強しておくということは,当然の行為ではないかと思われます。
その観点で,工学部や工学研究科が前に進むための工学,の実施者であるべきということを考えれば,実施者が活躍できる場は広ければ広いほど,その活躍の可能性は広がります。
今後,日本の市場がしばらくは縮小傾向にあることを考えれば,また,建築という業種が縮小傾向にあることを考えれば,市場をもとにもとめなくてはいけません。これは,人材とともに企業も同様です。

・アカデミアでは,自国語で学べることが大事,という気概があります。これは本当に大事なことで,最先端レベルで母国語の情報が手に入れられるということほどすばらしいことはありません。明治時代以降の先人の賜物でもあります。しかし,それにとらわれることが本当によいのかどうか,というのをもう一度問う必要があるのではないかと思います。というのもアカデミアの方の進歩を推し進めるという観点からも,人材交流・知見交流は大事であるけれども,すでに標準語は英語となってしまったいま,母国語で議論をすることの価値は相対的に落ちているからです。

・そう考えると,全体として英語化を進めるということは当然の議論ではないかと思うに至りました。

・日本の大学の講義は少なくとも私の身の回りの環境では,義務教育の様にボトムあるいはミドルの学力を有する学生をベースに授業を進める場合が実際のところ多いです。これは,不合格を出しにくい無言の圧力,あるいは不合格が多いことはレクチャーが適切で無いとみなされる風潮から,落第を数名にするということが,教員にとって最適戦略になるからで,学生と教員を高め合う環
境にありません。その結果,優秀な学生の学習速度を落とし,貴重な人材育成に失敗しています。
それ故,諸外国から来た人にいわれることですが,大学の学部教育は終わっている,という事態になっています。
例外は,東大の授業ではないかと思います。私の受けた授業は,学生が本気でついていかないと振り落とされるような授業が多かったように記憶しています。
一方,大学院教育は素晴らしいと言われています。いわゆるゼミ形式で,基礎から高等研究までもっていくある種の信頼関係に基づく少数教育から排出される学生は,特に,素晴らしい教員との出会いによって,素晴らしく成長します。ただ,残念ながら,教員の平均は,落ちているのではないかと思われます。というのは,文部科学省の研究振興とも関連するのですが,どの分野も競争が激しいというわけではないことで,競争が激しくない分野や競争をよしとしない文化がいくつかの分野で見られ,その結果として適切でない人が教員になる場合もあるからです。

・つまり,日本の大学で学生が育つかどうかは,運になります。自分の子供を育てる場合を想定すると得心が行きますがいまの大学教育のままでよいかというと,改善して欲しいことは多数あり,そのうちの筆頭は英語化でしょう。自分の子供が活躍する場を広げたい,といって反対する人はいないのではないでしょうか。また,大学の選択は自由です。もし,日本語で学んでほしいというのであれば,そういう大学に行けばよいだけです。私の提案は,名古屋大学として,英語で学べる環境があるというオプションを広げる一翼になるべきではないか,というものです。


2.移民の問題
・多くの日本人は,あるいはマスコミで議論されている移民は,マックジョブ担当ということになっているようです。移民を受け入れて,犯罪が多くなるというのは,結局,自分たちのやりたくないことを移民にやらせてやろう,というひどく歪んだ価値観から出ているのではないかと思います。しかし,近年の各国の移民政策では,条件をつけるところが多く,いわゆる,高級技術者(弁護士,会計士,教員,経営者,その他)を受け入れる方向性もありえるわけです。
・英語化の議論と一緒になりますが,そういった高級技術者を受け入れて,その人達と切磋琢磨する環境というのは非常に好ましいように思います。大きな問題点は,島国の中の巨大市場に慣れてしまっている人たちが,日本語環境を既得権益としてその市場の囲い込みをしたがり,彼らを排他的に扱ってきた文化にあります。おそらく,今もって多くの日本人は,そういう競争をいやがり,安直にその利権を守ろうとするのでしょうが,そうした企業なり,団体なりは早晩競争力がなくなるものと思われます。
・移民の問題も英語の問題も結局,表裏一体であり,国内市場を開放して高級職も含めて世界と一緒に競争していこう,という一種の規制緩和です。(この場合は暗黙の参入障害排除でしょうか。)

