12/11/2009

復活?

院生室のインフルエンザが沈静化しました。まだ,ごほごほ引きずっている学生もいるけど,なんとか活動しはじめました。

今週は,インフルの影響で,TMYS社さんと行う共同研究の実験に参加できず,実験開始に立ち会えなかったのは悔いるところ。

4号館の建て替えに伴って引越準備が必要だが,なんだか,引っ越せるのかと疑問に思うくらいの膨大な量があって,途方にくれる。私も。学生も。
かつて,貴重なモノであったはずの備品類があるが,今はもう使わないでしょうと判断されるものも多い。ひょっとすると将来つかうかも,とも思うのだが,ここへ来て4年間でつかわなかったんだから,もう使わないよね,という考えもあるし。
で,廃棄の方向とした。
・圧縮クリープ用のバネ
・イオンキャッピング用のヒーターや治具
などなど,興味がある人がいたら連絡ください。といっても,来週前半にはなくなってしまいますが。



・FEMで梁の問題がやっと解けるようになった。変位増分にしたので,ポストピークまで一応できる。あとは構成則と収縮の影響を入れるだけ(だけってことはなくて,それが研究のメインなんだけど。)。来年には成果がどこかにだせれればよいか,と。

・40℃と20℃の脱着線の取得,およびひずみの取得がうまく行っている。岸君の実験は本当に精度が高くなった。引越のせいで再吸着がとれないのが痛いけれど,これで温度依存性について有る程度の評価ができる。水分移動係数等も取得できたので,日常の範囲での物性評価には十分使える。ひずみの温度依存性,水分移動係数の温度依存性については,早急の論文化が必要。タイミングをみて,黄表紙。英文化が課題だな。

・高炉の水分移動特性とひずみ,脱着線の関係がひとそろい出そろった。これも時間がとれ次第論文化しなくては。セメント・コンクリートに投稿。セメント協会の奨励金をいただいているので。

・ミニチュア拘束試験は,小さいがゆえに暴れるという特性があってあまりうまくいってないが,それなりに収束の方向。やはり,どんな実験にもノウハウがある。高炉のデータがそろえばJCIには投稿したい。うまくいくか,すこしハラハラ。

・引張クリープ試験について,接着剤の選定は終わった。縦歪みはうまくとれるような予備実験結果。ただ,ポアソンクリープがうまくとれていない。ゲージの接着が難しい。これも卒論だけれども,うまくいくことをのぞむ。

・超音波試験装置では,新しい知見がぞくぞく出ている。コストパフォーマンスの高い装置だ。試験装置には,こうした本当に基本的で応用の幅が広い装置があるが,見極めるのは結構難しい。温度履歴を与えて線膨張と全歪みを測定できる装置を自作したが,これは名大に来てはじめのヒット装置だった。論文が多数出せているし,新しい知見も多々でてくる。当初は,応用性に気づかず,こういう装置は絶対必要と思って超高強度用に開発しただけだったが,実はこういったデータは丁寧にだされた経緯がなかったので,取ったデータはどれも論文化できるということに気づいた。
超音波も同様で,特に縦波・横波をそろえたのが良かった。最近のヒットは骨材の体積弾性率がサンプルが小さくても出せるということ。収縮と体積弾性率の関係について,実験を開始。ペーストでやっていたことを骨材にも適用することができるので,これでやってみる。ひずみ測定には岩石屋さんやゲージメーカーのアドバイスで工夫を行って,これもうまくいくと新しい理論体系について検討ができると思われる。

実はこれのまったく逆がTSTMだ。TSTMでとれるデータというのは,基礎実験と実部材の中間に位置しており,加工が難しい。理想状態の拘束試験であるので,貴重なデータには違いが無いのだが,逆にメカニズム解明につなげるには,相当の戦略が必要で論文の多産にはつながらない。(多産がよいかどうかは別。)
また,得られたデータを解釈するためには,別の実験がいくつか必要になることが多いということを経験的に学んだ。

私は,もっとも多くのTSTMに関わっていると思う。デルフトのものはサーボジャッキ型,東大のものはネジ回転式(万能試験機型),広大のはサーボジャッキ型だが凡高圧さんに入ってもらったので,もっとも精度が高く安定している。実は名大にも最近,鹿島建設から土木の国枝先生の方に移設が行われつつあって,TSTMの整備が進んでいる。なんというか,私が行くところにはTSTMが必ずあるという状況が生まれている。
一長一短あるが,サーボ型はプログラミングとジャッキの微調整が難しく,技官がついていないと大学での管理は難しいだろう。信号のノイズの問題もあるし,安定性として怖いところがある。広大のものはその辺うまくいっていて,かなり安定的にデータはでるのだが。(最近つかっているのかな?)
いろいろ回ってきて,東大(建築)形式のものは,すげー高かったけど安定性では良かったと思う。ジグについては,さんざん議論したし,ひずみ測定だけでも5年かかったけど,結果として載荷装置の安定性は,温度の問題さえクリアすれば良い装置だったと今は思う。


・セメント硬化体の体積弾性率の含水率依存性(相対湿度依存性)のデータは,Setzer先生とWittmann先生,日本では岡島先生が示しているものが有名。その他はあまり知らない。このデータを超音波で評価しようと考えている。

・その他,Spring-8系を含めてとっておきのネタがありますが,これはセメギに発表しようと準備中。できたらよいなあ。


ところで,私は,研究のコストパフォーマンスは400万/黄表紙1本を目安に研究計画を立てている。予算申請もそれくらいを目途にしている。これには,異論も有ると思うし,建築材料にそんなお金をかけるの,という意見もあるかもしれない。
ただ,工学的に利用するという目的で内挿可能な実験データをパラメータを振って取るというのであれば100万程度でも可能かもしれないが,何がどうなっているのかを実験的に証明し,根本的な原理原則からさまざまな問題を解決するには,これくらいの価格はどうしてもかかる,というのが持論である。
実質的には,ペーストの研究などはこれよりも価格は相当やすくで,300万/本くらいだろう。試験機を自作すると少し高くなる。厳しいのは水和関連で,セメント化学的なアプローチをとると試験機を購入するなり,測定を外注する必要があって価格が高くなり,かつ,水和は時系列的なパラメータが増えるので価格が高くなる。
ペーストの収縮についても,9割のメカニズムはわかったけれど,これを分子・原子レベルで話を展開していって予測を100%にするには,(最近,そういうことをしているが)極端に値段が跳ね上がる。おそらく,2年後くらいに公開される論文は,600万/1本くらいのパフォーマンスになると思う。というかその程度でおさまってくれないと個人的にはきつい。

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