4/29/2015

近況

研究近況。

1)今年度は,国プロの責任的な奴が2?,下につくのが3です。その他に,メーカーさんとの研究が5,ゼネコンさんとの研究が3,科研の基盤Bが2,海外基盤研究が1,萌芽が1,という状況。ちょっと多いです。今年度,ケリをつけないといけないのが2,あります。

2)収縮低減剤のメカニズムについては,セメギで速報的なものを出しましたが,従来のメカニズム以外で,今後,なにを研究しなくてはいけないかが明確になりました。とりあえず,ここまでの成果については,国内と国外の友人と議論して,CCRに投稿しました。今後,この研究については,フランス側のチームと一緒に研究することになりそうです。

3)収縮の小さい石灰石を用いた時に,拘束下のコンクリートでなにゆえ,可視的なひび割れの発生が抑制されるかについて,実験と解析の両面から,示すことができました。こちらについても,Native Checkを受けていて,出来上がり次第投稿しようと考えています。今後は,やっぱり,遷移帯の研究ですね。施工と材料性能の関係,今一度,整理していきたいと思います。

4)1H-NMRについては,現在,ペースト,トバモライト,モンモリロナイト,Vycorグラス,などをさまざまに調湿して測定を実施しています。T2緩和時間の挙動を比較していますが,おおよそ,シグナルに帰属やその状態がなにかが理解できるようになりました。なぜか,セメント分野では,緩和時間のダイレクトデータが示されている文献が少なくて,その上,CONTINの結果も横軸がログスケールだったりしているので,わからないことが多いです。McDonald博士らのチームの研究でも,いくつか,微妙,というかこのデータになっているはずだけど,こんな結論だせるのかな,と思います。
一例をいえば,Portlanditeは極性が大きすぎるので,きれいな減衰カーブになりません。そのため,十分水和した普通や早強のペーストで,乾燥を大きくしていくと,減衰カーブに極性の影響のカーブが重畳して,適切な処理ができない場合があります。こういったことがあまり記載されていないのは,フェアじゃないんじゃないかと思います。Portlanditeの研究は,案外,世の中のセメント化学の研究者がフォーカスしていないのですが,最近,非常にいろんな物性に聞いてくることがわかりました。Portlandite大事だよ,ってメールしたら論文が帰ってきて,Portlanditeのさまざまな結晶成長について,すでにモデリングとメカニズムの解明が終わっている,ということを教えてもらいました。いやあ,さすがです。フランス。目の付け所も本当に素晴らしい。私が勉強不足,というのもあると思うんですが。

5)SAXSは,大分,整理できてきましたが,広角側のピークが何に帰属しているかというのがわからない部分があります。よくよく見てみると,USAX,SAXS,WSAXSをちゃんと連結してワイドレンジで帰属を評価している論文は,Allenらも含めてありません。超小角でPortlanditeの最小結晶寸法との比較を議論しているところまではよいのですが・・・。なんか,Artifactの結果があるような気がします。この点をちゃんと書ききらないと論文投稿には辿り着かないのですが,5月中にはこの辺りをきっちり書いていけたら,と思います。結構小さいサイズのなにかが存在するんですよね。

6)今年度は少し構造部材性能まで踏み込んだ研究について,力を入れていこうと考えています。科研のテーマも,乾燥と構造体影響ですし,ASR関係の進展評価と部材性能の関係も興味深いです。規制庁事業で関わっていることもあり,このあたりを整理していこうと考えています。
解析については,少しFEMから離れて,RBSMを頑張っていこうと思います。









4/19/2015

客観性について

研究室にも留学生が増えてきました。名大自体の留学生が増えているので,ある意味当然の流れだと思います。AIIBの問題や領土問題を始めとして,日々ニュースに出てきますが,日本のメディアの偏向報道はひどいので,CNNやBBCやその他のニュース(それだって偏ってて,トーンはいつも同じなんだけど)を少しだけかじって,スタンスの補正をしています。留学生は,日本で勉強してみたいと思ってくれている大事な人ですから,偏向報道に基づいて変なトラブルがおきてはいけないと強く思います。
日本の報道ばかりを当然と思っていると,知らずに相手の気分を害したり,世界的な常識から外れることも増えてきます。地下鉄の中吊りに,隣国の悪口を平気で書く国はまともな国と言えるでしょうか。
たとえば,日本語のわかる米国の友人を東京で案内して,電車にのったらものすごく恥ずかしく思います。
個人的に思うことと,世間的に思うことはもう少し,わけてかんがえられないのか,とも思います。

