ソルトレークで行われた国際会議では,日本の関係者の皆様には,大変お世話になりました。
非金属系のセッションでの発表でしたが,存外,聴講者が多くて驚きました。全体的な興味は少ないのでは,といったコメントも聞いていたのですが。
アメリカでは,最近はアルカリ骨材反応に関して,大きな注目を集めているようです。フランスでは,DEFが注目されておりますが。最近でも,原子力発電所施設のコンクリートにおいて,問題が生じた事例が招待講演などで紹介されていました。
そもそも,地質・岩盤の状態が日本と大きく異なるのと,セメントの事情も異なるので,なんともいえませんが,日本でもときどき言葉として示される,遅延型のアルカリ骨材反応というのは気になるテーマです。たとえば,粘土鉱物が含まれた骨材系については,森野先生らが論文をだされておりましたが,アルカリをバッファとして蓄えこみ,その後,周囲のPH変化にともなって,アルカリが放出されるというようなことはあるように思います。
ただ,膨張につなげるには,シリカゲルに相当大きな浸透圧が生じなくてはいけません。このためには,大きな化学ポテンシャル差が生じる必要があり,このギャップが,外からの水分の供給無しに生じうるのか,というのは大変興味深い点です。
シリカゲルのタイプ,生成,そこで生じる膨潤圧力についての検討というのを長期的なスパンで検討するというのはなかなかチャレンジングな研究ではないかと思います。
超高強度コンクリート中に多量の膨張材を入れた場合,材齢100日~180日くらいで急激な膨張挙動を示します。膨張材で膨張を付与するために必要となる水和生成物は,かなり水を必要とする水和物なので,水が無いと反応が生じないように思います。
我々は収縮の観点から,超高強度コンクリート(W/B=0.17以下くらい)中の平衡相対湿度を測定したことがありますが,100日ほと経過すると70%RH程度まで低下することがわかっています。エーライトについては,水和が停止することが確認されているような湿度ではありますが,そこでもエトリンガイトやポルトランダイトが生成する可能性があるということを実験では示しています。
たとえば,C-S-Hに吸着している水が,石膏やライム,アルミと反応して水和生成物を形成した方が,系として安定になる,ということは十分考えられます。
残念ながら,C-S-Hに吸着している水の結合力を評価することは難しく,定性的説明に終始せざるをえません。また,上記の説明だけでは,なぜ100日から,反応が開始するかについての説明にもなっていません。
いくつか仮説をもっているので,いまだ,超高強度の収縮制御に関して興味がある方がいらっしゃれば,ぜひ,共同研究をしたいネタですので,声をかけていただければ幸いです。
ま,そんなわけで,局所的な平衡関係を考慮すると,膨潤挙動が本当にないわけではない,というわけで,水分供給についても,外部からが必須ではないかもしれません。非常にち密で今期がいる研究ですが,これもまた,面白いのではないかと。
私の発表では,中性子・γ線の照射がコンクリートに及ぼす影響について,メカニズムの推察とそこで生じうる事例,それらを数値解析的に評価する手法について示したものです。数値解析手法は今年度中には完成すると思われますが,米国側からは大変,高い関心をもってもらえました。
いくつかの共業に関する打診をいただきましたので,今月末に再度,打ち合わせに渡米することといたしました。
こういった大きなプロジェクトを担当させていただけるのは,研究者冥利に尽きます。
今後とも,皆様のご協力をいただければ幸甚です。
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