8月って通常は院試だけがんばれば,わりと頭の整理ができる時間だったのに,最近はいろんな入試が増えていたり,オープンキャンパスとか,スーパーサイエンスハイスクールだったりとか,テクノサイエンスセミナだったりとか,名前と内容がよくわからないイベントがもりだくさんです。役割分担数が数として平等なので小さいFacultyからどんどん疲弊していっています。そして,役割がまわってくる若手が見るも無惨に研究ができていなくて,これまた,将来本当に大丈夫なんだろうか,っていう事例が多く見られる。
毎年,大学に文部科学省から払われる基盤的経費(運営費交付金という)についても,確実に2%とか3%減額されている(そもそもそういう約束だった。根拠は人口動態に対応しているんだと思う。)のだが,一方で,いろいろやってほしいことがたくさんあるらしくて,押しつけのイベントがすっごく多い。別に断れば良いんだと思うんだけど,教員と事務と執行部で考えていることはそれぞれちがっているので,かならずしも断れるものでもないみたい。
大学として,この衰退期に必要な方向性とか,縮退/発展のあり方とか,ルールの簡素化,個人個人の能力の引き出し方を議論して,文部科学省にはこういう方向でやります,っていいきれればそれはそれでよいんだし,能力を活かして好きなことをやりつつ成果を出すような形を描いていければよいんだけど,鶏と卵のどっちかっていうのは別として,一回受け入れてそれに対応しようとすると,その後の時間を捻出できなくて,ずっと後出しで負け続けるという負の連鎖がとまらない大学が多数あります。名大も一部はそういうところあるかな。
最近の事例でいくと,人事凍結っていうことで,建築系・土木系で人事が大学として留められている場所がかなり増えている。東海圏で有名な大学も,新潟の雄も,国公立大学で経理の運営をミスると本当にすごいことがおきるというのが実例として起きてしまっている。
そういう意味では,うまくいっている大学は定員を開けて運用することを行って,運営費交付金の減額と人員のバランスをとる計画を立てて運用しており,その点では名大は事務がしっかりしていてうまくいっているように見受けられる。
一応,日本の叡智を結集しているはずの小さな社会である大学でこのありさまなので,ダイバーシティが非常に大きいところで,日本はどうするかっていうのは本当に難しい問題なんだな,と思う。
もちろん,この混乱には世代間の危機意識の差が大きい。いままでの歴史の成功例をかたくなに守ろうという(そしてそれは当然今後には役立たない。)成功体験を抱えて大学を去ろうとしている年代とその下の危機意識の共有状況は大きく異なる。
もっとも雑用に追われている中堅どころ,というのは池井戸潤の言う,ロスジェネに相当していて,まだ,多くは教授職じゃないだろう。まわりではその世代の教授昇任がかなり増えているけれども。で,教授職でない場合には人事権も無い状態が一般的で,組織を変える根幹である人事権が無い状態で意見だけをいっても,その組織は空回りになってしまうだけなわけで。
権利と責任が一体になってこそ,そこに人材がいれば,社会が回転し始めるというわけですが,権利は確保して,責任は君ねとか,やることやっておいてね,というのがそこかしこで,(先の公益社団法人における委員会でも)みられるわけで,これはちょっとしんどいよなあと思われます。
一番つらいのは,当事者は全然そういう問題意識をもっていなくて,自分たちもそうだったからそうしているっていうだけで,人としては寧ろ良識的な人も,そういう問題点を無意識につくってしまっている,というところだろう。
もう,5年くらいすると主役が大分がらっとかわるんで,そのときにしがらみを切ろうかなっておもう,我々のまわりの世代がどの程度のこっているかっていうところが面白いんじゃ無いかと思います。
まあ,それで,日帰りで名古屋にもどってこざるをえなくて,一日中,高校生向けイベントのスケジュールを1から点検っていう,なんとももの悲しい日曜日を送っているわけです。でも,まあ,私の場合,まだ恵まれている方です。他の大学の方々と比較すると。
池井戸潤っていうのも世代間の違いとか,怒りとか,よくわってんなあ,と。スターウォーズのエピソードIIIもその辺と絡んでいて共感できる。
こんな晴れた日に昼から,屋外で飲めたら楽しいだろうになぁ・・・。
8/07/2016
東京往復
本日は、車で東京に行きました。新東名が延伸して、ほとんどを新東名で走りましたが、これはすごい。所要時間が1時間ほど短縮してます。経路も短くなっているし、車線幅員も大きいのでストレスが少ない。
自分の車、とくに車体の剛性とタイヤの調子がいまいちなので、うるさくなってしまってストレスが大きいけど、運転に関するストレスは格段に減ってる。
東名に入った時のがっかり具合がすごい。こんな狭い道ではしらせるなんて。。。という気分になる。
住宅もそうなんですが、もう少しゆとりあるように作ると、維持管理もし易いし、したくもなるし、資産価値もキープできるんですよね。
今ある状況にピッタリなものをつくっちゃうと、後が大変ってことです。先も含めてゆとりあるものをつくっておくと、ちょっとのコストで結構、大きな利幅になる。
みんなわかっているのに、銀行とか、財務省とか、わかってくれなくて世の中が少しずつゆがんでしまう。
小さなボタンの掛け違いで、すっごく世の中全体が損している部分が結構あって、もったいないなと思う。
で,最終で名古屋に私だけ帰ってくるのはものすごく寂しいです。
自分の車、とくに車体の剛性とタイヤの調子がいまいちなので、うるさくなってしまってストレスが大きいけど、運転に関するストレスは格段に減ってる。
東名に入った時のがっかり具合がすごい。こんな狭い道ではしらせるなんて。。。という気分になる。
住宅もそうなんですが、もう少しゆとりあるように作ると、維持管理もし易いし、したくもなるし、資産価値もキープできるんですよね。
今ある状況にピッタリなものをつくっちゃうと、後が大変ってことです。先も含めてゆとりあるものをつくっておくと、ちょっとのコストで結構、大きな利幅になる。
みんなわかっているのに、銀行とか、財務省とか、わかってくれなくて世の中が少しずつゆがんでしまう。
小さなボタンの掛け違いで、すっごく世の中全体が損している部分が結構あって、もったいないなと思う。
で,最終で名古屋に私だけ帰ってくるのはものすごく寂しいです。
8/04/2016
お題:セメント化学的研究
気にするに決まってるじゃないですか。なんですかそれは・・・・。
ども。夏休みに入りました。世の中は。成績づけと雑用と雑用と雑用をやると、おそらく9月になります。あ、建築学会@博多を忘れてました。そんな感じです。
さて、光栄なことに某所から、土木建築業界に必要なセメント化学/材料科学的な研究をいかにもりあげるか、というお題をいただきました。普段からも考えているところでもあるんですが、なかなか一般の建築土木業界じゃ見向きもされないかな、というのが率直な感想です。
私は別に日本のセメント化学というローカル学問分野を保持することを目的に研究しているわけでもなく、必要だから、ということと自分で理解して納得したいからそういった系統の研究をしています。そもそも、今の私の研究の多くは、ある問題について私を頼ってくれたからそれに答えようとやっているというものばっかりで、自分のやりたい研究をやっているわけではありません。だから、これといって深い思想があるわけでもない。(原理はありますよ。研究原理。)
原子力業界は軍事業界と同じくリミットがありません。安全のために最善を尽くすべきであり、理解していないものについては大幅なマージンをのせなくてはなりません。だから、理解する、説明する、説得力があがる、そういったことにそれなりの予算がつきます。
