6/15/2013

エルゼビア社 知的財産の問題

名古屋大学では、来年度、おそらくエルゼビア社との包括提携を解約します。大学人にとっては常識ですが、エルゼビア社というのは、さまざまな学術論文を抱える大手出版社です。

昔、論文は各種の学会が運営も研究者によるボランティアがによって行なって、ピアレビューをおこなって、論文集を発行していました。PCも発達しておらず、実験環境もたくさんの人でと予算が必要で、論文に必要なデータを集める戦略にも半年もかけるような時代にあって、論文集というのは一つ一つの珠玉の作品でした。

より研究が細分化され、高度化され、しかも、予算が伴った時に大量に生産されるようになった時代において、研究者のボランティア・スピリットは、崩れてしまいました。とはいっても、今でも研究者は来た論文は査読しますし、出来る限りのことはしています。しかし、論文発刊までのさまざまなプロセスは本当に負担であり、時間がかかる作業で、これに関わるだけで自分の研究が妨げになるような時代になってしまいました。

ここに現れたのが、学術系出版社です。



学術系出版社は、ジャーナル編集上の多くを解決可能なデータベースシステムを抱えて、個別の学会を訪ねて回りました。「大変でしょう、こちらでやりましょうか?」 多くの学会は大変な重荷をリリースできるので、結局のところそれを肩代わりしてもらうことにしました。ただ、その時に出版社は、「出版に際する価格交渉権は、我々も利益を出さないといけないので、当方が責任をもってやらせていただいてかまわないでしょうか?」というのも忘れませんでした。営利企業ですから、当たり前だし、研究者というのは基本が善人なので、善意の価格がつくものと思って許諾したと思われます。

結果どうなったかというと、論文集は数社の出版社に牛耳られ、自分の書いた論文をサーバー経由で見るのにも法外な値段が必要なようになりました。独占禁止法に該当する事案ではないかとも思いますが、残念ながら、過去の訴訟では原告側の研究者が敗訴しています。

現在では、年7%で価格が上昇しており、来年度は円安、消費税も含めて考えると相当の価格上昇が見込まれて断念したわけです。
(大学にもよりますが、数億円のオーダーです。契約する法人の人数、ダウンロード数、その他で決定するようです。)
なお、中国の大学では、現在非常に安価にこの包括契約が実施されていますが、年15%で価格が上昇しており、5年後には日本と同じ値段になるように方向性が定まっています。

今、国際的なジャーナルに論文を執筆するためには、多数の論文が必要です。私も勘定してみましたが、邦文も含めてですが、6,70くらいのジャーナルには(ざっくりと)目を通しています。論文投稿においてはオリジナリティの明確化が必要で、それには関連文献の精査が必須であり、関連文献が適切に引用されていないければ、ピアレビュー前にも編集会議でリジェクトの可能性があります。ですので、多くの論文を独占しているエルゼビア社との交渉は大学としての死活問題です。

すでに、私の所属している大学を出る気まんまんの若手もいますし、新しく来る先生もこなくなってしまうでしょう。○○部の判断は、私からすると日本における前政権のようなもので、今後20年の名大を立ち枯れにした戦犯として、今後記憶されることになるだろう、と思われます。少なくとも私は絶対に忘れようとは思いません。
教育に対する覚悟というのが、ここまで少ないというのも驚きです。いったいその金で何をするのか、見ものです。

一方で、エルゼビア社との価格交渉において、日本は一回も勝利していません。外国のやりて企業と価格交渉ができる人がいないわけです。(これではグローバル人材は日本の大学には無理です、といっているようなものですね。残念ながら。)
そういう観点から言えば、契約破棄というのはそれはそれで良いのかもしれません。うちの研究室では、一本一本、必要な論文は購入することにしました。古い論文は図書館でコピーすればよいわけですし。


結局、知財の山をまるまる、他人に譲ってしまった研究者というのは非常に戦略もない善人だった、ということです。OpenAccessジャーナルの重要性はここにありますし、日本のコンクリート業界において、JCIが出しているAdvanced Concrete Technologyの重要性はますます増えていきます。日本としては、このジャーナルをぜひともCCRレベルにしていきたいところです。

ブランドとして、あそこに掲載されるのが「憧れ」にしていければと思います。たとえば、日本の法規・指針・仕様書/示方書などの根拠は、ぜんぶあそこで英文化されるとか、逆に掲載されれば日本では積極的に採用していくとか、そういった形で工学上の意義も増やしていければとおもいます。

個人的には少しずつ投稿を増やそうとおもいます。

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