9/16/2012

日本建築学会大会(東海):学生の発表

今年は,M1の3人が発表しました。D学生は留学やらなんやら,間の学生はいないので,そんな感じです。私自身は開催場所での対応ということで,ほとんど,発表を聞きにいくことができず,いろんな方々とお話することもできずじまいでした。

さて,うちの学生の発表にも,質疑がいっぱいあったようですが,それらを含めての発表内容に関する,コメントと補足



篠野:デジタル画像相関法を用いたコンクリート中の骨材周囲の損傷について
デジタル画像相関法では,ひび割れをFEMのスメアードモデルのように,デジタル画像の解像度に応じたひずみ分布として捉えている。これは,ひび割れの大きさに依存せず,平均化した値で評価できるという点で優れており,積分すればひび割れ量を定量的に扱うことができる。
今回の篠野の手法では,1ピクセルが0.043mmで,25ピクセル×25ピクセルを画像相関の探索対象としているので,おおよそ0.2mmピッチのひずみがとれていることに成る。
この中に,どの大きさのひび割れがあるか,というのは蛍光エポキシ含浸法で評価が可能とも考えられるが,エポキシの粘性,真空度,および検出する機器の波長(可視光であれば,当然,解像度は限定的)によって,検出可能なひび割れ幅が決まってしまう。
ひび割れを議論するときに,こういった大きさやひび割れの先端がどうなっているか,という議論は科学的には重要であるが,現状,コンクリートとの物性との対応を考える上では,平均化した指標であるひずみを用いることには,そういう議論をすっとばすことができる,という点で優位性があると考えられる。

現状,骨材寸法の影響,骨材種類(あるいは骨材の収縮量),乾燥条件,等の影響が半定量的に評価できており,今後,物性値との対応について評価の予定である。


杉江:超高強度コンの自己収縮が付着剛性に及ぼす影響についての解析的検討
本プログラムは自作の2次元FEMであるが,ステップバイステップ,材齢依存のヤング率の増進,クリープ係数の変化,引張強度について考慮済みである。質問にあった若材齢の時に自己収縮でひび割れが入るか,という観点からは,鉄筋長軸方向の2次元解析では,このひび割れは出てこない。
どちらかというとリングテストのような,鉄筋周方向の応力が卓越してひび割れが入るので,本モデルでは,自己収縮によってひび割れが解析的にでない。
そのため,本当にこの問題をやるのであれば,3次元でやって,かつ,節を考える必要があるがこれが工学に役に立つかどうかはわからない。
ただし,現象を可視化するためには一度,どこかのタイミングでやっておくことが大事ではないかと認識している。
FEMの付着要素は,節の機械的引っ掛かりと,引っかかっているときのコンクリートの破壊をどのように考えるべきかが,まだ,整理されていないので,今後これらについて整理の予定である。


西岡:堆積岩において,ひずみの3軸方向が異なっているということへの言及
この論文を書いた理由は,いくつかあるが,より実務に近いところで話をするのであれば,骨材の品質管理と乾燥収縮問題に役立てるため,という形で説明するのがよいだろう。
先のJCIの乾燥収縮に関する委員会の報告は,まあ,いろいろご意見があるだろうか,本質的にも外れた点が複数あり,課題は多かったと認識している。

骨材の収縮の測定方法もそのひとつである。今回,あえてデータを見せて確認したように,一つの砂岩の乾燥収縮ひずみ量は,測定する方向ですべて異なる。すなわち,各骨材のつぶにひずみゲージを貼り付けて乾燥収縮を測定したとしても,そのデータは,何回測定してもひとつの値に修練しない。そのため,代表値を一つもっているというデータを扱っていないので,いくらn数をかせいでも,統計的に骨材つぶ郡としての平均値は出てこない。
だから,そんな測定をしても無駄である。

もし,骨材のひずみを評価するのであれば,各骨材で3軸測定して,その平均ひずみを考える,あるいはそのひずみをもとに最大主ひずみ方向の値を算出して,その値を評価するということが必要である。これであれば,骨材にはひとつの物性値としての収縮ひずみが定義され,平均の値を評価可能になる。
本研究はそういった議論のために発表したのである。

ちなみに,他の観点というのは,骨材中の石英量を簡易評価できないかという特殊な用途があったので,線膨張から推定する手法がありえないか,というのがひとつの目的である。ただ,これは,特殊用途ゆえにお金をだして,化学的手法を用いればよいじゃないかという意見があって,実のところ,実用上はあまり重要な結果としては扱ってもらえなさそうだ。


最後に,骨材の測定は体積ひずみでやるのが一番はやい。3軸測定するというのは面倒くさい。これについてはアイディアがいくつかあるから,そのうちやると思う。

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