私はそもそも原理原則にのっとってものを理解したいので、昔からちょっとは(研究については)細かい性格でしたけど、それが大事にされたのはこの業界に触れてからです。今の私のやっていることを普通の建築の人がみたら、なんでそんなことを、と思うに決まっています。だって、すでに法律があって、指針があって、建築が建ってて、時々地震でこわれるけど多くは問題なく建築はできているわけです。なにをいまさらやるんですかって言われても、ほうそうですか、としか答えられません。
工学っていうのは理解していないものでも、つくって人間の役に立てる学問です。線を引いて、安全率をとって、実用化していく。そこに責任が生じ、人による個性がでて、そしてお金が動く。
ルールが一般化・陳腐化して普遍化すると、利益率はヘリ、コモディティ化していく。普通の商品と同じです。そして、建築はほぼその領域になりつつある。
ただ、理解されていないことは多い。コンクリートなんて穴がいっぱいで水もいっぱい入っていて、それで強度がどうして出るのかよくわかっていない。でも、100年の歴史があって、設計ができる。学問的にはやることはあるけど、実業界からはなにも要求されない。社会が大学の先生を要求するのはJISをくぐるために同意をとったり、大量のデータをとって線を引くときだけ。そんな業界なわけです。
そんなところにセメント化学なんてこれっぽっちも必要とされていません。
業界は、材料会社はセメントが売れたらOK、施工会社は瑕疵保証期間を切り抜けたらOK、設計者・監理者は文句がいわれないように作れたらOK,それでお金が動き、消費されていく。
これはね、なにもないですよ。
たとえば、ここにそういったニーズを掘り起こすなら業界の責任体系とお金の発生する場所を変化させるしかない。あるいは顧客に対する信頼というものをなんらか制度化していくしかない。
土木で考えれば、100年もったかどうかをかならずチェックしてそれが会社の成績になっていくようなしくみを制度化すれば、みな、施工ばっかりじゃなくて、耐久性もちゃんと考えるでしょう。
でも、そのためにグローバル経済における私企業の位置づけ,はなかなかに大変。すぐに会社はつぶれちゃう。合法的に。そして責任も解消される。
以前に姉歯事件のときにも、談合の問題を記載したときにも書きましたが、建築・土木っていうのは使うお金が大きすぎる。だから、一回の利益で会社をつぶしてしまっても、なんとかなる場合がある。大きなお金と責任を社会制度としてどう実装するかはまだ資本主義として解決できていない問題。大銀行を潰せないのと同じ。大きなお金を借りるでも持っているでも、なんらか責任を関与するともはやその人は殺せなくなる。理由は、影響がおおきくなりすぎるから。人に迷惑をかけるから、政府が介入してしまう。銀行のこの問題と同じ構造を建築・土木ももっている。この問題が解決できないかぎりは、責任とそれに伴うお金の議論ができない。
同じく,お金の動きとものの寿命が違い過ぎる。耐用年数100年の成果物の評価を対価にどうしても反映できない。もう,減価償却100年といいきれるなら,なんとかなるんだろうか。でも,住宅も30年でもそうなってないしな・・・。
価格が大きいこと,寿命および評価期間が長いこと,この二つと今の経済ルール,利益算出ルールがマッチしていない。
たとえば、土木インフラの社会性信頼の向上を目的としてゼネコンが材料メーカー(セメント会社)を買収する。設計と材料開発、維持管理を一気通貫で行い、ライフサイクルコストとCO2を格段に落として社会的信頼を構築することで、市場に優位に働こうという考えは、原理的にはありえなくはない。
特に過当競争の今ならそういう市場再編とともに政治家を動かせば、ある種、面白いことができる可能性は高い。だけど、この付加価値を正当に評価できるほど社会が成熟してない、と思う。そもそも財務省がついていかないし、一般消費者も理解できない。残念ながら。
なので、セメント化学は今の市場原理を前提とすると根付かない。
というのが今日までの整理。この次の一手について、AIJ大会くらいまでに1,2回は考える時間があるだろう。頭の体操。
8/01/2016
中間報告
今日は、規制庁の受託研究の中間報告でした。
朝5時半起きはしんどいのですが、土日のどっちかはフルタイムで業務を行わないと全体がまわらなくなってしまっています。本当に1秒1秒が惜しい。かといってマシンのようにキッチリ動けるわけでもなく。
昔、大学の偉い先生がおっしゃっていた、最後はお金じゃなくて時間だよっていうのが身にしみます。お金は時間で買うっていう。残念ながら未熟ゆえにフンダンにあるわけでないので、時として自分の時間を身を削って差し出すことになるわけですが、これがまた物哀しい・・・。自分に対するマネジメント不足ですね。
学生とも時間に対する価値観がひろがりつつあって、戸惑うことも少なくありません。
いや、話が横にずれた。
最近の研究動向(あいまいにしかかけませんが、)
・ガンマ線照射における物性変化のメカニズムがペーストの照射後詳細分析でわかりつつあります。特定の条件だけ、特定の変化が起こるという特異なものですが重要な知見だと思われます。この成果は規制案に反映される予定です。
・中性子照射における物性変化も大分わかってきました。そして、理論的にそりゃそうだよな、ってことがやっぱり起きていて、まだまだ検討の余地があるな、という状況。
もう、あと4年くらいやれば相当にわかると思うんだけどな。なんとか後継プロジェクトを育てたいです。みなさんのご協力をいただけたら、と思います。
朝5時半起きはしんどいのですが、土日のどっちかはフルタイムで業務を行わないと全体がまわらなくなってしまっています。本当に1秒1秒が惜しい。かといってマシンのようにキッチリ動けるわけでもなく。
昔、大学の偉い先生がおっしゃっていた、最後はお金じゃなくて時間だよっていうのが身にしみます。お金は時間で買うっていう。残念ながら未熟ゆえにフンダンにあるわけでないので、時として自分の時間を身を削って差し出すことになるわけですが、これがまた物哀しい・・・。自分に対するマネジメント不足ですね。
学生とも時間に対する価値観がひろがりつつあって、戸惑うことも少なくありません。
いや、話が横にずれた。
最近の研究動向(あいまいにしかかけませんが、)
・ガンマ線照射における物性変化のメカニズムがペーストの照射後詳細分析でわかりつつあります。特定の条件だけ、特定の変化が起こるという特異なものですが重要な知見だと思われます。この成果は規制案に反映される予定です。
・中性子照射における物性変化も大分わかってきました。そして、理論的にそりゃそうだよな、ってことがやっぱり起きていて、まだまだ検討の余地があるな、という状況。
もう、あと4年くらいやれば相当にわかると思うんだけどな。なんとか後継プロジェクトを育てたいです。みなさんのご協力をいただけたら、と思います。
7/28/2016
Windows 10
最近,Windows 10のMobile phoneを購入してみました。電話としては利用してませんが,いろいろ便利です。恥ずかしながら,初のスマホです。
購入してみてよかったな,と思うのは案外Windows 10は良いかもしれない,ということがわかったことです。
まわりのOSは,すべてWindows 7で十分と思っていました。あるいは,アップデート自体が問題になるとまた,数時間費やすことになるのでそのリスクが怖い,ということです。
