9/16/2010

AIJ大会 質疑補足

AIJ大会の最終日、丸山セッションと揶揄されるセッションがありました。私は参加できなかったのですが、うちの研究がなぜかそこに集約されていた・・・。

学生からあげられた質疑の結果に対して、私がコメントを追加しました。


○爆裂に関する研究

質問1 
実際のコンクリート部材にどのように応用していくか。
回答1
最終的には爆裂の解析モデルを構築することを目標としていす。
補足
今回の実験は、たとえばFEMの一要素の破壊基準に相当するものと考えており、水熱連成移動と爆裂のクライテリアから、部材中の爆裂挙動の予測ができないかどかを検討する予定。モデルとしては、空隙構造(我々の場合は水分吸着曲線)と水分移動、熱移動を考慮して、内部の化学ポテンシャルがある一定の状態になったときに破壊点が定まるというものになる。

質問2 
骨材を入れた場合、今回の実験結果がどのように変わると予想されるか。
回答2
現状確かな見解を持っておりませんので、今後の課題とさせていただきます。
補足
骨材周囲に損傷ができ、そこか水蒸気が逃げる場所になる。実際のコンクリート部材の場合には体積変化、力の釣り合い、ひび割れ-水分移動モデルの複合、という観点の考慮が必要である。
一方、爆裂は内部に水分が押し込まれる現象になるので、この損傷がどちらに重要なやくわりを果たすかは、今後、解析的に明らかになるものと思われる。


○ヤング率の含水率依存性について

質問1
引張強度はどのようになっているか。
回答1
引張強度には特に傾向が見られなかったため,今回の発表には載せませんでした。
圧縮では乾燥により強度が増加するという報告があります。
補足
今回の実験では、ユニバーサルジョイントを用いていても、破壊近傍の応力度では適切に引っ張ることができておらず、強度に多きなばらつきが見られ評価ができなかった。今後、曲げ試験を行い、評価を検討する予定である。
質問2
概念図はこれで正確か?本来の吸着水を表していないのではないか。
回答2
あくまで簡略化したものなのでこのような図としました。今後検討したいと思います。

質問3
セメント硬化体でこのようにヤング率が変化したのは引張特有のものか。圧縮ではどうなるのか。
回答3
コンクリートでは圧縮でもヤング率は低下する傾向となっています。またSeredaらのデータでも高湿度領域ではヤング率は低下する傾向が出ています。
補足
コンクリートの場合は、骨材周囲の損傷(ペーストの乾燥収縮による)が原因と考えられ、さらにヤング率の低下が認められる。


○モルタル用温度応力型枠に関する研究
質問1
試験体は、それぞれのセメントに対して1本ずつしかないのか?
回答1
それぞれのパラメータに対して試験体が2つずつあり、示したデータは2本の試験体の平均を用いている。

質問2
結局、この研究の目玉は、高炉セメントの品質を比較して、それぞれ異なると言うことが判明した、と言うことで良いか?

回答2
研究の根本的な目的としては、セメント品質を簡易評価可能な拘束型枠(拘束試験法)を提案した、と言うことになる。その上で、今回の実験では、市販とサンプル品の高炉セメントの品質を相互比較している。
補足
今回の結果は、そういうことを示している。判明というべきかどうかはわからないが、JISのセメント規格内でも相当のばらつきがあるということは、知る人にとっては認識されていた問題であると思う。高炉の混和率の違いはB種といってもかなり大きな違いが以前はあったという報告もある。
本試験はスクリーニングとか、ひび割れしにくいセメントというの簡易にチェックするような目的で開発したもので、研究の目玉としては、あくまでもそういう手法を提案したという点にあると考えている。


○セメント硬化体の水和反応と各種物性との関係に関する研究

質問1:
C-S-Hの封緘状態の結合水量は4.0ではなく2.0とした理由
回答1:
11%RH以上の結合水は水の体積と同様に扱われることが多いため,11%RHと同じ値を用い,C-S-Hに弱い拘束を受けているものの,ふるまいとしては,C-S-Hではなく,自由水として取り扱っている。
補足:
異論はあるとおもうが、これより大きな水はかなり用意に脱水し、自由水との区分は明確ではない。そのため、暫定的に11%をクライテリアとして用いている。ヒステリシスの性状や乾燥プロセス中の比表面積の研究などを追加していけば、今後あきらかになるものと考えられる。

質問2:
強度や剛性の評価として,ゲル/スペース比ではなくセメントの水和率では評価できないのですか?

回答2:
今回の検討におけるパラメータの範囲では,おおむね評価できるものと考えられますが,
今後,様々な鉱物組成のセメントで統一的な評価をする際には,セメント硬化体中の相組成に基づいたゲル/スペース比で評価を行ったほうが適当と考えております。
補足
水セメント比の違いは乗り越えられない。温度履歴の違いはおそらく無視できると考えられるが、水セメント比の違いは水和率ではうまくいかない。あくまでも単位空間あたりの水和物量という指標が重要であるという認識。ヤング率は、相組成でも評価できないという点は興味深い。他の研究者で評価できるとしているものもあるが、なぜ、うまく評価できているかに注目している。

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