12/30/2014

としのせ

11月上旬から一気に年の瀬になってしまいました。いろいろ考えていることをまとめようと思っておりましたが,今年の東京出張の数は多く,あっという間にこの時期になってしまったというのが実状です。

キーワードだけでも上げておこうと思います。備忘録。

1.大学授業の英語化について
・大前研一氏の本以降,いくつかの大学の戦略と国の政策に関わるまとめのような本を読みました。小国の場合,大学教育後の人材の活躍の場が,必ずしも国内市場だけで十分ではないことから,活躍できる市場を見据えた形の大学という観点では,英語で勉強しておくということは,当然の行為ではないかと思われます。
その観点で,工学部や工学研究科が前に進むための工学,の実施者であるべきということを考えれば,実施者が活躍できる場は広ければ広いほど,その活躍の可能性は広がります。
今後,日本の市場がしばらくは縮小傾向にあることを考えれば,また,建築という業種が縮小傾向にあることを考えれば,市場をもとにもとめなくてはいけません。これは,人材とともに企業も同様です。

・アカデミアでは,自国語で学べることが大事,という気概があります。これは本当に大事なことで,最先端レベルで母国語の情報が手に入れられるということほどすばらしいことはありません。明治時代以降の先人の賜物でもあります。しかし,それにとらわれることが本当によいのかどうか,というのをもう一度問う必要があるのではないかと思います。というのもアカデミアの方の進歩を推し進めるという観点からも,人材交流・知見交流は大事であるけれども,すでに標準語は英語となってしまったいま,母国語で議論をすることの価値は相対的に落ちているからです。

・そう考えると,全体として英語化を進めるということは当然の議論ではないかと思うに至りました。

・日本の大学の講義は少なくとも私の身の回りの環境では,義務教育の様にボトムあるいはミドルの学力を有する学生をベースに授業を進める場合が実際のところ多いです。これは,不合格を出しにくい無言の圧力,あるいは不合格が多いことはレクチャーが適切で無いとみなされる風潮から,落第を数名にするということが,教員にとって最適戦略になるからで,学生と教員を高め合う環
境にありません。その結果,優秀な学生の学習速度を落とし,貴重な人材育成に失敗しています。
それ故,諸外国から来た人にいわれることですが,大学の学部教育は終わっている,という事態になっています。
例外は,東大の授業ではないかと思います。私の受けた授業は,学生が本気でついていかないと振り落とされるような授業が多かったように記憶しています。
一方,大学院教育は素晴らしいと言われています。いわゆるゼミ形式で,基礎から高等研究までもっていくある種の信頼関係に基づく少数教育から排出される学生は,特に,素晴らしい教員との出会いによって,素晴らしく成長します。ただ,残念ながら,教員の平均は,落ちているのではないかと思われます。というのは,文部科学省の研究振興とも関連するのですが,どの分野も競争が激しいというわけではないことで,競争が激しくない分野や競争をよしとしない文化がいくつかの分野で見られ,その結果として適切でない人が教員になる場合もあるからです。

・つまり,日本の大学で学生が育つかどうかは,運になります。自分の子供を育てる場合を想定すると得心が行きますがいまの大学教育のままでよいかというと,改善して欲しいことは多数あり,そのうちの筆頭は英語化でしょう。自分の子供が活躍する場を広げたい,といって反対する人はいないのではないでしょうか。また,大学の選択は自由です。もし,日本語で学んでほしいというのであれば,そういう大学に行けばよいだけです。私の提案は,名古屋大学として,英語で学べる環境があるというオプションを広げる一翼になるべきではないか,というものです。


2.移民の問題
・多くの日本人は,あるいはマスコミで議論されている移民は,マックジョブ担当ということになっているようです。移民を受け入れて,犯罪が多くなるというのは,結局,自分たちのやりたくないことを移民にやらせてやろう,というひどく歪んだ価値観から出ているのではないかと思います。しかし,近年の各国の移民政策では,条件をつけるところが多く,いわゆる,高級技術者(弁護士,会計士,教員,経営者,その他)を受け入れる方向性もありえるわけです。
・英語化の議論と一緒になりますが,そういった高級技術者を受け入れて,その人達と切磋琢磨する環境というのは非常に好ましいように思います。大きな問題点は,島国の中の巨大市場に慣れてしまっている人たちが,日本語環境を既得権益としてその市場の囲い込みをしたがり,彼らを排他的に扱ってきた文化にあります。おそらく,今もって多くの日本人は,そういう競争をいやがり,安直にその利権を守ろうとするのでしょうが,そうした企業なり,団体なりは早晩競争力がなくなるものと思われます。
・移民の問題も英語の問題も結局,表裏一体であり,国内市場を開放して高級職も含めて世界と一緒に競争していこう,という一種の規制緩和です。(この場合は暗黙の参入障害排除でしょうか。)

