土曜日は,連休ではあったのだが,日程調整ができなかった共同研究プロジェクトの打ち合わせ。新しい外装材を開発するということで,模擬生産ラインのお披露目会と,今後の課題検討会があった。
生産ラインの方では,歩留まりの問題が出てきており,コストに反映されてしまうので,そのあたりが今後の課題。これ,結構重要な問題です。
開発研究をやっていくと,いろいろ個別要素で突き詰めたい事項が出てくるので,脱線しがち。
しかも,技術課題がいろいろ明らかになっていくので,当初の契約とゴールが異なってくることがある。そのため,プロジェクトマネジャーとしては,開発企業側の経営側とかマネジャー側がどこで線を引くかということの交渉ごとを必ずミーティングに入れておかないといけない。
得てして(私も時としてそうなんだけれども,),現場の人間は技術論に走りがちでコストや商品性を無視して動いてしまう。経営者側は,少なくとも,プレスリリースや実際のコスト,今後の市場化の見通しの上でしか,技術課題を見ていない。今やっていることが何に反映されているかという整理は,現場の人間にとっても必要。ゴールが見失われたプロジェクトほど徒労感の多いモノは無い。
時として技術課題が製品の信頼製に直結する場合もあるので,現場の意見を無視することも問題なんだけれどもね。
予算の中で,どこを落としていくかについては,常に気を遣う。こちらとしては,名古屋大学ブランドを利用させてもらっているので,それに傷をつけるわけにもいかないし。
何とか年度末のプレスリリースでは,皆様をちょっとおお,とおもわせたいな,と思ってる。難しいかな。
以前,商品開発の技術コンサルティングをした,道路用補修材は非常に好評なようで,今はNEXCO中日本でも採用されているらしい。(共同研究契約の形をとっていないのと,ライセンスの問題で技術資料やパンフレットには名古屋大学の名前は外してもらっている。)この時代にもかかわらず,売り上げが順調らしくて,小さな会社だったせいもあるかとは思うけれども,現場開発者の方が役員になっていて驚いた。私としては,少し誇らしい。
この成功は,会社自体がちゃんと人を送り出して,実験を自前でやろうとしたところにある。小さい会社が,数百ケースの練り混ぜを整理して,ノウハウを取得したということは,実に重要なことだ。私は反応に何が必要で,粒度はこういった性能に反映するという基本的なコンセプトを提案したのと,性能評価としてこういったことが重要であるという,ごく一般的な点をわかりやすく説明して,アドバイスしただけだ。でも,これを数十と繰り返せば,やはり,ノウハウとか独自の技術力が芽生えてくる。
教育と一緒と思うのだが,最近,こういうのをすっ飛ばして,研究やりたがる人・企業が多い。大学や銀行経由でいろいろ相談を受けるのだけれど,こういった事例を持ち出して説明しても,全く理解できない人も結構多くて,驚く。世の中,そんなにうまい話はないんだけれども。
成功の秘訣なんて,成功するまで考えて考えて考えて,ただ,ひたすら続けるだけなんですけどね・・・。
日曜日は,修了生の岸くんが大学に戻ってきてくれた。たった数ヶ月ではあるが,社会人になったあとも,私の教育の意図が強くつたわっているようで非常にうれしく思った。彼は,最近,建築学会の優秀修士論文賞にも選抜された。最近発表している,水和圧・収縮理論の研究や,熱伝導率,水分移動に関する今後の研究発表は,彼の精緻な実験に基づくところが大きい。彼は,最終的に2000強の試験体を管理していた。これは,なかなか超えられないのではないか。
最初は,打設から3ヶ月たってやり直しになることが数回あり,本当にふてくされている時期もあったのだが,粘り強くよく頑張り,こういった成果に結びつけた。
彼との出会いは,私にとっても,彼にとっても,非常に幸運なものだったと私は思う。
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