また,USBメモリのファイル保存に関してフォーマットが,Windows10とWindows7では互換性が無く,ディスクの取り外しを行って互換性を担保するものに書き換えをしなければ,USBメモリが破壊してしまうという情報もあり,身の回りのOSを全部固定しておくほうが安全,という考えもありました。
でも,案外つかってみてよかったので,身の回りをWindows 10側でそろえるという決断をやっと昨日からできまして,順次アップグレードをしております。タッチパネルのついているノートPCはそれなりに快適です。デスクトップでよいところあるか,と言われると見た目が少しよくなったかな,程度ではあるのですが・・・。
というわけで,今も夜なべして家のデスクトップPCをアップグレード中です。
7/27/2016
かご
同じかごに卵を盛るな,という格言にしたがって,自分の研究が一つの分野にかたやらないようにバランスをとっておりましたが,どうも原子力建築分野に偏っておりまして,最近再編を行っています。
それは,特に現在のような研究背景をもと土木建築分野であると,同じ場所から見える景色というのはどうしてもかたまってしまうので,いろんな人とのコラボレーションの可能性を広げる上でも,なるべく多くの人の意見が聞けるプロジェクトのそばにいたい,という思いがあります。
最近は,文部科学省系のプロジェクトとして,科研というのがありますけれども,基盤Sの大型プロジェクトとして,名古屋市大の青木先生のものがあります。「歴史的建造物のオーセンティシティと耐震性確保のための保存再生技術の開発」というなかなか壮大なテーマでして,自分がこれに何が貢献できるかは別として,全体的なとりまとめ方向についてはやはり考えてみたいテーマがいくつかあります。
個別要素としては,塩類風化,特に過飽和状態からの結晶成長圧とか破壊と結晶成長のダイナミクスとか,そういったものに興味があります。セメント系に戻ればDEFの問題などと同じ研究課題(違う点もありますが,それについてはまた別に話をしたいです。)になるわけで,実験系としてシンプルなものができるのかな,と。京大の先生とのコラボも期待できそうなので,非常に頭が刺激されます。
また,一方の基盤Aのプロジェクトとしては,京大構造系の荒木先生の分担もやらせていただき,ジオポリマー(というか,アルカリ活性硬化体ですね。)について少し手をだしました。ようは副産物をどのような速度でどのように溶かして析出させるか,という技術なわけですが,これをポリマー化までもっていくことの技術の整備と,硬化体の良しあしについては議論しておいたほうがよいかな,と思います。
その他,地質分野の多くの方とやらせていただいてるコンクリーションや化石に関する研究は,また,別の面白い展開になってきています。
その他,こまごまといえば,
・セメント関係では,収縮低減剤の作用メカニズムに関するフランスとの国際共同研究はいよいよ佳境に入ってきました。
・9月には英国に2週間滞在する予定となっていますが,Surray大学をはじめとして1H-NMR-Relaxometryに関する共同研究を実施するとともに,C-S-Hの結晶構造に関する議論を深めてきます。また,このテーマについては千葉大学の大窪先生ともすでに2年ほど実験をやらせていただいて,やっと佳境に入っているところでもあります。(長かった・・・)
・チェコ工科大とは,補修材に関する共同研究とその他,数値解析手法の開発について研究を進めています。
などなど,大型のプロジェクトを原子力建築分野で実施する一方,ここ1,2年は他分野との協業,国際共同研究,などフレームワークとして多様化するとともに,研究テーマもさまざに広げていきたいと思います。
といっても,研究室のマンパワー的にはほぼパンパンなんで,どうしたものかな,とは思っているんですが・・・。
それは,特に現在のような研究背景をもと土木建築分野であると,同じ場所から見える景色というのはどうしてもかたまってしまうので,いろんな人とのコラボレーションの可能性を広げる上でも,なるべく多くの人の意見が聞けるプロジェクトのそばにいたい,という思いがあります。
最近は,文部科学省系のプロジェクトとして,科研というのがありますけれども,基盤Sの大型プロジェクトとして,名古屋市大の青木先生のものがあります。「歴史的建造物のオーセンティシティと耐震性確保のための保存再生技術の開発」というなかなか壮大なテーマでして,自分がこれに何が貢献できるかは別として,全体的なとりまとめ方向についてはやはり考えてみたいテーマがいくつかあります。
個別要素としては,塩類風化,特に過飽和状態からの結晶成長圧とか破壊と結晶成長のダイナミクスとか,そういったものに興味があります。セメント系に戻ればDEFの問題などと同じ研究課題(違う点もありますが,それについてはまた別に話をしたいです。)になるわけで,実験系としてシンプルなものができるのかな,と。京大の先生とのコラボも期待できそうなので,非常に頭が刺激されます。
また,一方の基盤Aのプロジェクトとしては,京大構造系の荒木先生の分担もやらせていただき,ジオポリマー(というか,アルカリ活性硬化体ですね。)について少し手をだしました。ようは副産物をどのような速度でどのように溶かして析出させるか,という技術なわけですが,これをポリマー化までもっていくことの技術の整備と,硬化体の良しあしについては議論しておいたほうがよいかな,と思います。
その他,地質分野の多くの方とやらせていただいてるコンクリーションや化石に関する研究は,また,別の面白い展開になってきています。
その他,こまごまといえば,
・セメント関係では,収縮低減剤の作用メカニズムに関するフランスとの国際共同研究はいよいよ佳境に入ってきました。
・9月には英国に2週間滞在する予定となっていますが,Surray大学をはじめとして1H-NMR-Relaxometryに関する共同研究を実施するとともに,C-S-Hの結晶構造に関する議論を深めてきます。また,このテーマについては千葉大学の大窪先生ともすでに2年ほど実験をやらせていただいて,やっと佳境に入っているところでもあります。(長かった・・・)
・チェコ工科大とは,補修材に関する共同研究とその他,数値解析手法の開発について研究を進めています。
などなど,大型のプロジェクトを原子力建築分野で実施する一方,ここ1,2年は他分野との協業,国際共同研究,などフレームワークとして多様化するとともに,研究テーマもさまざに広げていきたいと思います。
といっても,研究室のマンパワー的にはほぼパンパンなんで,どうしたものかな,とは思っているんですが・・・。
7/26/2016
学振76委員会 講演
昨日,76委員会でお題をいただき講演をさせてもらいました。内容は,最近の数値解析技術について,水和反応から物性予測までを,ということでした。
私自身,最近は再び数値解析を用いた論文も何本か投稿している人間ではありますが,数値解析の原理とそれにとりまとめるまでの縮約にいろいろある限界について考えることが多く,また,それに対応した実験もできていない部分がおおいので,むしろお題をするほど偉そうなことはいえず,むしろ苦悩しているという状況なので,講演としては難産でした。
結局,素直に現状のState of the art的なものにして,日本がトレースしていない状況,何か課題なのか,ということについてアラカルト的に紹介することにしました。
でも,本当に伝えたかったことは,数値解析をつかうためにも,いや学問としてコンクリートを考える上でも,最も大事なことは以下のようなことなんじゃないか,ということです。
