10/07/2009

収縮メカニズム

・毛管凝縮理論にあるようなメニスカスによる収縮応力というのは確かに存在する。ALC等にみられるAdditionalな収縮については,たしかにそれが適用可能だと思う。

・一方,吸着水に生じている表面からの力の影響をうける収縮駆動力というのは,別に評価されるべき,というのが私の見解である。

・毛管凝縮理論で収縮低減剤の影響については,表面張力の低下によってケルビン半径が低下し,結果として,同一の化学ポテンシャルであっても,作用面積が小さくなるからモデル化としては成功している,という意見がある。しかし,これに関する反論は,収縮低減剤自体,すべての表面張力が低下する物質で収縮低減が見込めていない,という実験的事実が存在することである。

また,接触角の変化で表現すればよいという考えもあるが,これに関する反論は,1.毛管内で液状水が存在するかぎりにおいて,接触角は凸には成り得ない。2.毛管中の平衡を仮定しているのであれば,かならずある量の吸着水が存在し,接触角は,この吸着層からの接触角になる。これが変化するというのは,よっぽとの遠距離力であるが,これを薬で作用できるといのは無理があるのではないかと考えられる点。3.一般の接触角の式(Young式等)は,必ずしも平衡系を議論の対象としていない。動的な状態,たとえば,葉っぱの上の水滴を議論をしているが,この系は,局所平衡にも達していない力の釣合式である。平衡状態になったとき,すなわち周囲の湿度が平衡に達し,表面の上に平均的に吸着層が形成されれば,当然,接触角は水の上のものに近づく,というのが私見である。


なお,余談になるが,ミクロ孔ではケルビン半径が表面からの力を受けて,理想的な値からドリフトすることが分子動力学の知見から知られていた。それを実験的に確認し,工学的に付加的な親水性表面エネルギーを評価する手法を宮原ら(2000,Langmuir 16 4293-4299)が提案している。1桁ナノ系の議論が支配的なセメント硬化体については,こうした影響についても評価したほうが良いと考えられる。これは,今後の収縮等の内部平衡状態に関する一つの方向になると思う。

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