・いわれなきバイアスや過去の経緯を引きずった貸し借りの(明文化されていない)テキストの中で大学改革をやらされるとか,文部科学省の意図のわからない文章作成とか,そうしたものにつきあう大学の経営状態はかなり末期的症状だと考えています。大学の方針を自ら立案し,必要なものを文部科学省提案から取捨選択するなり,文部科学省に提案するなりの積極的な取り組みというのができていない今,組織を活性化するために経営能力のある人達が執行部になることが重要で,そのためなら,海外の適切な経営者に来てもらって運営してもらったほうがよっぽど楽になるのではないかと考えています。既存のテクストを捨て去る勇気を日本人が持てないなら,その部分はお願いしたら良いんじゃないでしょうか。

・いずれにせよ早晩,競争をして個人のちからを上げていく,そのためには個人のちからを尊重するような人材評価,職業の枠組みも必要になってくるでしょうか,力ある人は日本の既存の評価制度を好まない場合もあっても,外に活路を見いだせるという選択肢を持つわけで,選択肢を広げるということはやはり大事であろうと思います。


3.研究について
・多孔材料の収縮メカニズム, Vycorのデータが蓄積されました。セメントペーストとやはりメカニズムは違うように思います。既往の収縮理論との整合性を考えていますが,高湿度域の挙動がやはり不明です。気-固界面に囲まれた水のポテンシャルというのは,微小空隙であっても,バルクの水に近くなるのか,というのが疑問点です。

・併せて,収縮低減剤の役割を極めて明解に説明できるデータが蓄積できました。来年度前半中には投稿したいと思います。

・1H-NMRの装置を導入しました。現状,環境ノイズに悩まされています。バックグラウンドがこんなに高いのはなぜか,というのがわかりません。

・RBSM,FEM,いずれもかなり丸山研のモデルが3次元の形に実装されました。現状,乾燥による物性変化,微細ひび割れ,収縮ひび割れと構造性能の関係,放射線によるコンクリートの劣化が構造挙動に及ぼす影響,などをテーマとして学生さんが取り組んでいます。
材料構成則上の問題もいろいろわかってきたので,いずれ,進展があって外に公開できるのではと思います。

・骨材の遷移帯の考慮が収縮予測にきわめて重要であるということをJACTの論文で公開しました。
また,既往の五十嵐先生との実験結果で,異なる水和状態のセメントペーストの物性に関する一連のデータについても,JACTで論文公開しました。

・現在投稿中の論文は以下のものです。
-割裂引張強度が乾燥によってどのように変化するか (JACT)
-C-S-Hの乾燥時に生ずる変質について(CCR)
-骨材の収縮(BCM)

・現在,水和モデルについて過去にジャーナルに投稿していなかったので,その集大成になりそうな論文を現在執筆中です。


11/16/2014

11月3ー4日 ICMST-Kobe

ICMSTという日本保全学会の国際会議に11月3-4日と参加してきました。あまりコンクリート分野の人は入ってきたわけではないのですが,廃炉を用いた研究について国際的に議論が高まっており,特に先進的に実施しているスペインのZoritaプロジェクトについて議論することも目的の一つとして,CSICのC. Andrade教授に来日していただき,関係者で議論をしました。


湿度センサ

センシリオン社のSHT-75は,90~10%RHの領域で極めて精度が高く,海外でも,コンクリート中の湿度センサとして利用されています。私は,イリノイのLange先生からこのセンサを紹介を受けてしばらく使っていた時期があります。国内でも,センサの元締めや,このセンサチップをつかってセンサシステムを開発している企業などがあり,いくつかのルートで手に入りますし,自分自身でチップだけ購入して,学内の弱電系の技術員さんにお願いすれば比較的安価で利用することができます。


10月17日 カンタクローム社との打合せ

別に守秘契約を結んだわけでもなく,また,宣伝にもなるだろうと思うので,記載しようかと。誰かの参考になれば幸いです。

カンタークローム社のHydrosorb 1000の開発者さんが次世代機を開発して日本での販売が開始されたということで,打合せをさせていただきました。セメント系でカンタクローム社製品でデータを世界でもっとも多く取得して公開しているのはうちの研究室です。