データをとって線をひき,安全率を考えて設計することには一定の価値があることは認めます。しかし,それはもはや設計行為であって工学的研究であはりません。新しいデータをとって,プロットして,また線を引くことになんの進歩があるのでしょうか。データを取るたびに新しく線を引くのでしょうか。
人件費を考えれば,毎年数十億円の研究費が毎年我々の関連分野で使われているわけですが,そこでセメント化学・コンクリート工学でなにが進歩しているのか,そういう形で批判をしている研究者はいるでしょうか。
科学的なマインドなく,後戻りの無い成果がほんの一握りでもあれば,そこは足場となるわけです。足場なく,上の建物をつんでも,それは砂上の楼閣です。日本のコンクリート工学は砂上の楼閣になりつつあります。コンクリート工学内で議論している用語は,他分野で使われているでしょうか。他の工学・科学分野と共通の言葉を使い,お互いの科学的進歩を分かち合い,前身をつづける学問分野になっていますでしょうか。
同席していた東大・石田先生とも話をしましたが,コンクリート工学分野は,あるいは建築・土木分野は自分たちだけで閉じた世界を築きつつあるのではないでしょうか。
毎年使う研究費の10%でもよいので,足場をつくる研究,後戻りの無い研究,前進のための研究に使われることを心から望みます。また,私は,そういう観点で研究を進め続けようと改めて思いました。
私自身,最近は再び数値解析を用いた論文も何本か投稿している人間ではありますが,数値解析の原理とそれにとりまとめるまでの縮約にいろいろある限界について考えることが多く,また,それに対応した実験もできていない部分がおおいので,むしろお題をするほど偉そうなことはいえず,むしろ苦悩しているという状況なので,講演としては難産でした。
結局,素直に現状のState of the art的なものにして,日本がトレースしていない状況,何か課題なのか,ということについてアラカルト的に紹介することにしました。
でも,本当に伝えたかったことは,数値解析をつかうためにも,いや学問としてコンクリートを考える上でも,最も大事なことは以下のようなことなんじゃないか,ということです。
データをとって線をひき,安全率を考えて設計することには一定の価値があることは認めます。しかし,それはもはや設計行為であって工学的研究であはりません。新しいデータをとって,プロットして,また線を引くことになんの進歩があるのでしょうか。データを取るたびに新しく線を引くのでしょうか。
人件費を考えれば,毎年数十億円の研究費が毎年我々の関連分野で使われているわけですが,そこでセメント化学・コンクリート工学でなにが進歩しているのか,そういう形で批判をしている研究者はいるでしょうか。
科学的なマインドなく,後戻りの無い成果がほんの一握りでもあれば,そこは足場となるわけです。足場なく,上の建物をつんでも,それは砂上の楼閣です。日本のコンクリート工学は砂上の楼閣になりつつあります。コンクリート工学内で議論している用語は,他分野で使われているでしょうか。他の工学・科学分野と共通の言葉を使い,お互いの科学的進歩を分かち合い,前身をつづける学問分野になっていますでしょうか。
同席していた東大・石田先生とも話をしましたが,コンクリート工学分野は,あるいは建築・土木分野は自分たちだけで閉じた世界を築きつつあるのではないでしょうか。
毎年使う研究費の10%でもよいので,足場をつくる研究,後戻りの無い研究,前進のための研究に使われることを心から望みます。また,私は,そういう観点で研究を進め続けようと改めて思いました。
7/12/2016
Review of the Current State of Knowledge on the Effects of Radiation on Concrete
コンクリートの放射線劣化に関する課題と各国の取り組み,および国際的なとりくみについてとりまとめたReview論文が,Journal of Advanced Concrete Technologyに掲載されました。[リンク]
いろんな課題が整理されています。最近の関連の文献を紐解くには便利なReviewになっていると思います。もし,ご興味があれば御覧ください。
Review of the Current State of Knowledge on the Effects of Radiation on Concrete
Thomas M. Rosseel, Ippei Maruyama, Yann Le Pape, Osamu Kontani, Alain B. Giorla, Igor Remec, James J. Wall, Madhumita Sircar, Carmen Andrade, Manuel Ordonez
米国DOEの研究所,米国規制庁,スペイン規制局も連名っていうちょっと豪華な布陣。日本はただの大学の教員,ゼネコン。日本の研究体制のなんというか,現場対応的なものがそのまま見えてますね。このほのかな残念感を著者を見て感じられたら,相当に研究通です。
いろんな課題が整理されています。最近の関連の文献を紐解くには便利なReviewになっていると思います。もし,ご興味があれば御覧ください。
Review of the Current State of Knowledge on the Effects of Radiation on Concrete
Thomas M. Rosseel, Ippei Maruyama, Yann Le Pape, Osamu Kontani, Alain B. Giorla, Igor Remec, James J. Wall, Madhumita Sircar, Carmen Andrade, Manuel Ordonez
米国DOEの研究所,米国規制庁,スペイン規制局も連名っていうちょっと豪華な布陣。日本はただの大学の教員,ゼネコン。日本の研究体制のなんというか,現場対応的なものがそのまま見えてますね。このほのかな残念感を著者を見て感じられたら,相当に研究通です。
近況
7月6,7,8日と日本コンクリート工学会年次講演会で博多に言っておりました。期間中,かつて名大にいた先生と会食でき,旧交を深めることができました。
司会は,今年は腐食(防食)で,面白く聞かせてもらいました。すぐ調べればわかることだと思いますが,電気防食だとASRがまずそうですね。電流で逆に加速したら面白いことできないでしょうか。
あとは,Cationが移動するのですけど,シンジェナイトとか,なにが析出しているのか気になります。しかし,水酸化カルシウムに対して,何を選択的に析出させたらバッファーになるのか,っていう研究はされているんでしょうか。こちらも興味深いです。
JCI総会で恩師に君もそろそろ懇親会に顔を出すようにといわれ,はじめて主催側でないときに懇親会に出てみました。いずれの学会もそうですが,おじいちゃんのための会になっているわけで,研究者間の懇親は別のところでもできそうだな,と思いました。企業の方と久方ぶりにお会いする機会としては素晴らしかいですけども。
今回は博多だけあって,食事もおいしいし,むしろ混雑がすぎたので欠席した方がよさそうでした。なんか,アラートがあるとよいですかね。
その他の夜の会では,同世代のみなさんと飲めたので元気が回復しました。
