11/24/2013

コンクリートの健全性評価について

もはや,11月です。これから駆け足で,いろいろなことが進んでいきます。

11月8日は,あるプロジェクトの総括検討会でした。コンクリートに関わる問題では,原発の40年運転延長におけるコンクリート構造物の評価が話題になりました。コンクリート構造物は,取り替え不可能なものであるので,徹底的に健全性を評価しなくてはいけないというスタンスを規制庁は打ち出しましたが,その手法があらゆる箇所からコア抜きをするというものになっています。





規制庁の心意気は理解できるところですが,建築構造,あるいは建築全体からするとこの点は少し疑問がでます。一般構造物の耐震性能を評価する耐震診断であっても,材料強度や劣化具合を評価する場合に,コア抜きをして評価しますが,この点には細心の注意が払われています。すなわち,常時荷重が生じている場所,構造耐力上重要な耐力を発揮すべき場所からコア抜きはしません。これは,長期の変形の不斉合成があらたなる不静定応力を生じさせてしいまうことがあること,地震時にコア抜き箇所における力の流れの不連続性に起因した予期しないひび割れ,その後の耐力変化などが生じうるからです。それ以外にも,コア抜き箇所を埋め戻したとしても,その界面は劣化上問題になりますので,極力コア数を減らし,建物のダメージを回避する必要があります。

つまり,コア抜きをして,それまでの建物の健全性を評価するだけでなく,その後も利用することを考えるのであれば,コア抜き後にも健全性が引き続き担保される手法とセットでなければ,非回復損傷を生じさせる手段であるコア抜きというのは,極力回避すべき手法である,という位置づけです。

原子力関連建物に期待される機能は,耐震性だけではないので,この点からもコア抜き一辺倒というのが疑問です。この点,業界の関係者は深い憂慮を示しています。
いくつかの委員会や意見交換会では,この点が問題として呈されており,規制庁の活断層問題のように社会問題にならないかどうかを懸念しています。

私が可能性として恐れているのは,本件に建築材料研究者が関与していたら大変だな,というものです。建築材料をやっている人のうち,いくつかの方は細分化された中で仕事をしすぎていて,建築の全体像から乖離していることが指摘されています。もし,この件に業界の方が関与されているとなると,業界としても責任を持つ必要が生じます。構造実験をしたことがある人であれば,コア抜きの怖さは十分わかるはずですが,最近は,コアを抜いたとしても,構造的観点からの位置づけを理解せずに,細かい分析だけして楽しんでいる方(少し言いすぎかな?)がいるということも,耳にしますので,その点からもその可能性があると懸念している次第です。

建築材料は,構造,環境・設備,意匠すべてにつながる学問ですが,それ故に出口との整合性を常に考える必要があり,それ故,構造でも環境・設備でも,最先端研究に触れておくことが必要です。また,基礎的な部分については十分な知見が必要です。こうした努力が本当に現在のアカデミアでなされているか,という点は私は十分ではないのかと思い当たる点が多々有ります。
私がそれをできているかというと,それまた疑問なところもありますが,そのマインドを佐藤良一先生にならい,勅使川原先生にご指導いただいた点は大きな糧ではなかったかと思っております。


なお,11月22日はISaGが行われ,そこでINLの方が基調講演をされましたが,その中では,アメリカのNRCでも60年超運転認可の際には,コンクリートとケーブルを新たな課題として位置づけているという話をされました。Predictive modelを信用しないといいつつ,Aging managementとPlant life managementを行うというのは,主旨が理解できませんでしたが,実際の評価を重視する姿勢というのは規制庁と通ずるものがあります。その点からもこれらの件をうまく紐解くことが求められていると感じる次第です。私のプロジェクトの中でも,また関連する部分においても,このあたりについて活発な意見をしていきたいと思います。

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