ご報告です。
11日の建築学会,理事会付けで建築学会賞(論文)を受賞する栄誉を賜りました。
若輩ではありますが,このような賞を受賞できたことを大変うれしく思います。また,受賞に際して,推薦いただきました恩師・友澤史紀先生に心より御礼申し上げます。
名古屋大学に移動してから,5年を目処に何か一つの区切りをと思ってがむしゃらにやって参りました。移籍時には,さまざまなシナリオを想定した研究室運営を考えておりましたが,科研の若手(A)を獲得できてから,もっともうまくいくシナリオに載ることができました。
このシナリオを練る際には,研究室運営についてさまざまにご教授いただいた広島大学・佐藤良一先生の教訓と研究に対する思い入れが大変に生かされました。御礼申し上げます。
研究室立ち上げ時の研究室に配属され,その後,博士号をつい最近獲得した寺本篤史くんの貢献は,大変に大きく,感謝いたします。
研究室の立ち上げで,最初は埃をかぶっていた実験室を片っ端から片付けて,割れまくっていた床にPタイルを貼って養生室をつくった思い出は今も思い出されます。彼が卒論時に50回実験して,やっと一つのデータが出たときは大変うれしかった。
この最初に一緒に開発した,線膨張係数・全ひずみ同時測定装置は,今も時折,建築学会の構造系論文集に登場しますが,数多くの論文と新しい発見を生み出した装置の一つです。この装置は今も現役で,世に無いデータを生み出し続けています。
岸直也くんは非常にユニークな学生でした。しかし,収縮に関する研究では1000個以上のサンプルを取り扱って,収縮理論の提案に大きな貢献をしてくれました。彼のガッツは,研究室全体に新しい活力を生んだのでした。それと並行して,あのとき,方々から借金をして購入した吸着等温線測定装置もまた,新しい発見を生み出し続けています。この投資は,本当に大きく実りました。研究に対する投資のタイミングと自分の直感力への自信はその後の研究方針に大きく影響を与えました。
五十嵐豪くんは,水和反応に関する私の思いを一心に受け入れてくれました。彼の行ったおそらく2000パラメータ近くのサンプルによって,セメントの水和反応に関する現象については,ほとんど直感的には理解したと思っています。それと同時に限界もわかりました。いくつかの点はある種の装置を開発せずにはひもとけず,それには膨大なお金がかかることも。
五十嵐くんの教育には,私がこういう教育を受けたかったという研究者のための教育すべてが反映されています。ある種,夢の押し売りなので,気になるところも多いのですが,今後,彼がどういった成果を生み出していくかについて,私は大変期待しています。
その他にも堀口直也くんをはじめ,多くの優秀な学生と一緒に研究できたことは望外の喜びでした。
名古屋に移籍後,関連業界の方々にはさまざまに支援をいただき,研究の機会を与えていただきました。共同研究,寄付金,さまざまな情報,個別に行うディスカッション,非常に多くのサポートをいただいたことを心より御礼申し上げます。このご恩にどうにかして,今後,報いていきたいと思っております。
また,周りの先生方,特に年配の先生方には,多くのアドバイスを研究,大学生活全般に渡ってご指導をいただきました。現研究室の勅使川原先生には,構造に関わる多くのご教示をいただくとともに,学内において私が研究をしやすい環境を作っていただきました。改めて御礼申し上げます。
今,こうして書いていますと,あの立ち上げ時とは多くの点で変わってきていることに愕然とします。ゲージ1枚,サミット管1個に対して,学生に怒鳴っていた状況とは異なっていて,別のプレッシャーの下でさまざまなプロジェクトを運営させていただいています。
研究環境としてはすばらしく整ってきたのですが,ふと思うと,あのときの立ち上げの苦労と楽しさを学生と体験することが教育なのでは,とも思います。今一度,初心に返って,学生とともに研究に苦悩していきたいと思います。
(だからといって研究費が必要無いとか邪魔だというわけではありません!)
つらつらと思い浮かべますと,さまざまなご縁はすべてむすびついています。そもそも恩師・野口先生にVRTMの課題をいただけなければ,試験機の開発において考えるべきことを習得できなかったわけですし,また,水和モデルの課題をいただけなければ,こうした方向性でスタートを切ることができませんでした。両者の課題からデルフト工科大学でブリューゲル先生にお会いできて,ヨーロッパ的な研究哲学に触れることができました。すべてがつながって,こうした機会を得ることができたわけで,みなさまには心より御礼申し上げます。
引き続き,建築業界,建設業界,あるいは日本の現状と未来をよりよくするために,私のできる貢献をしていきたいと思いますので,どうぞ,よろしくお願い申し上げます。
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