7月10日(日)は,名古屋市大の青木先生代表の科研(S)の打ち合わせでした。文化遺産保存に関する打ち合わせで,少し疑問に思っていた点について,直接実務に携わっている方のお話がきけてよかったです。コンクリートはやる人がメンバーをみるとたくさんいそうなので,レンガの塩風化をやろうと思いました。塩風化は,DEFとは違い,過飽和条件がイメージしやすいのでメカニズムや数値モデルは,材料や周囲土壌,飛来物質条件が定量できれば,その場その場に応じたモデルは(比較的)簡単につくれるのでは,と推察します。ですので,むしろ問題があった場合のキャラクタリゼーション方法についてざっととりまとめることと,現在起きているその現象をどのように停止させるか,ということが課題ですね。
回復性を担保しつつ停止する手法,というのはなかなかに課題です。チャレンジングなので燃えますけど。少し頭の体操をしたいと思います。
CCR投稿中の論文2本の査読が返ってきました。おおむね総じてPositiveと判断していますが,いずれもそれなりの分量の査読結果でした。Rejectよりは議論が続くのがありがたい。
司会は,今年は腐食(防食)で,面白く聞かせてもらいました。すぐ調べればわかることだと思いますが,電気防食だとASRがまずそうですね。電流で逆に加速したら面白いことできないでしょうか。
あとは,Cationが移動するのですけど,シンジェナイトとか,なにが析出しているのか気になります。しかし,水酸化カルシウムに対して,何を選択的に析出させたらバッファーになるのか,っていう研究はされているんでしょうか。こちらも興味深いです。
JCI総会で恩師に君もそろそろ懇親会に顔を出すようにといわれ,はじめて主催側でないときに懇親会に出てみました。いずれの学会もそうですが,おじいちゃんのための会になっているわけで,研究者間の懇親は別のところでもできそうだな,と思いました。企業の方と久方ぶりにお会いする機会としては素晴らしかいですけども。
今回は博多だけあって,食事もおいしいし,むしろ混雑がすぎたので欠席した方がよさそうでした。なんか,アラートがあるとよいですかね。
その他の夜の会では,同世代のみなさんと飲めたので元気が回復しました。
7月10日(日)は,名古屋市大の青木先生代表の科研(S)の打ち合わせでした。文化遺産保存に関する打ち合わせで,少し疑問に思っていた点について,直接実務に携わっている方のお話がきけてよかったです。コンクリートはやる人がメンバーをみるとたくさんいそうなので,レンガの塩風化をやろうと思いました。塩風化は,DEFとは違い,過飽和条件がイメージしやすいのでメカニズムや数値モデルは,材料や周囲土壌,飛来物質条件が定量できれば,その場その場に応じたモデルは(比較的)簡単につくれるのでは,と推察します。ですので,むしろ問題があった場合のキャラクタリゼーション方法についてざっととりまとめることと,現在起きているその現象をどのように停止させるか,ということが課題ですね。
回復性を担保しつつ停止する手法,というのはなかなかに課題です。チャレンジングなので燃えますけど。少し頭の体操をしたいと思います。
CCR投稿中の論文2本の査読が返ってきました。おおむね総じてPositiveと判断していますが,いずれもそれなりの分量の査読結果でした。Rejectよりは議論が続くのがありがたい。
6/29/2016
Action Mechanisms of Shrinkage Reducing Admixture in Hardened Cement Paste
Journal of Advanced Concrete Technologyから論文が出ました。収縮低減剤の作用メカニズムに関する論文です。従来研究は,処女乾燥中のC-S-Hのコロイド的挙動があるためにはっきりしなかった問題が多かったため多くの誤解がありました。それらを区分して実験し,今後議論すべき多くの事象を解明しました。
・Vycorグラス+収縮低減剤の有無の比較から,毛管張力説が存在することを実証しました。これで収縮低減剤が自己収縮とプラスチック収縮に有効なことを実証したといえます。
・十分硬化したセメント硬化体において,毛管張力理論による収縮量は無視できるくらい小さいことがわかりました。
・十分硬化したのち11%で2年間乾燥させ,C-S-Hが安定化したセメントペーストについて実験を行い,収縮低減剤の有無のサンプル比較において収縮の全量が同じであることから長期乾燥では収縮低減剤が揮発し,気液界面に収縮低減剤が存在しない場合があること(揮発してしまうこと),固体と収縮低減剤が相互作用しており,それが40~70%RHあたりの収縮挙動に影響を及ぼすことを明らかにしました。
・十分水和したあとの収縮低減剤の収縮低減メカニズムは処女乾燥中に生まれ,固体と収縮低減剤の相互作用が主要因であること,一次的が二次的かはわかりませんが,水酸化カルシウムが変質して微小結晶になることを確認しました。既往のアルコールとの研究結果から,CaOH基とアルキル基の相互作用は明瞭で,CHだけでなくC-S-Hも相互作用していると考えられますが,今回の研究ではやんわりとした表現にとどめています。現在,新しいC-S-H構造モデルの提案とともに,今回報告した収縮低減メカニズムの他のC-S-Hに関わる収縮低減剤の作用メカニズムについてCCRの方に投稿中です。
6/27/2016
JCI論文賞
過去の記事と重複しますが,6月20日に日本コンクリート工学会(JCI)の総会がありまして,そこでコンクリート工学会賞(論文賞)をいただきましたのでここにご報告いたします。
この論文は,過去の論文,
この二つの論文は,見ていただけるとわかりますが,膨大な実験データとその実験データから物性を表現する数値モデルによって構成されています。
2000年代初頭から,欧州ではNanocemプロジェクトが実施され,Glasser先生やLothenback博士らを中心として熱力学平衡計算用のセメント系における定数が実験的に定められました。これにより,地質学の平衡計算ツールがセメント系に適用でき,相組成計算や劣化現象における問題の解決方法が実験的演繹的方法から大きく変化しました。21世紀におけるセメント化学分野の一番大きな発展といって良いと思います。
しかしながら,地質学的に数万年,数十万年オーダーで平衡を議論することと,たかだか数十年のコンクリートにおいて平衡計算を議論することは,まったく異なります。セメントの水和は,溶解から過飽和現象を経て析出するわけで,このプロセスに平衡はありません。高分子を練り混ぜれば液相組成は容易に変化するし,イオンの偏在が起きます。そのため,科学的にはセメント分野に平衡論を用いることは(過大な表現かもしれませんが,)誤りです。
しかしながら,反応の方向性を議論すること自体は正しい。それが平衡計算の位置づけです。
平衡計算ができるようになった今,何が重要かと問われれば,それは1)速度の問題,2)物性の問題,の2点です。速度は理論的に出せません。あくまでも経験工学です。そのためには膨大なデータが必要です。ダブルミキシングの問題,ペースト実験とコンクリート実験の練混ぜ効率の問題,さまざまな問題が生じます。物性はさらにやっかいです。化学反応から一気に物理的な応答の問題になるからです。こちらも実験データが必要でした。
私が名古屋大学に移って10年後のセメント化学,コンクリート工学に不可欠なものはなにかということを考えた時に以上の2点に問題を集約しました。設計工学から維持管理工学,あるいは潜在的性能評価が必要となる時代に備えるためには上の二つのデータが必要です。初代学生の寺本先生(広島大学)はこの初期の反応と物性関係について精査し,線膨張係数と自己収縮について膨大な実験を行いました。岸君は2000体を超えるサンプルを制御し,水分移動,収縮,熱伝達率に関するデータベースを作りました。乾燥収縮について新たな視点(というよりは過去にもあった議論を再評価)を着想したのは岸君のデータのおかげです。その後,五十嵐先生(東北大学)は水和反応についての知見を深めました。骨材についての議論も進み,博士論文では,C-S-Hの構造について深く議論しました。その後,堀口くんは特に骨材についての検討を深め,篠野君,杉江さん,西岡さんというスター選手が同一学年にいるという時代ができ,篠野くんはコンクリート中における損傷の問題,杉江さんは数値解析的検討,西岡さんは水和後の乾燥による変質についての検討を行いました。別府君,伊藤君はさらにこれらの検討を別角度から行ってきました。
