現存する高度経済成長期に建設された個人住宅の多くが,当初の目論見よりも短い30~40年の寿命を経て,建替えを控えている。むろん,それらのすべてが建替えをすることが環境や資産の運営の観点からみて必要なこととは考えられないが,「長期的な耐用年数を要求する社会資本としての住宅」,という価値観がなかった建物,特に個人住宅や集合住宅に関しては,スクラップアンドビルドを検討する必要がある。
こうした反省を踏まえた新規建築物の高品質化により,社会資産としての住宅が用意されることは,今後人口減少が控える日本経済の下支えとして中長期的には好ましいことである。日本の建設産業は官民の協力により,このような社会資本としての住宅整備を低炭素化の枠組みの中で押し進める必要がある。
ここまでの文章は,私が最近使う申請書のフォーマットの枕詞のようなものである。日本の住宅産業に建て替え需要があること,陳腐化した住宅でメンテナンス,コンバージョンを行ったとしても使途が見えてこない建築物は多々あること等は現実問題として依然残る。
既に,身の回りには酔っぱらった時の議論として良く話していることだが,
1.なぜ,一人一室政策のようなものが行われたのか。一人一室持てるほど国が富むようになるという目標はあっても,陳腐な住宅であっても人が持たなくてはいけないという脅迫観念,固定観念のようなものが定着してしまったのはなぜか。あながち,こうした政策に付随してできあがった住宅の多くが間取りも狭く,中長期的な利用に不向きであることが多い。
2.保証人問題。現在,多くの人間が退職金の多くをつぎ込んで住宅を購入する。これは,年寄りは賃貸の保証人になってもらえる人が(相対的に)少なく,結果として住宅を購入せざるを得ないからということも多い。こういう社会制度的な市場形成が,十分な資質を備える住宅の供給を阻んでいると考える。老人介護も大事だが,その前に賃貸市場の制度的な自由化が促進されれば,賃金の使途も拡大し,豊かな老後を迎えられるのではないか。まずは,研究室で一人一室政策についてゼミでもやるかな。
東大・浅見先生の研究を参考に。
http://ua.t.u-tokyo.ac.jp/okabelab/asami/asami-cv-j.html
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