視点を多重化するために,あるいは,日本の立場,相手の立場を理解するためにも理解になりそうなのが,以下の本です。

日本史の誕生―千三百年前の外圧が日本を作った (ちくま文庫) 文庫
岡田 英弘

橘玲の中国私論 ダイヤモンド社
橘 玲

前者は,以前にも紹介したことがあると思いますが,日本史を学ぶにしても,アジア史全体で理解しなくてはいけない,ということが大変によく分かる本です。日本史が日本という領土の中だけで閉じてよいわけがなく,そもそもどういった事情で日本が誕生したのかもまで,掘り下げて記載されている良書です。非常の科学的にかかれていて納得できるものです。

後者は,最近出版されたものですが,中国に行ってきた多くの研究者が,あのゴーストタウンの量は半端ではなく,あれで良いわけがないという感想を聞かせてくれます。また,投資関係の知り合いは,中国のバブルは崩壊間近という議論とそうではないかもしれない,という議論で二分しています。どんなものか想像もできなかったし,それがどういった状況にあるのか,といことについて事実とともにわかる本がないかと思っていた時に出てきた本でした。(こういうように世界の状況が日本語で手に入る国,というのは本当に素晴らしい。)
結果として,ゴーストタウンのもとにまで戻って,中国の状況を非常に具体的に記載してくれているのがこの本です。歴史書とならべてなんなんだ,とも思われるかもしれませんが,この本のわかりやすさは,群を抜いています。当然,端折ることの怖さを横に置くべきとは思いますが,ずいぶんと私は目が開かされました。

4/17/2015

英語

最近,とみに英語を使う場面が増えてきているのだけれども,ブロークンでなんとかなっているものの,コミュニケーションがあんまりだとも自分で理解しているので,てこ入れすることにしました。

三省堂に行ってみてわかりましたが,諸外国の教育プログラム用の教科書も,かなり,充実していて,日本語に翻訳されているものも増えていました。オランダに行ったときにトレーニング用に推薦されたOxwordの教科書をはじめとして,結構,当時は先進的だなというものもたくさん並んでいました。

昔,駿台の英文700選というのがあって,1週間くらいで盲腸の入院中に暗記したことがありましたが,結局,暗記だけだと暗記にとらわれてあまり使えなかった覚えがあります。私の学習履歴は極めてシンプルで,今思い出すと貧相なことしかしていなかったですし,本当に勉強というものがどういうものかがわかったのは,高校3年生の1月以降で,それまではなにをやるべきなのかの本筋がわかっていませんでした。

で,英語の話にもどすと,中学3年生レベルの1行英作文でも,瞬間に出てくれば十分会話は成り立つんですよね。難しい熟語とか変な言い回しはほとんど必要無くて。あとは,単語数の問題ですから。
そういうわけで,日本の中学3年生,あちらの小学レベルの単文を瞬間的に英訳することをやりたいな,と思って本屋にいったら,そういうものが米国の教科書としても,日本の学習書としてもたくさんあるのでびっくりしました。結局,そういうことが重要だと言うことになっているんでしょう。
というわけで,面白そうなのを数冊買って,朝か夜寝る前に数ページ,音読して英作文をするっていうまるで高校生のような生活を初めて見ました。ジョギングと英語,健康的です。

Theイングリッシュ300 っていうのは良さそうです。


一方,英語論文の執筆については,相変わらず,冠詞がネイティブチェックではひっかかっているし,決めの言い回しは難しいし,ということで良質な英文をゆっくり読みたいな,と思って本屋の棚をみてあるいたんですが,決め手に欠きました。よく考えたら東大の時の教養の教科書が,なんか良さそうだったな,ということを思い出しました。結構,印象深かったので家にも残していたのですが,やっぱり,格調高い英語がならんでいましたので,これをもう一度,ゆっくり読もう,ということにしました。

良質な教科書を作る,というのは教える側に立つと重要なことがよくわかります。学習する側も自分の癖とか習慣を理解した上で,自分向けの形に作り込む必要があるわけなので,万人向け,っていうのは無いのかもしれません。
でも,模範となるなにかを示す,というそういった教科書は,最近少し減っちゃいましたね。誰にでもわかる,とか,わかりやすい,とか。
確かに,私の記憶にも線形代数のカーネルの意義だとか,全微分と偏微分の違いだとか,理解した後に,もっと簡単に説明してくれたらよかったのに,というものがたくさんあったように思います。でも,そればっかりでよいか,というのもちょっと違うかなとも思ってきました。

簡単なことをあえて難しく言う必要はありませんが,正しいことをより厳密に伝えたかったんだろう,ということも今ではわかります。私は,そんなにきちっとした正確ではないですし,数式も使えればよい,とくらいに考えて取り組んでいることが多いので,厳密な話は正直いって苦手なんですが,でも,それはそれで,模範という意味ではやっぱり大事なんだろう,と思います。

こういうのって,本当にしばらく考えたりしなかったんですよ。頭がすごく小さい領域にいたような気がします。