6月30日にWashington D.C. で催された、OECD-RILEMのミーティングに出席しました。RILEMに新しいTC、”Technical committee on prognosis of deterioration
and loss of serviceability in structures affected by alkali-silica reaction”ができ、そこのメンバーになったからです。
そもそも、ASR研究はほどんとやってきてなくて、照射研究の膨張挙動のAnalogとして実験を少ししていたくらいで、十分な知見はありません。体積変化による構造挙動評価とか、ジェネラルな問題であればそれなりに知見はあるのと、建築ではASRを取り扱っている人間がいないことを考え、さらに原子力では重要な問題になってきているのでメンバーになることを、山田さんの推薦を経て決意しました。
TCのSecretary はLCPC、EPRI、ORNLと経験を経てきたYannで、ORNLのミーティングでは毎年あっている間柄なので、割りと好意的にメンバーにしてもらえました。
日本からの参加者は、皆土木で建築という雰囲気はまったくありませんでした。まあ、そりゃあ、過去の研究実績からみてそうだろうとは思いますが。
さて、RILEMのTCに参加するのも始めてなことですが、まわりの人が参加している感じと今回のRILEM-TCは全く異なりました。まず、参加者の主要メンバーは、OECD-NEAのASCETプロジェクトのScientific Committeeの参加メンバーで、そこで検討してきたことをそのままRILEMで標準化したいという目論見があるようでした。
ASCETプロジェクトは、カナダの規制局が中心となってやってきた経緯があります。というのは、ASCETプロジェクトは、原子力施設コンクリート構造物の診断を相手として、さまざまな劣化事象を整理することをやっていたわけですが、OECD参加国のアンケートでもっとも関心のある劣化事象がASRとなっているので、ASRの知見がもっとも先進的であるカナダがローリングするようになったようです。(推測ですが。)
原子力関係では、ASRは割りとホットです。6月のIAEA-CRP(国際共同研究)についての会合が持たれており、コンクリートの研究としてASRもフォーカスされています。これがなぜかは後述します。この流れで、IAEA-CRP担当者が、このOECD-RILEMミーティングにも出席し、プレゼンを実施しておりました。
さて、研究というか取りまとめの方向ですが、コロラド大のProf. Saouma教授、ツールーズ大のSellier教授などがアメリカ、フランスの動向を発表するとともに、Hydro-Quebeckの方がやはりカナダの動向について説明していました。
それで、米国・フランスの手法をRILEMでオーソライズして、場合によってはコードの承認プログラムをつくって、良いコードを進めていこう、と発言していました。
はっきりいって驚愕でした。こんな真顔でカネ目当てのことをいう人を久しぶりに見ました。
(まあ、よく考えると、いずれもみな米国の先生でしたね。私が見たのは。)
私の感想は多くの研究が、土木の水系の構造物を対象としたものであり、境界条件、配筋などの条件、評価クライテリアが原子力建屋と大きくことなっており、ゴールを共有するのはまったくナンセンスだ、というものでした。これがそのままOECDのガイドラインになるようなら、ちょっと問題だと思いながら聞いていましたが、私はそもそもRILEMのメンバーなので、OECD側にケチをつけることもできませんから、会議ではヒトコトも発言しませんでした。はっきり行って、生まれて初めてです。会議でおとなしくしていたのは。
カナダ側も、ASRの現象には詳しいのですが、事務局を始め、この人達は本当に原子力建屋のことをわかって議論しているのか(私がわかっているっていうわけでもないんですが・・・)、ともいうべきもので、土木構造物基準で話しているので本当にどうなっているのかわけがわかりませんでした。今後、実験する予定のパラメータを聞いた時でさえ、この人達はどのくらい本気なのだろう、と思ったくらいです。
ただ、Hydro-Quebeckの発表は、大変素晴らしかったです。実務的だし、示唆に富む内容で、もっとも理解しやすく、考えとしても納得の行く現象の分析、解析によるAging management、性能評価項目も妥当なものでした。でも、残念ながら、Saouma教授は自分の概念に固執する風が強く、それほど重要視していない風で、検証用の良いデータが沢山ある、みたいな感じでした。
会議中、Sellier教授のプレゼンに対して山田博士から疑問が呈されましたが、まったく理解ができておらず、噛合もしませんでした。その時点で立ち位置とか、本気度がずいぶんちがうなあ、というのを感じました。
さて、ASRがこれほどまにで多くの研究者を動かしているのか、というと、カナダ、米国の東側の原発の多くにASRの現象がでており、ライセンスリニューアル、長期運転制度において問題が生じているからです。Hydro-QuebeckのGentilly-2プラントは、ASRを30年発症してついに廃炉になりました。これらは典型的な一例で今後も、Managementのコストと対応を比較してダメな場合には廃炉になるものが出てくるでしょう。実は恥ずかしながら私は全然そのことをしらず、会議中に聞いてそれが常識となっていることを知りました。
日本に全然その情報がきていない、というのはどういうことなんでしょうか。しかも、ASCETには日本からも参加者がいるそうで、いったい担当者はなにをしていたのかと、唖然としました。
日本は、四国電力の伊方原発のタービン架台にASRが生じて、マネジメントで対応したという事例がありますが、OECDの担当者は理解しておりませんでした。(3年前に、JNESから、ORLN経由で英文の報告書がいっているので、EPRIは理解していると思うのですが。)
建物の周囲環境は発症する事例は、建屋内部では大分に異なるので、本当にそんなんでよいのか、という問題もあり、このことは強く発表していく事例と考えています。そういう意味では、少し私の立ち位置のようなものが理解できました。
あとは、国内では建築でもASR研究を実施すること、土木の先達の研究を理解するのと、研究者のみなさんに協力をえて、日本標準ともいうべきものを作っていく、ということを進めていく必要がありそうです。しかし、そのためには、JCI委員会でレビューだけをするというものではなくて、ゴールにむかって、真面目に議論をして、ダメなものはダメ、良いものは良い、という批判と改良を繰り返して進める研究が必要なように思います。真面目に、研究をする、ということです。フィールドがどの場になるかは予算によるんじゃないかと思います。でも、まあ、米国のこの状況を考えれば、しばらくすると日本でもホットなテーマになるんじゃないかな、とも思います。
というわけでみのりのある1日でした。ワシントンは3泊の強行軍で、かえってすぐに関係者には情報共有を実施して、ヒアリングをさせていただきつつあります。関係者のみなさまは、今後ともどうぞ、よろしくお願いします。(別に私がリーダーやるわけではないですけど。)
全然関係ないのですが、最近、東京でどうしても話したい人がいて、スケジュール調整をしまくって予定を組んでいたのですが、私の失敗で出会えずにおわって1日をつぶしてしまい、久しぶりに落ち込む事故がありました。なんというか、ストレスと疲れが、結構、年度の前半にこのくらいたまっていうのか、というのを認識した事故で、こりゃあ、今年度末、本当にやばいんじゃないか、と思っています。
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