10/11/2014

フィンランド出張:International Committe on Irradiated Concrete

10月7日から10月12日まで,海外出張に行ってきました。(というか,まだ,出張中です。)
米国出張との間は1日半しかありませんでした。まるで,ビジネスマンみたいです。

今回の出張は,FinlandのEspooで電力会社であるFortrumが会場です。
内容は,前回のBarcelonaに引き続き,International Committee on Irradiated concreteを立ち上げることが主要な目的です。本委員会は,米国のオークリッジ国立研究所(ORNL)の提案により,そもそもは日米国際知見交換会と,ORNLが個別に各国と行っていた知見交換を合流し,放射線によるコンクリートの変質を中心とした国際的な知見交換会を設立しようというものです。


米国出張:グランド・ステアケース・エスカランテ国立公園

9月25日から10月5日まで,米国に出張に行ってきました。
この出張は,フィールド調査で,いわゆる国際会議や研究打合せではありません。建築物のフィールド調査としては,ラクイラ,ベネチアを始めとする組積造調査について,名古屋市大の青木先生のプロジェクトに入れてもらっていて,時々報告してきました。
この調査は,私のあらたな研究フィールドである地質学に関するものです。

過去の少し触れましたが,名古屋大学博物館の吉田英一教授とは,炭素同位体を用いたコンクリートの劣化プロセスに関する研究をご一緒させていただきましたが,それが一段落(論文化はまだおわっていないんですが),カーボネーションのコンクリーション研究にご一緒させていただきました。球体状に炭酸カルシウムが濃集するメカニズムは,自然界においてまだ解明されていない現象の一つなのですが,それについて研究を一緒にさせていただき,現在論文が投稿寸前の状態になっています。

その後,コンクリーションつながりで,米国ユタ州で確認できる鉄コンクリーションに研究テーマがうつりました。Maeuq marbleとも呼ばれる鉄の球殻は,古くからメカニズムとして謎で,原住民のシャーマンなどが利用するような不思議な石として知られています。
ユタ州立大学は,この研究を20年近くにわたってきていますが,同じような現象が火星の表面に確認されるにあたり,NASAと共同研究をしており,国際的にもある分野では注目されるようになりました。


9/16/2014

AIJ年次大会に参加しました。

AIJの大会に参加してきました。大分,参加のスタイルというものも変わってきました。

・打合せが会議中に全部で6回というめまぐるしさで,初日午前の収縮・クリープと最終日の建物調査の一部,以外材料系のセッションには出られませんでした。

・発表は,お祭りなので良いのかもしれませんが,もう少し過去の論文を見るとか,世界でどういう議論がおこなわれて,どのへんまでが常識になっているとか気にしてほしいと思いました。学会での発表なので宗教的なのはやだなあ,と思いました。


9/01/2014

オスロ

オスロに2泊して帰ってきました。実験打合せのためです。打合せで顔をみせないとなぜいけないか、というのは打合せしてみていつもわかりますが、実験のディテールは、会って、データをみて、突っ込んで話を聞かないと出てこない話というのがありまして。
メールでは、決して、出てきません。

やはり、会うべき人には会わないといけない、という話です。

実験はおおまかにいえば、順調です。細かくいうと、なんかしら問題はあるんですが、最終目標の最終ラインはクリアしていると思われます。

昔のロシアの人の実験で、そんなことおきるんかいな、と思って読んでいた論文で関係する事柄がこちらの実験でも起きていて、ああ、あの文章にはこんな意味があったんだな、というのがトレースしてみて初めてわかります。

数値解析の論文も、実験の論文も、基本的に無駄なことは書いてないんですよね。必要だから、なにげないようにみえていても、書いてあるわけで、その意味を理解するのはやっぱり経験だったりするわけです。
いや、本当に物理的な現象をイメージできるなら、あるいは感度が高ければ理解できるのかもしれませんが。凡人には難しいです。


