この出張は,フィールド調査で,いわゆる国際会議や研究打合せではありません。建築物のフィールド調査としては,ラクイラ,ベネチアを始めとする組積造調査について,名古屋市大の青木先生のプロジェクトに入れてもらっていて,時々報告してきました。
この調査は,私のあらたな研究フィールドである地質学に関するものです。
過去の少し触れましたが,名古屋大学博物館の吉田英一教授とは,炭素同位体を用いたコンクリートの劣化プロセスに関する研究をご一緒させていただきましたが,それが一段落(論文化はまだおわっていないんですが),カーボネーションのコンクリーション研究にご一緒させていただきました。球体状に炭酸カルシウムが濃集するメカニズムは,自然界においてまだ解明されていない現象の一つなのですが,それについて研究を一緒にさせていただき,現在論文が投稿寸前の状態になっています。
その後,コンクリーションつながりで,米国ユタ州で確認できる鉄コンクリーションに研究テーマがうつりました。Maeuq marbleとも呼ばれる鉄の球殻は,古くからメカニズムとして謎で,原住民のシャーマンなどが利用するような不思議な石として知られています。
ユタ州立大学は,この研究を20年近くにわたってきていますが,同じような現象が火星の表面に確認されるにあたり,NASAと共同研究をしており,国際的にもある分野では注目されるようになりました。
吉田先生らはこの点に着目して,米国の内務省から許可をもらい,フィールド調査をすることにし,私もそこに参加させていただくことになりました。地質のフィールド調査は生まれて初めての経験でありましたが,大変に興味深いものでした。
吉田先生とは,日本の砂岩骨材の収縮メカニズムについて,偏光顕微鏡観察などでもアドバイスをいただいているのですが,こうした骨材の観点からも従前より地質学に興味があって教科書だけは斜め読みしていたのですが,今回,調査を行い,成因を考えるときのディスカッションにふれ,その奥深さに魅入りました。
フィールド調査は,グランド・ステアケース・エスカランテ国定公園(ここは許可あり,),ザイオン国立公園(ここは許可なし,観察のみ),ブライス国立公園(許可なし),ホワイトクリフ(許可有り)で,いずれも,砂漠から堆積した,Navajo Sandstoneという地層を対象としました。
結論からいうと,多くのフィールド調査の結果,今まで報告されていない成因に関する現象を確認し,その証拠を持ち帰ることができました。今後は,それらを化学的分析を行って裏付け作業に入るような状況で,たった10日ですが,科学的好奇心が大いに満足するような結果でした。
プロジェクトには,GISのスペシャリストや同位体分析のスペシャリスト,数値モデラーなど,多くの人が参加しており,今回の結末は,地形図を読み取り,あらかじめ想定した調査フィールドの場所がましゃにどんぴしゃにあたったというもので,地形図,地質図,メカニズムをあらかじめ想定した先生方の勝利といえます。それを間近に見られたのはラッキーだったのでしょう。
ホンモノの凄さを感じました。
本当は,もっと細かいことを沢山書きたいのですが,いかんせん,論文執筆前なのでこれいじょう深くかけません。自分丹味の研究なら,結構つっこんで書いてしまうのですけど・・・。
というわけで,今回の報告は,なんだが小学生日記みたいな感じですが,こんな感じでおわります。
最後に写真をいくつか。
フィールドでの一コマ
鉄コンクリーションが地層からみえる様子
鉄コンクリーションを破壊したところ。(内務省の許可が必要です。)
周囲と同じ砂岩が内部にも存在しており,鉄の球殻ができていることがわかります。
ブライス国立公園の一コマ
こちらも同じ,ブライス国立公園の一コマ
鉄コンクリーションが風化によって地上に出て,集まっている様子。
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