1/31/2015

研究近況

・セメントのC-S-Hについては,現在,1つCCRに投稿中で審査待ちです。C-S-Hの層状構造の特徴的な点を議論しており,査読が通ったらこちらで内容を紹介したいと思います。
現在は,この仮説にのっとりながら,セメントペーストの収縮メカニズムについて,さらに深く議論しています。JACTの2010年に発表した論文は,結果として,処女乾燥下においてコロイド的変質が生じるプロセスの非回復成分の収縮は,統計的吸着厚さで評価できる,というように解釈できますが,現在は,回復・リバーシブルの収縮ひずみについての検討を進めています。

Feldman博士らと,今は,Beaudoin博士らのチーム,あるいはSetzer先生らのチームが,長さ変化等温線について,さまざまに報告しています。しかし,いまだかつて,セメントペーストの長さ変化等温線で,湿度の往復で完全にリバーシブルなデータを取得した人はいません。

これがまた,セメントペーストの収縮メカニズムを議論できない理由と我々は考えていますが,ここ2年くらいの研究で,やっと,リバーシブルな長さ変化等温線を取ることができるようになりました。
ここ1,2年でこのデータをベースに,適切な長さ変化メカニズムについて議論していきたいと思っています。

・一方,多孔体の研究もすすめており,最近は,サンプル提供いただいてVycorグラスの長さ変化等温線を測定しています。20℃ではほとんどリバーシブルなデータを取得できる条件を明らかにしましたが,40℃ではリバーシブルになりません。高湿度域の挙動は,かなり不安定な挙動であり,これに依存して長さ変化等温線の残差が生じてしまいます。(その他の挙動は再現性がある。)
この点について,今,実験条件とメカニズムの両面で詰めています。

・収縮低減剤の作用メカニズムも相当に細かいところまで見えてきました。セメギでは,その一部を発表しようかと考えています。




・分析ツールとして,低温DSCについては,データの解釈について,やっと,いろんな点がわかってきました。冷却プロセスはやはり再現性が小さいといわざるを得ないですね。サンプルの気泡量も重要な因子ですが。それでも,C-S-Hの構造を前提として,なにをどう理解するかというのは整理できたように思います。これは,どこかでまとめて投稿したいと思います。

・1H-NMRのセメント系データは,CPMG法の場合,直接のデータ結果が論文に掲載されていません。なぜなのかがなんとなくわかったように思います。SpinEchoは測定点が粗いし,精度が今一なので,現在は,Solid Echoで測定できる範囲での議論を検討しています。すごく便利だとおもったツールですが,リートベルトと一緒で,やってみないと問題点などはわからないですね。やはり,同じデータでも信頼できるところとできないところがあり,ダメなところのデータはダメ,ということになりそうです。査読で悩む結果がこれから多くでてきそうです。

・解析では,物性予測関係では,CCBMがVer.3に移行しました。水和モデルをベースに,コンクリートの挙動をかなり網羅できるようになりました。ペーストと骨材の体積変化ギャップによって生ずる損傷とペーストの変質の両方を関数化して,さまざまな物性予測ができるようになりました。結局,関数としては高度な内挿関数のようなものですが,それでも,いろんな条件を議論する土台にはなります。この結果については,どっかに早いところ公開しなくちゃな,と考えています。

・また,結局,材料研究は構造物になって性能評価してなんぼ,ということですので,RBSMにかなりのエネルギーを投入して解析手法として研究しています。また,3D-FEMもあらたにツールとして用いるようにしましたが,さまざまなことが,一応,できつつあるような状況です。
1,2年後には,それなりの成果をおみせできるのではないかと思っています。RBSMでは,土木の中村光先生,山本先生,東大の長井先生にいろいろアドバイスを頂いて,勉強させてもらっています。

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