1/18/2010

自己ひずみ応力が構造物へ及ぼす影響

超高強度の論文をてし先生と連名で黄表紙に投稿して半年がたつが,その間にいくつか情報があつまった。驚愕の事実は,以下のとおり。

1.自己ひずみ応力については,すでに梅村先生・青山先生がおおよそやりつくしている。
青山先生の論文は自己ひずみ応力の構造挙動(ラーメン構造等の全体系を含む)であり,それが1950年代に論文化されている。

2.梅村魁:塑性ラーメンの自己歪応力と終局強度,建築学会,P.165-166,1955年6月
「したがって次のことが一般に言える。「完全塑性をもつラーメンの崩壊荷重は自己歪応力の有無に無関係である」いいかえると,完全塑性構造物で変形を考えず水平終局強度だけを対象にするかぎり,不動沈下,温度収縮等による自己歪応力は一応考えないで設計してよいということになる。これは,部材各部は十分完全塑性を持ち,また,繰り返しに対して同一抵抗を示すことを前提としているわけである。
しかし,一般構造物の骨組みは,鋼,コンクリートのような塑性体でも,理想的な完全塑性でないから,以上の理屈も実際には色々の問題がある。完全塑性に近いと考えられる鋼材でも,不動沈下等によって切断することがあり,鉄筋コンクリート骨組みでも地震をともなうと崩壊することがある。すなわちある程度の塑性をもっているものでも,その変形に一定の限度がある。以上の理論もこの変形限度に頬かむりした結論であるから,実際の設計にはこの点をまず,検討しなければならない。鉄骨造,鉄筋コンクリート造でYield hinge的な接点がどの程度ゆるされるかによつて,終局強度もまたかわってくる。さらに,鉄筋コンクリートでは強度以外に耐久性その他でコンクリートのひび割れも問題になる。」

3.青山博之:鉄筋コンクリートラーメンの終局体力と自己歪応力,日本建築学会論文報告集,第60号,pp.617-620, 1958.10
「自己歪応力は一応考えないで設計してよいということになっている。しかし,実際の構造物では強度以外に変形の特性がまた重要な要素であり,自己歪応力が変形限度やきれつの点で,あるいは振動周期や減衰性の点で問題になるので,これらを実験によって明らかにすることが必要である。本研究は模型鉄筋コンクリートラーメンに自己歪応力を与えて,その終局強度および変形を実験的に考察しようとするものである。」

いやあ,怖いことですねえ。もう,やっとる。
ちなみに部材については博士論文の前半にまとめられているそうです。今,原稿を取り寄せる算段をしているところ。

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