8/24/2014

近況

・最近は、役所からも仕事の依頼が来るようになりまして、名大としての参加可能性を事務的に検討しています。全然知りませんでしたが、大学はもうけを出してはいけないんですね。なんとなく、そういう風に物事は動いているわけですが、間接経費、いくらでも積みまして大丈夫な場合でもあってもダメだというのは初めて知りました。その上、運営費交付金を減額されている現状では、いったいどうしろ、っていうんでしょうか・・・。結構愕然としました。

ルールを固定化して、自分たちの原理でしか頑張らせせく、別の方向での可能性を積むというのは、いかにもお役所的ですね。組織にルールが必要なのはわかりますが、イノベーションを求められている大学でこれなんだ、という点で大変に示唆的ですね。


・大学院入試が先週、無事に終わりました。今年は重責がかかっておりまして、そのために前半の半年、本当に気持ちが重かったです。これで、今年のプレッシャーのかかる仕事が半分減りました。あとひとつ残っていますが、これはまだつづきます。それでも、少し楽になったなあ。

・8月5日に、東大の石田先生のところの論文博士の方の発表会に副査の形で参加しました。収縮に関する面白い取り組みだと思いましたが、実験で出来る部分もかなりあったので、もう少し手を動かしてもよかったんじゃないかなあと、思いました。まあ、指導に関わったわけではないので、あくまでも外からの意見です。

・8月22日にJCIのマスコン指針の改訂に関する委員会に参加してきました。今後の方向性については、いろんな意見がでましたが、有益なフィードバックも多く、大変勉強になりました。つかってもらってるんだなあ、ということがよくわかりました。

・8月23日 RBSM研究会という土木の若手の先生方の勉強会に参加させてもらって好き放題しゃべってきました。RBSMもそうですが、解析をバリバリやっている先生方に、逆にかなりの刺激をいただきました。いっちょ、やったろう、と思いました。もう少し、実験成果を普遍的な形で利用するとか、あるいは解析を用いて、いろんな仮説の補足をするとか、実施していかなくては、と思いました。

・最近、収縮低減剤に関して、あらたな進展がありました。かなり基礎的な研究なんですが、なんでみな、メカニズムの話をしているのに、こういう実験やってなかったんだろう、というようなものをいくつか思いついたので、やってみたら、やっぱりそうだったよね、という話でした。年内にどこかに投稿したいと思います。別府君の修士論文です。

8/17/2014

7月24-25日 一宮市役所

一宮市役所は、昭和5年に建築された愛知県で最初のRC造です。残念ながら、改築ということになり、先月に解体が開始されました。清水建設さんのご厚意で、この建築物の分析をさせていただくチャンスをいただいたので、コア抜きをして強度分布や含水率分布を取らせていただくことにいたしました。

もちろん、これは、現在持っている予測コードの検証に使われるだけでなく、近い将来に実施されるであろう、某プロジェクトに関する布石でもあります。

併せて昭和38年の部材もコア抜きさせていただきましたが、こちらの方が完全に低強度コンクリートでした。

現在、修士の伊藤君が分析を実施しており、近々とりまとめができる予定です。チラっと見ましたが、含水率分布はすばらしい精度でとれています。本当ですか、っていうくらい。
強度のばらつきはそこそこありましたが、それでも、傾向があるので、高経年評価にも応用可能なデータになっています。
どこかで発表していこうかと思います。

近況など 7月18日 ASR-JCIシンポ

油断すると、すぐ1ヶ月です。やれやれ。
この間のことを少し書いてみます。

7月18日は、JCIのアルコツのシンポジウムがあったので参加してきました。先日の方向のように原子力分野では、コンクリートのアルカリシリカ反応がホットな話題となっており、特に、発症リスクの同定と、発症後の維持管理をどのようにしていくか、ということの手法論の構築が目下の課題点です。

原子力で特に日本の構造物を対象とした場合には、水分供給が塗装、室内条件といったことから限定的なので、急激な膨張は考えにくいことから、どのようなモニタリングでどのように性能検証をすすめていくかという議論が必要です。

伊方原発の事例は世界に類をみない手法であるので、世界に認知されるものであるとともに、引き続きの部材のデータについて、詳細な検討、手法論の検証などに展開されることが期待されます。

