5/31/2007

セメント技術大会の質疑応答に関して

前略 N先生
5月30日に行いました,セメント技術大会における質疑応答に関して,説明が不十分と思いましたので,以下に私の見解を申し上げます。率直な意見交換ができることに大変感謝しております。


姉歯の件ですが,姉歯の問題は結局いかに素晴らしい設計手法があったとしても,悪意のある人間の設計を防ぐことはできない,ということだと思います。施主,あるいは設計者に悪意があれば,どんな法律,管理も通じないのではないでしょうか。結局,経済行為の主体者が責任を取るという原理原則を達成するために,厳罰を持って処するということしか無いと考えています。
そもそも,悪意をもってマンションを立てるなどはテロ行為にも匹敵する社会悪であるはずです。

結局,解析のパラメータが多い,少ないということと設計利用者が悪用するということは必ずしもリンクしないのではないか,というのが一つめの回答です。

二つめの話ですが,解析というのは現象を表現するために必要十分なパラメータは必要だと思います。せっかく詳細な化学分析ができるようになったとしても,その結果を反映できないのでは,分析技術が生きてきません。水和率が1つから4つ(各鉱物)になることが悪いことでしょうか?

パラメータは必要十分であるべきで,減らせという議論は少しおかしいように思います。そもそも,パラメータを減らして感度の悪いパラメータを削っていけば,従来の実験式にならざるを得ません。これでは,外挿のできない使い勝手の悪い仕様手法に沿った解析になってしまいます。これは,333委員会の趣旨にも添わないと思います。

マスコンのひび割れ発生確率の図も,かなり様々な点で一種の悪用がなされております。私の議論は,そもそもひび割れ発生確率は解析条件が与えられたCP法にしか利用できない,ということを十分勉強せずに利用する人間が悪いという論法です。もちろん,土木学会としては,それらが適切に運営されて初めて良いものができる,ということは喧伝していくことが重要だと思います。

三つめ強度の話ですが,強度が含水率で変化するのは当然ですがそれをもって強度で論ずるのは問題,というのもまた問題と思います。
私の個人的な見解ではありますが,やはり,設計者,利用者の方には強度をもって説明するというのがインパクトがあると思います。誤解を生じかねない点は今後の課題と思いますが,彼らに空隙率がいくつとか,C/S比がいくつといっても,それがどうなのかということはわからないと思います。水和率でさえ,わかってもらえないでしょう。

耐久性を考慮する上で,指針の中に空隙率や水和率を指標とした設計手法が入ってくるというのは将来の方向性として十分ありえることだとは思いますが。

私の発表の中において,モデルとして強度推定の不確かさを論じていないという点は,大いに問題のある発表だったと思っております。


以上です。

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