10年間の膨大な蓄積がある種の抽出液のようになったのが上の2本の論文で,この論文が評価されたことは,ある種,AIJの業績評価よりも,研究室の学生達と進めた歩みを評価してもらえたという点で大変に嬉しいものでした。
過去の記事に記載したとおり,数値解析手法の研究には常に悩みがあります。それは研究的進歩とは何かという問題です。さまざまなものを連成することの意義は,すでに東大の前川先生らのチームが為してしました。残った課題の上で,日本が欧米に対抗するギャップをうめるとすると,実験により真実を見極めながら,簡素化し,現実問題の解決となるべく因果関係を評価するというのが一つの研究テーマだろうかと思っています。科学と工学をどのように橋渡しすべきか,何が大事なのかは常に悩ましい問題です。
そういった点で2015年の数値解析的研究は,まだ,納得がいかない部分があります。実験事実は覆りませんが,数値モデルは永遠にひっくり返される使命にあるのです。なにか少しでも後世の残るものがあると良いな,と考えています。
幸い,最近,やっといろいろな点について整合的なC-S-Hの構成モデルをGatner博士,Chang博士らと投稿しました。この論文が受理されれば,セメント化学の景色は一変すると思います。細孔構造とはなにか,C-S-Hの残された課題はなにか,そして今までのデータはどのように解釈すべきか,それらを統合的に説明できるモデルがやっと明らかになってきました。
さて,こうした環境が今あるのも,名古屋大学に籍をいただき,さまざまな環境と研究プロジェクトをやらせていただいたおかげです。勅使川原先生には特に私の立場を尊重いただいて心から感謝申し上げます。名古屋大学の建築教室の先生方には,実に貴重な機会を頂戴して今ある環境についてサポートいただきました。学外の特に建築分野外の先生とのおつきあいでは貴重な大型プロジェクトをさまざまに実施するチャンスを与えていただきました。それが成功に結びついてきたのはすべて共感できる学生方と出会えたからでした。
こういう条件がすべて整うというのは,まれなことではないかと思います。そういった点でこの境遇の感謝について,身の周りの人と分かちあえられたら,と思う次第です。
さて,名大10年の一区切りですが,これまた幸いにも大型プロジェクトがさまざまにあります。歴史的建造物の課題(科研基盤S,名古屋市大・青木先生),新規建築構造体(科研基盤A,京大・荒木先生),収縮低減メカニズム(École des Ponts ParisTech,LafargeHolcim),放射線照射影響(規制庁・主査),浜岡プロジェクト(中電,Technical lead),化石プロジェクト,などなど。実は打診いただいているのはこれにとどまらず,さらに多くのプロジェクトにお声がけいただいており,積極的に成果が出せるように努力していきたいと思います。
今後とも,無機系材料を中心に建設・建築分野での新境地をみなさまとともに開けるよう努力してまいりますのでどうぞ,よろしくお願いします。
この論文は,過去の論文,
I. Maruyama, G. Igarashi, Numerical Approach towards Aging Management of Concrete Structures: Material Strength Evaluation in a Massive Concrete Structure under One-Sided Heating, Journal of Advanced Concrete Technology, 13 (2015) 500-527.
I. Maruyama, G. Igarashi, Cement Reaction and Resultant Physical Properties of Cement Paste, Journal of Advanced Concrete Technology, 12 (2014) 200-213.
この二つの論文は,見ていただけるとわかりますが,膨大な実験データとその実験データから物性を表現する数値モデルによって構成されています。
2000年代初頭から,欧州ではNanocemプロジェクトが実施され,Glasser先生やLothenback博士らを中心として熱力学平衡計算用のセメント系における定数が実験的に定められました。これにより,地質学の平衡計算ツールがセメント系に適用でき,相組成計算や劣化現象における問題の解決方法が実験的演繹的方法から大きく変化しました。21世紀におけるセメント化学分野の一番大きな発展といって良いと思います。
しかしながら,地質学的に数万年,数十万年オーダーで平衡を議論することと,たかだか数十年のコンクリートにおいて平衡計算を議論することは,まったく異なります。セメントの水和は,溶解から過飽和現象を経て析出するわけで,このプロセスに平衡はありません。高分子を練り混ぜれば液相組成は容易に変化するし,イオンの偏在が起きます。そのため,科学的にはセメント分野に平衡論を用いることは(過大な表現かもしれませんが,)誤りです。
しかしながら,反応の方向性を議論すること自体は正しい。それが平衡計算の位置づけです。
平衡計算ができるようになった今,何が重要かと問われれば,それは1)速度の問題,2)物性の問題,の2点です。速度は理論的に出せません。あくまでも経験工学です。そのためには膨大なデータが必要です。ダブルミキシングの問題,ペースト実験とコンクリート実験の練混ぜ効率の問題,さまざまな問題が生じます。物性はさらにやっかいです。化学反応から一気に物理的な応答の問題になるからです。こちらも実験データが必要でした。
私が名古屋大学に移って10年後のセメント化学,コンクリート工学に不可欠なものはなにかということを考えた時に以上の2点に問題を集約しました。設計工学から維持管理工学,あるいは潜在的性能評価が必要となる時代に備えるためには上の二つのデータが必要です。初代学生の寺本先生(広島大学)はこの初期の反応と物性関係について精査し,線膨張係数と自己収縮について膨大な実験を行いました。岸君は2000体を超えるサンプルを制御し,水分移動,収縮,熱伝達率に関するデータベースを作りました。乾燥収縮について新たな視点(というよりは過去にもあった議論を再評価)を着想したのは岸君のデータのおかげです。その後,五十嵐先生(東北大学)は水和反応についての知見を深めました。骨材についての議論も進み,博士論文では,C-S-Hの構造について深く議論しました。その後,堀口くんは特に骨材についての検討を深め,篠野君,杉江さん,西岡さんというスター選手が同一学年にいるという時代ができ,篠野くんはコンクリート中における損傷の問題,杉江さんは数値解析的検討,西岡さんは水和後の乾燥による変質についての検討を行いました。別府君,伊藤君はさらにこれらの検討を別角度から行ってきました。
10年間の膨大な蓄積がある種の抽出液のようになったのが上の2本の論文で,この論文が評価されたことは,ある種,AIJの業績評価よりも,研究室の学生達と進めた歩みを評価してもらえたという点で大変に嬉しいものでした。