そういった観点でシンポジウムを拝見していましたが、どちらかというと新工事のための骨材選定のあり方、という従来的観点の視点のとりまとめに偏っていたので、残念でした。少し、構造的観点の評価がありましたが、時間軸をどう考えるのか、性能評価をどう考えるか、という観点のコメントは少なかったように思います。

原子力と言葉の使い方も違うので、Aging Managementとしてどう考えるか、ということが別途取り扱われるとよいかな、と思ったという次第です。

7/12/2014

JCIが終わりました。

今年は、学内関係のさまざまな委員会の役職を拝命している関係で、JCIは残念ながら参加できませんでした。CD-ROMで、タイトルを概観し、興味あるものは流し読みをしました。編集委員でもあったので、おおよそのものは理解できているのではと思います。議論に参加できなかったのは残念でした。

今回のJCI年次大会では、以下のような論文を発表しました。それぞれの要点についても記載しましたので、もし、ご興味があればご確認いただけたらと思います。

[1079]コンクリート中の粗骨材が拘束試験体のひび割れに及ぼす影響についての解析的検討、
篠野宏, 丸山一平, 中村光

7/05/2014

OECD-RILEM Meeting 6/30 とか

6月30日にWashington D.C. で催された、OECD-RILEMのミーティングに出席しました。RILEMに新しいTC、”Technical committee on prognosis of deterioration and loss of serviceability in structures affected by alkali-silica reaction”ができ、そこのメンバーになったからです。

そもそも、ASR研究はほどんとやってきてなくて、照射研究の膨張挙動のAnalogとして実験を少ししていたくらいで、十分な知見はありません。体積変化による構造挙動評価とか、ジェネラルな問題であればそれなりに知見はあるのと、建築ではASRを取り扱っている人間がいないことを考え、さらに原子力では重要な問題になってきているのでメンバーになることを、山田さんの推薦を経て決意しました。

6/29/2014

最近の公開された論文について

最近,いくつか,論文がパブリッシュされました。
英文の論文は,なかなかアクセスしにくい部分もあるので,ここでアピールさせていただこうと思います。

Microstructural and bulk property changes in hardened cement paste during the first drying process (Research Gate Link)
I. Maruyama, Y. Nishioka, G. Igarashi, K. Matsui
Cement and Concrete Research,  01/2014; 58:20–34.


この論文は,セメントペーストのC-S-Hが,多孔性とコロイド性の両方があるということを定量的に示したはじめての論文といえます。特に,セメントペーストの強度が,C-S-Hの変質にもとづき数倍(0.5~3倍)まで容易に変化することを示し,これを微細空隙から説明した点が新しいと考えています。また,収縮メカニズムを考える上で,いつも悩ましいのが,C-S-Hの長期的な変質と脱水による収縮量の分離ですが,世界で初めて,長期的な長さ変化等温線と短期的な長さ変化等温線を比較するという手法を提案し,収縮メカニズムを明らかにした,という形にもなっています。


6/28/2014

JCI 封じ込めシンポ

25日にJCIの放射性物質の封じ込めに関するシンポに参加しました。私は委員でもありました。
終了後の懇親会でも話題になったのですが,委員会立ち上げ当初,本当に2年後に報告書が役に立つのだろうか,という状態でしたが,福島は残念なことですが,あまり進展していないように見えます。多くの案が出されていても,プロジェクト全体の合理性,柔軟性,経済性などがうまく判断されていないように見えます。

これは,マスコミによる情報偏向,個別の感情の問題なのかもしれませんが,技術論としてだけでも,合理的にはみえないような判断が多くなされており,結果として,進展がゆっくりとしたものになっているように見受けられます。

6/07/2014

JCIマスコン指針の改訂についての雑感

昨日,JCIマスコン指針の改訂に向けた調査結果についての報告会に委員として出席しました。私は解析WGの委員ですが,正直あまり貢献していないです。昨日の委員会に出席して感じたことを以下に示します。

・トゥールモンド博士が紹介したフランスのDEFの事例紹介とその取組は,大変素晴らしいものでした。組織として,フランスとして取り組んでいるというチームワークと,できるとこからとりくんでいくという工学的な取り組みは大変学ぶことが多いと思いました。

