7/26/2016

学振76委員会 講演

昨日,76委員会でお題をいただき講演をさせてもらいました。内容は,最近の数値解析技術について,水和反応から物性予測までを,ということでした。

私自身,最近は再び数値解析を用いた論文も何本か投稿している人間ではありますが,数値解析の原理とそれにとりまとめるまでの縮約にいろいろある限界について考えることが多く,また,それに対応した実験もできていない部分がおおいので,むしろお題をするほど偉そうなことはいえず,むしろ苦悩しているという状況なので,講演としては難産でした。

結局,素直に現状のState of the art的なものにして,日本がトレースしていない状況,何か課題なのか,ということについてアラカルト的に紹介することにしました。

でも,本当に伝えたかったことは,数値解析をつかうためにも,いや学問としてコンクリートを考える上でも,最も大事なことは以下のようなことなんじゃないか,ということです。

データをとって線をひき,安全率を考えて設計することには一定の価値があることは認めます。しかし,それはもはや設計行為であって工学的研究であはりません。新しいデータをとって,プロットして,また線を引くことになんの進歩があるのでしょうか。データを取るたびに新しく線を引くのでしょうか。

人件費を考えれば,毎年数十億円の研究費が毎年我々の関連分野で使われているわけですが,そこでセメント化学・コンクリート工学でなにが進歩しているのか,そういう形で批判をしている研究者はいるでしょうか。

科学的なマインドなく,後戻りの無い成果がほんの一握りでもあれば,そこは足場となるわけです。足場なく,上の建物をつんでも,それは砂上の楼閣です。日本のコンクリート工学は砂上の楼閣になりつつあります。コンクリート工学内で議論している用語は,他分野で使われているでしょうか。他の工学・科学分野と共通の言葉を使い,お互いの科学的進歩を分かち合い,前身をつづける学問分野になっていますでしょうか。

同席していた東大・石田先生とも話をしましたが,コンクリート工学分野は,あるいは建築・土木分野は自分たちだけで閉じた世界を築きつつあるのではないでしょうか。

毎年使う研究費の10%でもよいので,足場をつくる研究,後戻りの無い研究,前進のための研究に使われることを心から望みます。また,私は,そういう観点で研究を進め続けようと改めて思いました。

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