過去の記事に記載したとおり,数値解析手法の研究には常に悩みがあります。それは研究的進歩とは何かという問題です。さまざまなものを連成することの意義は,すでに東大の前川先生らのチームが為してしました。残った課題の上で,日本が欧米に対抗するギャップをうめるとすると,実験により真実を見極めながら,簡素化し,現実問題の解決となるべく因果関係を評価するというのが一つの研究テーマだろうかと思っています。科学と工学をどのように橋渡しすべきか,何が大事なのかは常に悩ましい問題です。
そういった点で2015年の数値解析的研究は,まだ,納得がいかない部分があります。実験事実は覆りませんが,数値モデルは永遠にひっくり返される使命にあるのです。なにか少しでも後世の残るものがあると良いな,と考えています。
幸い,最近,やっといろいろな点について整合的なC-S-Hの構成モデルをGatner博士,Chang博士らと投稿しました。この論文が受理されれば,セメント化学の景色は一変すると思います。細孔構造とはなにか,C-S-Hの残された課題はなにか,そして今までのデータはどのように解釈すべきか,それらを統合的に説明できるモデルがやっと明らかになってきました。
さて,こうした環境が今あるのも,名古屋大学に籍をいただき,さまざまな環境と研究プロジェクトをやらせていただいたおかげです。勅使川原先生には特に私の立場を尊重いただいて心から感謝申し上げます。名古屋大学の建築教室の先生方には,実に貴重な機会を頂戴して今ある環境についてサポートいただきました。学外の特に建築分野外の先生とのおつきあいでは貴重な大型プロジェクトをさまざまに実施するチャンスを与えていただきました。それが成功に結びついてきたのはすべて共感できる学生方と出会えたからでした。
こういう条件がすべて整うというのは,まれなことではないかと思います。そういった点でこの境遇の感謝について,身の周りの人と分かちあえられたら,と思う次第です。
さて,名大10年の一区切りですが,これまた幸いにも大型プロジェクトがさまざまにあります。歴史的建造物の課題(科研基盤S,名古屋市大・青木先生),新規建築構造体(科研基盤A,京大・荒木先生),収縮低減メカニズム(École des Ponts ParisTech,LafargeHolcim),放射線照射影響(規制庁・主査),浜岡プロジェクト(中電,Technical lead),化石プロジェクト,などなど。実は打診いただいているのはこれにとどまらず,さらに多くのプロジェクトにお声がけいただいており,積極的に成果が出せるように努力していきたいと思います。
今後とも,無機系材料を中心に建設・建築分野での新境地をみなさまとともに開けるよう努力してまいりますのでどうぞ,よろしくお願いします。
6/05/2016
国際関係
気づいたら昨年と1日しかスケジュールがずれていませんでした。フィンランドのFortum社とノルウェーのIFEと研究打ち合わせのため,海外出張をしてました。
Fortum社との打ち合わせは,共通の悩みをもっていることもあって,実験データの交換で議論が活発になりました。今後,Fotrum社の実験データの評価に名大がまずは協力していく方向で議論がまとまりました。詳細はここに書けませんが,近い将来に論文化を検討しているので,そのときに議論の内容をしめしたいと思います。
名大で,セメギでも発表した電子線照射試験について,かなり大きな興味を持ってもらいました。
IFEとの打ち合わせは,今年度最後になった規制庁事業でのプロジェクトで,照射後のサンプル試験についてのつめです。今年度のとりまとめをなるべく早く行うようにというのが条件として与えられていましたので緊張感をもって進めました。おおむね想定どおりでスケジュールの約束をしてきたのですが,1点,従来の締め切り期限が守れない点があり,その点が大きな懸念点となりました。
今年度,早い時期にこの照射研究については論文化をすすめていかなくてはいけないと考えています。
3泊5日の弾丸出張でしたが,非常に有意義でした。頭が英語になったので,他の海外の研究者とのメールが進みました。時間が近いところにいたのも議論が加速した理由とは思います。時間というのは大事なファクターです。
9月に英国,Surrey大学のMcDonald先生のところに2週間,研究目的で滞在することになりました。その間,セメント化学の専門家の先生方ともお近づきになれそうです。まさか,リチャードソン博士とC-S-Hについて議論する日がくる,とは予想だにしていませんでした。敷居が高くて痺れます。
11月8-10日にInternational Committee on Irradiated Concreteの国際会議を名大で開催します。政策的にセンシティブなデータも出てくるので会員制・クローズドが基本ですが,オープンセッションも作りますので,原子力関係の方でご興味あるかたは是非,当方までメールいただけたらと思います。また,会員希望の方も是非。米国NRCも来日予定ですので,現在,日本の規制庁に出席を打診中。
チェコ工科大との共同研究のデータが出始めました。7月にStemberk先生が来日してくれるようなので議論が開始されます。補修コンの界面の問題で,結構,最近急に論文数が増えたトピックでもあります。境界条件があいまいなのでデータ整理が難しいです。日本だと上田多門先生のところのデータが英語でよく出ていますし,よい成果が出されていますね。参考にしなくては。
浜岡プロジェクトでのORNLとの共同研究の方向性の議論が停滞していたので,少し気合を入れました。面白データについては早めに論文化して,議論を深めていきたいですね。今年度研究は今月から始動です。
などなど,だいぶん,各国との共同的研究が進みはじめた状況です。
5/13/2016
新年度
新年度といっても,もうGWをすぎてしまいました。間があきすぎですね。
これでは,コンスタントに情報発信どころか季刊誌くらいになってしまっています。
論文関係の近況
論文がいくつか公開になりました。
Journal of Advanced Concrete Technology誌
「A Numerical Model for Concrete Strength Change under Neutron and Gamma-ray Irradiation」
この論文は,放射線環境下にあるコンクリートが変質する様子を予測するもでるで,CCBMと放射線輸送コードANISNを連成した世界で初めての経年変化予測プログラムです。すなわち,放射線・熱・水・水和連成プログラムで,将来的には応力とも連成させる予定です。
かなりマニアックではありますが,原子炉内や処分施設のコンクリートの変質を予測することができますよ,ということを示しました。多くの方との連名になっています。
Cement and Concrete Research誌
「Impact of aggregate properties on the development of shrinkage-induced cracking in concrete under restraint conditions」
こちらは,石灰石骨材を入れたコンクリートが拘束されるとなぜ,巨視的なひび割れの本数がすくなくなるのか,とうことを解き明かした論文です。実験ですべておいもとめたかったですが,骨材を変化させるとどうしても,すべてのパラメータ(ヤング率,収縮,遷移帯)が変化してしまうので最後は数値計算に頼りました。RBSMで計算するとこういうことを浮き彫りにできるよ,っていうことがいえる論文でもあります。