・JCIの指針として英文化していくということですが,そこまでちゃんとやろうとするのであれば,JCI内部での査読はもとより,パブリックコメントを募集する期間をつくるべきと思いました。また,そのことを考えると,土木よりに偏っている現状については,建築分野の問題にも目を振り向けてバランスの良いものにしていく必要があると思います。その観点からは,建築の委員が少ないように思いました。


5/31/2014

5月最終 その3

工学者とはこういうものだ,という感動を受ける本に出会いました。自分の矮小さが恥ずかしく,地道に科学技術力を磨いていこう,と決意をさせる本でした。

考証-福島原子力事故-炉心溶融・水素爆発はどう起こったか-石川迪夫


5月最終 その2

そういえば,今日は,真夏日でした。32度を超えるっていうのは,世の中そういうもんなんでしょうか。5月なのに。

一つ前のおもしろイベントでコメントしましたが,最近は管轄省庁ではグローバル化,みたいなことをしきりと言っています。助教のテニュア問題というのもありまして,世界的な優秀な人材を集めてこよう,とかいっている人たちもいるわけです。でもね,もう少し現場の状況を考えた予算の枠組みとか考えて欲しいわけです。


5月最終 その1

さて,イベントは風化しつつありますが・・・。

所属の研究科にできたセンターの設立シンポジウムに出席しました。率直に意見が出た方がよいんじゃないかと思って,少し辛口ですがコメントします。

いろんな人が出席してコメントして,ワークショップをしたのを横からみていたわけですが,見識の世代間ギャップが大きいのが一番の見どころでした。大学教員の頭の硬さも,役人の頭の硬さもよく見えたし,それを感じる学生が少しでもいたのなら,意味のあったシンポだったんじゃないかと思います。


5/01/2014

GW近況

GWになってしまった。研究室内もいろいろありまして,ごたごたもありまして。
SAXSについて,もういちど文献掘り起こして大分勉強しました。Allenらのやっていることと,最近のMITがやっていることを比較しました。MITチームのは,qレンジが狭くて,これで本当によかったんかなあ,とか,モデルのフィッティングの前提が壊れてて,これで良く査読とおったよなあ,とか,ちょっとずつ批判できるくらいには成りました。Allenのは,なんかI(q)がそのまま記載されていないので,自分で解析しにくいので困ります。データ,そのまま出してくれれば良いのに。でも,基本は,水和中も劣化中も,ってことで全部取って確認している,というのはデータ解釈として安定感がありますよね。我々も超音波でもリートベルトでも,結局とりまくってから発表してきましたが,そういうの無いと絶対感が無いので気をつけないといけません。セメギでは,SAXSで発表します。

4/26/2014

いまさらですが,新年度。

4月

新年度が始まりました。とっくに1ヶ月が過ぎました。新しい体制では,4月入る前からゼミを行い,今年度はかなり引き締めた研究室運営を心がけています。新4年生は,期待に答えるべく,実験,解析の両方でかなりのペースで習得をしており,はや,全員が,各分析装置の操作/維持管理マニュアルの作成とサンプル測定にとりかかり,有限要素法も温度解析が終わり,水分移動に移行しました。5月で力の釣り合いに関するFEMがわかるようになっていれば,過去の良い時代のペースなので,良いのではと。
一方で,学生さんがかなり気張っているので,途中で折れないようなサポートも考えていきたいと考えています。


3/30/2014

バルセロナ

3月12ー15日で,バルセロナに海外出張に行ってきました。国のお金でいってきましたので,いつも通りここに報告します。ただし,守秘義務もあるのですべては話せません。ORNL主催,現地ホストはAnderade教授とスペインの原子力規制当局,というような会合で,主題は放射線がコンクリートの及ぼす影響に関する知見交換会というものです。


卒業

今年は,D学生1名,M学生2名,B学生1名が卒業することになりました。コンクリート研として,私共は,学生が自分が成長できたと感じられる教育,研究プロジェクトをどれだけ提供できたか,をこのタイミングで振り返ることができます。幸いなことに,最近は,周りの協力をお申し出いただいている方々のおかげで,材料・構造に関わる,おそらくもっとも困難な研究のいくつかに携わらせていただくことができ,学生もそれに関わることができています。
また,研究設備ももっとも,(マニアックな方向ではありますが)整いつつあり,疑問に思った様々な事柄を明らかにすることができる環境もそろいつつあります。
ただ,こういったインフラは,結局中の人がどうなっているか,というのが大事なので,中の人が使いこなさなければただのゴミです。
今年卒業した各学生は,ツールとして環境を使いこなすこと以上に,人として周囲の人間にインパクトを与えられる人間でした。


