8/18/2010

近況

・新素材開発の依頼がもう一件きた。セラミック系のものよりもさらにビッグプロジェクトになりそう。さすがにこのプロジェクトは,当研究室だけでやるものではないものと判断して,周りの方々に協力をお願いしようと考えている。私が基礎研究よりのことをここ5年くらいやっていたせいもあるのかもしれないが,建設業をはずれると材料開発のスピードというか,その要求はめちゃくちゃ高いですね。私は,ちょっと耐用年数とかそういった点でどうも慎重に考えてしまうきらいがあります。


・盆で実家に帰ったら,子供の時につかっていたベニヤ板の層が崩壊していた。集成材の耐久性というのはどんなものなんだろうか。最近,木が環境関連で着目されていて,集成材による高層とか大空間などがもてはやされているが,接着剤というのはどういう位置づけで議論されているのか気になった。ちょっと一回しらべてみるか。建築というのは,結局,材料とかではなくて,おさまり,ディテールの研究なんだよな。鉄筋コンクリートだって,結局,付着・定着の話になってしまうわけだし。コンクリート自体だって,結局,界面がものごとを律速している。
木材こそ,ジョイントと接着面の集合体だろう。

・細田先生のブログにあったように,新潟方面で講演をさせていただきに出張しました。いやあ,無機材料はおもしろいですね。やっぱり。

・査読がたまりまくり。里帰りの新幹線で,とおもっていたが終わらなかった。時々苦言をここに書いているけど,参考文献などは,適切に引用していないというだけで,本当に落とされるんだということをわかってもらった方がよいかなあ,という論文が2本ほどきている。
恣意的に引用していないことが見て取れるので問題。

・ASCOTで座談会を行った。50年後の話を議論するわけだけど・・・。私がぼんやり考えたことは,以下のとおり。
経産省が示したように2030年には,再生可能エネルギーの割合は10%くらいにはなっているだろう。この調子でいけば,再生利用エネルギーの割合は,50年後には半分くらいになるかもしれない。
そうなると,エネルギーを使うこととCO2排出量とは独立した問題になる。
コンクリート業界はCO2排出を嫌っているわけだけど,そのほとんどは脱炭の問題。
ところが,コンクリートの解体・粉砕もエネルギー的に大きいが,CO2の問題を別にすれば,大してハードルがなくなる。コストの問題だけになる。
コンクリートの微粉を焼成してクリンカを作れるようになれば,CO2はほとんど出てこないセメントができる。
また,資源的にはクローズドロープが完成するので,これはこれであるべき姿ではないか。


このことから,今,コンクリート業界,セメント業界がやらなくてはいけないことは:
・再生可能エネルギープラントを各工場で持つようにする。特にコンクリート構造体の解体,分解,破砕プロセスについて,また,クリンカを焼成,粉砕するプロセスについて。
・コンクリートガラからセメントを再生するための技術の確立。重金属,塩素,その他の問題。エコセメントができているので,ほとんど問題無いとは思うんだけど。
・一部は,低温焼成+副産物という方向もある。(吉兼さんの案)
・ガラを運搬・ストックするための場所の確保,流通に関する研究
・再生骨材に関連する諸処の耐久性に関する研究,品質評価に関する研究(構造的にはもはや解決ずみ。)
て感じではないかな。
・破壊時にコストをかけるというやり方は,啓蒙活動として正しいかもしれないが,経済活動はシュリンクする。マイナス方向への投資というのは,特に気が向かないものだ。ということは新築時にその分をとる方向にすべきだけど,値段はその分割高になる。でも,当たり前ですね。
良い建物を作るというところにお金をかけるか,完全に再生できるようにお金をかけるかの2択になるように方向をすすめれば,世の中よくなるんじゃないだろうか。(8月18日午後追記)

なお,恩師の完全リサイクルコンクリートは,逆に脱炭をしてしまうので,避けた方がよいかもしれない。
破砕・分解のエネルギーと焼成のエネルギー,CO2排出に関するコスト・影響,のバランスで決定すればよいかも。

なんにしても,再生エネルギープラントを業界的にも実用化するのだから,エネルギーをつかっても問題が無い世界がくることを前提として話をする研究もあって良いと思う。

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