・いわれなきバイアスや過去の経緯を引きずった貸し借りの(明文化されていない)テキストの中で大学改革をやらされるとか,文部科学省の意図のわからない文章作成とか,そうしたものにつきあう大学の経営状態はかなり末期的症状だと考えています。大学の方針を自ら立案し,必要なものを文部科学省提案から取捨選択するなり,文部科学省に提案するなりの積極的な取り組みというのができていない今,組織を活性化するために経営能力のある人達が執行部になることが重要で,そのためなら,海外の適切な経営者に来てもらって運営してもらったほうがよっぽど楽になるのではないかと考えています。既存のテクストを捨て去る勇気を日本人が持てないなら,その部分はお願いしたら良いんじゃないでしょうか。

・いずれにせよ早晩,競争をして個人のちからを上げていく,そのためには個人のちからを尊重するような人材評価,職業の枠組みも必要になってくるでしょうか,力ある人は日本の既存の評価制度を好まない場合もあっても,外に活路を見いだせるという選択肢を持つわけで,選択肢を広げるということはやはり大事であろうと思います。


3.研究について
・多孔材料の収縮メカニズム, Vycorのデータが蓄積されました。セメントペーストとやはりメカニズムは違うように思います。既往の収縮理論との整合性を考えていますが,高湿度域の挙動がやはり不明です。気-固界面に囲まれた水のポテンシャルというのは,微小空隙であっても,バルクの水に近くなるのか,というのが疑問点です。

・併せて,収縮低減剤の役割を極めて明解に説明できるデータが蓄積できました。来年度前半中には投稿したいと思います。

・1H-NMRの装置を導入しました。現状,環境ノイズに悩まされています。バックグラウンドがこんなに高いのはなぜか,というのがわかりません。

・RBSM,FEM,いずれもかなり丸山研のモデルが3次元の形に実装されました。現状,乾燥による物性変化,微細ひび割れ,収縮ひび割れと構造性能の関係,放射線によるコンクリートの劣化が構造挙動に及ぼす影響,などをテーマとして学生さんが取り組んでいます。
材料構成則上の問題もいろいろわかってきたので,いずれ,進展があって外に公開できるのではと思います。

・骨材の遷移帯の考慮が収縮予測にきわめて重要であるということをJACTの論文で公開しました。
また,既往の五十嵐先生との実験結果で,異なる水和状態のセメントペーストの物性に関する一連のデータについても,JACTで論文公開しました。

・現在投稿中の論文は以下のものです。
-割裂引張強度が乾燥によってどのように変化するか (JACT)
-C-S-Hの乾燥時に生ずる変質について(CCR)
-骨材の収縮(BCM)

・現在,水和モデルについて過去にジャーナルに投稿していなかったので,その集大成になりそうな論文を現在執筆中です。


11/16/2014

11月3ー4日 ICMST-Kobe

ICMSTという日本保全学会の国際会議に11月3-4日と参加してきました。あまりコンクリート分野の人は入ってきたわけではないのですが,廃炉を用いた研究について国際的に議論が高まっており,特に先進的に実施しているスペインのZoritaプロジェクトについて議論することも目的の一つとして,CSICのC. Andrade教授に来日していただき,関係者で議論をしました。


湿度センサ

センシリオン社のSHT-75は,90~10%RHの領域で極めて精度が高く,海外でも,コンクリート中の湿度センサとして利用されています。私は,イリノイのLange先生からこのセンサを紹介を受けてしばらく使っていた時期があります。国内でも,センサの元締めや,このセンサチップをつかってセンサシステムを開発している企業などがあり,いくつかのルートで手に入りますし,自分自身でチップだけ購入して,学内の弱電系の技術員さんにお願いすれば比較的安価で利用することができます。


10月17日 カンタクローム社との打合せ

別に守秘契約を結んだわけでもなく,また,宣伝にもなるだろうと思うので,記載しようかと。誰かの参考になれば幸いです。

カンタークローム社のHydrosorb 1000の開発者さんが次世代機を開発して日本での販売が開始されたということで,打合せをさせていただきました。セメント系でカンタクローム社製品でデータを世界でもっとも多く取得して公開しているのはうちの研究室です。


10/11/2014

フィンランド出張:International Committe on Irradiated Concrete

10月7日から10月12日まで,海外出張に行ってきました。(というか,まだ,出張中です。)
米国出張との間は1日半しかありませんでした。まるで,ビジネスマンみたいです。

