10/09/2022

再始動

 大分長く空いてしまいました。今後は,少しづつ,またこちらに細々したことを記載していこうと思います。

最近やっていることなどを少し紹介します。最近は担当している大型プロジェクトが大分増えてきました。研究方針,とくに科学的な観点での戦略立案役が主軸になってきています。また,データ分析や科学的な仮説立案で御役に立っているかと。

・ムーンショット C4Sプロジェクト:これは野口貴文先生がPIです。私は,製造プロセスの担当で,炭酸カルシウムをバインダーとしたコンクリートの生成メカニズムを担当しています。2年半前にスタートした研究ですが,最初の半年でΦ1x2cmの試験体で生成プロセスの検証を行い,徐々に試験体を拡張し,強度増進を測ってきました。最近ではブロックサイズも射程に入ってきて,実用化がみえそうになってきました。また,来年の春先くらいにはプレスリリースなどが行えるとよいと考えています。このプロジェクトの製造部分では,東京理科大学,太平洋セメントさんと一緒に研究を行っています。

・グリーン・イノベーション基金 コンクリート中のCO2固定量評価方法の標準化プロジェクト これは私がPIです。NEDOからのプロジェクトですが10年にわたる研究開発ということになっていますが,私は今後開発されるだろうCO2を固定したコンクリートにおいてどれだけ固定されているかを確認する手法の開発をJIS,ISO化することを支援する役割になっています。さまざまな手法を検証・実証してすすめていきます。他プロジェクトにも利用してもらうことが目的となっているので,最初の数年で一定程度の成果を出そうと考えています。本プロジェクトでは,北海道大学,名古屋大学,広島大学,琉球大学,太平洋コンサルタント,リガクのメンバーで研究を行っています。

・コンクリートの放射線影響評価プロジェクト こちらは,原子力発電所の長期運転を支援するための研究です。原子力発電所がベストではないのはわかりますが,よりよい世界に移行するにあたって資源を持たない日本で安定供給が可能になるであろう有力な手段であることは今後50年くらいはかわらないのではと考えています。新しい炉をつくるにしても,時間を考えると,今ある炉を適切に運用していくのが大事になってきます。その上で,社会のみなさまに,どのように懸念をもって,どのように解決しているのか,マネジメントしているのか,を説明することが大事だと考えています。中性子,ガンマ線を当て続けたコンクリートがどのような変質をもたらし,構造にどのような影響を有するのかを,原子スケールから,構造部材スケールまで事象を科学的に解明し,影響度を評価する研究です。私はこの花宮を2010年から実施し,一貫して国のプロジェクトの研究方針を打ち出し,リードしてきました。引き続き,国際貢献ができるように尽力したいと思っています。この研究では,三菱総研,千葉大学,名古屋大学,鹿島建設など多くの組織で研究を行っており,海外の研究所(ORNL(米国),CVR(チェコ))とも協働しています。

・英知事業 福島第一発電所廃炉にかかわる,放射性物質とコンクリートの相互作用に関する研究プロジェクト 福島第一発電所を今後どのように廃炉していくかは長期にかかわる研究課題となっています。そのさまざまなオプションを評価するためにも,大量に存在するコンクリートを無視することはできません。本研究では,CsやSrとコンクリートが,炭酸化,乾燥収縮,ひび割れなどを有した状態でどのように相互作用するのか,といったことを解明していっています。すでに多くの論文が出されていますが,今後も引き続き,研究を進めていきます。

・コンクリートの乾燥影響,こちらは勅使川原先生との研究で,鉄筋コンクリート構造物が乾燥によってどのように性能を変化させるかということを実験・理論両面で理解するための研究になっており,本年度,実大に近いスケールで鉄筋コンクリートの3層試験体を2年間乾燥させてから載荷実験を行ってました。2年前にはまったく同じ設計で十分水和させた直後に実験を行っており,今後,さまざまな結果が出てきます。モニタリングなどで乾燥させる固有振動数の変化について,材料から説明ができるはず,との観点で研究を行っています。こちらについても,すでに様々な論文が出ています。今後,少しつづ,説明していこうと思います。こちらは名古屋大学がメインとなっています。

・廃炉材を用いたコンクリートの健全性評価方法の高度化研究。こちらは名古屋大学で実施している研究で,中部電力にお声がけいただいた研究です。現代のコンクリートの中でも,水,温度(しかもそんなに高くない40℃くらいでも),長石類などがある条件ではトバモライト生成が生じ,コンクリート強度が飛躍的に高くなるというメカニズムを世界で初めて発見し,解明しました。その他,非破壊試験の応用,数値解析手法の応用,などを研究しています。

その他,3Dプリンティング材料,火山灰を用いたセメントシステムにおける反応と物性発現機構の解明,炭酸化したコンクリート中の鉄筋腐食速度推定方法,炭酸化収縮メカニズムの解明,たたきの水和反応メカニズム,火星における建設材料研究,地産地消型建設材料開発のあり方,建材へのCO2固定方法ならびにCO2オフセット手法の開発,などを行っています。




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