12/31/2011

31日

ひょんなことから,1994年の無機材料の内川先生の「セメントの研究動向」を読んでみた。例年書かれているような書式なのだが,前年の非常に重要な論文を集めて,トピックごとに整理しているのだが,その網羅性,重要性だけでなく,エッセンスの抽出の仕方などが素晴らしい。これを毎年やりつづけるのが研究者であって,こらだけ読み込んでいないという自分を深く反省する。

加えて,その最新と言われている内容が,2000年代以降の再発見の内容とほとんど重複していて,本質的な研究というのは90年d内以降,あまりかわっていないのかも,と思われる。
初期の潜伏期におけるC-S-Hの話とか,骨材の影響の話とか・・・・。

先の骨材特集とよい,やっぱり,ちょっと文献をよんでいなさすぎるかな,と思う。

30日

実家に戻る。体調悪化はますますはげしく,葛根湯を飲んで体調を整えるも,寒くてしょうがない。新幹線はつらかった。

新幹線では,セメント・コンクリートの1981年の骨材特集を読んだ。今読むと驚愕なんだが,ほとんど同じことを議論している。ことなっているのは,砂利と砕石の出荷量の違いくらいなものである。

低品質骨材については,建築研究所でもプロジェクトがあったみたいなので,友沢先生に聞いてみないと・・・。私がしらなかっただけかもしれないが。水中養生と乾燥条件下で強度が大きくことなるケースがでてきたことをこの時点ですでに報告している。

また,鉱物学的考察も国交省の方が書かれていて,鉱物・結晶別にいろんな劣化シナリオが明らかになっている。これも,本来は教科書的に私たちがしならくてはいけないことなんではないだろうか・・・。

低品質といっても,技術的に制御可能だけど経済性が担保できないから,粘土分が入ったり,粒度,分布がよくなかったりという問題と,そもそも資源が枯渇して,という二つの問題を切り分けるアプローチについては,すでに吉兼さんがこの時点で指摘している。

冒頭の総説で岸谷先生が,骨材単味の問題だけでなく,これはコンクリート業界のシステムの問題なんだから,骨材の品質分布調査をはじめ,業態変化も含めて,研究・調査・政策を検討すべきだ,という主張は今もっとできていないことを考えても,その通りだと思う。それ以降,我々はなにをやっていたのだろうと気になってしまう。
骨材単味の研究では解決しない,と言い切っている文章はしびれる。馬場先生の他,骨材種類とコンクリート品質の問題をもう片方でやっておられつつ,全体を俯瞰するこの意見は,すばらしい。

12月28-29日

大学に戻り,特に4年生のサポート。できれば,3人ともJCI年次への投稿にこぎつけたい。いろいろサポートしたいところだが,私の体調不良もあって,思考力低下。ちょっとイライラ感がでてしまったかもしれず,反省。
1名については見通しがたったと思うが,もう一名は実験次第。ただし,ガッツやパラメータ数から考えれば,成功がいくつかあれば,報告はできそう。ラストは解析系なんだが,既往文献をどうしても読み解けず,技術的にどこを考えるべきかでともっており,私自身もいろいろと解析のシナリオを考えねばならず,夜半はたいてい,それについて考えている。

12月26日

コンクリート劣化に関する研究情報交換会。コンクリート系のプロジェクトに関するざっくばらんな会議で,外部の人も招いて,研究の方向性に関する意見を伺う会議。昨年度まりはフランクな意見があってよかったと思う。

12月27日

JCIの耐久性力学の全体委員会。報告書に向かっての議論で,既存の知見についてはおおよそ網羅できた感がある。収縮がRC,PCの構造挙動に及ぼす影響についての知見について,これは知らないだろう,というものがあれば,ぜひご教授ください。報告書に掲載させていただきたいと思っています。

12月24日

車で東京に家族を載せて移動。移動しようとおもったら,子供3人が風邪をひいて病院にいくことに。年末なのか,朝一で電話したのに順番を80番以降になっていて,結局,15時くらいに通院。お医者さんも大変だなあと。
そのあと,家を出たので,夜の東名は結構疲れた。