今回の出張は,FinlandのEspooで電力会社であるFortrumが会場です。
内容は,前回のBarcelonaに引き続き,International Committee on Irradiated concreteを立ち上げることが主要な目的です。本委員会は,米国のオークリッジ国立研究所(ORNL)の提案により,そもそもは日米国際知見交換会と,ORNLが個別に各国と行っていた知見交換を合流し,放射線によるコンクリートの変質を中心とした国際的な知見交換会を設立しようというものです。


米国出張:グランド・ステアケース・エスカランテ国立公園

9月25日から10月5日まで,米国に出張に行ってきました。
この出張は,フィールド調査で,いわゆる国際会議や研究打合せではありません。建築物のフィールド調査としては,ラクイラ,ベネチアを始めとする組積造調査について,名古屋市大の青木先生のプロジェクトに入れてもらっていて,時々報告してきました。
この調査は,私のあらたな研究フィールドである地質学に関するものです。

過去の少し触れましたが,名古屋大学博物館の吉田英一教授とは,炭素同位体を用いたコンクリートの劣化プロセスに関する研究をご一緒させていただきましたが,それが一段落(論文化はまだおわっていないんですが),カーボネーションのコンクリーション研究にご一緒させていただきました。球体状に炭酸カルシウムが濃集するメカニズムは,自然界においてまだ解明されていない現象の一つなのですが,それについて研究を一緒にさせていただき,現在論文が投稿寸前の状態になっています。

その後,コンクリーションつながりで,米国ユタ州で確認できる鉄コンクリーションに研究テーマがうつりました。Maeuq marbleとも呼ばれる鉄の球殻は,古くからメカニズムとして謎で,原住民のシャーマンなどが利用するような不思議な石として知られています。
ユタ州立大学は,この研究を20年近くにわたってきていますが,同じような現象が火星の表面に確認されるにあたり,NASAと共同研究をしており,国際的にもある分野では注目されるようになりました。


9/16/2014

AIJ年次大会に参加しました。

AIJの大会に参加してきました。大分,参加のスタイルというものも変わってきました。

・打合せが会議中に全部で6回というめまぐるしさで,初日午前の収縮・クリープと最終日の建物調査の一部,以外材料系のセッションには出られませんでした。

・発表は,お祭りなので良いのかもしれませんが,もう少し過去の論文を見るとか,世界でどういう議論がおこなわれて,どのへんまでが常識になっているとか気にしてほしいと思いました。学会での発表なので宗教的なのはやだなあ,と思いました。


9/01/2014

オスロ

オスロに2泊して帰ってきました。実験打合せのためです。打合せで顔をみせないとなぜいけないか、というのは打合せしてみていつもわかりますが、実験のディテールは、会って、データをみて、突っ込んで話を聞かないと出てこない話というのがありまして。
メールでは、決して、出てきません。

やはり、会うべき人には会わないといけない、という話です。

実験はおおまかにいえば、順調です。細かくいうと、なんかしら問題はあるんですが、最終目標の最終ラインはクリアしていると思われます。

昔のロシアの人の実験で、そんなことおきるんかいな、と思って読んでいた論文で関係する事柄がこちらの実験でも起きていて、ああ、あの文章にはこんな意味があったんだな、というのがトレースしてみて初めてわかります。

数値解析の論文も、実験の論文も、基本的に無駄なことは書いてないんですよね。必要だから、なにげないようにみえていても、書いてあるわけで、その意味を理解するのはやっぱり経験だったりするわけです。
いや、本当に物理的な現象をイメージできるなら、あるいは感度が高ければ理解できるのかもしれませんが。凡人には難しいです。


8/24/2014

近況

・最近は、役所からも仕事の依頼が来るようになりまして、名大としての参加可能性を事務的に検討しています。全然知りませんでしたが、大学はもうけを出してはいけないんですね。なんとなく、そういう風に物事は動いているわけですが、間接経費、いくらでも積みまして大丈夫な場合でもあってもダメだというのは初めて知りました。その上、運営費交付金を減額されている現状では、いったいどうしろ、っていうんでしょうか・・・。結構愕然としました。

ルールを固定化して、自分たちの原理でしか頑張らせせく、別の方向での可能性を積むというのは、いかにもお役所的ですね。組織にルールが必要なのはわかりますが、イノベーションを求められている大学でこれなんだ、という点で大変に示唆的ですね。


・大学院入試が先週、無事に終わりました。今年は重責がかかっておりまして、そのために前半の半年、本当に気持ちが重かったです。これで、今年のプレッシャーのかかる仕事が半分減りました。あとひとつ残っていますが、これはまだつづきます。それでも、少し楽になったなあ。

・8月5日に、東大の石田先生のところの論文博士の方の発表会に副査の形で参加しました。収縮に関する面白い取り組みだと思いましたが、実験で出来る部分もかなりあったので、もう少し手を動かしてもよかったんじゃないかなあと、思いました。まあ、指導に関わったわけではないので、あくまでも外からの意見です。