その他,5月9日のセメント技術大会では,「Electron irradiation-induced volume density change of natural rock minerals, a-quartz, orthoclase, and muscovite」を発表しました。このために聞きに来てくださった先生もいて,大変うれしかったです。こちらも,なかなかマニアックな論文です。
セメント技術大会には,セメント新聞とコンクリート新聞が置かれていましたね。コンクリート新聞の方では,まだ成果もでていない委員会ですが,当方が委員長をしているC-S-H研究委員会について取り上げていただきました。どうやって盛り上げていくかはまだまだ課題なんですが,少しずつ前進していこうと思います。
セメント新聞の方では,ゼネコンの方からみたセメント技術大会への辛辣なコメントがありましたね。スラグをつかった研究を行っている企業にコメントを求めるあたり,新聞社としてもそういうコメントを狙ったとおもうのですが,ポジショントークだと思った方がよいですね。あまり残念にもカッカする必要もないでしょう。自分の企業が収益源をまもろうとするのは当然の行為であり,利害が対立して辛口意見がでるのもまたしかり,かと。
一方,JCIも含めてコンクリート業界がタコツボかしているのは間違いなく,海外との知見交流もかつてほど大きくない状況を考えると,ガラパゴスかして亀のように数万年生きるミラクルがおきるかもしれないが,島がそのまま干上がることもあるだろうな,と思います。
近年は,文科省方針で大学教員は海外出張が極端に間接的に制約されているので,国の研究機関の人などが外にでていかないと海外の動向はとってこれません。国際会議というよりは,キーパーソンがでてくる会議に行って直接話をしてくるのが大事なわけですが,そういったことができない環境になっています。研究大学院が学部の授業で研究の質も低下する,といういかにもな状況になっているのは非常に残念です。やれやれ。
さて,セメント研究なりセメント開発に目をみれば,海外ではキルンの維持,人材育成も含めて利益とは別にも新しいセメントを開発してまずは動かしてみようという動きがあったり,ジオポリマーについても,まあ,限界はあるとおもうけどでもなにかできるかもしれないから研究しようぜ,やるならマジでやろうぜ,という活動が広範に行われていますが,そういうこと自体が日本では少なくなっているように思います。当座の研究として利益がもくろみやすい新設工事主体になるのは日本も海外も一緒ですが,そういった点でも研究の位置づけってもう少し広くみた方がよいよね,それはこういうことだよ,って示す大学教員ももっと多くならないといけないとは思います。
もう少し過激に書きたいところもあったんだけど,とりあえず,ふんわり,こいつ何かいてるんだろうな,くらいで切り上げようと思います。では。
これでは,コンスタントに情報発信どころか季刊誌くらいになってしまっています。
論文関係の近況
論文がいくつか公開になりました。
Journal of Advanced Concrete Technology誌
「A Numerical Model for Concrete Strength Change under Neutron and Gamma-ray Irradiation」
この論文は,放射線環境下にあるコンクリートが変質する様子を予測するもでるで,CCBMと放射線輸送コードANISNを連成した世界で初めての経年変化予測プログラムです。すなわち,放射線・熱・水・水和連成プログラムで,将来的には応力とも連成させる予定です。
かなりマニアックではありますが,原子炉内や処分施設のコンクリートの変質を予測することができますよ,ということを示しました。多くの方との連名になっています。
Cement and Concrete Research誌
「Impact of aggregate properties on the development of shrinkage-induced cracking in concrete under restraint conditions」
こちらは,石灰石骨材を入れたコンクリートが拘束されるとなぜ,巨視的なひび割れの本数がすくなくなるのか,とうことを解き明かした論文です。実験ですべておいもとめたかったですが,骨材を変化させるとどうしても,すべてのパラメータ(ヤング率,収縮,遷移帯)が変化してしまうので最後は数値計算に頼りました。RBSMで計算するとこういうことを浮き彫りにできるよ,っていうことがいえる論文でもあります。
その他,5月9日のセメント技術大会では,「Electron irradiation-induced volume density change of natural rock minerals, a-quartz, orthoclase, and muscovite」を発表しました。このために聞きに来てくださった先生もいて,大変うれしかったです。こちらも,なかなかマニアックな論文です。
セメント技術大会には,セメント新聞とコンクリート新聞が置かれていましたね。コンクリート新聞の方では,まだ成果もでていない委員会ですが,当方が委員長をしているC-S-H研究委員会について取り上げていただきました。どうやって盛り上げていくかはまだまだ課題なんですが,少しずつ前進していこうと思います。
セメント新聞の方では,ゼネコンの方からみたセメント技術大会への辛辣なコメントがありましたね。スラグをつかった研究を行っている企業にコメントを求めるあたり,新聞社としてもそういうコメントを狙ったとおもうのですが,ポジショントークだと思った方がよいですね。あまり残念にもカッカする必要もないでしょう。自分の企業が収益源をまもろうとするのは当然の行為であり,利害が対立して辛口意見がでるのもまたしかり,かと。
一方,JCIも含めてコンクリート業界がタコツボかしているのは間違いなく,海外との知見交流もかつてほど大きくない状況を考えると,ガラパゴスかして亀のように数万年生きるミラクルがおきるかもしれないが,島がそのまま干上がることもあるだろうな,と思います。
近年は,文科省方針で大学教員は海外出張が極端に間接的に制約されているので,国の研究機関の人などが外にでていかないと海外の動向はとってこれません。国際会議というよりは,キーパーソンがでてくる会議に行って直接話をしてくるのが大事なわけですが,そういったことができない環境になっています。研究大学院が学部の授業で研究の質も低下する,といういかにもな状況になっているのは非常に残念です。やれやれ。
さて,セメント研究なりセメント開発に目をみれば,海外ではキルンの維持,人材育成も含めて利益とは別にも新しいセメントを開発してまずは動かしてみようという動きがあったり,ジオポリマーについても,まあ,限界はあるとおもうけどでもなにかできるかもしれないから研究しようぜ,やるならマジでやろうぜ,という活動が広範に行われていますが,そういうこと自体が日本では少なくなっているように思います。当座の研究として利益がもくろみやすい新設工事主体になるのは日本も海外も一緒ですが,そういった点でも研究の位置づけってもう少し広くみた方がよいよね,それはこういうことだよ,って示す大学教員ももっと多くならないといけないとは思います。
もう少し過激に書きたいところもあったんだけど,とりあえず,ふんわり,こいつ何かいてるんだろうな,くらいで切り上げようと思います。では。
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