3/02/2014

H25年度プロジェクト

2月28日に、プロジェクトの報告会がありました。

今年度の報告会では、参加者(外部の方も自由に参加可能)の方にプロジェクトについて、目標、手段、研究組織、成果について評価していただく形になっており、その結果は、来年度の継続研究の有無、予算配分に活かされるという、国のプロジェクトとして、もっとも健全な報告会になりました。さらに、プレゼン資料を当該研究分野の研究者の方に送付してレビューをしていただく、ということでその点でも非常に進歩的です。

このプロジェクトではリーダーが、国際貢献とともに世界トップ水準のプロジェクトという覚悟で、という雰囲気を非常に上手に出していて、委員としての私も、いや、そりゃそうだよねっと思わざるをえなかった、という次第です。
でも、周りの人のご助力もあって、国際的にも研究の進め方や問題点についてディスカッションする場を定期的にえることができました。日本のプロジェクトとして世界に足りていないどのあたりのデータを取るのか、というも随時意見交換することができますし、では実際にどうするか、ということについては、国内にも沢山の素晴らしい研究者の皆様からのアドバイスのおかげで、常に先々と予備実験をおこなうことができています。自分の持ち出しも相当額になっちゃっていますが、その御蔭でプロジェクトとしては、かなり冷や汗ものですが、着実に結果が出ております。

こういう先進研究に30代で参加できたのは、自分の研究キャリアでは非常に大きな経験であり、大変に感謝する次第です。
来年度もうまくスタートが切れればと思いますし、これらの成果は海外ジャーナルに適宜発表していきたいと思います。

おおよそ、年度内の報告書関係は一息ついた(のかな?まだ、出していないのあったら指摘ください。)ように思います。3月中旬には、スペインで第一回、コンクリート放射線マニアの会を行います。私の行っている研究分野について、各国で検討されている研究者があつまって 議論を行うという大変マニアックな会でして、非常に楽しみです。


査読とか

最近も引き続き、大量の論文査読をやっておりますが、沢山こなすとともになんとなく考えることが変わってきました。

論文の査読を客観的にやれと言われましても、ジャーナルのポリシーが適切でないと査読はできません。どの程度の論文であれば掲載にふさわしいのか、というのは実は大変に難しいです。パラメータを一つ追加して、図版が新しくなればそれでよいのか、混和剤が変わっただけでよいのか、というのはジャーナルポリシーに依存するのでは、と。
オリジナリティをどこをもってオリジナリティとするのか、その評価は実に人それぞれであり、査読者の価値観だけで判断してよいものでもないように思います。が、実際にはジャーナルでは、この程度のレベルを採用としてくれ、というような依頼はなく、結局、どのジャーナルも玉石混合となっており、某米国誌などはその最たるものではないかと思われます。まあ、ページ数が厳密に制限されているので、大きな主張の論文が投稿しにくいというのもあるとは思うのですが。


2/05/2014

佳境

各種のプロジェクト類の報告書を多数抱えておりまして,ひーひーいいながら書かせていただいております。報告書や論文をかいているとロジックが飛んでいることがあって,追試がでたりして研究室が慌ただしくなります。論文書いてから実験しろっていう人もいくらいですから,もう少しちゃんとすすめないといけないですね。

2/01/2014

はや2月

おどろくべきことに、新年から1ヶ月がすぎました。
これから3月まで、怒涛のスケジュールになります。ほとんど、予定はうまってしまいました。


1/11/2014

とっくに明けてました。

いや、アップロードできてたとおもったら、できてなかった。しょんぼり。

昨年度はみなさまのご指導、ご協力のもとさまざまに楽しい研究的発見が見られました。また、学生諸君も大いに成長したように思います。今年も、引き続きさまざまにご指導いただけたら幸いです。