・8月22日にJCIのマスコン指針の改訂に関する委員会に参加してきました。今後の方向性については、いろんな意見がでましたが、有益なフィードバックも多く、大変勉強になりました。つかってもらってるんだなあ、ということがよくわかりました。

・8月23日 RBSM研究会という土木の若手の先生方の勉強会に参加させてもらって好き放題しゃべってきました。RBSMもそうですが、解析をバリバリやっている先生方に、逆にかなりの刺激をいただきました。いっちょ、やったろう、と思いました。もう少し、実験成果を普遍的な形で利用するとか、あるいは解析を用いて、いろんな仮説の補足をするとか、実施していかなくては、と思いました。

・最近、収縮低減剤に関して、あらたな進展がありました。かなり基礎的な研究なんですが、なんでみな、メカニズムの話をしているのに、こういう実験やってなかったんだろう、というようなものをいくつか思いついたので、やってみたら、やっぱりそうだったよね、という話でした。年内にどこかに投稿したいと思います。別府君の修士論文です。

8/17/2014

7月24-25日 一宮市役所

一宮市役所は、昭和5年に建築された愛知県で最初のRC造です。残念ながら、改築ということになり、先月に解体が開始されました。清水建設さんのご厚意で、この建築物の分析をさせていただくチャンスをいただいたので、コア抜きをして強度分布や含水率分布を取らせていただくことにいたしました。

もちろん、これは、現在持っている予測コードの検証に使われるだけでなく、近い将来に実施されるであろう、某プロジェクトに関する布石でもあります。

併せて昭和38年の部材もコア抜きさせていただきましたが、こちらの方が完全に低強度コンクリートでした。

現在、修士の伊藤君が分析を実施しており、近々とりまとめができる予定です。チラっと見ましたが、含水率分布はすばらしい精度でとれています。本当ですか、っていうくらい。
強度のばらつきはそこそこありましたが、それでも、傾向があるので、高経年評価にも応用可能なデータになっています。
どこかで発表していこうかと思います。

近況など 7月18日 ASR-JCIシンポ

油断すると、すぐ1ヶ月です。やれやれ。
この間のことを少し書いてみます。

7月18日は、JCIのアルコツのシンポジウムがあったので参加してきました。先日の方向のように原子力分野では、コンクリートのアルカリシリカ反応がホットな話題となっており、特に、発症リスクの同定と、発症後の維持管理をどのようにしていくか、ということの手法論の構築が目下の課題点です。

原子力で特に日本の構造物を対象とした場合には、水分供給が塗装、室内条件といったことから限定的なので、急激な膨張は考えにくいことから、どのようなモニタリングでどのように性能検証をすすめていくかという議論が必要です。

伊方原発の事例は世界に類をみない手法であるので、世界に認知されるものであるとともに、引き続きの部材のデータについて、詳細な検討、手法論の検証などに展開されることが期待されます。

そういった観点でシンポジウムを拝見していましたが、どちらかというと新工事のための骨材選定のあり方、という従来的観点の視点のとりまとめに偏っていたので、残念でした。少し、構造的観点の評価がありましたが、時間軸をどう考えるのか、性能評価をどう考えるか、という観点のコメントは少なかったように思います。

原子力と言葉の使い方も違うので、Aging Managementとしてどう考えるか、ということが別途取り扱われるとよいかな、と思ったという次第です。

7/12/2014

JCIが終わりました。

今年は、学内関係のさまざまな委員会の役職を拝命している関係で、JCIは残念ながら参加できませんでした。CD-ROMで、タイトルを概観し、興味あるものは流し読みをしました。編集委員でもあったので、おおよそのものは理解できているのではと思います。議論に参加できなかったのは残念でした。

今回のJCI年次大会では、以下のような論文を発表しました。それぞれの要点についても記載しましたので、もし、ご興味があればご確認いただけたらと思います。

[1079]コンクリート中の粗骨材が拘束試験体のひび割れに及ぼす影響についての解析的検討、
篠野宏, 丸山一平, 中村光

7/05/2014

OECD-RILEM Meeting 6/30 とか

6月30日にWashington D.C. で催された、OECD-RILEMのミーティングに出席しました。RILEMに新しいTC、”Technical committee on prognosis of deterioration and loss of serviceability in structures affected by alkali-silica reaction”ができ、そこのメンバーになったからです。

そもそも、ASR研究はほどんとやってきてなくて、照射研究の膨張挙動のAnalogとして実験を少ししていたくらいで、十分な知見はありません。体積変化による構造挙動評価とか、ジェネラルな問題であればそれなりに知見はあるのと、建築ではASRを取り扱っている人間がいないことを考え、さらに原子力では重要な問題になってきているのでメンバーになることを、山田さんの推薦を経て決意しました。