1/22/2011

建築学会構造系論文集

1月号には,2編の論文が掲載された。

一つは,アルミネート相,フェライト相の水和反応をリートベルト解析で見てみた,というもの。結晶として確認できるものから,石膏の量をトレースするとかなりの精度で解析ができていることが確認された。
高温で養生しつづけた場合には,アルミネート相,フェライト相の水和の停滞が顕著になること,特に石灰石を入れた場合にもそれがみられること,が確認され。これらの点については,大門・坂井先生グループをはじめ,すでにいくつかの既往の報告がある。
また,Matschei博士らがCCRで報告しているように,CO2/Al2O3の比とSO3/Al2O3の比のバランスによって生成される相組成が決定される点について,本検討結果は符合した。
また,速度論的な観点からみても,どのような相が析出するかで,その速度はかわっており,特に石灰石の有無によるアルミネート相・フェライト相の速度の違いはそれなりに大きい。
これらを,材齢1日以後のデータに合わせるべく,修正したJander式をもって,フィットしたというのが論文の特徴。
石灰を入れた系でのデータを詳細に示した一例としての価値はあるのではないかと思う。

二つ目は,長さ変化試験を異なる温度でやってみたというもの。
下図にあるように,温度を上げると脱着線は大幅に下がる。同一相対湿度での含水率は低下する。この傾向は,最近だと,フランスの原子力関連グループが高温域での脱着線データをCCRで報告しているけれども,それと符合する結果になっている。一方,長さ変化の方は面白く,20度→40度でのデータは無視するとして,40℃飽水状態から乾燥させていくと,あるところから,乾燥収縮は小さくなる傾向がある。大体それは,RH60%以下である。



温度を上げると見かけ上,表面が疎水化するので,その影響が出たものと解釈できるが,この見かけ上の疎水かを何に起因すべきかは,今後の検討課題である。
飽水状態にしていても,温度を上昇させると含水率が低下するという点は,査読でもご質問いただいた点だが,詳細な検討を今後していく必要があるだろう。

20度の比表面積を与えて水和圧曲線を導出したものが下の図である。ここに示されるように高温での減衰曲線は大きく異なっている。





この後,新しい装置が導入して,あらためて異なる温度の脱着線をとったところ,比表面積(あるいは水分の吸着サイト数)そのものが温度で大きくことなるので,比表面積も40度のものを与えて評価する必要があるようにも思う。そうすると実は同じになるのではないか,という気がしているが,この試験体はすでに半年がすぎてしまったので,今,比表面積をとることに意味があるかどうかはよくわからない。比を同定して補正するということならしてもよいかもしれない。


今まで,多くの方に査読をいただいて,そのたびに貴重な考察をさせていただいた。一部は論文内に反映させたが,記載されなかったものも多い。おって,ここの場で,そういったディスカッションの内容もご紹介できれば,と考えている。

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