5/13/2016

新年度

新年度といっても,もうGWをすぎてしまいました。間があきすぎですね。
これでは,コンスタントに情報発信どころか季刊誌くらいになってしまっています。


論文関係の近況
論文がいくつか公開になりました。

Journal of Advanced Concrete Technology誌
A Numerical Model for Concrete Strength Change under Neutron and Gamma-ray Irradiation
この論文は,放射線環境下にあるコンクリートが変質する様子を予測するもでるで,CCBMと放射線輸送コードANISNを連成した世界で初めての経年変化予測プログラムです。すなわち,放射線・熱・水・水和連成プログラムで,将来的には応力とも連成させる予定です。
かなりマニアックではありますが,原子炉内や処分施設のコンクリートの変質を予測することができますよ,ということを示しました。多くの方との連名になっています。

Cement and Concrete Research誌
Impact of aggregate properties on the development of shrinkage-induced cracking in concrete under restraint conditions
こちらは,石灰石骨材を入れたコンクリートが拘束されるとなぜ,巨視的なひび割れの本数がすくなくなるのか,とうことを解き明かした論文です。実験ですべておいもとめたかったですが,骨材を変化させるとどうしても,すべてのパラメータ(ヤング率,収縮,遷移帯)が変化してしまうので最後は数値計算に頼りました。RBSMで計算するとこういうことを浮き彫りにできるよ,っていうことがいえる論文でもあります。

その他,5月9日のセメント技術大会では,「Electron irradiation-induced volume density change of natural rock minerals, a-quartz, orthoclase, and muscovite」を発表しました。このために聞きに来てくださった先生もいて,大変うれしかったです。こちらも,なかなかマニアックな論文です。


セメント技術大会には,セメント新聞とコンクリート新聞が置かれていましたね。コンクリート新聞の方では,まだ成果もでていない委員会ですが,当方が委員長をしているC-S-H研究委員会について取り上げていただきました。どうやって盛り上げていくかはまだまだ課題なんですが,少しずつ前進していこうと思います。

セメント新聞の方では,ゼネコンの方からみたセメント技術大会への辛辣なコメントがありましたね。スラグをつかった研究を行っている企業にコメントを求めるあたり,新聞社としてもそういうコメントを狙ったとおもうのですが,ポジショントークだと思った方がよいですね。あまり残念にもカッカする必要もないでしょう。自分の企業が収益源をまもろうとするのは当然の行為であり,利害が対立して辛口意見がでるのもまたしかり,かと。

一方,JCIも含めてコンクリート業界がタコツボかしているのは間違いなく,海外との知見交流もかつてほど大きくない状況を考えると,ガラパゴスかして亀のように数万年生きるミラクルがおきるかもしれないが,島がそのまま干上がることもあるだろうな,と思います。

近年は,文科省方針で大学教員は海外出張が極端に間接的に制約されているので,国の研究機関の人などが外にでていかないと海外の動向はとってこれません。国際会議というよりは,キーパーソンがでてくる会議に行って直接話をしてくるのが大事なわけですが,そういったことができない環境になっています。研究大学院が学部の授業で研究の質も低下する,といういかにもな状況になっているのは非常に残念です。やれやれ。

さて,セメント研究なりセメント開発に目をみれば,海外ではキルンの維持,人材育成も含めて利益とは別にも新しいセメントを開発してまずは動かしてみようという動きがあったり,ジオポリマーについても,まあ,限界はあるとおもうけどでもなにかできるかもしれないから研究しようぜ,やるならマジでやろうぜ,という活動が広範に行われていますが,そういうこと自体が日本では少なくなっているように思います。当座の研究として利益がもくろみやすい新設工事主体になるのは日本も海外も一緒ですが,そういった点でも研究の位置づけってもう少し広くみた方がよいよね,それはこういうことだよ,って示す大学教員ももっと多くならないといけないとは思います。

もう少し過激に書きたいところもあったんだけど,とりあえず,ふんわり,こいつ何かいてるんだろうな,くらいで切り上げようと思います。では。