6/29/2014

最近の公開された論文について

最近,いくつか,論文がパブリッシュされました。
英文の論文は,なかなかアクセスしにくい部分もあるので,ここでアピールさせていただこうと思います。

Microstructural and bulk property changes in hardened cement paste during the first drying process (Research Gate Link)
I. Maruyama, Y. Nishioka, G. Igarashi, K. Matsui
Cement and Concrete Research,  01/2014; 58:20–34.


この論文は,セメントペーストのC-S-Hが,多孔性とコロイド性の両方があるということを定量的に示したはじめての論文といえます。特に,セメントペーストの強度が,C-S-Hの変質にもとづき数倍(0.5~3倍)まで容易に変化することを示し,これを微細空隙から説明した点が新しいと考えています。また,収縮メカニズムを考える上で,いつも悩ましいのが,C-S-Hの長期的な変質と脱水による収縮量の分離ですが,世界で初めて,長期的な長さ変化等温線と短期的な長さ変化等温線を比較するという手法を提案し,収縮メカニズムを明らかにした,という形にもなっています。






実は,今書いている論文では,ここでの考察が不十分だったことがわかったので引き続き,より詳細な分析を実施しています。収縮メカニズムについてはまだ言及すべきことがあると思っているので,概観だけ理解していただけたらと思います。

ペーストの部分の変質は,コンクリートの物性変化の基礎原理なので,(これは今,CCRに投稿中。まだ,査読が帰ってきていない・・・半年すぎたのに・・・)是非とも原子力分野の人には理解いただきたい点です。

C-S-H,強度,収縮関係で新しい概念とデータがたくさん出ておりまして,査読者にも”Full of new information”と絶賛いただいたので,ちょっと気分の良い論文です。



Cement Reaction and Resultant Physical Properties of Cement Paste (Journal direct link)
I. Maruyama, G. Igarashi
Journal of Advanced Concrete Technology, 12(6):200-213. 2014

こちらは,私の水和モデルの基礎データをすべて詰め込んだ論文です。普通,中庸熱,低熱,水セメント比0.55,0.40の水和,相粗製,水蒸気吸着,強度,ヤング率,ポアソン比,熱伝導率をどのように簡易に関連づけるか,という論文になっています。これから数値モデルを検証する人も,今までのモデルを検証する人も,是非,このデータを参照してほしいと思います。
なお,若材齢の体積データは,Companion論文として,

I. Maruyama, A. Teramoto, G. Igarashi: Strain and thermal expansion coefficients of various cement pastes during hydration at early ages, Materials and Structures, V. 47, 1-2, pp. 27-37, 2014, doi: 10.1617/s11527-013-0042-4

I. Maruyama, A. Teramoto: Impact of time-dependant thermal expansion coefficinet on the early-age volume change in cement pastes, Cement and Concrete Research, Vol. 41, pp. 380-391, 2011

I. Maruyama, Origin of Drying Shrinkage of Hardened Cement Paste: Hydration pressure, Journal of Advanced Concrete Technology, Vol. 8, No. 2, pp.187-200, 2010.6
これらをみていただけたらと思います。いずれも同一のセメントを用いた実験系となっており,さまざまの相互関係を明らかにすることができます。





0 件のコメント:

コメントを投稿