10/06/2011

ベネチアでの調査(その1)

今年は,ラクイラの調査はできなかったので,ベネチアの調査から参加した。ラクイラでは震災によるレンガ造・歴史的構造物の被災度調査,補修・補強方針の策定がメインテーマであったが,ベネチアは,どちらかというと材料的な問題,すなわち,長期的な構造物の劣化を対象とした問題を取り扱うフィールドとして設定された。

ベネチアに行ったことのある人で,構造物に目が行く人であればわかると思うが,ベネチアは古くから松杭の上にできた人工地盤の上に構造物が出来上がっている。塔屋あるいは住宅の多くは,かならず少しばかり不動沈下を起こしており傾いている。塔屋の多くも傾いていて,少し気分が悪くなる。加えて,移動が船で移動なものだから,頭の中の平衡感覚は結構狂わされる。

近年では,大潮の関係で,ベネチアのサンマルコ広場が水没している映像がテレビでも流れる。さもそも強烈な塩害環境下なのでどういった対策があるのかと興味深々であったが,実はどうということはなかった。鋼材はメッキされており,あとはレンガ・漆喰・モルタル等々の無機材料を利用しているだけであった。
町中,すみずみを見てみると,塩類風化が生じているのはみかけたが致命的な状態にはいたっていない。
その他,湿気の問題からか,藻が生えているような環境もあったが,あれだけ時間を経た建物となると,もはや,風合いであって,特に問題にはならなさそうだ。

年に数回水没している部分があるが,そこにいっても,彼らは,ただ単にモップで拭いて粛々と生活を継続するだけであった。店舗であっても,床上浸水上等の状態であり,こればっかりは驚いた。日本なら,あっというまに浸水防止装置をつくるとか,1Fを別の用途にしてしまうとか,やりそうだが,かれらはなされるがままになっている。

ベネチアの住宅は日本の住宅局に相当する文化財保存局がその建設・維持管理に関する全権を握っているとのことだった。これは調査中,同行してくれたパドヴァ大学のポスドクで,たばこを吸う姿がセクシーな女性が教えてくれた。
窓ガラスが割れてそれを直すのにも,許可が必要で時間がかかるということで,家の中の回想もおいそれとはやれないらしい。

ひどく物価の高いところなのだが,あまり生活しやすい環境ではなさそうだ。(日本的な価値観からは。)

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