12月20~22日

12月に入って,卒論が佳境になってくるとともに,経験不足のケースについてはかなりトラブルが続出。CCDカメラを壊してしまったりと,学生自体もびっくりする事態が。JCI年次,卒論を考えると緊急性が高いので,もう一台購入することを検討。取次の会社の方に配慮をいただき,Fedexで即日出荷,27日には届くように配備。
実験系は,こういった修羅場をくぐることで学生が成長するので,それはそれでよいのだけれど,実験が高度化するとこういうのが続くと予算的には厳しいなあ・・・。

12月19日

ラファージュとの共同研究は,寄付金による技術提携という形に変わった。今の欧州の状況を考えれば,それでも望外の供与ではないかと。来年以降,定期的に研究動向について情報提供を継続する予定。

12月16日

BASFの研究所で意見交換会。材料開発の方とも意見交換できたのは,大変刺激的な経験だった。一つの材料も多角的に物性評価すると,いろいろとつながってくることを再確認。

12月15日

佐倉で実験の視察会。超大型の実験系プロジェクトで,その確認。T社の最新データロガーは,メモリカードを挿入するとデータ取得が継続されないバグがあり,名大でも被害にあったのだが・・・・。早めに対処してほしいところ。

12月14日

岡崎市まで出張。その後,名工大の吉田先生,竹本油脂の斉藤さんと大学でゼミ。お互いの学生がプレゼンを行う形態をとる。面白い傾向の出ているデータがいくつかあり,それについての解釈についてディスカッション。

12月9日

JCIのひび割れ進展に関する委員会とJASS5Nの委員会に出席。JASS5Nは,今後,これが適用されるのを望むばかり。
一方で,こういう指針類は60前後の方たちにノウハウのピークがあるわけだが,指針類を作るということよりは若い人に過去の履歴を伝達することが重要なような気がする。
指針脱稿も大事だけど,長期的に委員会を運営できるとよいと思う。
AIJは,旅費が出ない関係で地方の人間を呼べないのであれば,せめて電子会議システムを数百万投資して作るとか,そういうことを配慮した方が良い。
一票の格差問題をほっておいている行政とまったく同じ状態で,公平なシステムとはいいにくい。
私自身,いろいろな会議が重複してしまっているので,あれもこれも出席することができなくなってしまっているけど,各委員会で2,3人の若手コアメンバを想定して,その人たちにはもれなく出席してもらうような配慮が必要かと。
研究者の人口分布自体が,実際の人口分布を反映しており,あきらかにノウハウが欠如しそうな時代がすぐそこにあることは我々の世代も十分に意識していかないといけないかな。

12月8日

私の研究室1号生の博士論文受理を行った。これから厳密な審査を行う予定。
感慨深いものがある。

12月7日

年の瀬になると,卒論,修論,入試,院試関係でいろいろ業務が多くなってくる。国のプロジェクトは震災の関係で契約がおくれ,11月スタートのものもあり,これについては,かなり念入りに可能性を想定して仕込んでおいたものを一気に仕上げる必要がでてくる。大量のコンクリートを仕込んで,養生開始。いくつかのサンプルはJCI年次でお披露目できるかも。

12/08/2011

12月6日

セメントペーストの強度試験を行うと,ばらつきが,特に長期材齢で大きくなります。これは完全にシールできていないとか,練混ぜ時に気泡が入ってしまうとか,いろいろ考えられるので,東工大のS先生にご推薦いただいたミキサーをつかってみたら,驚愕のクリームのようなペーストができて驚きでした。
従来,増粘剤をいれて練ると気泡ができすぎて実験にならなかったのですが,これならうまくいきます。

これは,今後,これでやらんといけないなあ,ということで現在,予算建てを検討中であります。
基礎的なツールというのは,やはり適切なものを使わないとダメですねえ。

12月2日

ことしの授業でも例年と同じく,2年生の授業でモルタル作品コンペティションを行いました。
http://www.degas.nuac.nagoya-u.ac.jp/Lecture/2011_mortar/index.html

No.1,No.6,No.18,No.38
などは非常に優れた作品だと思います。

No.18は何がすごいかというと,モルタル作った後に指の形にほった彫刻になっていて,いったいコンクリートのメリットである可塑性について何を聞いていたんだ,という問題作品です。これはあっけにとられました。個人的には好きです。